「食道がんを疑う咳」の特徴はご存知ですか?前兆となる初期症状も医師が解説!
食道がんを疑う咳にはどんな特徴がある?Medical DOC監修医が食道がんの初期症状・末期症状・原因・なりやすい人の特徴などを解説します。
監修医師:
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)
目次 -INDEX-
「食道がん」とは?
食道がんは、食道粘膜に発生するがんです。食道がんは、中年の男性に多く発生します。食道のどの部位にもがんはできますが、食道の中央付近で発生することが多いです。また、日本では組織型は扁平上皮がんが約9割と多いです。欧米で多い腺がんは日本では少ない傾向です。しかし、近年生活習慣は欧米化し、肥満も増え胃食道逆流症に関連した腺がんが徐々に増加しています。
食道がんは初期では症状があまり見られません。しかし、進行すると、食事の飲み込みにくさやつかえ感などの症状がみられます。また、声のかすれ(嗄声)や咳、胸・背中の痛みなど食道以外の症状を伴うこともあります。
食道がんは早期のがんであってもリンパ節転移を起こしやすく、注意が必要です。また、食道がんが進行した状態で発見された場合、未だに生存率は低い状態です。このためなるべく早期で発見することが大切です。早期に発見するために、気になる症状がある場合には早めに受診をしましょう。
食道がんを疑う咳にはどんな特徴がある?
食道と気管は体内で並んで走行します。このため、食道がんが進行すると、近くにある気管にまで広がり影響することがあります。
持続する咳
食道がんが気管や気管支まで広がると、その刺激により咳が出ることがあります。その場合、原因が取り除かれない限り、咳の症状は持続します。せき込みが止まらないような場合には注意が必要です。気管支内腔までがんが浸潤すると、腫瘍の部分から出血し、血の混ざった痰を伴う可能性もあります。長引く咳がみられる場合には、まず内科や呼吸器内科を受診しましょう。
誤嚥による咳
食道がんとなると、食べ物が通りづらくなり、むせこむことも多くなります。むせこむと気管に食べ物が入ることが多くなり、気管支炎や肺炎を起こすことも少なくありません。
たびたびむせこみ、咳が出る方は食道がんの症状かもしれません。しかし、むせ込みは加齢などでも起こり得ます。症状のみでは区別をつけられません。繰り返す場合にはまず内科を受診して相談しましょう。
さらに悪化し、肺炎になると、発熱や咳や痰の症状が認められます。食道がんに伴う咳や痰と発熱がみられる場合には肺炎を起こしている可能性もあるため注意が必要です。
がんを発症していると、体力も低下しており肺炎などの感染症が重症化する可能性もあります。食道がんの方に咳の症状が起こり、発熱や息苦しさなど症状が強い時には早めに主治医に相談をしましょう。
食道がんの前兆となる初期症状
食道がんの初期では無症状であることが多いです。進行すると、さまざまな症状が認められるようになります。
食べ物でしみる感じ
食べ物を飲み込んだときに、しみたり、チクチク痛んだりする症状が起こることがあります。胸やけのように感じる方もいます。食道がんがある部分が通常の食道粘膜より刺激を受けやすくなっているためです。そのため、食べ物が通過する際にこすれて、しみるような感じを受けると考えられます。このような症状が出た場合には、消化器内科で相談をしてみましょう。
食べ物がつかえる感じ
食道がんの症状でよくみられるものは、食べ物を飲み込んだときにつかえる感じです。食べ物を飲み込んだ際に飲み込みづらくなったり、つかえると感じたりする様になります。これは、食道がんが進行し、食道の内部が細くなることにより起こります。水分などの液体は通過しても、固形物の通過しづらさが出てきます。さらに悪化すると、液体でも通過できなくなり、嘔吐もみられるようになります。しかし、これらの症状は他の病気でも起こり得るため、症状のみでは区別がつきません。症状がある場合には消化器内科を受診して、上部消化管内視鏡検査などの検査を行いましょう。
食道がんが進行すると現れる症状(末期症状)
声のかすれ・咳
食道がんが進行して、近くにある声帯の動きを調整する反回神経に浸潤したり、周囲のリンパ節に転移して大きくなりこの神経を圧迫すると、声のかすれがみられるようになります。声のかすれのことを嗄声といいます。
また、先ほどお話ししたようにがんが気管や気管支まで広がると気管支を刺激するために咳の症状が出ます。この場合の咳は、持続する止まりにくい咳であることが多いです。また、飲み込みづらさからむせ込みが多くなり、食後に咳が多くみられることもあります。
食道がんで咳や嗄声がみられることが比較的多く、これらの症状で食道がんが発見されることもあるため、注意が必要です。
胸痛・背部痛
食道がんが進行し、周囲の臓器に広がると、さまざまな症状が現れます。背骨や肺の胸膜、大動脈などに広がっていくと、胸や背中の痛みとして感じる場合もあります。
また、骨転移を起こしている場合には、鎖骨や椎骨、肋骨など転移がある骨の部分の痛みが起こります。このため、同じ部分の骨がずっと痛む場合にも注意が必要です。
これらの胸や背中の痛みは肺の病気で起こることもあり、区別がつきづらいですが、症状が持続する場合は内科を受診して相談し、詳しく検査をすることをお勧めします。
体重減少
食道がんにより食べ物がつかえて食べられなくなり、食事量が減ることで体重が減少します。また、がんによる慢性炎症が起こり、エネルギーや栄養が消費されることをがんによる「悪液質」と言います。この時には、食事を摂っていても体重が減ってしまいます。
このように食道がんの場合には体重減少が起こりやすいです。がんが発生し進行すると、体重が減少し、低栄養状態をきたすようになります。
ダイエットをしているわけではないのに徐々に体重が減少しているなど気になる場合には内科で相談をしてみましょう。体重減少はがんのみで起こるわけではありませんが、注意が必要な症状の一つと言えます。
食道がんの原因
食道がんの組織型により、危険因子は異なります。ここでは日本人に多い扁平上皮がんと欧米で多い腺がんのそれぞれの危険因子について解説いたします。
喫煙
喫煙は扁平上皮がん、腺がんの両方のがんでの危険因子となります。他のがんと同様に喫煙は食道がん発生に関係していることが報告されています。なるべく早くに禁煙をすることを心がけましょう。
野菜や果物の摂取不足
野菜や果物の摂取不足は扁平上皮がん、腺がんの両方の危険因子となります。また、野菜や果物を多く摂取することで食道がんのリスクを低下させることができることも示されました。この予防効果は喫煙者や飲酒者でも有効です。しかし、予防効果は禁煙や禁酒より少ないため、禁煙と禁酒をまず行うことが大切です。
飲酒
飲酒は扁平上皮がんの危険因子です。エタノール量66g/日以上の多量飲酒者、エタノール量25g/日未満の少量飲酒者、非飲酒者を比較すると、多量飲酒者でリスク比は4.18倍、少量飲酒者1.81倍と報告されています。たとえ少量でも非飲酒者と比較すると発がんリスクの上昇がある事より、食道がんの予防には禁酒が勧められます。
(エタノール量25gはおおよそ日本酒1合程度です。)
また、このほかにも熱い飲食物を取ることは扁平上皮がんの危険因子であり、バレット食道や胃食道逆流症は腺がんの危険因子となります。当てはまる方では気をつける必要があります。
食道がんになりやすい人の特徴
ここでは、食道がんになりやすい人の特徴をまとめます。当てはまる方は気をつけましょう。
喫煙者
喫煙をする人は、非喫煙者と比較して食道がんになりやすいことが分かっています。なるべく早く禁煙することが勧められます。
野菜や果物の摂取が少ない
野菜や果物の摂取が少ない人は食道がんになりやすいです。なるべく野菜や果物を摂取し、バランスの良い食事を心がけましょう。
お酒で顔が赤くなる人、飲酒
飲酒量が多い人では食道がんの危険性が高くなります。少量でも危険性があるため、食道がんを予防するためには禁酒が勧められます。
また、アルコール代謝産物を分解する酵素の能力が低い人は、少量のアルコールでも顔が赤くなります。このように顔が赤くなりやすい人で、大酒家では非飲酒者と比較して約70倍の食道がんの危険性があると報告されています。このように飲酒で顔が赤くなりやすい方ではより注意が必要です。食道がんを予防するためには禁酒が勧められ、またアルコールで顔が赤くなりやすい人では特に気をつけなければなりません。
肥満
肥満は腹圧がかかることで胃食道逆流症をおこしやすくなります。この胃食道逆流症は食道腺がんのリスクの一つです。肥満がある人ではバランスの良い食事をし、減量して適正体重を保つようにしましょう。
「食道がんを疑う咳の特徴」についてよくある質問
ここまで食道がんを疑う咳の特徴などを紹介しました。ここでは「食道がんを疑う咳の特徴」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
食道がんに気づく症状にはどのような特徴がありますか?
和田 蔵人 医師
食道がんは初期では自覚症状が出にくいです。進行すると、のどの使える感じやしみる感じなど感じる方がいます。また、咳や声のかすれ(嗄声)、胸痛・背部痛、体重減少などを認めることもあります。これらの症状は他の病気でもみられることもあります。このため、症状だけでは区別はつきません。しかし、食道がんは早期での発見が非常に大切です。気になる症状がある場合には、消化器内科で相談をしてみましょう。
編集部まとめ 咳が続く場合にも食道がんの可能性も。早めに内科を受診しましょう。
食道がんは早期に発見し、治療することが非常に大切です。このために食道がんで起こり得る症状を知っておきましょう。食道がしみる感じや、つかえる感じに気がついた時には、早めに消化器内科を受診しましょう。また、咳や声のかれ、胸や背中の痛みなど食道とは別の部位の症状が出ることもあります。このような気になる症状がある場合には、早めの受診をお勧めします。
また、喫煙者、大酒家、顔が赤くなりやすいなど食道がんの危険因子を持っている場合には定期的な上部内視鏡検査でのチェックも検討しましょう。
「食道がん」と関連する病気
「食道がん」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
呼吸器科の病気
消化器科の病気
- 胃がん
- 大腸がん
食道がんはがんが多発する頻度が高いです。上に挙げたがんは食道がんと合併する可能性が高く注意が必要です。また、これらのがんの既往がある方も、食道がんを合併する可能性があるため気をつけましょう。
「食道がん」と関連する症状
「食道がん」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 食べ物でしみる
- 食べ物がつかえる
- 咳
- 声がかすれる
- 胸痛・背部痛
- 体重減少
食道がんは初期では症状が分かりづらいです。しかし、進行するとこれらの症状がみられることがあります。食道がんは進行すると生存率が低くなります。気になる症状がある場合には、なるべく早期に受診しましょう。