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「尿膜管がん」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

 更新日:2023/04/03
「尿膜管がん」を発症すると現れる症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

尿膜管がんとは、尿膜管と呼ばれる部位にがんが発生する病気です。あまり聞き慣れない部位であるため、この病気を知らない方も多いでしょう。

非常に珍しいがんであり、症状が少ないため気づくのが遅れる可能性があります。しかし、悪化すると他のがん同様に転移などの心配があるため注意が必要です。

早期発見のためにも、尿膜管がんについて理解しておきましょう。本記事では尿膜管がんの主な症状と原因をご紹介します。

尿膜管がんの早期発見するためのポイント・治療方法・予防方法なども詳しく解説するので、参考にしてください。

郷 正憲

監修医師
郷 正憲(徳島赤十字病院)

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徳島赤十字病院勤務。著書は「看護師と研修医のための全身管理の本」。日本麻酔科学会専門医、日本救急医学会ICLSコースディレクター、JB-POT。

尿膜管がんの主な症状と原因

病を発見する医師

尿膜管がんの主な症状を教えてください。

この病気は、膀胱外部で腫瘍が発育するために早期には無症状であることがほとんどです。従って症状が出るときには進行癌になってしまっていることが多いです。
尿膜管癌が進行していくと次のような症状が現れることがあります。

  • 血尿
  • 痛み
  • 頻尿
  • 腫れやしこり

最も多くみられる症状が血尿です。尿の中に血が混ざることで濃い色の尿が出るようになります。また、様々な痛みが伴うこともあります。
主な痛みとしては、腰の側面部分の痛みと排尿痛です。排尿痛は、膀胱炎の時に見られるような痛みであり、排尿の終わりにかけて特に痛みが強くなるという特徴があります。膀胱炎と同様の症状としては頻尿も挙げられます。30分~1時間でトイレに行きたくなってしまい、排尿回数が増えるのです。
また、腫れやしこりも症状の1つです。悪化したがんが大きくなったことでしこりを感じるようなことがあり、膀胱周辺で違和感を覚える原因となります。

尿膜管がんは珍しいがんだと聞いたのですが…。

この病気は、非常に稀ながんです。尿膜管がんは膀胱にできる悪性腫瘍に分類され、膀胱がんの1つです。膀胱がんは比較的有名ではありますが、その中でも尿膜管がんの発生頻度は1%未満となります。
しかし、発生頻度は少ないながらも、発症は41~70歳までの男性に多いことが分かっています。比較的若い年代から発症の可能性があり、このがんは進行が早い特徴を持っているため、万が一発見が遅れると取り返しが付かない状況になってしまうかもしれません。
そのため、早期発見できるように定期的な検診などを受けましょう。

尿膜管がんの原因について知りたいです。

尿膜管がんの原因ははっきりとは分かっていませんが、膀胱がんと発がん因子が共通していると考えられています。そのため、次のような原因が挙げられます。

  • 喫煙
  • 過度な飲酒
  • 先天性尿路奇形
  • 遺伝

膀胱がんの原因の1つが喫煙です。非喫煙者の2~3倍の割合で膀胱がんになりやすいといわれており、尿膜管がんも同様の原因から発症すると考えられます。また、過度な飲酒も膀胱がんを発症する原因であるため、尿膜管がんの原因の1つに挙げられます。
その他には、先天性の尿路奇形も原因の1つです。通常、構造は残ったままですが、尿膜管は出生後に閉じています。
しかし先天的な尿路の奇形によっては、通常とは異なる形状になっていたり閉じられていなかったりするため、がん化する可能性があるのです。
さらに、遺伝も原因の1つに挙げられており、家族に膀胱がんなどを患っている方がいる場合には遺伝するケースがあります。

尿膜管がんの早期発見と検査について

検査結果

尿膜管がんはなぜ早期発見が難しいのでしょうか。

この病気の早期発見が難しい理由は次のようにいくつか考えられます。

  • 初期症状がほとんどない
  • 症例が少ないため疑われない
  • 検査が困難

1つ目の理由は、初期症状がほとんどない点です。通常、尿膜管は出生後には閉じられておりがん化することはほとんどありません。また、膀胱外にあることから無症状のまま時間が経過してしまうのです。そのため、痛みなどの症状が出始めた時には、がんがある程度進行しています。
2つ目の理由は、症例が少ないため疑われない点です。先述した通り、尿膜管がんは膀胱がんの中でもさらに症例が少ない病気です。一般的ではないため、医師が尿膜管にできた腫瘍まで疑うケースが少なく、検査や診断が遅れる場合があります。
3つ目の理由は、検査が困難である点です。尿膜管は尿管の奥に存在しており検査が難しい場合があります。専用の医療機器による検査が必要であるため簡単にできない場合があり、発見が遅れてしまうのです。

尿膜管がんの発見が遅れたときのリスクを教えてください。

尿膜管がんの発見が遅れた場合のリスクとしては、次のようなものが挙げられます。

  • 他臓器への転移
  • 治療の困難化

発見が遅れた時のリスクの1つとして、他臓器への転移が挙げられます。発見までの期間が長ければ遠隔臓器にも手にする可能性が考えられるため非常にリスクは高いです。さらに、治療の困難化を招く可能性もリスクに挙げられます。
治療は切除が可能かどうかで別れます。遠隔転移がなく、切除が可能と考えられる範囲にがんがとどまっている場合には、第一に外科的手術を検討します。通常は、腫瘍のある部を含む膀胱壁から臍にいたる尿膜管を一塊として切除する手術が一般的です。
進行した尿膜管がんに対しては、進行膀胱がんと同様に膀胱全摘術が検討されることもあります。しかし、進行した尿膜管がんは、むしろ腹腔内に散らばることが多く、外科的手術の適応とはならない場合が少なくありません。
がんの進行している範囲に応じて、手術の術式が異なります。がんが進行して切除不能な場合やすでに他の臓器に転移がある場合には、病状の進行を抑える目的で薬物療法を行います。

尿膜管がんの検査方法が知りたいです。

この病気の検査方法としては、次の方法が挙げられます。

  • 膀胱鏡検査
  • CT検査
  • MRI検査
  • 尿検査

検査方法の1つが、膀胱鏡検査です。径の細い専用のスコープを尿動向から挿入し、膀胱・尿道・前立腺などを観察する方法で、尿膜管の検査にも使われます。この検査を用いて腫瘍の一部が採取できれば生検が可能となり、尿膜管がんの確定診断が行えます。
次にCT検査MRI検査などの画像検査も有効な方法です。病巣の大きさ・形状・転移状況などを画像によって確認できます。また、尿検査は尿に含まれる細胞などを検査する方法です。

尿膜管がんの治療方法と予防

ガッツポーズの医師

尿膜管がんの治療方法について詳しく知りたいです。

尿膜管がんの治療方法は、次の通りです。

  • 手術
  • 化学療法
  • 放射線療法

遠隔転移がなく、がんが切除可能であると判断できる場合は、基本的に手術を行います。進行している場合は、膀胱全摘出を行うケースもあります。
しかし、切除が不可能な場合や転移をしている場合も少なくありません。そのような場合は、手術では対応できないため化学療法放射線療法によって治療を進めます。
なお、尿膜管がんの症例が少ないために、現在も効果的な薬などははっきりとわかっていません。過去の治療で使われた薬剤としては、胃がんや大腸がんに使われるシスプラチンや5-FU系の薬剤が挙げられます。これは、尿膜管がんの組織型が胃がんや大腸がんと似ているためです。

尿膜管がんが再発する可能性を教えてください。

この病気の再発率は、がんの進行度合いや治療方法によっても異なりますが、38~50%程度です。再発の場合は、膀胱・腹壁など局所に再発するケースが多いです。
また骨盤内のリンパ節に転移することも多いです。再発が不安な場合や疑われる場合には、すぐに受診していた医療機関で検査を受けましょう。
早期受診が、再発したがんの悪化を防げます。

尿膜管がんを予防する方法はありますか?

尿膜管がんを予防する方法は、はっきりとは分かっていません。しかし、膀胱がんと同様の原因からなる可能性があるため、その原因をもとに予防方法を考えることが大切です。
膀胱がんをもとにした具体的な対策としては、次のようなものが挙げられます。

  • 喫煙を控える
  • 飲酒を控える

膀胱がんの最大のリスクは喫煙といわれています。そのため、喫煙を控えることが尿膜管予防にもつながる可能性があるでしょう。また、飲酒を控える点も予防方法の1つです。
アルコールの分解によって発がん性物質があり、多量に生成しないためには飲酒を控えましょう。

尿膜管がんはこまめな定期検診が重要なのでしょうか。

尿膜管がんはこまめな定期検診が重要です。その理由は、病気の早期発見が難しく、症状が現れてからの発見ではがんが進行している可能性が考えられるためです。
定期検診を行っていれば、検査から偶然でも発見できるケースがあります。定期的にがん検診などを受けて、早く気づけるようにしましょう。早期に発見できれば、摘出手術によって完治できるケースもあるため、こまめな定期検診は非常に大切です。

編集部まとめ

がん検査の通知書
尿膜管がんは、尿膜管と呼ばれる部分にがんが発生する病気です。がんの発生率は非常に稀であるため、症例が少なく効果的な治療方法も分かっていません。

また、発見が遅れる傾向がある点も大きな特徴です。症状がほとんどないため、早期発見が難しいのです。

早期発見のためには、定期的に検診などを受けてがんの発病にいち早く気づけるようにしておきましょう。

また、少しでも異変を感じた場合には専門の医療機関に相談しましょう。早期発見と早期治療が、完治の可能性を上げ、再発リスクを下げられる効果的な方法です。

この記事の監修医師