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足潰瘍の原因1位は靴擦れ⁉ 放置すると足切断の可能性も…糖尿病患者のフットケアについて

 更新日:2024/05/13

糖尿病の方は、体重や血糖のコントロールと同じくらい、足のケアも大事だと言われますが、その理由をご存知ですか? また、医療機関で行われる糖尿病患者のフットケアにはどのようなものがあるか知らないという方も多くいらっしゃると思います。単なる靴擦れと侮ると足切断の可能性もある、糖尿病患者へのフットケアと正しい靴の選び方について内科医で日本フットケア・足病医学会認定師の井倉 和紀先生(西早稲田ライフケアクリニック 院長)にお聞きしました。

井倉 和紀

監修医師
井倉 和紀(西早稲田ライフケアクリニック)

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2006年聖マリアンナ医科大学医学部卒業後、東京女子医科大学糖尿病・代謝内科で糖尿病とフットケアを専門とした診療経験を積む。2023年9月、東京都西早稲田駅に「西早稲田ライフケアクリニック」を開院、院長となる。医学博士、日本内科学会総合内科専門医、日本糖尿病学会研修指導医、日本糖尿病学会糖尿病専門医、日本フットケア・足病医学会認定師。

病院で行うフットケアって? 医師が解説!

病院で行うフットケアって? 医師が解説!

編集部編集部

「フットケア外来」について教えてください。

井倉 和紀先生井倉先生

フットケア外来」は、足のトラブルに医療的な視点で対応する診療科です。タコやウオノメ、巻き爪や足水虫・爪水虫など、さまざまな足の悩みに対応することが可能です。耳慣れない方も多いかもしれませんが、「足病治療」「足病医」などはアメリカや諸外国でメジャーな分野として確立されています。

編集部編集部

例えばどんなケアが受けられますか?

井倉 和紀先生井倉先生

例えばタコ、ウオノメは、圧迫や摩擦などの刺激を繰り返し受けることで形成されるため、定期的に削る・切除する必要があります。さらに、再発を予防するために、必要な運動やストレッチを指導したり、適切な靴選びや中敷きを作成したりします。

編集部編集部

「適切な靴」とはどのようなものでしょうか?

井倉 和紀先生井倉先生

ヒールが高くない、靴底にクッション性があるなど、いくつかのポイントがあります(図参照)。最も大事なのは、それぞれの足の形に合っているということですね。

正しい靴

西早稲田ライフケアクリニック HPより

編集部編集部

爪についてはどのようにケアするのですか?

井倉 和紀先生井倉先生

足の爪には指先を保護してケガを予防するだけでなく、体重を支えて立位・歩行時のバランスをとりやすくするという重要な役割があります。爪の異常は、肥厚、巻き爪、爪水虫などさまざまありますが、それらの原因は主に間違った爪切りや指への過剰な力によるものです。爪の異常があると、自分で爪を切ることが難しくなるので、フットケア外来では専用のニッパーを使用して爪を切ったり、フスフレーゲモーターといった電動の爪やすりを使用して爪を削ったり磨いたりします。爪の異常だけでなく「自分で爪が切れない」と言った悩みの相談にも対応しています。

どうして糖尿病にフットケアが必要なの?

どうして糖尿病にフットケアが必要なの?

編集部編集部

「フットケア外来」は、どんな人でも受けられるのですか?

井倉 和紀先生井倉先生

どんな人でも受けられますが、足の状態やケアの種類によって保険が適用される場合とそうでない場合があります。とくに受診して欲しいのは糖尿病をお持ちの方です。

編集部編集部

なぜ、糖尿病患者にはフットケアが必要なのですか?

井倉 和紀先生井倉先生

主な理由として、糖尿病の合併症として神経障害と血流障害があり、それらの影響で靴擦れや巻き爪、熱傷、タコ(胼胝)、ウオノメ(鶏眼)、水虫(白癬)など足の皮膚病変を起こしやすいためです。また、神経障害の影響で末梢の感覚が鈍くなっているため、異常が起きても気づかないことが多い傾向にあります。

編集部編集部

気づかないまま放置するとどうなりますか?

井倉 和紀先生井倉先生

糖尿病の方はもともと、傷や火傷が治るのに時間がかかり重症化しやすい傾向にあります。それに加えて、発見や処置が遅れてしまうと、傷から細菌感染を起こしたり、足潰瘍となったりする可能性があります。さらにひどくなると、急速に進行して足の壊疽(腐ったようになること)を引き起こし、切断に至る場合もあるのです。

編集部編集部

切断になることもあるのですか?

井倉 和紀先生井倉先生

糖尿病患者さんや透析患者さんにおける下肢切断は、ほとんどの場合足の傷(足潰瘍)が治癒せず悪化した場合に行われます。治療には、さまざまな診療科の医師や看護師、理学療法士、義肢装具士などの多職種による「チーム医療」が必要になります。

医療機関での「フットケア」とは?

医療機関での「フットケア」とは?

編集部編集部

足潰瘍になった場合、具体的にどのようにケアしていくのですか?

井倉 和紀先生井倉先生

まず治療には足の血流が重要になるので、傷への血流を検査し、血流が悪ければ下肢カテーテル治療やバイパス手術、血管拡張剤などの薬物治療を早急に検討します。それと同時に、傷の治療(洗浄、軟膏を塗る)を行い、感染、炎症を合併していれば抗生剤治療を行います。さらに、栄養状態の改善や糖尿病の方は血糖コントロール、靴の選択、調整も行う必要があります。

編集部編集部

単なる足の傷でも、多くのケアが必要なのですね。

井倉 和紀先生井倉先生

そうなのです。また逆に、フットケア外来では足の相談をきっかけとして何か疾患がないかを調べることもできます。足のむくみから心不全、腎不全が見つかる、足の血流障害が隠れていたという例も少なくありません。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

井倉 和紀先生井倉先生

足潰瘍の原因で最も多いのは靴擦れです。ただの靴擦れと放置していると、取り返しのつかないことになってしまいます。だからこそ、糖尿病の方はもちろんのこと、現時点で疾患のない方もちょっとしたトラブルを放置せず気軽に相談してほしいです。長い人生、出来るだけ元気に自分の足で歩けるように、痛みやトラブルを我慢せずフットケアの専門家を受診することをお勧めします。

編集部まとめ

今回は医療機関でのフットケアについて、医師にお話を伺いました。足潰瘍の原因で最も多いのは靴擦れであることに驚きました。これから先の人生も自分の足で歩き続けるために、糖尿病の方やそうでない方も足のトラブルはまず医療機関に相談してみましょう。

医院情報

西早稲田ライフケアクリニック

西早稲田ライフケアクリニック
所在地 〒169-0075 東京都新宿区高田馬場1-1-1 メトロシティ西早稲田3F
アクセス 東京メトロ副都心線「西早稲田駅」 2番出口 徒歩1分
診療科目 糖尿病内科、一般内科

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