「腎臓がん」を発症するとどんな「痛み」を感じる?痛みを感じる部位も医師が解説!
腎臓がんを発症するとどんな痛みを感じる?Medical DOC監修医がどこに痛みを感じるか・転移しやすい部位・末期症状・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
中村 雅将(医師)
目次 -INDEX-
「腎臓がん」とは?
腎臓がんは腎細胞癌(Renal cell carcinoma)とも言われ、尿細管の上皮細胞が癌化したもので腎臓に発生する悪性腫瘍の一つです。明確な原因はわかっていませんが、いくつかのリスク要因が関係していると考えられており、喫煙や肥満、高血圧、年齢(男性にやや多い)が発症の危険因子とされています。また一部の遺伝病との関連も示唆されています。
腎臓がんを発症するとどんな痛みを感じる?
腎臓がんに関連する痛みは、がんの進行状況や場所によって異なり、初期段階ではほとんど痛みがないことも多いです。腎臓がんによる痛みは、がん細胞が増殖し腎臓周辺の組織や神経を圧迫する場合や、転移が生じた場合、がんの進行に伴い強くなることがあり、治療とともに痛みをコントロールすることが重要です。がんによる痛み(癌性疼痛)はQOL(生活の質)を著しく低下させるものですが、医師に相談し適切な対処法を講じることで、QOLを維持することが可能です。
腎臓がんに伴う痛みは、以下の方法で管理されます
鎮痛剤:痛みの程度に応じて、非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)やオピオイド系の鎮痛剤が処方されます。
神経ブロック:がんによる神経の圧迫による痛みが強い場合には、痛みのある部位に神経ブロックを行うこともあります。
放射線療法:骨転移などに伴う痛みには、放射線治療が効果的な場合があります。
その他の治療法:アブレーションや免疫療法、分子標的療法など、がんの進行を抑える治療も痛みの軽減に役立つことがあります。
腎臓がんを発症すると、どこにどんな痛みを感じる?
腎臓周辺の痛み(側腹部痛)
腎臓は背中の腰よりやや上の左右に位置するため、腎臓がんによる痛みは通常、背中の下部から側腹部(わき腹)にかけて感じられます。痛みは鈍い痛みや圧迫感として感じることが多いですが、進行すると鋭い痛みになることもあります。腫瘍が腎臓内で大きくなり、腎臓の被膜や周囲の組織を圧迫するためです。
腰や背中の痛み
背中の下部、特に痛みが片側に限定されることが多いです。この痛みも進行とともに徐々に強まることがあり、日常生活に支障をきたすこともあります。腫瘍が腎臓の後ろ側や周辺の神経に近づくことにより、神経を圧迫して痛みが生じることがあります。
骨への転移による痛み
腎臓がんが骨に転移すると、骨の痛みが生じることがあります。骨の痛みは、特に夜間に強くなる傾向があり、骨折のリスクも高まります。骨への転移が進行することで骨が弱くなり、痛みが発生します。転移の箇所によっては、骨の圧迫や破壊が痛みの原因となります。
腹部の痛みや膨満感
腫瘍が大きくなると、腹部に重たい感じや膨満感を覚える場合があります。腎臓や周囲の臓器への圧迫によるものです。また、腫瘍の増殖により血管や腸の働きが影響を受けることもあります。
腎臓がんから転移しやすい部位とその症状
腎臓がんが転移すると、転移先の臓器や組織によってさまざまな症状が現れます。初期の段階では無症状のこともありますが、転移が進むと各部位に特有の症状が現れ、生活に影響を及ぼすこともあります。以下に、腎臓がんの主な転移先と、そこで見られる症状について解説します。
腎臓がんの治療は泌尿器科が主体となって行われることが一般的ですが、遠隔臓器への転移がみられるようになると、他の診療科とも連携して治療がなされます。
肺への転移
腎臓はもともと血流が豊富な臓器であることもあり、腎臓がんは血流を介して遠隔臓器に転移しやすいとされます。肺の転移は比較的多くみられます。初期のうちは無症状のこともありますが、症状が進行すると咳や息切れ・呼吸困難、胸の痛みといった症状が生じやすくなります。肺へ転移がみられた場合は免疫療法や分子標的療法、外科手術、放射線療法といった治療が選択されます。一般的に外科手術は呼吸器外科、放射線療法は放射線科と連携して治療することになります。
骨への転移
骨転移は痛みが強く、生活の質(QOL)に大きく影響を及ぼします。特に脊椎への転移では、神経圧迫による症状が出やすく、場合によっては緊急の対応が必要になることもあります。骨転移による脊椎の圧迫や骨折リスクが高い場合、安定性を確保するための手術が検討されることがあります。その場合、整形外科が手術にあたります。
手術が選択されない場合でも、骨に転移したがん細胞を放射線で破壊し、痛みを和らげるために放射線療法が選択されます。骨を強化する薬剤(ビスフォスフォネート、デノスマブ)が選択されることがありますが、がんによる骨の破壊を抑制することで骨密度を維持し、骨折リスクを下げる目的で使用されます。
肝臓への転移
肝臓への転移は腫瘍が大きくなるまでは無症状のことが多いのですが、進行するのに伴って全身的な衰弱や食欲不振などを起こして体調全般に悪影響を及ぼすことがあります。
他には、転移巣により肝臓が腫れ右上腹部の違和感や鈍痛を自覚することがあります。あるいは転移巣が胆管(胆汁という消化酵素の通り道)を圧迫すると皮膚や眼球結膜(白目の部分)が黄色くなる黄疸がみられることがあります。
免疫療法と分子標的療法は肝臓への転移にも有効で、腎臓がんそのものの進行を抑える効果があります。また、肝臓内の小さな転移には消化器内科(肝胆膵内科)や消化器外科(肝胆膵外科)あるいは放射線科で、ラジオ波や冷凍療法を用いてがん細胞を直接破壊するアブレーション治療が行われる場合があります。
脳への転移
脳への転移は症状が進むと、生命に関わる可能性が高く早期の診断と治療が必要です。
脳へ転移した場合、転移した場所や転移巣の大きさによって症状の現れ方にバリエーションがありますが、頭痛や吐き気・嘔吐、視覚・聴覚の異常、運動障害といった症状がみられるようになります。また、脳転移が進行すると記憶や判断力に影響が出たり、意識障害を来したりすることもあります。
脳転移の症状に対してはいくつかの選択肢がありますが、脳浮腫を緩和するために副腎皮質ステロイド剤が使用されることがあります。適応が限られますが脳神経外科で転移巣の外科的切除が行われることがあります。放射線科によって放射線療法がおこなわれることがありますが、ガンマナイフや全脳照射が転移巣の数や大きさや部位などを考慮して実施されます。
リンパ節への転移
腎臓がんでは腎臓周辺や腹部のリンパ節転移がよくみられます。初期には無症状の事が多いのですが、転移したリンパ節が腫大することにより、他の組織を圧排することで、違和感や圧迫感を自覚することがあります。手術によってリンパ節切除が行われることがあります。また免疫療法や分子標的療法がリンパ節転移に効果を示すことがあります。
腎臓がんの末期症状
痛み
腎臓がんの進行に伴い、背中や側腹部、骨や他の部位に痛みが広がることがあります。鎮痛薬やモルヒネなどのオピオイド系鎮痛剤が処方されることがあります。専門医により適切な薬剤と投与量が判断されるため、自己判断で薬を変更するのは避けてください。
疲労・体力低下
極度の疲労感や体力の減少が見られ、日常生活が困難になることがあります。休息と、可能な範囲での軽い運動が推奨されることがありますが、無理をしないことが大切です。
食欲不振と体重減少
食欲が低下し、体重が著しく減少する場合があります。食欲を維持するために消化の良い食事を少量ずつ摂取し、栄養補助食品の利用も検討することができます。
呼吸困難
がんが肺に転移した場合、息切れや呼吸が苦しいといった症状が出ることがあります。呼吸を楽にするために、酸素療法を行うなどの処置をします。
腎臓がんの治療法
腎臓がんの治療選択は個々のケースによって異なるため、最適な治療法を決めるためには、専門医との相談が重要です。腎臓がんは通常、泌尿器科が主体となって治療にあたります。腎臓がんの治療には、がんのステージ(進行度)、患者の体調や年齢、その他の健康状態などに応じて、さまざまな方法が選択されます。主な治療法は以下の通りです。
外科手術
腎臓がんは手術による切除が治療の基本です。一般的には、がんがある側の腎臓をすべて切除する腎摘出術が選択されます。しかし最近は健康診断で早期に発見されることが多くなってきており、がんが生じている部位だけを切除する部分切除術が行われる場合も増えています。
手術の方法には開放手術と腹腔鏡手術があり、腎摘出術でも部分切除術も選択されます。腎部分切除術ではロボット支援手術も行われるようになってきました。外科手術は入院で行われ、術式や手術方法は、がんの大きさや転移の有無・程度に加えて全身状態や合併症などを考慮して決定されます。
腹腔鏡手術やロボット支援手術は体への負担が少なく回復が早いこともあり、およそ5~10日間程度の入院が見込まれます。一方開腹手術は回復に時間がかかる傾向にあり2週間程度の入院期間がみこまれます。
放射線療法
放射線を用いてがん細胞を殺す治療法です。腎臓がんには一般的には用いられませんが、手術が難しい場合や転移がある場合に用いられることがあります
腎臓がんに対する放射線療法は通常、入院を必要としないケースが多いです。放射線療法は外来通院しながら受けられることが一般的ですが、体力が低下している場合や、脳や骨転移により強い痛みや転移による症状がある場合などでは1~2週間程度の入院が必要になります。
化学療法
腎臓がんは化学療法への反応が低いことが多く、一般的には第一選択とはなりません。しかし、他の治療が効果を示さない場合や、転移性の腎臓がんに対しては使用されることがあります。
免疫療法
免疫チェックポイント阻害薬(例:ペンブロリズマブなど)やインターフェロンなどを使用して、患者の免疫システムを活性化し、がん細胞を攻撃する治療法です。近年では腎臓がんの治療に効果があるとされています。
免疫療法や後述する分子標的療法は多くの場合、外来で治療が行われるため、入院が不要なケースがほとんどです。ただし、治療開始時は新しく使う薬剤の副作用の有無を確認する目的で最初の1~2週間ほど入院しながら経過観察をすることがあります。患者さんの体調がすぐれず外来通院がむつかしい場合や副作用の管理や治療が必要になった場合にも入院が検討されます。
分子標的療法
腎臓がんの成長に必要な特定の分子や経路を阻害する薬剤を用います。主に、血管新生阻害剤やmTOR阻害剤などが使用されます。分子標的薬には、ソラフェニブ、スニチニブなどが含まれ、進行性や転移性腎臓がんに対して効果を発揮することがあります。
アブレーション療法
腎臓がんに対するアブレーション療法は、高周波(ラジオ波アブレーション)や冷凍(クライオアブレーション)を使って腫瘍を直接破壊する治療法です。これらの方法は、がんが小さい場合や手術が難しい場合に行われ、体への負担が少なく、回復も早いのが特徴です。
ラジオ波アブレーションは針を通して高周波エネルギーで熱を発生させ腫瘍を焼灼し、冷凍アブレーションは冷却ガスで凍らせて腫瘍を壊死させます。これらは、主に画像(CTや超音波)をガイドにして行われるため、正確に腫瘍部分のみを治療できます。
アブレーション療法を行う場合、入院期間は通常1~3日間程度が目安となります。出血や感染症などの合併症がおこった場合や全身状態の管理が必要な場合には入院期間がのびることがあります。
経過観察
がんが小さく進行が遅い場合は、積極的な治療を行わず、定期的に画像検査を行い、がんの進行を観察することもあります。
免疫療法
免疫チェックポイント阻害薬(例:ペンブロリズマブなど)やインターフェロンなどを使用して、患者の免疫システムを活性化し、がん細胞を攻撃する治療法です。近年では腎臓がんの治療に効果があるとされています。
免疫療法や後述する分子標的療法は多くの場合、外来で治療が行われるため、入院が不要なケースがほとんどです。ただし、治療開始時は新しく使う薬剤の副作用の有無を確認する目的で最初の1~2週間ほど入院しながら経過観察をすることがあります。患者さんの体調がすぐれず外来通院がむつかしい場合や副作用の管理や治療が必要になった場合にも入院が検討されます。
分子標的療法
腎臓がんの成長に必要な特定の分子や経路を阻害する薬剤を用います。主に、血管新生阻害剤やmTOR阻害剤などが使用されます。分子標的薬には、ソラフェニブ、スニチニブなどが含まれ、進行性や転移性腎臓がんに対して効果を発揮することがあります。
経過観察
がんが小さく進行が遅い場合は、積極的な治療を行わず、定期的に画像検査を行い、がんの進行を観察することもあります。
「腎臓がんの痛み」についてよくある質問
ここまで腎臓がんの痛みなどを紹介しました。ここでは「腎臓がんの痛み」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
腎臓がんを発症すると腰痛を発症しますか?
中村 雅将 医師
腎臓がんは発症初期には自覚症状が目立たないことが多く、腰痛を自覚するようになった場合には、腎臓がんが進行していることが危惧されます。腰痛を軽視せず、まずは最寄りの医療機関の受診を検討しましょう。
編集部まとめ
他のがんでも言えることですが、腎臓がんは、がんのステージや治療に対する反応によって予後(生存率)は変わってきます。がんの種類を問わず、早期発見と早期治療が重要ですから定期的に健康診断をうけ、気になる症状がある場合には早めに医師に相談することが大切です。また、禁煙や健康的な体重を維持することや定期的な運動といった健康的な生活習慣も予防に役立つ可能性があります。日頃からご自身の体調に向き合うことが重要です。
「腎臓がん」と関連する病気
「腎臓がん」と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
腎臓がんに関連する病気には、腎臓がんの発生リスクを高めるものや、腎臓がんに伴って起こりやすい疾患がいくつかあります。以下が腎臓がんと関連性が高い主な病気です。
「腎臓がん」と関連する症状
「腎臓がん」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
腎臓がんと関連する、または症状が似ている病気には、腎臓自体の疾患や尿路に関連する病気、あるいはその他の全身性の病気などがあります。これらの病気は、腎臓がんと同じく痛みや血尿、倦怠感、体重減少といった共通の症状がみられるため、鑑別が必要です。