「小児がんの入院期間」は?治療費の目安と療養生活のポイントも医師が解説!

お子さんががんと診断され、言葉を失われた方も少なくないのではないでしょうか。
小児がんの治療では長期の入院生活を送ることになり、本人はもちろんご家族にとっても大きな試練となります。
ほとんどが15歳未満の子どもに発生する小児がんは大人のがんとは性質が異なり、より早く進行するのが特徴です。
しかし治療法は日々進歩しており、手術、抗がん剤による化学療法や放射線療法などを組み合わせることで約7〜8割のお子さんが回復に向かっています。
この記事では診療の流れや入院期間の目安、治療費、療養中の生活の大切なポイントまで皆さんの疑問に寄り添いながら詳しく説明していきます。

監修医師:
山本 康博(MYメディカルクリニック横浜みなとみらい)
東京大学医学部医学科卒業 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医 日本内科学会認定総合内科専門医
目次 -INDEX-
小児がんとは
小児がんは主に子ども(15歳未満)がかかるさまざまながんの総称です。
国際小児がん分類によると小児がんの種類は主に12種類、詳しく分けると47種類あります。白血病、脳腫瘍、神経芽腫などが代表的です。
大人のがんと異なり胃がんや肺がんなどはまれで、生活習慣が原因となることも少なく、専門的な知識と経験を持った医師による治療が必要です。
小児がんの診療の流れ
ここでは小児がんの診療の流れを解説します。
小児がんの初期症状は特別なものがほとんどなく、乳幼児は自分から症状を訴えにくいため注意が必要です。
受診
子どもの体調に異変を感じたら、まずは医療機関を受診しましょう。
小児がんの初期症状は発熱や頭痛、吐き気など一般的な風邪症状に似ていたり骨や関節が痛んだりと特有なものが少なく、普段通りに受診した時に診断されるケースもあります。
しかし小児がんは進行が早いため、症状が重かったり長く続いていたり、悪化がみられたりする場合には医療機関への相談が必要です。
検査・診断
医療機関ではがんの診断のためさまざまな検査を行います。
- 画像診断:レントゲンやCT検査、MRI検査などで腫瘍の大きさや広がりを調べます
- 血液検査:がんの種類や進行度の判断材料です
- 病理検査:生検や手術で採取した組織を顕微鏡で調べてがんの種類や性質を特定します
その他必要に応じて様々な検査が行われ、入院して行うこともあります。
治療
がんの種類や進行度、年齢や全身状態に応じて個別に治療計画が立てられ、複数の治療法を組み合わせた集学的治療が行われることが多いでしょう。
- 手術:腫瘍やその周辺組織を外科的に取り除きます
- 薬物療法:抗がん剤を使ってがん細胞を破壊する療法で、化学療法はこの一種です
- 放射線療法:放射線を照射してがん細胞を破壊します
- 造血幹細胞移植:大量の化学療法や放射線治療を行った後に造血幹細胞を移植し、血液細胞の再生を促す方法です
- 支持療法:がんや治療に伴う副作用や合併症を予防・軽減するための治療です
- 緩和ケア:がんによる心と身体のつらさを和らげます
治療の選択にはできる限り子どもの意志を尊重しましょう。セカンドオピニオンとして複数の医師の意見を聞くこともよいでしょう。
長期フォローアップ
小児がんの治療の後も、子どもの体調の変化や成長や発達への影響を確認するため長期的なフォローアップが必要です。
通院が数年から数十年に及ぶこともあります。
小児がんの入院期間の日数と治療費の目安
小児がんの入院期間や治療費はそれぞれの状況により多種多様です。ここでは入院日数と治療費の目安をお伝えします。
日数
小児がんの入院期間はがんの種類や治療法、それぞれの子どもの状態によって違い、数週間で退院できる場合もあれば数ヶ月から1年以上と入院期間が長くなることもあります。
一つの治療法だけではなく、手術や化学療法、放射線療法などいくつかの治療を組み合わせる場合も入院は長期化する傾向です。
また、治療後も入院を継続して経過をみることもあるでしょう。
治療費
小児がんの治療費は高度な知識と技術を必要とする治療を組み合わせることが多いため、高額になる傾向があります。
入院中の食事代や個室利用料なども費用に含まれるため考慮に入れておきましょう。
小児がんは小児慢性特定疾病に指定されており、20歳まで所得に応じて月額0〜30,000円の自己負担上限額が設定されています。
公的医療保険や高額医療費制度、お住まいの自治体の助成制度も併用し負担の軽減が可能です。
医療費の助成制度
小児がんの治療費負担を軽減するための医療費助成制度があります。
まず公的医療保険が適用されます。就学前までは2割負担で、小学生から69歳までは3割負担です。
次に高額医療費制度制度が適用されます。公的医療保険の自己負担額に対し、所得に応じた自己負担上限額が設定されます。
公的医療保険と高額医療制度で軽減された自己負担額に対して適用されるのが、小児慢性特定疾病医療費助成制度です。
長期にわたり高額な治療を必要とする子どもへの助成制度です。所得に応じた自己負担の上限額があり食費の一部も助成されます。申請には医師の診断書が必要で、お住まいの自治体役所が申請窓口となります。
さらに併用できるのが、乳幼児や子どもの通院や入院にかかる医療費の自己負担分を自治体が助成する、乳幼児(子ども)医療費助成制度です。
その他、ひとり親家庭等医療費助成や重度心身障がい児者医療費助成などの公的制度や、宿泊や交通費を支援するNPO法人など民間の団体もあります。
子どもが小児がんで入院する際の療養生活のポイント
小児がんの治療で子どもの主体性を尊重する関わりはとても重要です。
入院中の保育や教育の継続は、成長を続ける子どもへのサポートとなります。
⼦どもの主体性を尊重する
子どもの主体性の尊重は治療への意欲を高め精神的な成長を促すことにつながるためとても大切です。
子どもの治療内容への理解と納得が自分の状態に対する漠然とした不安を軽減し、治療に前向きに取り組むきっかけとなります。
入院中も保育・教育を継続する
小児がん治療のため入院している間も子どもが成長・発達を続けられるように、保育や教育の継続が重要です。
- 院内学級・訪問学級:院内学級や訪問学級が設置され、入院中の子どもが年齢や発達段階に応じた教育を受けられます
- 保育士の配置:医療保育士は医療の知識を持ち子どもの成長をサポートします
- 遊びの提供:子どもの成長には遊びが不可欠です
短期間の入院では、通学している学校とのつながりを持ちましょう。
医師や看護師に相談しやすい環境を整える
医師や看護師に相談しやすい環境だと意思疎通がスムーズになります。そのために子どもと家族、医療チームとの信頼関係を築くことが大切です。
医療者側は、子どもと家族が病状や治療を十分理解できるようわかりやすく説明し、質問や不安に耳を傾ける姿勢を持つことが必要です。
小児がんの入院期間についてよくある質問
ここまで小児がんの治療の流れや入院期間、治療法や療養生活のポイントを紹介しました。ここでは小児がんの入院期間と注意すべきことについてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
小児がんでは何日くらい入院しますか?
山本 康博(医師)
小児がんの入院期間はがんの種類や治療法などによって大きく異なるほか、進行度や副作用の程度によっても変動し、数週間から1年以上に及ぶケースもあります。退院後も体調変化や合併症などを確認するため、定期的な通院や検査が必要です。
入院中に注意すべきことがあれば教えてください。
山本 康博(医師)
入院中は感染症予防に努め、体調の変化に注意しましょう。また、入院生活はお子さんとご家族に大きなストレスを与えるため、つらさを和らげる精神的なケアも大切です。入院中もお子さんの発達は続いています。体調に合わせて遊びや学習を取り入れましょう。
編集部まとめ
小児がんの治療は長期にわたる場合が多く、入院期間も長くなる傾向があります。
治療費も高額になりますが、医療費助成制度を積極的に活用し負担を減らしましょう。
また入院中の療養生活では子どもの主体性を尊重し、保育・教育の継続、医療チームとの連携が重要となります。
医療チームや地域社会のサポートを受けながら、子どもたちが安心して成長できる環境を整えることが大切です。
小児がんと関連する病気
「小児がん」と関連する病気は1個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 晩期合併症
晩期合併症とは小児がんの治療後数ヶ月から何年も後に現れる可能性のある身体的または精神的な影響のことで、治療の種類や量、年齢やがんの種類などによって現れる症状や程度が異なります。例えば成長や発達への影響や二次がん、心臓や肺の機能障害または腎臓の機能障害などです。
小児がんと関連する症状
「小児がん」と関連している、似ている症状は6個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
いつもと違う様子が続いている時は、医療機関を受診しましょう。
参考文献