「小児がんが治る確率」はどのくらいかご存じですか?治療後の生活も医師が解説!


監修医師:
西田 陽登(医師)
目次 -INDEX-
おもな小児がんの種類
小児がんにはさまざまな種類があります。大人のがんと比べて、子どもでは白血病や脳腫瘍などの割合が高く、逆に大人ではほとんど見られない希少ながんも含まれます。以下に主な小児がんの種類を紹介します。
白血病
白血病は血液のがんで、小児がんで最も多い疾患です。化学療法を中心とした治療によって、多くの場合は治癒が可能です。脳腫瘍
脳腫瘍は脳に発生する腫瘍で、小児がんの約3割を占めます。頭痛や嘔吐、視力の異常などをきたし、治療は腫瘍摘出の手術と必要に応じた放射線治療や化学療法を行います。リンパ腫
リンパ腫はリンパ節などリンパ組織にできるがんで、リンパ節の腫れなどで気付かれます。化学療法や放射線療法がよく効き、多くの症例で寛解状態になることが期待されます。胚細胞腫瘍
胚細胞腫瘍は、精巣や卵巣など将来生殖細胞になる細胞から発生する腫瘍です。小児では卵巣や精巣、またはお腹や胸の中央部にできることがあります。発生頻度は高くありませんが、化学療法と手術で治療し、多くの場合は治癒が期待できます。神経芽腫
神経芽腫は交感神経のもとになる細胞から発生する腫瘍で、副腎や神経節に生じます。お腹のしこりなどで気付かれます。早期であれば治りやすいですが、進行例では集中的な治療が必要になることがあります。軟部腫瘍
軟部腫瘍は筋肉や脂肪などの軟らかい組織から発生する悪性腫瘍です。小児では横紋筋肉腫が代表的です。発生部位によりますが、しこりや痛みなどの症状が現れます。治療は手術による腫瘍切除と、化学療法、放射線療法の組み合わせで行います。骨腫瘍
骨腫瘍は骨に発生する悪性腫瘍で、小児では骨肉腫などが代表的です。思春期に好発し、主に脚や腕の骨に発生します。治療は腫瘍の切除術と術前術後の化学療法を組み合わせるのが基本です。その他の小児がん
上記以外にも、網膜芽細胞腫、腎芽腫、肝芽腫などがあります。いずれも発生頻度は低い疾患ですが、適切な手術・化学療法によって治癒が期待できます。がんの種類別小児がんの生存率
小児がんの治療成績を知る指標として生存率があります。生存率とは、診断から一定期間(通常5年)経過した時点で生存している割合のことです。小児がんでは5年生存率が治療成績の目安としてよく使われ、5年経過後に生存していればその後も元気に過ごせる可能性が高いと考えられます。実際、小児白血病の5年生存率88.4%に対し10年生存率は86.2%、脳腫瘍も5年73.5%に対し10年71.5%と、5年以降ほとんど低下していません。
日本における主な小児がんの5年生存率は次のとおりです。
- 白血病:約88%
- リンパ腫:約91%
- 脳腫瘍:約75%
- 神経芽腫:約79%
- 軟部腫瘍:約79%
- 骨腫瘍:約70%
- 胚細胞腫瘍:約97%
- その他(網膜芽細胞腫・腎芽腫・肝芽腫など):おおむね85~95%
がんの種類別小児がんの治癒率
治癒率とは、治療によって病気が完全に治る割合のことです。小児がんの場合、長期生存できれば実質的に治癒したとみなせるため、5年生存率が治癒率の目安になります。現在、医療の進歩により小児がん全体の治癒率は70~80%に達しているといわれています。
がんの種類別に見ると、白血病やリンパ腫は治癒率が特に高く、化学療法や骨髄移植の発展によりほとんどの場合治すことができるようになりました。その他の多くの小児がんでも高い治癒率が達成されています。一方、神経芽腫の高リスク例や一部の脳腫瘍などは再発しやすく治療が難しいですが、決して治らないわけではありません。
小児がんが治癒した後の生活
小児がんを克服した後、お子さんは徐々に日常生活へ戻っていきます。治療後の長期経過観察が重要で、定期的に検査や診察を受けて経過を見守ります。小児がん治療の影響で、後になって現れる可能性のある症状を晩期合併症といいます。代表的な晩期合併症には成長発達への影響、臓器機能の障害や、続発腫瘍などがあります。ただし、全員に起こるわけではなく、治療内容や年齢によってリスクは異なります。
また、治癒後は体力の回復に合わせて、学校や家庭での生活を段階的に再開します。入院中に学校を長く休んでいた場合も、院内学級や在宅学習支援などで学業をサポートしてもらえます。主治医や学校と連携し、お子さんのペースで無理なく復学していきましょう。
小児がんについてよくある質問
ここまで小児がんを紹介しました。ここでは「小児がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
小児がんの治療による合併症はありますか?
はい、あります。治療中および治療後には副作用や合併症が生じることがあります。特に治療終了後に現れる晩期合併症として、成長発達への影響や臓器機能の低下、二次がんなどが報告されています。これらの合併症は全員に起こるわけではなく、治療法の工夫や長期経過観察によって多くは対処可能です。
小児がん患者さんは成人してからがんになる確率が高くなりますか?
一般的に、やや高くなります。小児がんを経験した方は、治療の影響や体質により二次がんのリスクが一般の方より高いとされています。例えば、放射線治療を受けた部位に将来新たながん(甲状腺がんなど)が発生しやすくなり、一部の抗がん剤は白血病の発症リスクを高めます。とはいえ、二次がんのリスクが上がるといっても必ず発症するわけではありません。多くの小児がんサバイバーはその後に新たながんを発症せずに過ごしています。また、定期検査を受けることで、万一新たながんが見つかっても早期に対応が可能です。過度に心配しすぎず、主治医の指示するとおりの定期受診を続けていけば、大人になってからも安心して生活できるでしょう。
まとめ
小児がんは子どもや家族にとってつらい病気ですが、決して治らない病気ではありません。現在では約7~8割の患者さんが治癒し、お子さんは元気に成長できるようになっています。治療法の進歩で成績が向上し、医療チームも長期にわたりお子さんを支えてくれるでしょう。本記事では小児がんの治る確率に関して概論的な解説をしていますが、個々の治る確率は全身状態や病期などによって異なります。本記事を読むことで、前向きな考えにつながれば幸いです。
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