「膵臓がんの痛み」はどんな特徴があるかご存知ですか?初期症状も医師が解説!
膵臓がんを発症するとどんな痛みを感じる?Medical DOC監修医がどこに痛みを感じるか・初期症状・末期症状・検査法・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。
監修医師:
齋藤 雄佑(医師)
日本外科学会外科専門医。日本医師会認定産業医。
目次 -INDEX-
「膵臓がん」とは?
膵臓がんは、膵臓にできる悪性腫瘍です。膵臓は胃の後ろ側にある臓器で、消化酵素や血糖を調整するホルモンを分泌する役割を担っています。2019年に膵臓がんと診断された方は43000人あまり[陽伊1] 。膵臓がんは初期症状に乏しく、進行するまで気づかないことが多い病気です。そのため、発見された時にはすでに進行しているケースが多く、早期発見が非常に難しいがんの一つとされています。
膵臓がんを発症するとどんな痛みを感じる?
膵臓がんを発症するとさまざまな痛みを生じる可能性があります。膵臓は背中側に固定された臓器で、その特徴もその他の消化器の臓器の痛みとは多少異なります。ここでは膵臓がんの痛みがどんな痛みであるか、どのくらい痛むのかその特徴を解説します。
持続的な鈍い痛み
膵臓は背中側に固定されている臓器であり、胃や腸と違って可動性は少ない臓器です。膵臓がんの痛みは膵臓の周りの組織や神経を圧迫することによる持続的な鈍痛であることが多いとされています。
食事で悪化する痛み
膵臓は食事が胃に入ると消化酵素を出します。膵臓がんがあると食事によって痛みが引き起こされ、食事で悪化する痛みを生じる場合があります。
夜間や安静時の痛み
背中側の痛みがあるので、背骨や腰痛と勘違いされやすい場所でもあります。しかし、膵臓がんの痛みは動作時ではなく、夜間や安静時に痛みがあるという特徴があります。
膵臓がんを発症すると、どこにどんな痛みを感じる?
膵臓がんは病態によってさまざまな場所に痛みがでることがあります。身体における膵臓の場所にも着目して痛みについて学びましょう。
みぞおちの痛み
膵臓は胃の後ろ側の臓器であるため、膵臓がんはみぞおち付近の痛みを生じることがあります。一般的な胃のキリキリした痛みというよりは、鈍痛であることが多いとされています。みぞおちの痛みは膵臓がんだけで生じる症状ではありませんので、気になる痛みは内科、消化器科で相談しましょう。
背中の痛み
膵臓は背中側に固定された臓器であるため、背中の痛みを生じることがあります。また頑固な腰痛だと思っていたら、がんが腰骨(腰椎)への転移であったというケースもあります。
背中の痛みがあれば、内科、整形外科で相談しましょう。
右上腹部の痛み
膵臓がんの影響で胆管が狭くなり胆管に炎症が起きると胆管炎を引き起こす可能性があります。胆管炎では右上腹部の痛みがでる場合があります。右上腹部痛の他に、発熱や黄疸などの症状がでますので、気になる症状があれば内科、消化器科を受診してください。
膵臓がんを発症すると、痛みはどれくらい続く
膵臓がんの痛みの持続期間は、がんの進行度や治療の効果によって異なります。初期の膵臓がんでは、痛みは断続的に現れることが多く、一時的に治まることもあります。しかし、がんが進行すると痛みが持続的になり、常に痛みを感じるようになります。治療によってがんが縮小したり、痛みの原因が取り除かれたりすれば、痛みが軽減したり消失したりすることもあります。しかし、末期の膵臓がんでは、痛みを完全に取り除くことは難しい場合もあります。
膵臓がんの前兆となる初期症状
膵臓がんは初期症状に乏しいですが、以下のような症状が現れることがあります。
腹痛や背部痛
みぞおちの鈍痛や、背中や腰に広がる痛みは、膵臓がんの初期症状として現れることがあります。これらの痛みは、食後や夜間に強くなる傾向があります。腹痛があるときはお近くの内科を受診しましょう。
黄疸・白色便
膵臓がんが胆管を圧迫すると、胆汁の流れが滞り、黄疸が生じることがあります。黄疸は、皮膚や白目が黄色くなる症状です。また、胆汁が流れないことで便に色がつかずに白色便がでる場合もあります。黄疸や白色便がある場合にはすぐにお近くの消化器科を受診してください。
食欲不振や体重減少
膵臓がんでは、食欲不振や体重減少がみられることがあります。これは、がんによる消化機能の低下や、がん細胞がエネルギーを消費するために起こります。食欲不振や体重減少がある場合はお近くの内科を受診しましょう。
急な糖尿病の発症や悪化
膵臓はインスリンという血糖を調節するホルモンを作り出します。膵臓がんができると膵臓のインスリンを作る作用が失われ、急な糖尿病の発症や悪化を招きます。そのような場合には高血糖の症状として倦怠感や喉の渇き、体重減少などを認める場合があります。気になる症状がある場合には、お近くの内科を受診しましょう。
膵臓がんの末期症状
膵臓がんが進行した場合、以下のような末期症状が現れることがあります。末期症状に対する治療の目標は、痛みなどの症状を和らげ、生活の質を維持することです。緩和医療チームと協力し、生活の質を最大限に高めるための治療・サポートが行われます。
激しい痛み
膵臓がんが進行すると、痛みは間欠痛から持続痛に変わります。痛みは、鎮痛剤を使用してもコントロールできない場合があります。麻薬性の鎮痛剤を使用する場合もありますので、緩和医療科のある医療機関で相談しましょう。
全身倦怠感や食欲不振
膵臓がんが進行すると、全身倦怠感や食欲不振が強くなります。体重もさらに減少します。気になる症状があるときは、主治医に相談しましょう。
腹部膨満感や腹水
膵臓がんが進行すると、腹部膨満感や腹水が溜まることがあります。これは、がんが腹腔内に広がったり、肝臓やリンパ節に転移したりするために起こります。これらの症状があるときは、主治医に相談しましょう。
呼吸困難
がんが肺に転移したり、胸に水がたまると、呼吸困難が生じることがあります。呼吸困難の症状があるときは、主治医に相談しましょう。
膵臓がんの検査法
膵臓がんの検査には、以下のものがあります。
血液検査
腫瘍マーカー(CA19-9など)や肝機能などを調べます。
画像検査
超音波検査、CT検査、MRI検査、PET検査などを行います。これらの検査により、膵臓がんの有無や大きさ、周囲臓器への浸潤の程度などを調べることができます。
内視鏡検査
超音波内視鏡や内視鏡的逆行性胆管膵管造影(ERCP)を行います。これらの検査により、膵臓がんのより詳細な情報を得ることができます。通常消化器内科で入院で検査を行います。
組織検査
内視鏡検査や画像検査で膵臓がんが疑われる場合は、組織検査を行います。組織検査では、細い針を刺してがん細胞を採取し、顕微鏡で詳しく調べます。
膵臓がんの治療法
膵臓がんの治療法は、がんの進行度や患者さんの全身状態によって異なりますが、まずは手術ができるかどうか、手術ができなければ抗がん剤治療(化学療法)や放射線療法を行います。状況に応じて、ステント療法やバイパス治療、維持・緩和療法を組み合わせます。
手術療法
膵臓がんではまず、手術ができるかどうかについて検討します。切除可能であれば、手術のみもしくは、手術と薬物療法の組み合わせた治療(術前・術後補助化学療法)を行います。消化器外科で入院して手術を受けます。数週間の入院期間が必要です。
化学療法
膵臓がんが膵臓周辺の大きな血管を巻き込んでいたり、別の臓器に転移していたりして手術ができない場合は、化学療法を行います。放射線療法を組み合わせることもあります。通常入院で治療を行いますが、一部は外来で治療ができます。
放射線療法
膵臓がんの放射線治療には、治療の効果を高めることを目的とし、化学療法と組み合わせた放射線療法と症状緩和を目的とした放射線治療の2つがあります。放射線治療は放射線科にて入院・外来で加療することがあります。
免疫療法
免疫療法は、免疫の力を利用してがんを攻撃する治療法です。2023年3月現在、膵臓がんの治療に効果があると科学的に証明されている方法は、MSI-Highの場合と、TMB-Highの場合に免疫チェックポイント阻害薬を使用する治療法のみです。
「膵臓がんの痛み」についてよくある質問
ここまで膵臓がんの痛みなどを紹介しました。ここでは「膵臓がんの痛み」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
膵臓がんを発症すると特にどこの部位に痛みを感じますか?
齋藤 雄佑 医師
膵臓がんの痛みは、初期にはみぞおちのあたりに鈍い痛みとして現れることが多いです。進行すると、背中や腰にまで痛みが広がることがあります。
編集部まとめ 背中の持続する痛みを感じたら、消化器内科で相談しよう
膵臓がんは早期発見が難しく、発見された時には進行しているケースが多い病気です。しかし、早期発見できれば、手術でがんを完全に切除できる可能性があります。膵臓がんの初期症状は、腹痛や背部痛、黄疸、食欲不振、体重減少などです。これらの症状は、他の病気でもみられることがありますが、気になる症状がある場合は、早めに消化器内科を受診しましょう。
「膵臓がん」と関連する病気
「膵臓がん」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
肝臓、胆のう、膵臓などの周囲の臓器の病気は膵臓がんの発症に関連していたり、影響するものもあります。これらの病気がある場合には、主治医に相談してみましょう。
「膵臓がん」と関連する症状
「膵臓がん」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
これらの症状は、膵臓がん以外の病気でもみられることがあります。自己判断せずに、気になる症状がある場合は医師に相談しましょう。