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「小腸がん」を発症すると現れる症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?

 更新日:2023/03/29
「小腸がん」を発症すると現れる症状・原因・発症しやすい人の特徴はご存知ですか?

消化器にできるがんといえば食道がん・胃がん・大腸がんなどを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。

実は、小腸にできる小腸がんという病気もあります。消化器系のがんの中では発生頻度が低く、希少がんに分類されます。

あまり聞きなれない名前のがんですが、小腸がんは早期発見が難しいため注意が必要ながんのひとつなのです。

今回は、小腸がんの症状・原因・治療法などについて解説していきます。
お腹に不調を抱えている方や小腸がんについて気になる方は、ぜひ参考にしてください。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

プロフィールをもっと見る
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

小腸がんとはどんな病気?

お腹をおさえる男性

小腸がんとはどんな症状がみられる病気なのでしょうか?

小腸がんは消化器系のがんの中でも数%と発生頻度が低く、希少がんに分類されるがんです。初期には目立った自覚症状がほとんどなく、進行すると腹部膨満感・腹痛・悪心・食欲不振・食後の腹痛・貧血・潜血便・体重減少などがみられるようになります。
さらに、がんによって胆汁の出口がふさがれた場合には黄疸がみられることもあります。便秘や下痢が続く・排便時に痛みがある・食欲がない・倦怠感がひどいなどといった体調不良が続く場合には注意が必要です。

小腸がんの原因はなんですか?

小腸がんの原因は、これまでのところはっきりとは分かっていません。リスク因子として知られているのは、潰瘍性大腸炎やクローン病などの自己免疫疾患です。
また、家族性大腸腺腫・リンチ症候群などの遺伝的な因子も小腸がんのリスクを高めるとされています。がん全体としては喫煙・過度の飲酒・食生活の乱れ・運動不足・体格による影響などによってがんのリスクが高まるとされるため、生活習慣にも注意が必要です。

小腸がんにも色々なタイプがあると聞いたのですが…

小腸がんの種類には複数あります。組織型によって、神経内分泌腫瘍・腺がん・悪性リンパ腫・肉腫(GIST・平滑筋肉腫)などに分類されます。この中で一番頻度が多いとされているのが神経内分泌腫瘍であり、次に多いとされているのが腺がんです。
また、小腸は十二指腸・空腸・回腸の3つの部位に分かれており、どこの部位にできるかによっても呼ばれ方が異なります。小腸がんのうち、約45%が十二指腸にできる十二指腸がん・約35%が空腸にできる空腸がん・約20%が回腸にできる回腸がんです。

小腸がんになりやすい人の特徴があれば教えてください。

小腸がんの中でも、腺がんはクローン病・潰瘍性大腸炎・ポリポーシス・吸収不良症候群などの持病のある場合はかかりやすい可能性があります。
また、遺伝性の病気で大腸がんなどを発症しやすいとされる家族性大腸腺腫症・リンチ症候群・ポイツイエガース症候群などの方も注意が必要です。
ただし、これらの持病があるからといって必ずしも小腸がんを発症するわけではないため過度に心配しすぎず、気になる症状がある場合には医師に相談しましょう。がん全般では喫煙・飲酒・生活習慣・感染・化学物質などががんの要因になりうるとされています。
正しい生活習慣を心掛けることで予防できる可能性もありますので、飲酒・喫煙・食事内容の見直しなどを行いましょう。

小腸がんのリスクや診断・検査方法

診断書と聴診器

小腸がんは自覚症状があまりないと聞いたのですが…

小腸がんは、初期には自覚症状が表れにくいといわれています。そのうえ、十二指腸より奥の部位は内視鏡が届かないため、内視鏡検査でも発見が難しいのが現状です。
症状が進んでいくと、次第に腹部の膨満感・悪心・食後の腹痛・出血(血便)・貧血・黄疸などの症状が表れることがあります。何らかの症状が出てきた時には、すでにある程度まで病状が進行していると考えられます。
初期症状がほとんどないことから、早期発見が難しいがんだといえるでしょう。

小腸がんが進行してしまうとどのようなリスクがありますか?

小腸がんの発見が遅れて進行すると、リンパ節やほかの臓器にがんが転移してしまう可能性があります。初期は無症状であることが多いため、症状が出た時にはすでに転移が起こっているケースもあるでしょう。
また、がんが大きくなると胆汁の出口がふさがり、黄疸が出ることもあります。自覚症状からの早期発見が難しいため、定期的に健康診断を受け、異変に気付けるように常に注意が必要です。

小腸がんの診断ではどのような検査を行いますか?

小腸がんの診断を行うための検査では、内視鏡検査が行われます。ただし、十二指腸よりも奥の部位は通常の内視鏡では検査ができません。そのため近年では、カプセル内視鏡検査やダブルバルーン内視鏡が用いられるケースもあります。
カプセル内視鏡検査をする際には、がんで小腸の狭いところに滞留しないように、あらかじめダミーのパテンシーカプセルを行います。そのほか、貧血の有無や腫瘍マーカーなどを調べる血液検査・CT検査などが実施されます。

小腸がんの生存率はどのくらいですか?

小腸がんは病気の進行状況によって生存率が変わるため注意が必要です。小腸がん(腺がん)の5年生存率は、ステージⅠの場合で80.8%・ⅡAの場合85.8%・ⅡBの場合77.8%・ⅢAの場合51.6%・ⅢBは20.8%だとされています。
こちらは1994~2014年に国立がん研究センター中央病院での手術治療で完全切除できた患者のデータです。ステージによって生存率に差があることがわかります。

小腸がんの治療方法

医者、医師、Doctor

小腸がんではどのような治療を行うのでしょう?

小腸がんの病期はステージⅠからステージⅣに分類されますが、ステージⅢまでの場合の主な治療法はがんの病巣の切除です。
ステージⅠで病巣が奥深くに入り込んでおらず、内視鏡で対応できる場合には内視鏡による切除が行われます。内視鏡が届かない場合やステージⅡ・Ⅲの場合などは外科的手術で病巣を摘出するのが一般的です。
このとき、周りのリンパ節を含めて切除します。がんがすでにほかの臓器に転移してしまっているステージⅣの場合、外科的手術は行われません。抗がん剤を用いて全身に対する化学療法が行われます。

小腸がんは再発することはありますか?

小腸がんは、一度治療を行っても再発することがあります。しかも、胃がんや大腸がんなどほかの消化器系のがんに比べて再発のリスクが高いと考えられているのです。
そのうえ、小腸腺がんは症例が少ないこともあり、根治手術後に再発を防ぐ治療法などもまだ確立されていないのが現状です。再発を防ぐために、医師の指示に従って経過観察をしっかり行うことが大事になってくるでしょう。

小腸がんの治療中の過ごし方で注意した方が良いことがあれば知りたいです。

小腸がんの治療中は、しっかりと睡眠をとりバランスの良い食事を心掛けるなど、規則正しい生活をするのが基本です。さらに、医師の許可が出たら、少しずつ軽い運動を行うようにして体を動かす習慣をつけましょう。
少しでも体調に気になる点があったり、治療に対する不安があったりする場合には、医師に相談するようにしましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

小腸がんは、消化器系のがんのなかでも頻度が低くまれなタイプのがんです。初期症状がほとんど出ないのが特徴で、早期発見は非常に難しいがんだといえるでしょう。
腹部膨満感・悪心・食後の腹痛・貧血・黄疸などの症状が表れたらある程度進行していると考えられるため、すぐに病院を受診することをおすすめします。
最近お腹が苦しい・疲れやすくなった・食欲がなくなり体重が減ったなどという場合は、「このくらいなら大丈夫」などと自己判断してしまうのは危険です。早めに検査や医師の診断を受けるようにしましょう。

編集部まとめ

公園で寄り添うシニア夫婦1
膨満感があってお腹が苦しい・食欲がない・血便が出るといった症状があると、胃腸の病気ではないかと不安になる方も多いでしょう。

胃腸の病気と聞いて、真っ先に思い浮かぶのががんだという方もいるかもしれませんね。
消化器系のがんには食道がん・胃がん・大腸がんなどがありますが、小腸にできるがんもあります。

小腸がんは希少がんに分類されるほど、頻度の低いがんのひとつです。
小腸がんは初期症状がほとんどないことが多く、早期発見が難しいのが特徴です。

発見が遅れるとほかの臓器に転移してしまう危険もあるため、少しでも体調の異変があったら病院を受診しましょう。

小腸がんが十二指腸よりも奥にある場合、一般的な内視鏡では発見が難しいケースもあります。
普段から健康診断を受け、早めに異変に気付けるようにしましょう。

また、小腸がんに限らずがんの予防には正しい食生活や生活習慣も非常に大事です。過度な喫煙・飲酒を控え、適度な運動や十分に睡眠をとることも意識してください。

この記事の監修医師