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「飲むと胃がんになる胃薬」はある?胃がんの原因や症状も医師が徹底解説!

 公開日:2025/01/23
「飲むと胃がんになる胃薬」はある?胃がんの原因や症状も医師が徹底解説!

飲むと胃がんになる胃薬はある?Medical DOC監修医が胃がんの原因・症状・胃がんになりやすい人の特徴・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

齋藤 雄佑

監修医師
齋藤 雄佑(医師)

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日本大学医学部を卒業。消化器外科を専門とし、現在は一般外科、消化管内視鏡検査、生活習慣病を中心に診療を行っている。現在は岩切病院、高砂内科・消化器科クリニックに勤務。
日本外科学会外科専門医。日本医師会認定産業医。

「胃がん」とは?

胃がんは、胃の粘膜にできる悪性腫瘍です。日本での胃がんの罹患率は2020年の統計において、大腸がん、肺がんに次いで3位と罹患率の高いがんとなっています。胃がんは、早期の段階では自覚症状がほとんどないため、早期発見、早期治療のためには定期的な検診が大切です。進行すると、胃の痛み、食欲不振、吐き気、体重減少などの症状が現れます。

飲むと胃がんになる胃薬はある?

胃がんは後述の通り、ヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)の感染が主な原因とされ、除菌によって発症を抑制できます。しかし一方、除菌後も胃がんを発症する患者が一定数おり、原因の解明が進められています。胃酸の分泌を抑える胃薬には条件によって胃がんとの関連が疑われているものがあります。
下記はピロリ菌除菌後、長期間の胃がんの発生率を検討した研究であり、特定の条件であることに留意する必要があります。また胃薬と胃がんの関係性については現在のところ研究段階であり、メカニズムなどは完全に解明されているものではありません。詳細はかかりつけの医療機関で医師にご相談ください。

プロトンポンプ阻害剤(PPI)

プロトンポンプ阻害剤 (PPI)は胃酸の分泌を抑える薬剤として長きにわたり、胃潰瘍や逆流性食道炎の治療の第一選択薬になっている薬剤です。香港のヘルスケアデータベースを用いた研究ではピロリ菌除菌後の63,000人余りを約7.6年の期間で観察したところ、PPI服用者は非服用者に対して胃癌のリスクが2.44倍という結果が示されました。さらに詳細な解析ではPPI使用による胃がんのリスクは用量依存的および時間依存的に上昇し、PPIを毎日使用する人は最も高いリスクが4.55倍高いことが報告されています。またPPIを3年以上毎日服用した患者は8.34倍とリスクが最も高くなることも示されました。胃がんのリスクが高くなる原因として、長期 PPI によって胃がんのリスクとなる胃粘膜萎縮が悪化し、それに伴う胃癌リスクが増加する可能性が懸念されています。

カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)

「カリウムイオン競合型アシッドブロッカー(P-CAB)」は世界に先駆けて2015年に日本で発売し、PPIより強い胃酸分泌抑制作用によりピロリ菌の除菌や胃潰瘍、逆流性食道炎などの治療に用いられています。2024年に東京大学と朝日生命成人病研究所の研究グループは、P-CABについて国内患者1100万人分の診療データから、約5万4千人のピロリ菌除菌患者のP-CAB服用者の胃がん発症リスクを調べました。胃がんリスクと関連しないとされるヒスタミン2型受容体拮抗薬(H2RA)の服用患者と比較したところ、P-CAB服用患者の方がH2RA服用患者よりも胃がんの発症リスクが高いことが統計的に示されました。また服用期間が長く、用量が多いほどリスクが上昇することも示されています。P-CABの服用による胃内の細菌の変化や高ガストリン血症が胃がん発症リスクの上昇につながっている可能性があります。

胃がんを発症する主な原因

ヘリコバクター・ピロリ菌感染

ヘリコバクター・ピロリ菌(ピロリ菌)は、胃の粘膜に生息する細菌です。ピロリ菌に感染すると、慢性胃炎を引き起こし、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、胃がんなどの原因となります。ピロリ菌感染は、胃がんの最も重要なリスク因子です。胃カメラなどの内視鏡検査でピロリ菌感染が疑われる場合に呼気試験や血液検査、便検査などでピロリ菌感染の有無を調べます。感染が確認された場合は、除菌治療を行います。除菌治療は、胃がんの予防に効果的です。胃の不快感や痛みなどの症状がある場合は消化器内科の受診や胃がん検診を受けましょう。

塩分の過剰摂取

塩分の過剰摂取は、胃粘膜を傷つけ、胃粘膜の萎縮を助長させ胃がんのリスクを高める可能性があります。塩漬けの食品や加工食品、インスタント食品などには塩分が多く含まれているため注意が必要です。塩分の過剰摂取は胃がんだけでなく、高血圧や心臓病などのリスクも高めます。日頃から減塩を心がけバランスの良い食事を摂ることが大切です。食事療法について詳しく知りたい場合は、医師や管理栄養士に相談しましょう。

喫煙

喫煙は、胃がんを含む多くのがんのリスクを高めます。タバコに含まれる有害物質が、胃粘膜にダメージを与え、がんの発生を促進します。禁煙は、胃がん予防に最も効果的な方法の一つです。禁煙が難しい場合は、禁煙外来を受診し、専門家のサポートを受けることをおすすめします。禁煙外来は、内科や呼吸器内科などに併設されていることが多いです。

遺伝的要因

家族に胃がんになった人がいる場合、胃がんのリスクが高いとされています。遺伝的な要因や、食生活などの生活習慣が似ていることの影響が懸念されます。胃がんの家族歴がある場合は、定期的に胃がん検診を受けることが推奨されます。胃がん検診は、消化器内科や人間ドックなどで受けることができます。特に、若年で胃がんを発症した家族がいる場合は注意が必要です。

胃がんの代表的な症状

胃の痛み・不快感

胃の痛みや不快感は、胃がんの初期症状としてよく見られます。特に、食後のみぞおちの痛みや、胃のもたれ感などが特徴的です。症状が続く場合や悪化する場合は、早めに医療機関を受診してください。胃がん以外にも胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、逆流性食道炎など、胃の痛みや不快感を引き起こす多くの病気がありますので、ご注意ください。このような症状がある場合、特に食後に症状が悪化する場合は、消化器内科を受診しましょう。この時に、症状の経過や、痛みの部位、性質などを詳しく医師に伝えると良いでしょう。

食欲不振

食欲が低下することで食事の量が減り、体重減少につながることもあります。無理に食べる必要はありませんが、水分摂取や栄養消化の良いものを少しずつ食べるように心がけましょう。胃がん以外にも慢性胃炎や肝臓病、腎臓、うつ病などの精神疾患など食欲不振を引き起こす病気はたくさんあります。食欲不振が続く場合、特に体重減少を伴う場合は、早めに医療機関を受診してください。内科や消化器内科を受診し、原因を調べてもらいましょう。

吐き気・嘔吐

吐き気や嘔吐は、胃がんが進行すると現れることがあります。特に、食後に吐き気を感じることが多いです。吐き気が強い場合は、無理に食事を摂らず、水分補給を心がけましょう。吐き気止めの薬が処方されることもあります。胃がん以外にも、食中毒、胃腸炎、耳鼻科系疾患なども吐き気や嘔吐を引き起こす病気です。吐き気や嘔吐が続く場合、特に血液が混じったものを嘔吐した場合は、すぐに消化器内科を受診してください。

黒色便・血便

胃がんから出血があると、便が黒くなったり(タール便)、血液が混じったりすることがあります。これは、消化管内で血液が酸化されるためです。黒色便や血便が出た場合は、すぐに医療機関を受診してください。胃がん以外にも、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、大腸がん、痔なども消化管出血を引き起こします。黒色便や血便は、消化管出血のサインであり、緊急を要する場合があります。すぐに消化器内科や救急外来を受診してください。

胃がんになりやすい人の特徴

高齢者

胃がんは、年齢とともに発症リスクが高まり、50歳以降に罹患率が高くなります。40代以降の方は定期的に胃がん検診を受けることが推奨されます。加齢に伴い、免疫力が低下したり、細胞の修復機能が衰えたりすることが、胃がんのリスクを高めると考えられています。高齢者は、胃がん以外の病気にもかかりやすいため、日頃から健康管理に気を配り、体調の変化に注意することが大切です。

ピロリ菌感染者

ピロリ菌は、胃粘膜に慢性的な炎症を引き起こし、胃がんの原因になります。ピロリ菌に感染している人は、感染していない人に比べて、胃がんの発症リスクが数倍高くなります。ピロリ菌感染の有無を検査し、感染している場合は除菌治療を受けましょう。内視鏡やピロリ菌検査は、消化器内科で受けることができます。

塩分の過剰摂取している人

塩分の過剰摂取は、胃粘膜を傷つけ、胃がんのリスクを高めます。また塩分の過剰摂取は、高血圧や心臓病などのリスクも高めます。日頃から減塩を心がけ、バランスの良い食事を摂りましょう。食事療法について詳しく知りたい場合は、医師や管理栄養士に相談するのも良いでしょう。

喫煙者・大酒家

喫煙や過剰な飲酒は、胃がんを含む多くのがんのリスクを高めます。禁煙や節酒は、胃がん予防に最も効果的な方法の一つです。タバコに含まれる有害物質やアルコールを分解した際にできるアセトアルデヒドが、胃粘膜にダメージを与え、がんの発生に関与しているとされています。禁煙・節酒が難しい場合は、禁煙外来を受診し、専門家のサポートを受けることをおすすめします。

胃がんの予防法

ピロリ菌の除菌

ピロリ菌を除菌することで、胃がんの発症リスクを大幅に下げることができます。除菌治療は薬剤の内服で行います。治療期間中は医師の指示に従って、決められた薬をきちんと服用することが大切です。

減塩

塩分の摂取量を減らすことで、胃粘膜へのダメージを軽減し、胃がんのリスクを下げられる可能性があります。塩分の加工食品やインスタント食品、外食は塩分が多いため摂取する頻度には注意が必要です。調理の際は、塩の代わりに出汁や香辛料やハーブ、酢などを活用するのも効果的です。

禁煙

禁煙は、胃がんだけでなく、肺がんや心臓病など、多くの病気のリスクを下げることができます。禁煙は、自分の意思だけで達成するのが難しい場合もあります。禁煙外来などを活用し、専門家のサポートを受けることも検討しましょう。

「飲むと胃がんになる胃薬」についてよくある質問

ここまで飲むと胃がんになる胃薬などを紹介しました。ここでは「飲むと胃がんになる胃薬」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

胃薬は胃がん発症のリスクを高めるのでしょうか?

齋藤 雄佑齋藤 雄佑 医師

ピロリ菌の除菌後に、一部の胃薬、特にPPIやP-CABを長期間服用すると、胃がんのリスクを高める可能性が指摘されています。ただし、すべての胃薬が胃がんのリスクを高めるわけではなく、例えばH2ブロッカーや胃粘膜保護薬などは、胃がんリスクとの関連は低いと考えられています。飲む頻度や容量に応じてリスクが高くなる報告がありますので、現在の内服については主治医とご相談ください。

胃酸を抑制する薬は胃がん発症のリスクを高めるのでしょうか?

齋藤 雄佑齋藤 雄佑 医師

ピロリ菌除菌後に胃酸を強力に抑制する薬、特にPPIやP-CABを長期間服用すると、胃がんのリスクを高める可能性があります。これは、胃酸の分泌が抑えられることで、胃内の細菌環境の変化がホルモンのガストリン分泌が過剰となることが原因の可能性があります。

胃薬は毎日服用しても問題ないのでしょうか?

齋藤 雄佑齋藤 雄佑 医師

原因疾患や胃薬の種類、服用期間にもよるため、一概には言えません。しかし、胃薬という比較的身近な薬剤でも特定の条件下での長期間観察すると胃がんのリスクの一端になっている可能性があります。もちろん現在内服中の胃薬については主治医の指示に従って服用しましょう。また定期的に検査で胃の状態を確認することも重要です。

編集部まとめ 胃薬の中には胃がんのリスクを高めるものも。消化器内科で相談をしましょう

胃がんは、早期発見・早期治療が重要な病気です。胃薬の中には、特定の条件下で長期間服用することで胃がんのリスクを高める可能性があるものも含まれます。胃がんのリスクを高める要因としてはピロリ菌感染や塩分の過剰、喫煙・飲酒、遺伝的要因などが挙げられます。胃がんの予防には、ピロリ菌の除菌、減塩、禁煙、バランスの良い食生活などが効果的です。胃の痛みや不快感、食欲不振、体重減少などの症状がある場合は、早めに消化器内科を受診し、適切な検査と治療を受けることが大切です。ぜひ胃がん検診もご活用ください。

「胃がん」と関連する病気

「胃がん」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器科の病気

これらの病気は胃がんの発症とも関連します。主治医と相談をして必要であれば治療をしましょう。また、定期的な胃がん検診で発症を早期に見つけることも大切です。

「胃がん」と関連する症状

「胃がん」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 胃痛
  • 食欲不振
  • 吐き気・嘔吐
  • 黒色便・血便

これらの症状は、胃がん以外の病気でも起こり得るため、症状だけで胃がんと診断することはできません。気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診し、適切な検査を受けることが重要です。

この記事の監修医師