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『膵嚢胞(すいのうほう)』ってどんな病気?症状や原因についても解説!【医師監修】

 更新日:2024/01/09
『膵嚢胞(すいのうほう)』ってどんな病気?症状や原因についても解説!【医師監修】

膵嚢胞という病気をご存じですか?
本記事では、膵嚢胞とはどんな病気?症状から治療法について以下の点を中心に紹介します。

・膵嚢胞とは
・膵嚢胞の治療
・膵嚢胞の治療後の生活

膵嚢胞について知るためにぜひ最後までお読みください。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

膵嚢胞について

膵嚢胞について

そもそも膵嚢胞とは何ですか?

「膵嚢胞」とは、膵臓内部またはその周囲に液体が溜まった袋状の病変を指します。自覚症状はほとんどありませんが、健康診断や人間ドックで超音波検査やCT検査を受けることで偶然発見されることが増えています。

膵嚢胞の大きさは数ミリから10センチメートル以上まで様々で、1つだけ発生する場合もあれば複数の嚢胞が見つかる場合もあります。膵嚢胞には良性のものもありますが、放置するとがんになる可能性があるものも存在します。そのため、詳しい検査で嚢胞のタイプを正確に見極めることが重要です。

膵嚢胞が形成される疾患は「膵嚢胞性疾患」と呼ばれ、膵臓の病気として発症するものと、膵臓の病気の合併症として発症するものの2つのタイプがあります。

膵嚢胞性疾患には治療の必要がない良性の場合もありますが、放置するるとがんになるものもあり、膵嚢胞患者の方が膵がんを発生するリスクは一般の方の22.5倍になると報告されています。

嚢胞、腫瘤、腫瘍の違いを教えてください

嚢胞、腫瘤、腫瘍は、身体の中にできるさまざまなものを指す用語です。これらの用語は病理学的な観点から異なる意味を持ち、診断や治療の際に正確な用語を使い分けることが重要です。

嚢胞は、液体が入った袋状の構造で、肝臓、腎臓、膵臓などにできます。一般的には良性であり、定期的な健康診断で確認・経過観察されます。ただし、大きくなったり数が増えたりして臓器を圧迫する場合は手術が必要です。一部の嚢胞は癌によって形成されることもあるため、慎重な対応が必要です。

嚢腫は「嚢胞性腫瘤」とも呼ばれ、膜に包まれた袋の中に何かが溜まってシコリになります。例えば、卵巣嚢腫にはドロドロのチョコレート状のものが溜まることがあります。

腫瘤は身体の中にできるシコリやカタマリを総称しています。良性と悪性の両方があり、乳房のシコリや粉瘤腫が腫瘤の一例です。嚢胞性腫瘤も腫瘤に含まれます。

腫瘍は細胞の異常な増殖によって形成されるもので、周囲の組織に関係なく勝手に増殖します。良性腫瘍は通常身体に害を与えませんが、他の臓器に支障がなければ経過観察で十分です。一方、悪性腫瘍(癌)は周囲の組織を破壊し、他の組織にも転移して増殖するため、放置すると重篤な影響を及ぼします。腫瘍の中でも、液体を含むものを「嚢胞性腫瘍」と呼びます。

膵嚢胞の種類にはどのようなものがありますか?

膵嚢胞には様々な種類があり、それぞれの特性と治療法が異なります。

腫瘍性膵嚢胞には、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)、漿液性嚢胞腫瘍(SCN)、粘液性嚢胞腫瘍(MCN)、充実性偽乳頭状腫瘍(SPN)、膵神経内分泌腫瘍(P-NET)の嚢胞変性、嚢胞径の増大、主膵管の拡張、造影される壁在結節、黄疸症状などがあります。これらの腫瘍は一部が悪性化する可能性があるため、適切な診断と治療が必要です。

一方、非腫瘍性膵嚢胞には、特発性膵嚢胞、貯留嚢胞、仮性膵嚢胞、類上皮嚢胞、リンパ上皮嚢胞などがあります。これらの腫瘍は通常、良性であり、症状がなければ経過観察が主な対応となります。しかし、嚢胞が大きくなり周囲の臓器を圧迫したり、感染が見られたりする場合は治療が必要になることもあります。

膵嚢胞の種類と特性を理解することは、適切な診断と治療法を選択するために重要です。膵嚢胞が見つかった場合は、医師の指導に従って適切な治療を受けることが推奨されます。

膵嚢胞の症状にはどのようなものがありますか?

膵嚢胞は通常、無症状で経過しますが、一部の患者さんでは腹痛や吐き気などの症状が現れることもあります。特に、がんとの関連性が強い腫瘍性膵嚢胞の場合には、病気の進行とともに体重減少や食欲不振、倦怠感などの全身症状が出現することがあります。

膵嚢胞の症状は、嚢胞の大きさや位置、種類により異なります。小さな嚢胞であれば特に症状はないことが多いですが、嚢胞が大きくなると周囲の組織や臓器を圧迫し、腹痛や腹部膨満感を引き起こすことがあります。
また、嚢胞が破裂したり感染したりすると、急性の腹痛や発熱などの症状が現れることもあります。

膵嚢胞が疑われる場合や症状が現れた場合には、医師の診察を受け、適切な診断と治療を行うことが重要です。

膵嚢胞の原因は何ですか?

膵嚢胞の原因は様々で、先天的な要因や後天的な要因により発症します。

後天的な要因としては、膵炎や腹部の外傷、アルコールの大量摂取などが考えられます。また、膵臓で作られた膵液を十二指腸へと流す膵管の粘膜に「粘液を作る腫瘍細胞」ができ、この粘液が膵内にたまって袋状に見えるものが「腫瘍性膵嚢胞」となります。

膵嚢胞を放置した場合どうなりますか?

膵嚢胞は、その性質により放置しても問題ないものから、注意が必要なものまで様々です。

肝臓や腎臓にできる嚢胞の多くは良性で放置しても問題ありませんが、膵嚢胞は状況によります。膵炎後にできた炎症性の嚢胞は良性とされますが、膵炎を経験していないのに膵嚢胞が見つかった場合、腫瘍性の可能性を疑います。

腫瘍性の嚢胞の中でも特に多いのが、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)で、これは良性から悪性まで様々な段階があります。悪性が疑われる場合は治療を検討し、また、良性と判断されても時間とともに悪性へと変化する可能性があるため、定期的な経過観察が必要となります。

したがって、膵嚢胞が見つかった場合、その性質や状況によりますが、放置せずに医師の意見を求めることが重要です。特にIPMNは早期に膵がんを発見できる可能性のある病気なので、膵嚢胞の指摘を受けた場合は、放置せずに医師に相談することが推奨されます。

膵嚢胞の治療

膵嚢胞の治療

膵嚢胞はどのように診断されますか?

膵嚢胞の診断は、CT検査、MRI(MRCP)検査、超音波内視鏡(EUS)を用いて行われます。CT検査やMRI(MRCP)検査は、嚢胞の大きさ、場所、大まかな形態を確認するために行われます。CT検査やMRI(MRCP)検査は客観性があり、時間をおいて行った画像を比較するのに適しています。

一方、超音波内視鏡(EUS)は、内視鏡の先端に超音波装置が付いており、胃や腸の壁を通して膵臓の観察が可能です。EUSは画像精度が他よりも高く、嚢胞内部の詳細な観察や微細な変化を捉えます。

検査方法は患者さんの状態や施設の方針によって異なるため、受診される医療機関で具体的な方法について相談することが重要です。膵嚢胞の診断は、各種検査を組み合わせて出来るだけ正確な診断を行う必要があります。

膵嚢胞の治療法にはどのようなものがありますか?

膵嚢胞の治療は、種類によって異なります。

膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)はがん化のリスクがあるため、定期的な経過観察を行い、がんが疑われる場合やがん化のリスクが高い場合には手術を行います。

粘液性嚢胞腫瘍(MCN)はがん化のリスクが高いため、通常は手術が行われます。

一方、漿液性嚢胞腫瘍(SCN)は良性である可能性が高いため、無症状の場合は経過観察が行われますが、腹痛や出血などの症状がある場合、または嚢胞が大きくなった場合には手術が必要になることがあります。

膵仮性嚢胞については、原因となる疾患の治療を行います。仮性膵嚢胞自体は自然に吸収されることがあるため、症状がない場合には経過観察します。しかし、症状が強い場合や嚢胞が大きい場合には、経皮的な処置や手術が必要になることがあります。

膵嚢胞は食事療法で改善が見込めますか?

慢性膵炎などの非腫瘍性膵嚢胞の場合、食事療法や適切な管理によって改善が期待されることがあります。脂肪分の少ない食事を心がけ、アルコールを控えることで、膵臓にかかる負担を軽減し、膵嚢胞の症状を和らげることができる場合があります。

しかし、腫瘍性膵嚢胞の場合は、食事療法で嚢胞が消退することは期待できません。腫瘍性膵嚢胞にはがん化する可能性もあるため、自己判断で食事療法を行わず、定期的な経過観察を受けましょう。

膵嚢胞の治療後の生活

膵嚢胞の治療後の生活

膵嚢胞の合併症について教えてください

膵嚢胞は、その種類や状態により、さまざまな合併症を引き起こす可能性があります。

特に、膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は、良性から悪性へと変化する可能性があり、早期に膵癌を発見できる疾患と言えます。
そのため、IPMNと診断された場合、良性なのか、それとも既に悪性に変化していないかなど慎重に見極めることが重要になります。

また、IPMNの特徴の一つとして、膵臓を含む他の臓器に癌を合併しやすいといわれています。しかし、最近の研究では、必ずしも合併しやすいとは言えないという報告もあり、今のところ決着はついていません。いずれにせよ、IPMNの経過観察中の方には、膵臓以外の臓器にも十分に注意を払うことが重要です。

さらに、膵嚢胞が大きくなると、前述した通り腹痛や出血などの症状を引き起こすことがあります。したがって、膵嚢胞の管理は、定期的な経過観察と適切な治療が必要となります。

膵嚢胞の予後について教えてください

膵嚢胞は、膵管とは独立して存在し、その内部には粘液が産生されます。膵嚢胞は悪性化の可能性があるため、手術が推奨されることが多いです。

膵嚢胞の予後は、その性質や進行度によって異なります。膵嚢胞は良性のものから悪性のものまで幅広い病態が存在し、予後もそれに応じて変化します。

良性の膵嚢胞、特に腺腫や非浸潤癌の場合は、早期に手術が行われれば再発や転移のリスクが低く、予後は良好です。これらの膵嚢胞は悪性化する可能性が低いため、適切な治療が行われると長期的な生存が期待されます。

一方、浸潤癌や明らかな浸潤の所見を認める膵嚢胞では、予後は不良です。浸潤癌は悪性の膵嚢胞であり、がん細胞が周囲の組織に浸潤してしまっています。この場合、リンパ節転移が少なくないため、治療後の生存率は低下します。

膵臓に優しい生活について教えてください

膵臓は非常に繊細な臓器であり、生活習慣が健康状態に大きな影響を及ぼします。以下に、膵臓に優しい生活を送るためのいくつかのポイントを紹介します。

生活習慣を見直す: 飲酒、喫煙、過労やストレスは膵臓病の危険因子です。適度な飲酒、禁煙、ストレスの管理、軽い運動をすることが推奨されます。

食事に注意する: 暴飲暴食や刺激の強い飲食物は膵臓に大きな負担をかけます。脂肪の過剰摂取は膵臓に強い刺激を与え、膵炎のリスクを増加させます。また、肥満は膵炎の原因となる可能性があるため、適正体重の維持が重要です。ビタミンやミネラル、食物繊維をしっかり摂取し、偏食せずにバランスの良い食事を心掛けることが大切です。

定期的な健康診断: 膵臓病は早期発見が難しく、進行すると生命の危機に繋がることもあります。定期的な健康診断により、早期発見・治療が可能となります。特に膵臓に特化した検査を行う専門病院での健康診断が推奨されます。

これらのポイントを心掛けることで、膵臓に優しい生活を送り、膵臓病の予防につながります。

最後に、読者へメッセージをお願いします

膵嚢胞は膵臓内部や周囲に液体が溜まる病変です。治療方法は膵嚢胞の種類によって異なります。手術が必要な場合もありますし、経過観察や原因となる疾患の治療を行う場合もあります。膵嚢胞は合併症を引き起こす可能性もあるため、治療後の生活では生活習慣や食生活を見直し、健康診断を定期的に受けることが重要です。医師の指導のもとで適切な治療法を選び、治療後の経過を注意深くフォローアップしましょう。

編集部まとめ

膵嚢胞
膵嚢胞はどんな病気なのか紹介してきました。膵嚢胞の要点をまとめると以下の通りです。

・膵嚢胞とは、膵臓内部またはその周囲に液体が溜まった袋状の病変を指す
・膵嚢胞の治療は種類によって異なり、手術が必要な場合や、経過観察をする場合、原因となる疾患の治療をする場合などがある
・膵嚢胞は合併症を引き起こす可能性もあるため、膵嚢胞の治療後の生活は、生活習慣や食生活を見直し、定期的に健康診断に行くことが大切

これらの情報が膵嚢胞はどんな病気なのか知りたい方の参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事の監修医師