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「大腸がんは遺伝することがある」のかご存じですか? 自分や子どもへの影響を医師が解説

 公開日:2025/02/27
「大腸がん」は遺伝するのかご存じですか 自分や子どもへの影響を医師が解説

大腸がんは日本でも増加傾向にあり、遺伝が関係することも知られています。しかし、すべてが遺伝によるものではなく、生活習慣も影響します。遺伝のリスクはどの程度あるのでしょうか? また、予防は可能なのでしょうか? 今回は、「遺伝性大腸がん」と「家族性大腸がん」の違い、発症リスク、検査方法や予防のポイントについて、池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック東京豊島院 院長・消化器病専門医の柏木宏幸先生に解説していただきました。

柏木 宏幸

監修医師
柏木 宏幸(池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック 東京豊島院)

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2010年埼玉医科大学卒業後、沖縄にて初期臨床研修をおこない、東京女子医科大学病院消化器病センター内科へ入局。女子医科大学病院消化器内科助教となり複数の出向病院で勤務し、2023年4月に池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック開業。日本内科学会総合内科専門医、日本消化器病学会消化器病専門医、日本消化器内視鏡学会消化器内視鏡専門医、一般社団法人日本病院総合診療医学会認定病院総合診療医、難病指定医。

大腸がんは遺伝するのか?

大腸がんは遺伝するのか?

編集部編集部

大腸がんは遺伝する病気なのでしょうか?

柏木 宏幸先生柏木先生

遺伝性大腸がん」と呼ばれるものは、すべての大腸がんの約5%とされています。これらは原因となる遺伝子が明らかになっており、血縁者(親・兄弟・叔父・叔母・甥・姪・従兄弟など)に高頻度で大腸がんが発生します。一方で、血縁者複数名に大腸がんが発症しているものの、原因となる遺伝子異常が明らかでない場合は「家族性大腸がん」と呼ばれ、大腸がんの約20〜30%を占めます。大腸がん全体の約70%前後は、加齢や生活習慣、環境が原因と考えられています。運動不足、飲酒、喫煙、高脂肪・低繊維の食生活などが影響し、大腸の粘膜に遺伝子異常が積み重なって発生するとされています。

編集部編集部

遺伝性の大腸がんにはどのような特徴がありますか?

柏木 宏幸先生柏木先生

遺伝性の大腸がん(遺伝性大腸がん)は、

  • 若年(40歳未満)で発症しやすい
  • 大腸がんが繰り返しできやすい
  • 一度に複数の大腸がんができやすい
  • 大腸以外の臓器にもがんができやすい
  • 胃、大腸に多数のポリープができる

といった特徴があります。

編集部編集部

親や兄弟に大腸がんをわずらった人がいる場合、自分のリスクはどれくらい上がるのでしょうか?

柏木 宏幸先生柏木先生

親や兄弟が「遺伝性大腸がん」であった場合に、遺伝する可能性は50%といわれています。しかし、遺伝した場合でも必ず大腸がんになるわけではありません。発症する可能性は高くなりますが、中には発症しない方もいます。しかし、その遺伝がさらに子孫に遺伝され、孫の世代で大腸がんを発症することもあります。「家族性大腸がん」の場合でもリスクをある程度配慮し、若いうちからの検査や定期検査などの対策はしておくべきだと思います。

遺伝性のリスクを早期発見する方法

遺伝性のリスクを早期発見する方法

編集部編集部

遺伝による大腸がんのリスクは、どのような検査で確認できますか?

柏木 宏幸先生柏木先生

遺伝性大腸がんの頻度は少ないため、病歴や家族歴、大腸ポリープの多発などから可能性が疑われた場合、組織検査や血液検査による遺伝子検査がおこなわれます。遺伝子検査は血液検査でおこなわれますが、専門的な検査となりますのでご家族の方は遺伝相談外来や遺伝カウンセリング外来で相談することをおすすめします。また、大腸内視鏡検査でのスクリーニング検査も大変重要です。

編集部編集部

遺伝性のリスクがある場合、何歳からどのような定期検査を始めるべきでしょうか?

柏木 宏幸先生柏木先生

「家族性大腸腺腫症」や「リンチ症候群」といった代表的な「遺伝性大腸がん」は、50%の確率で遺伝することからご家族が診断された場合には、早い段階で専門医療機関での遺伝カウンセリングが推奨されます。その場合には、大腸内視鏡検査も10代や20代での検査が勧められます。特に、血縁者に大腸がんを発症したという場合には、その人が発症したときの年齢よりも10歳早く大腸内視鏡検査を受けることが望ましく、遅くても40歳までに検査を受けていただくと良いでしょう。気になる方は20歳、30歳代の方でも検査を受けていただくことをおすすめします。

編集部編集部

遺伝性のリスクがある場合、どのくらいの頻度で検査を受けるべきでしょうか?

柏木 宏幸先生柏木先生

遺伝性のリスクがある場合には、1年ごとの定期検査が推奨されます。ただし、遺伝的な要因には個人差があり、「遺伝性大腸がん」と「家族性大腸がん」では大きく状況が変わるため、検査の頻度や検査の内容は医師に相談することをおすすめします。明確な指示がない場合、遺伝性のリスクを考慮して1年ごとに検査をしておくと安心です。

遺伝性のリスクと大腸がんを予防する方法

遺伝性のリスクと大腸がんを予防する方法

編集部編集部

遺伝性のリスクがあっても、大腸がんを防ぐことは可能ですか?

柏木 宏幸先生柏木先生

基本的には「大腸カメラを若いうちから定期的におこなうこと」が、早期発見・予防に大切です。一部の遺伝性大腸がんでは予防的に大腸切除をおこなう場合もありますので、遺伝性大腸がんとご家族が診断された場合には、早期に遺伝カウンセリングをおこない、原因となる遺伝子異常があるか確認する必要があります。

編集部編集部

大腸がんを予防するためには、日常生活でどのようなことを意識すべきでしょうか?

柏木 宏幸先生柏木先生

一番大切なことは若いうちに検査(大腸カメラ)をすること、その後は医師の指示に従って定期的に大腸検査を受けることです。その他は一般的な大腸がんの予防にもなります。

  • 偏った食生活の改善
  • 加工肉や赤肉類の食べすぎに注意(極端な制限は不要)
  • カルシウムの摂取
  • 食物繊維の摂取
  • 節酒
  • 禁煙
  • 運動不足の解消
  • 腸内環境を整える
  • 肥満を改善する

といったことが挙げられます。

編集部編集部

子どもの頃からできる大腸がん予防の方法はありますか?

柏木 宏幸先生柏木先生

血縁者(親・兄弟・叔父・叔母・甥・姪・従兄弟など)に遺伝性大腸がんと診断された方がいる場合には、遺伝子カウンセリングの受診をおすすめします。遺伝性大腸がんの頻度は高くないため、家族性大腸がんの方のほうが多いと思います。血縁者に大腸がんと診断された方がいる場合には、大腸カメラを受けること、大腸がんのリスクになりにくい環境(カルシウム摂取や食物繊維の摂取、運動、肥満の予防など)を心がけましょう。

編集部まとめ

大腸がんは遺伝が関係して発症する場合もあると教えていただきました。遺伝のほかにも、加齢や生活習慣が大きく影響しますが、家族に大腸がんを発症した人がいる場合、遺伝性のリスクを考慮し、早期の検査や予防策を講じることが重要です。定期的な大腸カメラや健康的な生活習慣の維持により、発症リスクを減らすことができます。本稿が読者の皆様にとって、大腸がんの予防や早期発見について考えるきっかけとなりましたら幸いです。

医院情報

池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック東京豊島院

池袋ふくろう消化器内科・内視鏡クリニック東京豊島院
所在地 〒170-0013 東京都豊島区東池袋1-21-1 ラグーン池袋ビル6F
アクセス 「池袋駅」35番出口より徒歩3分
「東池袋駅」2番出口より徒歩5分
診療科目 消化器内科、内視鏡内科、内科
電話番号 03-5992-5577

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