「子宮肉腫になる確率」はご存知ですか?症状・治療法について解説!
子宮に関する女性特有の病気と聞くと、ほとんどの方が子宮体がんや子宮頸がんをイメージするのではないでしょうか。
子宮頸がんワクチンが開発され、女性特有のがんが注目を集めています。一方でいまだ研究の進展と治療の発展が望まれている希少性の高いがんもあります。
子宮肉腫(しきゅうにくしゅ)はその希少性がんの一種です。
本記事では子宮肉腫になる確率・症状・治療法について解説します。女性特有がんに関して不安を感じている方は、ぜひお目通しいただければ幸いです。
監修医師:
山本 康博(MYメディカルクリニック横浜みなとみらい)
東京大学医学部医学科卒業 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医 日本内科学会認定総合内科専門医
目次 -INDEX-
子宮肉腫とは?
子宮肉腫は、子宮内の筋肉層や結合組織から発生する悪性腫瘍、いわゆるがんです。
主に子宮内膜や子宮頸部で発症します。子宮肉腫は進行が早く転移しやすい特徴があります。
発症率は低いですが、悪性度がとても高いため、がんを発見した時点ですでに転移やステージが進行している場合がほとんどです。そのため、早期発見が難しい病気であるとされています。
子宮肉腫になる確率
さっそく、子宮肉腫になる確率について解説します。確率だけでなく、子宮肉腫についてもう少し詳しくお伝えしていきましょう。
10万人のうち6人くらいとされる
子宮肉腫はとても稀ながんで、その発症率は10万人のうち6人くらいとされています。
子宮体がんや子宮頸がんなどの女性特有疾患と比べると、発症例は少ない病気です。日本で確認されている年間発症件数もとても少ないため、希少がんとして位置付けられています。
希少がんの1つとされる
子宮肉腫は、子宮の本体である子宮体部に発生することがほとんどです。希少がんの1つとされている子宮肉腫にはいくつかの種類があります。
- 平滑筋肉腫
- 未分化子宮肉腫
- 子宮内膜間質肉腫(EMST)
平滑筋肉腫は、子宮の平滑筋から発生するがんです。子宮筋腫(良性の腫瘍)と似ているため診断が難しい傾向にあります。
未分化子宮肉腫は、子宮の間質から発生するがんです。細胞が未分化している(成長段階にある)ため、悪性度がとても高いがんです。子宮内膜間質肉腫はさらに以下のように細分化されます。
- 低異型度子宮内膜間質肉腫
- 高異型度子宮内膜間質肉腫
低異型度と高異型度は、がんの進行速度を指しています。
低異型度は進行速度がゆっくりで転移や再発のリスクも低いものです。対して、高異型度はがんの進行が速く転移しやすいものになります。転移しやすいのは、肺や肝臓です。
低異型度と高異型度どちらを発症しているかで治療法が大きく異なるため、細胞の異常さに基づいて診断することが重要視されています。しかし、希少ながんは発症例が少ないため、診断が遅れる傾向にあるため注意が必要です。
ホルモン療法と発症リスクの関係
ホルモン療法が子宮肉腫の発症リスクに影響すると、一部の研究では示唆されています。
一方で、低異型度子宮内膜間質肉腫にはホルモン療法が有効な治療法です。平滑筋肉腫・未分化子宮肉腫・高異型度子宮内膜間質肉腫では、ホルモン療法の有用性が認められていません。
ホルモン療法と発症リスクの関係性は低いと考えられていますが、治療法としての有用性は子宮肉腫の種類によることに留意しましょう。
好発年齢がある
子宮肉腫の好発年齢は、40代後半から60代にかけてとされています。
閉経平均年齢の50歳前後で発症するリスクが高まることから、女性ホルモンの影響や更年期症状などが子宮に異常をきたす可能性が高くなるためと考えられています。稀ですが、若年層でも発症しているケースが報告されているため注意が必要です。
あくまでも発症年齢は平均であり、個人差があると認識しておくことが大切です。
子宮肉腫の症状
ここからは子宮肉腫の症状を解説します。子宮肉腫でみられる症状は以下の3つです。
- 不正出血
- 下腹部痛や骨盤の痛み
- おりものの異常
それぞれ詳しくみていきましょう。
不正出血
子宮肉腫の一般的な症状は、不正出血です。
月経周期に関係なく、出血が続く場合には子宮肉腫を発症している可能性が高いかもしれません。特に閉経後に不正出血が発生した場合には、子宮肉腫を考慮する必要があります。
出血量が増加すると、貧血を引き起こす危険性も否定できません。不正出血が発生した場合には、産婦人科に受診することをおすすめします。
下腹部や骨盤の痛み
下腹部や骨盤の痛みを感じられた場合には、すでに子宮肉腫が進行していることが考えられます。
がん細胞が肥大化して臓器を圧迫したり、浸潤したりすることで下腹部や骨盤に鈍い痛みや違和感を覚えることがほとんどです。痛みや違和感が数日続く場合には、早急に病院を受診しましょう。
おりものの異常
おりものに異常がみられることも、子宮肉腫の症状の一つです。
特におりものに血液が混ざっていたり、臭いが強くなったり、おりものの量が増えた場合にはがんが原因である可能性があります。子宮肉腫の進行に伴って、おりものの異常も悪化する傾向にあるため、注意が必要です。
子宮肉腫の治療法
それでは子宮肉腫の治療法を、薬物療法・外科療法・有効な治療法は少ないの3つに分けて解説します。
薬物療法
薬物療法は抗がん剤を用いる化学療法や放射線治療など、いくつかの治療法をあわせて集学的に治療が行われます。
これは子宮肉腫の進行を抑える、または外科療法後の再発防止のために行われることがほとんどです。薬物療法は完治を目指すものではなく、あくまでも限定的な効果を得ることを目的とした治療法になります。
外科療法
外科療法は、子宮肉腫の基本的な治療法です。がんが限局している場合には、子宮を摘出することが一般的です。
子宮肉腫の進行具合によっては、周囲のリンパ筋や臓器も一緒に摘出することもあります。手術後には、薬物療法が併用されることもあります。
有効な治療法は少ない
残念ながら、子宮肉腫に有効な治療法は少ないのが現状です。
子宮肉腫は予後が悪化しやすく、転移や再発もしやすいため、手術でがん細胞を完全に取り除いたとしても完治したとは判断できません。進行具合と治療過程を考慮して、継続的なフォローアップが重要です。
子宮肉腫になる確率についてよくある質問
ここまで子宮肉腫になる確率・症状・治療法などを紹介しました。ここでは「子宮肉腫になる確率」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
子宮肉腫のリスクを高める要因を教えてください。
山本 康博(医師)
好発年齢で先述のとおり、閉経平均年齢の50歳前後で発症するリスクが高まることから、女性ホルモンの影響や更年期症状などが子宮肉腫のリスクを高める要因と考えられています。ただし、希少性のがんには未知数な点が残っているため、断定はできません。子宮筋腫の既往歴がある方や、高齢で出産経験が少ない場合もリスクが高まるとされています。気になる症状がみられた場合には、速やかに病院を受診しましょう。
子宮肉腫にかかった場合の予後について教えてください。
山本 康博(医師)
子宮肉腫にかかった場合の予後は、発見時の進行具合や治療法の適切さに大きく左右されます。進行が速い病気のため、診断が遅れると予後が悪化するのは明白です。反対に、早期に発見と適切な治療を行えば、生存率の改善が期待されます。再発リスクが高いため、治療後であっても定期的な経過観察が重要です。
編集部まとめ
今回は、子宮肉腫になる確率・症状・治療法について解説しました。
希少性がんのため、未解明な部分や治療法が少ないことが現状です。ほかの女性特有の病気に比べて進行が速く、転移しやすく生命を脅かす危険ながんです。
不正出血やおりものが増加したり臭いが変化したりした場合には、速やかに産婦人科に受診することをおすすめします。
少しでも早急に病院へ受診するきっかけになれれば幸いです。
子宮肉腫と関連する病気
「子宮肉腫」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
上記のなかでも子宮筋腫は子宮肉腫と発生しやすい部位や症状に複数共通する点のある病気です。診断に時間を要することもあるため、速やかな受診と治療が求められています。
子宮肉腫と関連する症状
「子宮肉腫」と関連している、似ている症状は5個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
子宮に関する症状はさまざまです。子宮肉腫でなくても、月経にまつわる悩みを抱える方は少なくありません。相談しにくいことだと我慢したり、隠してしまったりする方もいますが、気になる症状を自覚した場合には速やかに産婦人科を受診しましょう。発見しにくい病気だからこそ、早期発見・早期治療が求められています。