「GIST(消化管間質腫瘍)」って「がん」なの?症状や原因も医師が解説!

GIST(消化管間質腫瘍)とは?Medical DOC監修医がGIST(消化管間質腫瘍)の症状・できる原因・できやすい部位・検査法・治療法などを解説します。

監修医師:
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)
目次 -INDEX-
「GIST(消化管間質腫瘍)」とは?
GISTとはGastrointestinal Stromal Tumorの略で消化管間質腫瘍と呼ばれ、胃や腸などの消化管粘膜の下にできる悪性腫瘍の一種です。通常の胃がんや大腸がんなどは粘膜から発生します。しかし、GISTは通常のがんと異なり、消化管の壁の筋肉の中にある、カハール介在細胞が異常に増殖して腫瘍となったものです。
50〜60歳代が好発年齢ですが、年間10万人に1人程度と非常に珍しいがんです。
症状が出づらいこともあり、なかなか診断がつきづらいことも多く、注意しなければなりません。貧血や腹痛、吐き気などの症状が続く場合には消化器内科で相談をしましょう。
GIST(消化管間質腫瘍)の主な症状
GISTは初期では症状がないことが多いです。腫瘍が大きくなると以下のような症状がみられるようになります。しかし、これらの症状はいずれもGISTのみで現れる症状ではないため、ほかの病気と区別ができません。気になる症状があれば消化器内科を受診することをお勧めします。
下血や血便
消化管のどの場所にできても腫瘍が大きくなり、腫瘍からの出血がみられることがあります。GISTで多くみられる症状のうちの1つです。場所によって、胃や食道であれば吐血、胃、小腸で下血、大腸で血便として出血がみられます。消化管からの出血は、GISTでよくみられる症状ですが、他の病気でもみられることも多いため症状のみでは区別がつきません。消化管出血がみられたら、早めに消化器内科を受診しましょう。
吐き気
腫瘍が大きくなると、消化管の内腔が圧迫されるため、吐き気が起こることがあります。特に、胃で腫瘍ができると吐き気の症状が出やすいです。また、食道で腫瘍ができると食べ物が飲み込みづらくなる症状がみられることもあります。吐き気が長く続く場合には、消化器内科で相談をしましょう。
腹痛
腹痛もGISTでみられる症状の一つです。胃に腫瘍ができると、みぞおちの痛みが起こります。小腸や大腸で腫瘍が大きくなると、腫瘍ができた部位の腹痛がみられることがあります。また、腫瘍が大きくなると、腸管が細くなり、腸閉塞をきたすこともあるため、注意が必要です。
貧血
腫瘍からの出血が持続すると、貧血となる事もあります。また、消化管出血は見た目でわからないこともあり、血液検査で徐々に貧血が進行することで、初めて異常に気が付くことも少なくありません。貧血に気がついたときには消化管出血が無いか、内科で相談をしてみましょう。
お腹のしこり
症状がなかなか現れにくいため、腫瘍が大きくなって初めてしこりに触れて気が付くこともあります。痛みがなくとも、同じ場所にしこりが触れる場合には、消化器内科を受診して相談をしましょう。
GIST(消化管間質腫瘍)ができる原因
タンパク質の変異
消化管壁の筋層にあるカハール介在細胞が異常に増殖したものがGISTです。カハール介在細胞はKITというタンパク質を持っています。これらのタンパク質が変異を起こし、異常に増殖して、腫瘍となります。
このタンパク質の異常の原因は、「c-kit遺伝子の突然変異」であると報告されています。この遺伝子異常によるタンパク質の変異がGISTの原因です。しかし、この遺伝子変異の原因はいまだに分かっていません。GISTでは75〜85%にc-kit遺伝子変異がみられると報告されています。
遺伝
c-kit遺伝子の変異が原因となっている多発性GISTの家系が今までに30以上報告されています。このような家系の方では、GISTが多発するため注意が必要です。
神経線維腫症1型
神経線維腫症1型(レックリングハウゼン病)はカフェ・オ・レ斑、神経線維腫という皮膚・皮下の病変を特徴とする遺伝性の病気です。この神経線維腫症1型の患者の一部にGISTを合併することが報告されています。主に小腸にGISTが多発すると言われていますが、胃に発生することもあります。神経線維腫症1型の患者さんでは、GISTの合併が無いか、気を付けましょう。
Carney-Stratakis症候群、Carney triad
遺伝性のCarney-Stratakis症候群と非遺伝性のCarney triadでは、SDHBたんぱくの発現欠失を示す胃に限局するGISTがみられます。これらの病気を持つ方は、GISTの合併に注意が必要です。
GIST(消化管間質腫瘍)ができやすい部位
GISTは消化管のどこの部位でも起こり得ます。最もGISTが発生しやすい部位は、胃です。発生部位で次に多いのは小腸、大腸と続きます。食道は比較的稀と言われています。
GIST(消化管間質腫瘍)の検査法
便潜血検査
便潜血検査は便の一部を採取して検査に提出し、便の中に血が混じっているかを調べる検査です。GISTの症状の一つに消化管からの出血が挙げられます。便潜血が陽性になる事だけでGISTを診断することはできませんが、異常に気付くことができます。簡易的な検査で、体に負担もかからないため、まず異常を見つけ出すために行うと良いでしょう。大腸がん検診はこの便潜血検査を用いることが多いです。便潜血が1度でも陽性と出た場合には、消化器内科で精密検査を行いましょう。
消化管内視鏡検査
食道や胃の所見を観察するためには上部消化管内視鏡検査、大腸の場合には下部消化管内視鏡検査を行うことで腫瘍を直接確認します。なお小腸のGISTが疑われた場合には、小腸内視鏡検査を行う場合もあります。また、病変を生検し、病理検査を行うことでGISTの確定診断がなされます。GISTは粘膜下にあるため、消化管内視鏡検査による生検では、病変の組織が採取できないこともあります。このような時には、超音波内視鏡検査を用いて病変を観察しながら腫瘍内部に針を刺して組織を採取します。
病理検査で腫瘍細胞の形態を観察し、免疫染色でKIT陽性あるいはDOG1陽性であればGISTと診断します。
CT検査、MRI検査
腫瘍の大きさや場所、周囲への広がり、転移の有無などを調べるためにCTやMRIなどの画像検査が有効です。造影剤を使用して検査をすることで、腫瘍をより明確に区別することができ、また転移していないかを調べることも可能です。
GIST(消化管間質腫瘍)の治療法
転移のないGISTでは腫瘍の大きさと核分裂像の数を組み合わせにより再発リスクが分類されます。低リスクであれば腫瘍が切除できれば経過観察となりますが、高リスク群では術後に薬物療法を追加します。転移、切除不能、再発があるものでは、基本的には薬物療法が選択されます。
外科的手術
GISTは胃がんや大腸がんと比較して周囲の臓器へ浸潤したり、リンパ節へ転移したりすることは稀と言われています。そのため、転移がなく、腫瘍を完全に切除することできる場合には、完全に取りきることで完治が期待できます。また、周囲への浸潤やリンパ節への転移がなければ臓器の機能を温存するために部分切除が行われます。
薬物療法
転移があるもの、局所病変が進行していて取りきれないもの、再発例は薬物療法が第一選択となります。また、手術を行ってもハイリスク群である場合は薬物療法を追加します。薬物療法は基本的に分子標的治療薬のイマニチブを服用することが多いです。しかし、この薬剤が効かない場合には他の薬を使用することもあります。
「GIST(消化管間質腫瘍)」についてよくある質問
ここまでGIST(消化管間質腫瘍)について紹介しました。ここでは「GIST(消化管間質腫瘍)」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
GIST(消化管間質腫瘍)はがんなのでしょうか?
和田 蔵人 医師
GISTは筋肉層に発生した悪性の腫瘍です。いわゆる「がん」は上皮細胞から発生した悪性腫瘍を指しますが、GISTは上皮細胞由来のがんではありません。この意味ではGISTはがんではありませんが、一般的には悪性腫瘍を「がん」ということが多いため、広い意味では消化管の筋肉層に発生したがんと言っても良いでしょう。
GIST(消化管間質腫瘍)は完治するのでしょうか?
和田 蔵人 医師
GISTは低リスク群で、切除が可能であれば生命予後は良い病気です。完治も見込めると考えられます。しかし、高リスク群では再発や転移の可能性が高いため注意が必要です。
編集部まとめ GISTは気になる症状があれば消化器内科を受診しましょう
GISTは胃や腸などの消化管壁の粘膜の間葉系細胞から発生した悪性腫瘍です。非常に稀ながんです。限局性であり、大きさが小さく、核分裂像の数が少なければ低リスクと考えられ、生命予後も非常に良いと言われています。しかし、高リスク群の場合には再発や転移の確率が高くなり、生命予後も低くなります。GIST自体症状があまりないことも多く、見つけにくいがんの一つです。GISTで起こりうる症状としては、消化管出血や吐き気、腹痛、おなかのしこりなどです。これらの症状があり、持続する場合には早めに消化器内科を受診しましょう。
「GIST(消化管間質腫瘍)」と関連する病気
「GIST(消化管間質腫瘍)」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
消化管に発生する病気はいずれも症状が似ていることが多く、区別がつきづらいです。出血や腹痛、吐き気などの症状が持続する場合には早めに消化器内科を受診して相談をしましょう。
「GIST(消化管間質腫瘍)」と関連する症状
「GIST(消化管間質腫瘍)」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
GISTは初期では症状が出づらく、わかりにくい病気です。進行すると上記の様な症状が認められます。このような症状がみられた場合には、消化器内科を受診して相談をしましょう。