「6種複合免疫療法」の費用・治療できる「がん」はご存知ですか?医師が解説!

6種複合免疫療法とは?Medical DOC監修医6種複合免疫療法で治療できる疾患・メリット・デメリット・費用などを解説します。

監修医師:
山口 健(医師)
目次 -INDEX-
「6種複合免疫療法」とは?
免疫療法とは、免疫系ががんと闘うがん治療法の一つです。 免疫チェックポイント阻害薬や、T細胞移植療法、モノクローナル抗体、がん治療ワクチン、免疫系モジュレーターなどがあります。 6種複合免疫療法とは、がんや自己免疫疾患に対して複数の免疫療法を組み合わせるアプローチのことです。標準治療ではなく、補完医療として提供されることが多いです。T細胞移植療法の一種と考えらえますが、一部その他の免疫細胞を組み合わせている点で独自のものと言えます。 6種複合免疫療法では、ヘルパーT細胞、NK細胞、NKT細胞、キラーT細胞、γδT細胞、樹状細胞の6種類の免疫細胞を用います。 6種複合免疫療法は現在一部の医療機関で行われており、標準的な医学用語ではないことは注意しておきましょう。 方法としては、まず患者本人の血液を少量採取します。そして、厚生労働省の許可を受けた施設で細胞培養を行います。その後、6種の免疫細胞を取り出し、活性化・増殖させて投与します。 なお、現時点で医学的なエビデンスのある免疫療法として、免疫チェックポイント阻害薬が挙げられます。 がん細胞は、自分が免疫細胞から攻撃されないように、免疫細胞から逃れるような機構を持っています。 免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞が免疫から逃れる仕組みを解除し、免疫細胞(特にT細胞)ががんを攻撃できるようにする治療法です。すると、抗原提示細胞や腫瘍細胞に発現するリガンドからの免疫抑制のシグナル(ブレーキ)が入らないようになります。その結果、T細胞の活性化を持続させてがんを攻撃させる薬剤です。 今回の記事では、この6種複合免疫療法を含めた免疫療法について解説します。6種複合免疫療法で治療できる疾患
6種複合免疫療法は、一部(T細胞・NK細胞・NKT細胞型白血病/T細胞・NK細胞・NKT細胞型悪性リンパ腫)を除く、ほぼ全てのがんの治療に対応しています。 また、標準治療後に体に残ったがん細胞の抑制、再発・転移の予防にも用いられるとされています。 ここでは、免疫療法の一つである、免疫チェックポイント阻害薬において、保険適用の承認が下りている疾患についてもご紹介しましょう。メラノーマ(悪性黒色腫)
メラノーマ(悪性黒色腫)は、皮膚にできる悪性腫瘍です。メラニンという色素を作る、メラノサイトががん化したものです。 手術での治療が難しいメラノーマに対しては、免疫チェックポイント阻害薬である PD-1阻害薬や、CTLA-4阻害薬が用いられます。 患者の遺伝子変異や体力などに応じ、これらの免疫チェックポイント阻害薬と、低分子性分子標的薬などを組み合わせて治療を行います。非小細胞肺がん
肺がんは、肺を構成する肺胞や気管支の細胞ががん化したものです。 組織のタイプによって大きく小細胞肺がんと非小細胞肺がんに分けられます。 非小細胞肺がんに対しては、手術や化学療法が用いられます。免疫チェックポイント阻害薬は手術ができない進行した肺がんに対して適応があります。 肺がん遺伝子検査とPD-L1検査の結果に基づき、免疫チェックポイント阻害薬の使用が検討されます。 肺がん患者の中には、免疫チェックポイント阻害薬の効果が高いことが期待できるタイプの方がいます。その方に対しては、免疫チェックポイント阻害薬単独、または細胞障害性抗がん薬を併用した治療を検討します。胃がん
胃がんは、胃の粘膜の細胞ががん化したものです。 がんの深さや、リンパ節や他の臓器への転移の有無によって治療法が決まります。 がんが進行しており手術が行えない場合や、治療後の再発・転移が見られた際には化学療法が選択されます。免疫チェックポイント阻害薬は、HER-2陰性の方が初めて薬物療法をする際に抗がん剤と併用されることがあります。また、一度も免疫チェックポイント阻害薬を使ったことがない方の、何回目かの薬物療法の薬として選択されることもあります。特定のタイプの胃がんに対しては、免疫チェックポイント阻害剤の一つである抗PD‒1抗体ペムブロリズマブの有効性が高いとされています。6種複合免疫療法のメリット
それでは、6種複合免疫療法の利点として挙げられている点について解説します。さまざまながんに用いることができる
6種複合免疫療法を行っている医療機関の情報によれば、血液の腫瘍などを除いたほぼすべての塊のがん(固形がんといいます)に対して治療を行うことが可能です。標準治療(放射線治療や化学療法)と併用できる
がんの標準治療である放射線治療や化学療法と、6種複合免疫療法は併用できるとされています。採血量は少量
自分から採取する血の量は、30ccと少量で済みます。このため患者さんへの負担が少なくなります。6種複合免疫療法のデメリット
6種複合免疫療法のデメリットは以下のようになります。費用が高額
6種複合免疫療法は自由診療に分類されており、治療費が全額自己負担となります。さらに、治療費は1クールあたり約200万円と高額であり、継続的な治療が必要な場合には、さらに経済的負担が増大する可能性があります。 しかし、確定申告による医療費控除の対象となります。限られた医療機関での実施
6種複合免疫療法は専門的な技術を要するため、実施可能な医療機関が限られています。免疫過剰反応のリスク
免疫療法には、免疫過剰反応のリスクがあります。 例えば、免疫細胞から放出されるサイトカインという物質が過剰に放出されることで、以下のような症状が起こることがあります。これは、いわゆるサイトカインストームと言われる病態です。 ・熱 ・吐き気 ・頭痛 ・発疹 重症の場合、低血圧が下がってしまったり、呼吸困難に陥ったりする場合もあります。しかし、こうした事態はまれです。しかし、発生した場合には重篤化するリスクがあるため、適切な医療機関で治療を受けることが重要です。6種複合免疫療法の費用
6種複合免疫療法の費用について解説します。自費診療
6種複合免疫療法は基本的に自費診療となります。 6種複合免疫療法を行っている医療機関のHPによると、費用の一例は以下のようになるとされています。 ・初期培養費 16,500円(1クールごと初回のみ) ・治療費 324,500円(消費税込/1治療分) ・6回投与(1クール) 1,947,000円(消費税込) 自由診療となるため、治療費は全額自己負担です。 しかし、確定申告による医療費控除の対象となります。保険適用
6種複合免疫療法は現時点では保険適用とはなりません。6種複合免疫療法ができる病院はどれくらいある?
6種複合免疫療法は、全国の各提携医療機関で実施しています。 一方、6種複合免疫療法の提携医療機関がない県もあります 詳しくは、医療機関のHPを見たり、医療機関まで直接問い合わせてみると良いでしょう。「6種複合免疫療法」についてよくある質問
ここまで6種複合免疫療法などを紹介しました。ここでは「6種複合免疫療法」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
6種複合免疫療法の副作用について教えてください。
山口 健 医師
6種複合免疫療法は、患者自身の免疫細胞を活性化・増殖させて体内に戻す治療法であり、一般的に副作用は少ないとされています。 しかし、以下のような副作用が報告されています。 ・一過性の発熱:投与後に一時的な発熱が見られることがあります。 ・効果の個人差:治療効果には個人差があり、効果が見られない場合もあります。 ・培養過程の問題:免疫細胞の培養中に問題が発生した場合、再度採血が必要になることがあります。 ・アレルギー様症状:投与時にアレルギー反応のような症状が発生する可能性があります。 これらの副作用は一般的に軽度であり、患者の体への負担は小さいとされています。 しかし、治療を検討する際には、医師と十分に相談し、リスクとベネフィットを理解することが重要です。
編集部まとめ
今回の記事では、6種複合免疫療法について解説しました。 まだ研究段階の部分もありますが、今後のさらなる知見が期待されます。 今回の記事が、みなさまの参考になれば幸いです。「6種複合免疫療法」と関連する病気
「6種複合免疫療法」と関連する病気は14個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。循環器科の病気
- 悪性中皮腫
- 心臓肉腫
呼吸器科の病気
- 非小細胞肺がん
- 小細胞肺がん(進行例)
消化器科の病気
- 胃がん
- 肝細胞がん
- 膵がん(進行例)
- 大腸がん(転移性)
皮膚科の病気
- メラノーマ(悪性黒色腫)
泌尿器科の病気
- 腎細胞がん
- 膀胱がん
脳神経内科の病気
- 神経膠腫(グリオーマ)




