「胃がん」を発症すると「どれくらい体重は減少」する?医師が徹底解説!
胃がんを発症するとどれくらい体重は減少する?Medical DOC監修医が胃がん術後の体重減少・初期症状・初期症状に気が付きにくい原因・なりやすい人の特徴・予防法などを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)
目次 -INDEX-
「胃がん」とは?
胃がんは胃の内側の粘膜にがんが発生したものです。胃壁の外側に向かって進行していきます。日本人は胃がんの発生が多く、「令和2年全国がん登録罹患数・率報告」によると、部位別の罹患数で胃がんは第3位です。近年、早期胃がんで発見されることが多くなり、死亡率が低下しています。早期で発見することが非常に大切であるため、胃がんの症状を理解し、早期に発見することが大切です。
胃がんを発症するとどれくらい体重は減少する?
がんを発症すると体重減少が起こりやすいと言われています。これは、がんによってエネルギーが消費されるために自然と体重が減ってしまうことや、がんの進行により炎症が起こり、骨格筋などを減少させたり、食欲を低下させる状態をひきおこすからです。このような状態を「悪液質」といいます。このような悪液質では半年で体重の5%以上の減少が起こることがあります。胃がんの場合には、食事の通過経路で異常が起こります。症状として吐き気で食欲が低下することもあったり、がんができた部位によっては通過障害をきたすこともあるため、さらに体重が減少してしまう可能性が高くなります。
意図せず体重が減少している場合には注意が必要です。何かしら病気が隠れている可能性があります。何科にかかるか迷う場合には、内科で相談をしてみましょう。また、吐き気や胃痛などの消化器症状を伴う場合には消化器内科を受診して相談をしてみましょう。
胃がんの術後はどれくらい体重が減少する?
胃がんの術後は術前の体重より10%程度減少する方が多いです。手術の術式により体重減少の程度が異なります。十二指腸につながる幽門側胃切除や幽門保存胃切除と比較し、口側にある噴門側胃切除や全摘術ではより体重減少が大きくなります。体重減少は術後1~3か月程度で最も多く現れ、半年から1年たつと徐々に体重が増えていきます。元の体重までは戻らないことが多いですが、栄養のあるものを少しずつ取り、体調が問題なければあまり心配する必要はありません。
胃がんの前兆となる初期症状
胃の痛み
胃はみぞおちの辺りにあります。胃がんが発生すると、みぞおち辺りの痛みが生じることがあります。しかし、胃炎などでも同様の症状が起こるため、胃の痛みのみで胃がんの診断はできません。胃の痛みの症状がある場合には消化器内科を受診しましょう。ピロリ菌の感染に伴う胃炎や胃・十二指腸潰瘍の可能性もあります。この場合、放置することで胃がんが発生する可能性もあるため、除菌を検討しましょう。
吐き気・食思不振
胃がんが進行すると、吐き気が起こり食欲が低下することもあります。消化の良いものを食べて様子を見て、症状が持続するようであれば消化器内科を受診しましょう。
貧血
胃がんの表面は出血しやすいため、出血が持続すると徐々に貧血となることもあります。通常出血すると便に血が混ざるようになりますが、見た目ではっきりしないことも少なくありません。健康診断や血液検査で偶然貧血が見つかることもあります。貧血を指摘された場合には、まず内科で相談をしてみましょう。
黒色便
胃がんからの出血の量が多い場合、出血した血液が胃酸により酸化され黒っぽい便の症状がみられることもあります。黒っぽい便がみられた場合、胃や十二指腸からの出血の可能性が考えられます。早めに消化器内科を受診しましょう。ふらつきなどの症状が出ている場合は特に早めの受診が必要です。
体重減少
胃がんが進行して、胃痛や吐き気などが起こると食事量が低下して体重が減少することもあります。また、がんが発生すると癌細胞がエネルギーを消費するために食事を摂っていても体重が減ってしまうこともあります。ダイエットをしているわけでもないのに体重が減少し続けるときには、何か病気が潜んでいる可能性があります。内科で相談をしてみましょう。
胃がんの初期症状に気が付きにくい原因
胃がんの初期症状は気が付きづらいことが多いです。この理由について解説いたします。
症状がない
胃がんの初期では症状が無いことも少なくありません。そのために胃がんに気が付きにくいです。胃がん検診など行うことで胃がんを早期に気つけることができます。定期的に胃がん検診を受けましょう。
他の病気と区別がつきにくい
胃がんの症状は胃痛、吐き気、食思不振、黒色便など胃炎や胃・十二指腸潰瘍などの他の消化器疾患と区別がつきづらいです。胃炎だろうと自己判断して放置してしまうことも考えられます。これらの症状が持続する場合には、自己判断せずに一度消化器内科を受診して相談してみましょう。
胃がんになりやすい人の特徴
ピロリ菌の感染
ピロリ菌の感染は胃がんの最大の危険因子です。国内の報告では、ヘリコバクターピロリ菌感染陽性者の胃がんのリスクは陰性者の5.1倍と報告されています。ピロリ菌は口から感染します。特に感染しやすいのは乳幼児期です。人から人へは経口感染し、環境因子や家庭内感染などいくつかの感染経路が考えられます。最近は親世代の感染率が低下し、衛生環境も改善しているため子供の感染率は低くなっています。
喫煙
喫煙は胃がん発症の危険因子となります。日本人における研究で、喫煙者では非喫煙者に比べて胃がんのリスクが約1.6倍高くなるという結果でした。喫煙は、胃がん以外にもさまざまながんの危険性が高くなります。また、心血管系障害の危険性も喫煙によって高くなります。さまざまな病気のリスクとなるため、禁煙することをお勧めします。
高塩分食品
塩蔵食品(塩蔵魚類、干物、たらこなどの魚卵)が胃がんのリスクになることが報告されています。日本人は塩分の摂取量が多いです。また、日常的に塩蔵食品の摂取も多いです。これらの塩蔵食品を控えることが胃がんの予防にもなり得ます。
アルコールの多量飲酒
多量飲酒は胃がんのリスクと言われています。男性では、アルコールをまったく飲まない人と比較して、一日のアルコール摂取量がエタノール換算で23~46gの群では1.09倍、46~69gで1.18倍、69~92gで1.21倍、92g以上で1.29倍とアルコール摂取量が増えるほどリスクが高くなると報告されています。女性では有意な差がみられませんでしたが、これはお酒を多く飲む人が少ない影響が考えられ、女性でもアルコールを多く飲むことはリスクとなると考えられます。アルコールは適量にとどめる様にしましょう。
胃がんを予防する可能性の高い食べ物・食生活
禁煙・節酒
喫煙やアルコールの多飲は胃がんの危険因子です。そのため、胃がんを予防するためには、禁煙、節酒が大切です。
バランスの良い食事
塩蔵食品を減らすことも胃がんの予防に大切です。また、肥満が胃がんに影響している可能性もあり、食物繊維の摂取量が多いと胃がんが少ない可能性があるとの報告もされています。このように適度なカロリー摂取、バランスの良い食事を摂ることが胃がんの予防に有効であると考えられます。
適度な運動
活動量が多いほどがんにかかる危険性が低下すると報告されています。部位別では、女性で胃がんのリスクが高く、身体活動量が多いほど有意にリスクの低下がみられました。胃がんの予防のためにも肥満を予防し、適度な運動をすることも大切です。
胃がんの予防法
ピロリ菌の除菌
ピロリ菌の感染は胃がんの危険因子です。ピロリ菌を除菌することで胃がんの発生や再発を減少させることができると言われています。また、胃がん以外にも胃潰瘍や十二指腸潰瘍の発生が抑えられます。ピロリ菌の感染が分かったら、胃がんを予防するためにも除菌を検討しましょう。
定期的な胃癌検診
胃がんは早期で発見することが大切です。そのためにも定期的な胃がん検診を受けることがとても大切です。
「胃がんの体重減少はどれくらい?」についてよくある質問
ここまで胃がんの体重減少などを紹介しました。ここでは「胃がんの体重減少はどれくらい?」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
何キロ以上瘦せると胃がんを疑いますか?
和田 蔵人 医師
胃がんに限らず、半年間で体重の5%以上の減少[陽伊1] が起こった時には癌による体重減少の可能性があり注意が必要です。特に胃がんや食道がんなど消化器系のがんでは食事が摂りづらくなることにより、体重減少が現れやすいと言われています。何キロ以上という基準はありませんが、ダイエットなど意図的に減量をしている場合以外で体重減少がある場合や、吐き気などで食欲がなくなり体重が減少する時には胃がんも含め何かしらの病気がある可能性があるため、内科や消化器内科を受診しましょう。
胃がんを発症すると食欲はなくなりますか?
和田 蔵人 医師
胃がんを発症し、進行すると胃痛や吐き気が起こり食欲がなくなる可能性があります。また、胃がんのできた部位によっては通過障害をきたすこともあります。食欲が低下し、長引く時には消化器内科を受診して相談しましょう。
胃がんを発症すると瘦せ方に特徴はありますか?
和田 蔵人 医師
胃がんとなると、食事がとりづらくなる事やがんそのものによりエネルギーが消費されることで食事を普段通りとっていても体重が減ってしまいやすいです。このため、普通のがんと比較しても体重減少が起こりやすく、体重の減少の程度が多くなる可能性が考えられます。
編集部まとめ 体重が知らずに減っている場合、胃がんの可能性も。消化器内科を受診しよう
意図的に食事制限をしていないにも関わらず体重が減っている場合、注意が必要です。がんや甲状腺疾患、糖尿病など何かしらの病気が潜んでいる可能性があります。この中でも胃がんは初期では症状が現れにくいため注意が必要です。胃がんでは吐き気や食欲低下などの消化器症状を伴うことも多く、体重減少もきたしやすいです。体重減少が意図せずみられた場合、気をつけなければなりません。このような時には、内科・消化器内科を受診して相談をしてみましょう。
「胃がん」と関連する病気
「胃がん」と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
胃がんと同様に体重減少を伴う可能性がある病気には上記の様なものが挙げられます。意図せず体重減少が認められた場合には何かしらの病気の可能性が潜んでいる可能性があります。医療機関を受診して相談しましょう。
「胃がん」と関連する症状
「胃がん」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 吐き気
- 体重減少
- 胃痛
- 黒い便
- 貧血
胃がんは初期では症状がみられないことが多いです。症状が進行するとこれらの症状がみられることがあります。しかし、症状のみでは他の病気と区別をつけることができません。胃がんは早期に診断することが大切です。これらの症状が持続する場合には早めに消化器内科を受診しましょう。