目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. コラム(医科)
  4. 「糖尿病」が巻き爪の原因になることをご存知ですか? 放置すると足切断の可能性も…

「糖尿病」が巻き爪の原因になることをご存知ですか? 放置すると足切断の可能性も…

 公開日:2024/05/10
「糖尿病」が巻き爪の原因になることをご存知ですか? 放置すると足切断の可能性も…

皆さんは「足の健康」について考えたことはありますか? 普段の生活において、足に注目することは少ないかもしれませんが、足の健康状態が損なわれると日常生活の質が著しく損なわれます。とくに「糖尿病」の人では、小さな切り傷や巻き爪を放置していると重篤な合併症につながる可能性もあると専門家は言います。一体どのようなケアや予防が必要なのでしょうか。足病変に詳しいTOWN訪問診療所城南院長の宇都宮誠先生に詳しく伺いました。

宇都宮 誠

監修医師
宇都宮 誠(TOWN訪問診療所城南院)

プロフィールをもっと見る
2002年東邦大学医学部卒業。2002年東邦大学医療センター大橋病院循環器内科、2008年京都桂病院心臓血管センター、2013年東京労災病院循環器内科など、高度先進病院で内科専門医・循環器専門医として経験を積む。心臓カテーテル治療を行うとともに、下肢の動脈硬化やフットケアを行う外来診療に従事。2020年より現職。日本内科学会専門医、日本循環器学会専門医、日本心血管インターベンション治療学会認定医、日本フットケア・足病医学会評議員。

なぜ巻き爪は起こるのか 原因を医師に聞く

なぜ巻き爪は起こるのか 原因を医師に聞く

編集部編集部

はじめに、巻き爪とはどのような爪の状態か教えてください。

宇都宮 誠先生宇都宮先生

巻き爪とは爪の両側面、もしくは片面が内側に巻いてしまうような変形が起こり、爪の下の皮膚を挟み込んでしまう状態です。

編集部編集部

巻き爪になってしまう原因は何ですか?

宇都宮 誠先生宇都宮先生

爪は本来巻いていく方向に生えています。しかし、足を踏み込むときの反発力で押し広げられて巻かないようになります。ですので、指の腹側からの適切な力がない場合に巻き爪になっていきます。加齢に伴う筋力の低下や歩行の減少、足趾・足部の変形が巻き爪の原因となります。爪白癬(つめはくせん)などが原因で爪が変形・肥厚してしまうことも巻き爪や陥入爪(かんにゅうそう)の原因となります。

編集部編集部

どのような人が巻き爪になりやすいのでしょうか? 糖尿病と巻き爪のなりやすさには関係がありますか?

宇都宮 誠先生宇都宮先生

幅の狭い靴やハイヒールを頻繁に履く人、体重過多の人、加齢や下肢麻痺による歩行荷重の減少が見られる人は巻き爪になりやすいといわれています。糖尿病患者は、足の神経障害や血流不良により足の問題を抱えやすく、これらの要因が巻き爪のリスクを高める可能性もあります。

巻き爪の症状と治療方法について知る

巻き爪の症状と治療方法について知る

編集部編集部

巻き爪はどのような症状が出るのでしょうか?

宇都宮 誠先生宇都宮先生

爪は内側に巻いていくので、物理的圧迫で痛みが出る場合があります。痛みや炎症がなければ治療の必要はありませんが、巻き爪が皮膚に食い込み、炎症や肉芽形成を起こす「陥入爪」の状態になることもあります。陥入爪の原因が巻き爪とは限りませんが、陥入爪の状態では痛みが強く、感染を起こす場合もあるため治療が必要となります。

編集部編集部

どのような状態や症状が出たときに治療が必要になりますか?

宇都宮 誠先生宇都宮先生

基本的には痛みが強い場合は治療の適応となります。また、陥入爪の状態となり食い込んだ皮膚から膿や浸出液が出る場合、肉芽が盛り上がって痛みが強い場合も治療が必要となるでしょう。見た目の問題で治療を希望される場合にはフットケアサロンで相談されるのが良いと思います。

編集部編集部

巻き爪はどのように治療するのか教えてください。

宇都宮 誠先生宇都宮先生

巻き爪を矯正する方法としては、プレートやワイヤーを用いる方法があります。専門的な知識を有するセラピストに治療をお願いしましょう。陥入爪の状態までなってしまった場合は、外科的な治療が必要となる場合もあります。食い込んでいる爪を除去し爪が生えてこなくなるような処置を施します。

放っておくと大変? フットケアと予防法とは

放っておくと大変? フットケアと予防法とは

編集部編集部

糖尿病患者は巻き爪になりやすいと聞いたことがあります。

宇都宮 誠先生宇都宮先生

その通りです。糖尿病の方は神経障害が起き、知覚神経や自律神経が障害されます。知覚神経が障害されると爪が食い込んで陥入爪の状態となっても痛みに気付きにくく放置されてしまう場合があります。

編集部編集部

糖尿病患者が巻き爪になると、どのようなリスクがあるのでしょう?

宇都宮 誠先生宇都宮先生

自律神経を障害されることで、汗や清潔環境のコントロールが困難となり感染しやすくなります。爪周囲炎から細菌の侵入を許し、感染が中枢側へ進展する場合も少なくありません。また、糖尿病の方は動脈硬化をきたしやすく、知らないうちに末梢動脈疾患(足の血流が途絶えてしまう病気)を併発している場合もあります。そのような場合、急激に下肢の壊疽の状態に陥り、下肢切断へ至ることもあります。

編集部編集部

自宅でもできるケアの方法はありますか? 糖尿病患者でとくに気を付けることがあれば教えてください。

宇都宮 誠先生宇都宮先生

大切なのは、「普段から爪のケアを適切におこなうこと」です。変形や肥厚、食い込みなどはないかよく観察してください。白濁して爪が肥厚してくる場合には、爪白癬の可能性もありますので医療機関に相談しましょう。

編集部編集部

巻き爪を予防する方法を教えてください。

宇都宮 誠先生宇都宮先生

自分の足にあった靴を履く、もしくは圧の測定をおこない、インソールを作成すると良いでしょう。また、その靴でよく歩くことが重要です。足を適切に使って、きちんとケアすることが巻き爪の予防につながります。巻き爪になりかけたときに深爪になるまで爪を切ってしまうと陥入爪になりやすいので注意しましょう。

編集部まとめ

巻き爪や陥入爪は、放置すると痛みや感染のリスクを高めるだけでなく、糖尿病患者にとっては末梢動脈疾患や下肢の壊疽といった重篤な合併症につながる可能性もあるとのことでした。こまめに見ることが少ない足の爪ですが、適切なケアと治療、予防は必要不可欠であることを詳しく解説して頂きました。本稿が読者の皆様にとって、ご自身の足のみならず、身近な人の足の健康を意識して頂くきっかけとなりましたら幸いです。

この記事の監修医師