何をし続けると「腎臓がん手術後の予後」が悪くなる?生存率や症状も医師が解説!

腎臓がんは一般的な抗がん剤や放射線が効きにくい性質のがんです。治療では多くの場合に外科手術が選択され、初期のうちは良好な予後が得られます。
場合によっては薬物療法が選択されたり、限定的ですが監視療法や凍結療法も使われたりします。多くの例で腎臓を切除するため、術後は残された腎臓の機能温存が重要です。
手術も含めた腎臓がんの治療法と予後、腎臓がん特有の術後の注意点を解説します。腎臓がんが気になる方は参考にしてください。

監修医師:
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)
目次 -INDEX-
腎臓がんとは
腎臓がんは腎臓の細胞が何らかの原因でがん化したもので、腎がんと呼ぶ場合もあります。また、皮質と髄質からなる腎実質にできたがんを腎細胞がんといい、腎盂にできる腎盂がんとは性質・治療法が異なり区別されるがんです。
腎臓のがんは大部分が腎細胞がんのため、一般的には腎臓がんといえば腎細胞がんのことを指します。
この記事の内容も腎細胞がんに関する解説です。
腎臓がんの初期にはほぼ症状がなく、人間ドックの超音波検査やほかの病気の検査で偶然見つかる例が大多数です。進行すると血尿・腰の痛み・腹部のしこり・むくみ・吐き気などの症状が見られます。
腎臓がん手術の予後
手術の予後とは術後の見通しのことで、生存率や悪性度などが指標となります。腎臓がんの5年生存率は以下のとおりです。
- ステージ1で95%
- ステージ2で75~95%
- ステージ3で59~70%
- ステージ4で約20%
リンパや遠隔臓器への転移がない状態では予後は良好ですが、転移があれば急速に悪化します。
もう一つの因子である組織学的悪性度ですが、腎臓がんは以下のように分類されます。
- 淡明細胞がん
- 乳頭状腎細胞がん
- 嫌色素性細胞がん
- 紡錘細胞がん
- 集合管がん
一般的に分類ごとの悪性度に差はない傾向ですが、発生頻度が少ない紡錘細胞がんや集合管がんは予後が不良なタイプです。
ほかに予後に関係する因子では、全身状態や症状の有無、発熱、貧血などがあり、該当数が多い程予後不良とされます。
腎臓がんの治療法
腎臓がんの治療では、初期治療としての抗がん剤や放射線療法は有効ではありません。そのため、遠隔転移がある
場合も含めて、すべてのステージ(1~4)で手術が選択されることがあります。
こうした特徴的な腎臓がんの治療法を解説します。
外科手術
腎臓がんでは原発巣と多発した転移巣が切除できない場合を除いて、外科手術が第一選択です。
手術には腎臓をすべて取り出す腎摘除と病巣以外を残す腎部分切除があり、それぞれに腹腔鏡と開腹手術があります。
部分切除は難易度が高く尿漏れ・出血の合併症のリスクがあるものの、腎機能を残すメリットが大きいため、部分切除の事例が増加しています。
手術方式では従来型の開腹手術より、可能な限り低侵襲の腹腔鏡を選ぶのが一般的です。
薬物療法
腎臓がんの薬物治療では一般的な抗がん剤が効果を示さないため、分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬が使われます。
分子標的薬は、がん細胞に特有な増殖や進行に関わるタンパク質や、がんを攻撃する免疫機能に関わるタンパク質を狙ってがん細胞の増殖を抑える薬剤です。
現在腎臓がんに使える分子標的薬は6種類あり、免疫チェックポイント阻害薬と併用されることもあります。
薬物療法はステージ4で腎摘除の術前治療や、腎摘除できない場合に行われる治療法です。
放射線療法
放射線治療は病巣に放射線を照射して、直接的にがん細胞を死滅させます。ただ、腎臓がんの原発巣に放射線は効きにくいとされ、原発巣が切除できない場合に行われる程度です。
しかし転移巣には症状の改善が期待でき、脳や骨などの転移巣に放射線治療が行われます。
免疫療法
現状でがん治療の効果が立証されている免疫療法は、免疫に関わるタンパク質のサイトカインを活性化してがんを攻撃する治療法と、免疫チェックポイント阻害剤だけです。
この薬は、がん細胞が免疫細胞のT細胞に対し、攻撃を止める指示を出すのを阻害する作用があります。この作用でT細胞の攻撃力を維持してがん細胞を死滅させる治療法です。
監視療法
監視療法は積極的な治療ではなく、CTやMRIなどの画像検査をしながら経過観察する方法です。
小さな早期がんが腎臓内にとどまり、高齢者だったりほかの病気で手術には危険があったりする場合に選択される場合があります。
治療を望まない場合や、ほかの病気を治療して体調を整える場合など、準備ができるまでの猶予時間を作るのが目的です。
凍結療法
凍結療法は1.5mm程の針を病巣に刺し、液体窒素で組織を凍結してがんを死滅させます。
局所麻酔で痛みや冷たさは感じません。腎機能への影響は手術より小さく、治療は1回で終わります。
入院期間は3泊4日程度です。対象は4cm以下の早期原発がんで、高齢者や手術を望まない方・全身麻酔の手術が難しい方などです。
腎臓がん手術後の注意点
腎臓がんの手術が無事終わった後は、通常のがん手術後とは大きく違う点があります。
それは、残された腎臓の機能を落とさないように注意することです。予後を左右する腎臓がん手術後の注意点を解説します。
禁煙する
喫煙は血管など循環器に悪影響を与える代表的な生活習慣です。
腎臓は細かい血管が大変多い臓器なので、手術の回復を遅らせるほかに、腎機能低下といった悪影響を受けやすくなります。さらに、腎臓がん発症との因果関係も示唆されており、残された腎臓に対するリスクを高める習慣です。
喫煙の習慣がある方は、手術を機会に禁煙に踏み切りましょう。
適度な運動をする
適度な運動は腎臓に負担をかける肥満を防ぎ、血流を促して身体の活性を高めるためにも大切です。
適度な有酸素運動で尿たんぱくが減るともいわれます。ただ、30分以上の筋トレといった激しいスポーツは腎臓にも負担がかかるので避けてください。
ウォーキングのように腎臓に負担が少ない運動がおすすめです。
十分な水分を摂取する
腎臓の負担を減らすため、水分は十分に摂取してください。
水分で体内のナトリウム濃度が低下し、それだけ腎臓の負担が少なくなります。ナトリウム以外の老廃物を排泄するためにも、十分な水分が必要です。
補給すべき水分量は、少なくとも1日あたり1.5リットル以上が適量とされます。
動物性タンパク質の過剰摂取を避ける
動物性タンパク質の過剰摂取は腎臓の負担を増やします。
肉や魚の動物性タンパク質は、摂取後に代謝されて廃棄物の尿素窒素が作られます。動物性タンパク質の過剰摂取は尿素窒素の大量生成につながり、その結果が排泄を担う腎臓の負担増加です。
腎臓保護の観点から、動物性タンパク質の過剰摂取は極力控えてください。
血圧管理をする
高血圧は直接腎臓にダメージを与える病気です。
高血圧が常態化すると、腎臓にある細動脈が動脈硬化をおこして腎臓に障害が出ます。進行して尿を濾す糸球体の血流が悪くなり、腎機能が低下して腎不全になる流れです。
高血圧の方は残った腎機能を守るため、薬物などで血圧のコントロールを続けてください。
腎臓がん手術の予後についてよくある質問
ここまで腎臓がん手術の予後や治療法などを紹介しました。ここでは「腎臓がん手術の予後」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
腎臓がんの手術後は腎機能はどうなりますか?
片側の腎臓をすべて摘除した場合、数値的な腎機能は下がります。ただし、半分摘除したから機能も半分になるわけではなく、35%程度の低下です。また、手術直後に低下した数値はわずかながら回復します。実際の生活面では、特に不都合は生じない方がほとんどです。一方、部分的な切除の場合は、数値的な腎機能低下は5~10%程度にとどまります。腎機能の温存性は全摘出よりもかなり良好です。
腎臓がんの検査方法について教えてください。
腎臓がんの発見に使われるのは超音波(エコー)検査です。位置や形がわかったらCT検査で診断し、場合により補助的にMRIも使われます。より詳細な分類・判断が必要な場合行うのが、組織を採取して顕微鏡で観察する生検です。再発の確認や転移巣を探す場合はPETを使います。そして、全身状態の把握のためには血液検査が欠かせません。
編集部まとめ
手術後のケアが特徴的な腎臓がんに関して、その手術後の予後や治療法の詳細などを解説してきました。
進行度(ステージ)4でも手術が選択されるのが腎臓がんの特徴で、多くの例で病巣がある腎臓の全切除か部分切除が行われます。
そのため術後の生活では残った腎臓の機能維持が重要です。腎臓がんは努力次第で予後を向上できる点で、大変特徴的ながんになります。
腎臓がんと関連する病気
「腎臓がん」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 腎血管筋脂肪腫
- 腎のう胞
- 腎盂がん
いずれも腎臓にできる腫瘍です。腎血管筋脂肪腫と腎のう胞は良性で経過観察します。ただ大きな腎血管筋脂肪腫は出血するので、手術か内服薬治療を行います。腎盂がんは膀胱がんと似た性質で再発しやすいものの、初期であれば予後は良好です。
腎臓がんと関連する症状
「腎臓がん」と関連している、似ている症状は7個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
これらは進行した腎臓がんの症状です。多くは重大な病気でなくても見られる症状ですが、血尿と腹部のしこりは泌尿器や消化器の腫瘍の可能性があります。放置せず受診をおすすめします。
参考文献


