「大腸がん手術の入院期間」はご存知ですか?手術後の合併症も解説!【医師監修】
大腸がんの手術を控えている方にとって、入院期間や手術後の回復などに不安を感じることも多いのではないでしょうか。
実際の入院期間はどのくらいか、どのような手術方法があるのか、合併症のリスクはどうかなど事前に知りたい情報がいろいろあるでしょう。
この記事では、大腸がん手術の入院期間や手術の種類、手術後に考えられる合併症をわかりやすく解説します。
手術を控えている方はもちろん、大腸がんに関することを詳しく知りたい方にも役立つ情報ですので、ぜひ最後までご覧ください。
監修医師:
山本 康博(MYメディカルクリニック横浜みなとみらい)
東京大学医学部医学科卒業 医学博士
日本呼吸器学会認定呼吸器専門医 日本内科学会認定総合内科専門医
目次 -INDEX-
大腸がんとは?
大腸がんは、大腸の内側を覆う粘膜に発生する悪性腫瘍を指し、大まかに分類すると結腸がんと直腸がんに分けられます。特に日本では、男女ともにがんのなかでも多くみられる種類の一つです。
大腸がんは、早期に発見すれば治療の成功率が高く、適切な手術や治療が行われれば予後(治療後の経過)も良好です。しかし、進行がんの場合は手術や化学療法が必要となり、身体への負担も大きくなります。
大腸がんは、早期の段階では自覚症状が少なく、検診や偶然の診断で見つかりやすい傾向です。しかし、進行すると便秘や下痢・血便・体重減少・腹痛などが現れることがあります。これらの症状が続く場合は早期に医療機関を受診し、検査を受けることが重要です。
治療は、がんが切除できる場合には内視鏡による治療や外科手術が勧められます。なお、内視鏡治療は、がんが粘膜内または粘膜下層への軽度浸潤にとどまっていることが適応の目安となります。
大腸がん手術の入院期間
大腸がんの手術に必要な入院期間は、手術方法や手術後の回復状況によって異なります。一般的に手術後の入院期間は、結腸がんで7日から10日間程度です。直腸がんの手術で、人工肛門増設術を伴う場合は9日から14日間程度が目安となります。
手術方法によっても差があるため、主な手術方法ごとに詳しくみていきましょう。
開腹手術の場合
開腹手術は、腹部を大きく切開してがんを直接取り除く方法です。この手術は、進行した大腸がんや腹腔鏡では対応できないケースに適用されることが多くあります。開腹手術では身体への負担が大きいため、術後の回復に時間を要します。
一般的な入院期間は 7日間から10日間程度が目安ですが、合併症の有無や術後の経過次第で延長することもあるでしょう。
腹腔鏡手術の場合
腹腔鏡手術は、お腹に5か所程度小さな切開を行い、そこから腹腔鏡といわれるカメラと手術器具を挿入して行う低侵襲の方法です。この方法は、開腹手術と比べて身体への負担が少なく、手術後の回復が早いのが特徴です。
腹腔鏡手術の場合は、一般的には手術後7日で退院が可能となります。ただし、体調や術後の合併症の発生状況により変動することがあります。
ロボット支援手術(ダヴィンチ手術)の場合
ロボット支援手術(ダヴィンチ手術)は、ロボット技術を活用して行う精密な手術方法です。医師が操作するロボットアームで通常の腹腔鏡よりも正確に手術を進められるため、出血が少なく、手術創を小さく抑えることができます。
この方法も低侵襲であるため、入院期間は腹腔鏡手術と同様に、手術後7日間程度です。技術の進歩により、患者さんへの負担をさらに軽減しやすい点が注目されています。
大腸がんの手術の種類
大腸がんの手術には、開腹手術・腹腔鏡手術・ロボット支援手術の3種類が一般的です。各手術方法にはそれぞれの利点と適応しやすさがあり、選択は患者さんの状態やがんの進行具合に基づいて決定されます。
それぞれの特徴を詳しくみていきましょう。
開腹手術
開腹手術は、腹部を広く切開して直接がんを切除する方法です。医師ががんの範囲を直接確認できるため、進行がんで周囲の臓器まで広がっているケースや複雑なケースにも対応できます。
ただし、身体への負担が大きく、術後の回復には時間がかかることが一般的です。そのため、患者さんの体力や全身状態の把握が重要となります。
腹腔鏡手術
腹腔鏡手術は、近年普及が進んでいる低侵襲の手術方法です。小さな切開からカメラや専用器具を挿入し、モニターを見ながら手術を行います。この方法は、出血が少なく、術後の回復が早いという利点があります。
ロボット支援手術(ダヴィンチ手術)
ロボット支援手術は、精密な操作が可能なロボットであるダ・ヴィンチを用いて行われます。医師が、高解像度の映像とロボットアームによる細かい操作による手術を行うため、手元で操作するよりも精度が高いのが特徴です。
この手術法は、患者さんの身体への負担を軽減し、術後の機能回復を向上させることが期待されています。ただし、進行がんには適さない場合もあるため、受診機関で相談するとよいでしょう。
大腸がん手術の合併症
手術に伴う合併症のリスクはゼロではありません。手術後に起こりうる主な合併症を詳しくみていきましょう。
腸閉塞
腸閉塞の原因は、主に手術後に腸の組織や臓器同士がくっついて起きる癒着です。腸内の内容物が移動できなくなり、腹部膨満感や腹痛・吐き気・嘔吐などの症状が現れます。
この症状が出た際は食事や水分摂取を中止し、点滴を行い、鼻から管を入れて胃液や腸液を排出します。場合によっては再手術が必要になることもあるでしょう。
縫合不全
切除部位の縫合が完全に癒着しない場合、縫合不全が発生することがあります。内容物が漏れることで感染症や腹膜炎を引き起こす可能性があるため、早期の診断と治療が必要です。
腹膜炎の症状があるときは、再手術と人工肛門増設術が行われます。
創部感染
創部感染は、手術で切開した部位(創部)に起こる細菌感染のことです。赤みや腫れ・化膿・発熱を引き起こします。治療は、創部の膿を出し、抗生剤の投与を行います。腹膜炎の症状がある場合は、再手術が必要になることもあるでしょう。
便秘・下痢
手術後の腸の働きが一時的に乱れ、下痢や便秘の症状が現れることがあります。特に腸の一部を切除した場合、腸内の働きが変化するため、便の状態が不安定になることもあるでしょう。
これらの症状は通常、時間とともに改善しますが、場合によっては食事や薬の調整が必要になります。
大腸がん手術の入院期間についてよくある質問
ここまで大腸がんの入院期間や手術の種類・合併症などを紹介しました。ここでは「大腸がん手術の入院期間」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
大腸がん手術で行われるリンパ節郭清とはどのような手術ですか?
山本 康博(医師)
リンパ節郭清は、がんの転移が考えられる周囲のリンパ節を切除する手術です。これにより、がんの進行や再発のリスクを抑えることが期待されます。リンパ節郭清は、特に進行がんの治療や再発予防で重要な役割を果たします。
退院後どのくらいで仕事復帰できますか?
山本 康博(医師)
退院後の仕事復帰は、一般的に退院した翌日以降から可能です。ご自身の体調と相談しながら、無理のない範囲で復帰するようにしましょう。
編集部まとめ
今回は大腸がん手術の入院期間や手術の種類・合併症について詳しく解説しました。
大腸がんは早期発見・早期治療を行えば、治療後の経過は良好です。定期的に大腸がん検診を受け、要精密検査となった場合は医療機関を受診してください。
また、これから手術を受ける方は退院後も適切な生活習慣や定期的な受診により、再発のリスクを抑えることが大切です。
ご自身またはご家族で、気になる症状や不安なことがあれば、一人で悩まずできるだけ早く医療機関に相談してください。
大腸がんと関連する病気
「大腸がん」と関連する病気は5個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
これらの疾患を適切に管理することで、大腸がんの予防につながります。定期的な検査と早期の治療が、がんの予防においてとても重要です。
大腸がんと関連する症状
「大腸がん」と関連している、似ている症状は9個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
これらの症状は大腸がん以外でみられるものもありますが、放置しておくとがんが進行する場合があります。早期発見のためにも、このような症状に気付いた場合は、早期に医療機関を受診することが重要です。
参考文献