「乳がん」を発症した際に「食べてはいけない物」はご存知ですか?医師が徹底解説!
乳がん発症時に食べてはいけないものとは?Medical DOC監修医が乳がん発症時に食べてはいけないもの・手術後に食べてはいけないもの・原因となる可能性の高い食べ物・なりやすい人の特徴・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。
監修医師:
木村 香菜(医師)
目次 -INDEX-
「乳がん」とは?
乳がんとは、乳腺の組織から発生する悪性腫瘍のことです。
今回の記事では、乳がんの発症時や手術後の食事に関しての注意点について解説します。
また、乳がんの原因として考えられているものや予防法についても紹介します。
乳がん発症時に食べてはいけないもの
乳がん発症時に、特に食べることを制限されるものは知られていません。
しかし、以下のような食べものは、乳がんの治療中、特に化学療法などを行う際には、好中球という白血球の代表的なものが少なくなることがあります。その場合には免疫力が低下しやすいため、食中毒や感染症のリスクを避けることが大切です。
ここでご紹介する食品は、そうしたリスクを考慮して控えた方が良い場合があります。詳し主治医や栄養士に相談しながら、自分に合った食事管理を行いましょう。相談するようにしましょう。
生の魚
生の魚には、寄生虫や細菌が含まれている可能性があります。特に免疫力が低下している化学療法中には、これらに感染するリスクが通常より高まります。
刺身や寿司、カルパッチョ、生の貝類(例えば生牡蠣やムール貝)などは、化学治療中に白血球の一つである好中球が少なくなっている際には控えた方が良いでしょう。
生卵を含む食品
生卵は、サルモネラ菌という病原菌に汚染されている可能性があり、これに感染すると重篤な食中毒を引き起こすことがあります。生卵を食べたい際には、新鮮なものを使うようにしましょう。
低温殺菌されていない乳製品・牛乳
低温殺菌されていない乳製品には、リステリア菌が含まれる可能性があります。
健康な人にはほとんど影響を与えませんが、免疫力が低下している人にとっては危険な場合があります。生乳や未殺菌のフレッシュチーズ(カマンベールやブリーなど)は特に注意が必要です。安全のため、購入時に「低温殺菌済み」や「殺菌」と表示された製品を選ぶようにしましょう。(本文内容)
洗っていない果物や野菜
果物や野菜は健康に良いものですが、洗わずに食べると土壌由来の細菌や農薬に接触するリスクがあります。免疫力が低い場合、これらの汚染物質が感染症を引き起こす可能性が高くなります。特に皮付きの果物(リンゴや梨など)や生野菜は、食べる前にしっかり洗うことを習慣にしましょう。根菜類(ニンジン、ジャガイモなど)も、汚れを完全に落として調理することが大切です。
適切に管理されていない残り物
保存状態が悪い食品は、細菌が繁殖しやすくなります。冷蔵庫で長期間保存したスープや、再加熱をせずに食べるカレーや煮物などがこれに該当します。また、賞味期限が切れた食品も安全性が保証されません。治療中は、残り物は早めに食べきるか、しっかり加熱することで食中毒のリスクを減らしましょう。
乳がんの原因となる可能性の高い食べもの
乳がんの発症リスクと関連がある可能性のある食べものについて紹介します。
加工肉や赤身肉
加工肉の摂取と、特に閉経後の女性における乳がんの発症リスクに正の相関関係があるとする報告がみられます。例えば、ベーコンやソーセージなどがあります。
加工肉に含まれる硝酸塩や亜硝酸塩の多量が乳がんリスク増加につながる可能性が示唆されています。
また、赤身肉(羊肉や牛肉、豚肉)含まれる飽和脂肪、コレステロール、ヘム鉄の含有量が多いことも乳がんと関連している可能性があります。
特に、加工肉には食塩や脂肪分が多く含まれていることも多いため、過剰な摂取は生活習慣病のリスクを高めることにつながります。ほどほどに摂るようにしましょう。
飽和脂肪酸を多く含むもの
飽和脂肪を多く含む食品である、バターやチーズなどの高脂肪乳製品は、乳がんによる死亡率を高める可能性があるという報告があります。一方で、乳製品を摂取することで乳がんの発症リスクが少し低くなるという報告もあります。そのため、乳製品については乳がんの発症リスクに与える影響は不明です。しかしながら、脂肪分の摂りすぎには注意をするようにしましょう。
その他、飽和脂肪酸を多く含む食品としては、牛肉や羊肉、豚肉、鶏肉(特に皮付き)があります。また、ラード、ココナッツオイル、パームオイル、多くの焼き物や揚げ物(ファストフードなど)などもあります。
こうした食品の摂りすぎには注意しましょう。
トランス脂肪酸を多く含むもの
揚げ物や焼き菓子には、トランス脂肪酸が多く含まれている可能性があります。ある研究では、乳がん診断後にトランス脂肪酸を摂取すると、乳がんによる死亡率が約50%、全死亡率が約80%増えることが示されています。
揚げ物や焼き菓子などを毎日摂ることは避け、適度にしておくようにしましょう。
アルコール
アルコール摂取量が増えるほど、乳がんの発症リスクは増加していきます。閉経前後を問わず、アルコール飲料が発症リスクを高めるのは確実です。日本人を対象とした研究では、まだ十分なデータがないとされていますが、アルコール飲料を飲みすぎないようにしましょう。
なお、厚生労働省が示す節度ある適度な飲酒量は、1日平均純アルコールで約20g程度ですが、女性ではより少ない量が勧められます。具体的にはビール中瓶1本500mlほどで純アルコール量20g、ワイン一杯120mlで12gです。
大量の砂糖が入った食べ物や飲み物
砂糖が大量に入った飲み物を定期的に飲むと、体重増加に繋がる可能性があります。特に、閉経後に体重が増えると、乳がんリスクの増加につながります。
ソフトドリンクやビスケット、ケーキは栄養価に乏しいものの、大量の砂糖、特にグルコースが含まれています。頻繁に摂取しないようにしましょう。
乳がんの手術後に食べてはいけないもの
乳がんの術後、再発リスクとの関連があるものは現時点ではそれほど多くはありません。ここでは、現時点でわかっている、乳がん手術後に避けた方が良い食べ物や注意すべき食べ物について解説します。
飽和脂肪酸を多く含むもの
お肉の脂身や、ベーコンやソーセージなどの加工肉、お菓子やインスタント食品などには飽和脂肪酸が多く含まれています。
飽和脂肪酸の大量摂取が直接的に乳がんの再発リスクに関連すると明らかにした研究はまだありません。しかし、こうした食品を大量に摂ると、肥満につながる恐れがあります。
肥満は、乳がん再発のリスクを高めることは明確です。そのため、総カロリーをコントロールし、適度な運動も行い肥満を避け、適切な体重の維持に努めることが重要です。
砂糖が大量に含まれているもの
ケーキやクッキー、チョコレート、甘い飲み物には砂糖が大量に含まれていることがあります。砂糖の摂りすぎは、肥満につながる可能性があります。
肥満は乳がん再発リスクを高めるため、こうした食品もほどほどにしておくようにしましょう。
アルコール
アルコール摂取により、乳がん再発リスクや乳がん死亡リスクが増加するという可能性は低いです。しかし、乳がんを発症していない側の乳房の乳がん発症リスクや、他の多くのがんの発症リスクを高める可能性があるので、ほどほどの量に留めることが大切です。
カフェイン
手術の後は、体の回復を一番に考えなければなりません。そのため、手術後3週間程度は食事からカフェインを控えることが重要です。カフェインは脱水症状を引き起こす可能性があり、創部の治癒を遅らせることがあります。また、カフェインによって術後の不安やイライラ感が増大し、吐き気が引き起こされる懸念もあります。
カフェインレスのコーヒーや、ハーブティーなどをとりいれるようにするとよいでしょう。
加工食品
ファーストフードやインスタント食品などの加工食品は、食物繊維やビタミン、ミネラルなどの傷の治癒に大切な栄養素があまり含まれていません。一方で、保存料や食塩、脂肪、砂糖が多く含まれています。手術後の体の回復のためには、取り過ぎには避けた方が良い食べ物と言えるでしょう。
乳がんになりやすい人の特徴
乳がんは、女性ホルモンであるエストロゲンがその発生に関わっています。
ここでは、乳がんになりやすい人の特徴について説明します。しかし、これに当てはまるからといって必ず乳がんになるとは限りません。
初潮年齢が早く閉経が遅い
初潮年齢が早く、閉経が遅いことは、乳がんの発症リスクをほぼ確実に高めます。
また、初潮年齢が早いことは、特にホルモン受容体陽性乳がんで強いと考えられています。
出産歴・授乳歴がない
出産経験がない方は、出産経験がある方と比べてホルモン受容体陽性の乳がんの発症リスクが高いことがほぼ確実です。また、授乳歴がない方も、乳がんの発症リスクを高めることが確実です。授乳期間が長いと乳がんの発症リスクが低くなることも確実です。
血縁者に乳がんの方がいる
乳がんの5〜10%は遺伝性であると言われています。血縁者に乳がんや卵巣がんを発症した人がいる場合、乳がん発症リスクが高くなる可能性があります。乳がん患者さんが家系内に多くいればいるほど、乳がんの発症リスクが高くなります。親や子、姉妹の中に乳がん患者がいる女性は、そうでない女性に比べて2倍以上乳がんになりやすいことがわかっています。
家系内に特に若くして乳がんになった方がみられる場合には、一度乳腺外科などで遺伝性の乳がんの可能性について相談してみるとよいでしょう。
閉経後に肥満である
肥満とは、BMI(Body mass index)が30以上のことを指します。
肥満は閉経後の女性で乳がん発症リスクを高めることは確実です。また、世界的には閉経前の肥満は乳がんのリスクを下げると確実視されています。しかし、日本人では閉経前でも乳がん発症のリスクが高まる可能性がある、ということが示されました。
日常生活で太り過ぎないように気をつけましょう。
喫煙している
血縁は、乳がんのリスクをほぼ確実に高めます。受動喫煙も乳がんの発症リスクを高めます。現在喫煙していても、禁煙すればその時点から発症リスクが下がります。
今タバコを吸っているのであれば、早急にやめるようにお勧めします。また、他人のタバコの煙もできるだけ避けるようにしましょう。
乳がんの予防法
ここでは、乳がんの予防方法をご紹介します。
太り過ぎないようにする
これまで述べてきたように、肥満は閉経後の乳がんリスクを高めます。また、日本人では閉経前の乳がんリスクも高めます。
適度な運動やカロリーの摂り過ぎに気をつけ、太りすぎないようにしましょう。具体的には、BMIが25〜30未満が過体重、30以上で肥満と定義されています。
飲酒は控えめにする
アルコールの摂取量が増えると、特に閉経前の乳がんリスクの増加に繋がります。
飲酒をする場合、適正なアルコール摂取量に留めておくようにしましょう。
タバコを吸わない
喫煙は乳がんのみならず、さまざまながんのリスクを高めます。
現在タバコを吸っている際には、禁煙するように努力しましょう。
「乳がんの発症時に食べてはいけないもの」についてよくある質問
ここまで乳がんの発症時に食べてはいけないものを紹介しました。ここでは「乳がんの発症時に食べてはいけないもの」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
乳がん発症時におすすめの食べ物はありますか?
木村 香菜(医師)
乳がんを発症した際は、果物やでんぷんの少ない野菜をとる食事を積極的に摂取することが推奨されます。これらの食品にはビタミン、ミネラル、抗酸化物質が豊富に含まれており、体の回復をサポートする働きがあります。例えば、ベリー類(ブルーベリー、ラズベリーなど)、ほうれん草、ブロッコリー、ケールなどが特におすすめです。また、食物繊維を多く含む食品を摂ることで消化を助け、全体的な健康維持に役立ちます。
コーヒーを飲み過ぎると乳がんを発症する確率は上がるのでしょうか?
木村 香菜(医師)
現時点での研究によると、コーヒー摂取と乳がん発症リスクの関連性を示す確固たる証拠はありません。むしろ、適量のコーヒー摂取が乳がんの特定のタイプのリスクを低下させる可能性があるとの報告もあります。ただし、過剰摂取によるカフェインの摂りすぎは不眠や心拍数の増加などの健康問題を引き起こす可能性があるため、1日2~3杯程度の適量を守ることが大切です。
乳がん発症後に日常生活で注意するべき点を教えてください。
木村 香菜(医師)
乳がん発症後の日常生活では、次の点に注意することが重要です。
・バランスの良い食事
栄養価の高い食品を摂取し、加工食品や高脂肪・高糖質食品を控えることが推奨されます。
適度な運動
・軽い運動(ウォーキング、ヨガなど)を日常に取り入れることで体力を維持し、ストレス軽減にも役立ちます。
・ストレス管理
リラクゼーション方法(瞑想、趣味など)を取り入れて心の健康を保つことも大切です。
・医療との連携
定期的な通院と検診を欠かさず、治療方針について医師とよく相談するようにしましょう。
・感染予防
免疫力が低下している場合、感染症のリスクを減らすために手洗いやマスクの着用、食事の衛生管理を徹底してください。
これらを心がけることで、乳がん治療の効果を最大限に引き出し、快適な日常生活を送る手助けとなります。
編集部まとめ
今回の記事では、乳がんの発症時に注意した方が良い食べ物や、乳がんになりやすい人、予防法などについて解説しました。
今回ご紹介した食べ物を全く摂らないようにするのは難しいでしょう。そのため、健康的な食生活を心がけ、適度な運動をしましょう。そして、定期的な乳がん検診を受けるようにするようにしましょう。
「乳がん」と関連する病気
「乳がん」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
消化器科の病気
- 脂肪肝
- 胃炎
内分泌科の病気
乳がんの治療中に、摂り過ぎに注意すべき食べ物としては、高脂肪食や高塩分・糖質食などがあります。こうした食べ物を摂りすぎると、これらのような病気になることがあります。乳がん治療中は、全身の健康を考えた食生活が重要です。
「乳がん」と関連する症状
「乳がん」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 背中がつる
- 肩が痛い
- 胸の張り
- 腕がむくむ
- 慢性的な疲労
- 呼吸困難
これらの病気や症状について、早期に適切な対応を行うことが、乳がん治療の成功や生活の質の維持に重要です。