100万人に数人「ランゲルハンス細胞組織球症」の特徴的な症状とは?生存率も医師が解説!

ランゲルハンス細胞組織球症とは?メディカルドック監修医がランゲルハンス細胞組織球症の症状・原因・検査法・予後・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

監修医師:
鎌田 百合(医師)
目次 -INDEX-
「ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)」とは?
ランゲルハンス細胞組織球症(Langerhans cell histiocytosis; LCH)は、樹状細胞の一つであるランゲルハンス細胞という細胞ががん化した病気です。ランゲルハンス細胞は免疫系の細胞の一つですが、これが皮膚、骨、リンパ節、脳、肺などで増殖し、さまざまな症状が起こります。
ランゲルハンス細胞組織球症は一つの臓器に限局した単一臓器(single-system:SS)型と多臓器(multi-system:MS)型に分類されます。MS型はリスク臓器(risk-organ;肝臓、脾臓、造血器)の有無でMS-RO(-)型とMS-RO(+)型に分けられます。
小児に比較的多く、発症は小児100万人あたり5例程度ですが、成人にも発症する病気です。再発を繰り返す病気ですが、難病指定はされていません。
この記事では、ランゲルハンス細胞組織球症に現れる症状や治療法について詳しく解説します。
【成人】ランゲルハンス細胞組織球症の代表的な症状
成人のランゲルハンス細胞組織球症は肺病変が多いとされています。そのため、以下のような症状が起こりやすいとされています。喫煙が誘引となり発症すると考えられているものの、発症機序はよくわかっていません。
咳嗽
肺に腫瘍細胞が浸潤することが刺激となり、咳嗽が起こります。成人のLCHのおよそ半数に起こるとされています。咳嗽が続く場合は呼吸器内科を受診しましょう。
息切れ
肺への病変の浸潤により肺の機能が低下します。間質性肺炎といって肺の壁が肥厚して硬くなります。酸素交換が十分にできず、息切れを起こします。日常生活で息苦しさを感じる場合は、早めに呼吸器内科を受診し、レントゲンやCT検査を受ける必要があります。
胸痛
肺が破れてしぼんでしまう病気である気胸を発症する場合があります。気胸を起こすと胸痛を伴う場合があります。突然の激しい胸の痛みや呼吸困難が現れた場合は、緊急性が高いため、速やかに医療機関を受診してください。
【小児】ランゲルハンス細胞組織球症の代表的な症状
ランゲルハンス細胞組織球症は、ランゲルハンス細胞が全身の臓器に浸潤するため、多彩な症状が起こります。以下に代表的な症状について解説します。
骨の痛み
ランゲルハンス細胞組織球症で最もよく見られる症状です。
痛みを伴うこともあれば無症状の場合もあります。少し弾力性がある腫瘍です。
小児のSS型のほとんどは骨の病気です。骨の病変の中では、頭蓋骨の病変が半数を占めています。打撲に伴って大きくなることもあり、頭をぶつけた際に気づかれることがあります。骨が溶け、骨に丸く穴があくこともあります。
皮疹
水疱、皮疹、膿疱など多彩な症状が出現します。潰瘍ができる場合もあります。しかし、ランゲルハンス細胞組織球症に特徴的な皮疹はありません。皮疹だけが出現した場合は、湿疹などランゲルハンス細胞組織球症以外の病気を疑うことが多く、生検ではじめて診断される場合も多いです。皮疹は体、頭部、外陰部などに多く出現する傾向にあります。
尿崩症
脳にある下垂体という部分の障害により尿崩症を発症する頻度が高いとされています。尿崩症とは、尿の量をコントロールする抗利尿ホルモンが十分に分泌されない病気です。尿が大量に出ることで喉が乾き水分をたくさん摂ってしまう、多飲多尿が起こります。多飲多尿がみられる場合は小児科や内分泌内科を受診しましょう。
ランゲルハンス細胞組織球症を発症する原因
ランゲルハンス細胞組織球症が発症する原因には、以下の3つが関与していると考えられています。
分子生物学的異常
ランゲルハンス細胞組織球は、発がん性変異であるBRAFV600Eという遺伝子変異がおよそ半分の患者で認められます。ほかにもMAP2K1変異などといった、遺伝子の発がん性変異が認められます。
骨髄由来の未熟樹状細胞が起源となり発がん性変異を起こすことがわかっています。
炎症細胞浸潤
ランゲルハンス細胞組織球は炎症細胞を動員します。炎症物質とよばれる、炎症性サイトカインやケモカインを多量に分泌することで激しい炎症を起こし、体の組織を破壊します。
環境要因
発症には環境要因も関与している可能性があります。タバコの煙、化学物質などの特定の環境因子が発症リスクを増加させると考えられています。
ランゲルハンス細胞組織球症の検査法
行う検査は病変がある部分によって異なりますが、おもに以下のような検査をおこないます。
組織診
ランゲルハンス細胞組織球症の確定診断は、病変部位を取って(生検といいます)病理学的に診断します。細胞の形態や、免疫染色でランゲルハンス細胞組織球に特徴的なCD1aやCD207(langerin)が染色されるかを調べ、腫瘍性に増殖しているか、炎症細胞があるかを確認します。
皮膚の病変なら皮膚を、頭蓋骨の病変であれば頭蓋骨の生検を行います。病変の部位によって侵襲度が異なるため、場合によっては検査のための入院が必要となることもあります。
血液検査
血液検査だけではランゲルハンス細胞組織球症の確定診断はできません。しかし炎症を反映してCRPや赤沈などが上昇していることが多いとされています。また、肝臓や腎臓などの臓器障害がないかどうかなどの確認も行います。
画像検査
骨の病変の確認のためにレントゲン、CT、骨シンチグラフィなどを行います。
頭部のレントゲンでは頭蓋骨に穴があいたような「抜き打ち像(punched out lesion)」とよばれる像が認められます。CTでは肺の病変の確認も行います。脳の病変の確認のために頭部MRI検査を行う場合もあります。
【成人】ランゲルハンス細胞組織球症の予後
症例数が少ないですが、2012年の調査では10年生存率は90%を超える報告もあります。小児と同様、MS型の生命予後はやや劣るとされています。
成人でも小児と同様の晩期合併症が起こり得るため、長期のフォローアップが必要です。
【小児】ランゲルハンス細胞組織球症の予後
病型や臓器浸潤などによって生命予後はおおきく異なります。国立成育医療研究センターの報告によると、生存率はSS型が100%、MS-RO(-)は99%、MS-RO(+)は80%程度です。
一度完治しても、MS型では30~40%の患者さんで再発を認めます。骨に再発することがほとんどです。しかし初回の治療が効くことが多く、生命予後は悪くありません。
晩期合併症として骨痛や難聴、尿崩症などが認められる場合があります。発症から10年以上経過してから起こる場合もあるため、完治したあとも長期のフォローアップが必要です。
ランゲルハンス細胞組織球症の主な治療法
治療法は、どの部位にどれだけ病変があるかによって異なります。主な治療法を示します。
無治療経過観察
単一骨病変や皮膚の単独病変では、自然軽快が期待できるため無治療経過観察を行います。ただし、単一病変であっても脊髄や視神経の圧迫がある場合や痛みが強い場合、中枢神経浸潤のリスクが高い場合(耳の後ろ、目の周り、脳の底、副鼻腔などの骨の病変がある場合)は積極的に化学療法が行われる場合もあります。
全身化学療法
MS型では化学療法が行われます。ビンクリスチン、ステロイドなどを含む1年間の化学療法が行われます。化学療法が奏効しない患者さんには造血幹細胞移植も考慮されます。
化学療法を行う場合は、入院の上施行します。長期的な治療になるため入退院を繰り返しながら投与が行われます。
ステロイド局所療法
皮膚病変のみの場合は、ステロイド局所療法が行われます。ただし、MS型に進行する可能性もあるため注意深く経過観察が必要です。
「ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)」についてよくある質問
ここでは「ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
ランゲルハンス細胞組織球症の死亡率はどれくらいですか?
鎌田 百合 医師
SS型の予後はきわめて良好です。しかし、MS型になると臓器浸潤の有無で予後が異なります。MS-RO(+)型は約10~20%が死亡するとされています。MS-RO(-)型の生命予後は良好です。しかしどの型であっても、再燃や、晩期合併症が起こる場合があるため長期のフォローアップが必要です。
ランゲルハンス細胞組織球症は何人に1人の割合で発症する疾患ですか?
鎌田 百合 医師
ランゲルハンス細胞組織球症はたいへんまれな疾患です。小児では100万人に5人程度、15歳以上では100万人あたり1人程度とされています。小児に多い疾患ですが、成人にも発症する疾患です。
まとめ
ランゲルハンス細胞組織球症はまれな病気の上、経過もさまざまであるため症状が出てもすぐに診断がつかない場合も多い病気です。患者さんは整形外科、耳鼻科、脳外科、皮膚科、呼吸器科などさまざまな科を受診します。しかし珍しい病気のためなかなか診断がつかないこともあります。
小児では頭蓋骨の骨病変の頻度が高いとされています。転倒後に頭のこぶが引かない場合は注意が必要です。
ランゲルハンス細胞組織球症が疑われる場合は、小児科を受診し医師に相談しましょう。
「ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)」と関連する病気
「ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
内分泌系
ランゲルハンス細胞組織球症はとても珍しい病気で、診断されるまで時間がかかる可能性があります。様々な病気がランゲルハンス細胞組織球症の一つの症状として現れ、それを詳しく検査していくと確定診断に結びつくことがあります。
「ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)」と関連する症状
「ランゲルハンス細胞組織球症(LCH)」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状の詳細についてはリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
ランゲルハンス細胞組織球症は、全身に多彩な症状が見られる病気です。
参考文献




