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「腎臓がんを発症しても仕事復帰」できる?治療後について医師が解説!

 公開日:2025/09/26
「腎臓がんを発症しても仕事復帰」できる?治療後について医師が解説!

腎臓がんの治療を終えた後、「いつ仕事に復帰できるだろうか」「どのくらい休職すべきなのか」と不安に感じる方は少なくありません。本記事では、腎臓がんの主な治療法と身体への影響、治療後の休職期間の目安、実際の職場復帰の体験例、そしてスムーズに仕事復帰を目指すためのポイントを解説します。

西田 陽登

監修医師
西田 陽登(医師)

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大分大学医学部卒業。大分大学医学部附属病院にて初期研修終了後、病理診断の研鑽を始めると同時に病理の大学院へ進学。全身・全臓器の診断を行う傍ら、皮膚腫瘍についての研究で医学博士を取得。国内外での学会発表や論文作成を積極的に行い、大学での学生指導にも力を入れている。近年は腫瘍発生や腫瘍微小環境の分子病理メカニズムについての研究を行いながら、様々な臨床科の先生とのカンファレンスも行っている。診療科目は病理診断科、皮膚科、遺伝性疾患、腫瘍全般、一般内科。日本病理学会 病理専門医・指導医、分子病理専門医、評議員、日本臨床細胞学会細胞専門医、指導医。

腎臓がんの治療法と身体に与える影響


腎臓がんではさまざまな治療法が選択されます。そこで、本章ではその治療法と身体に与える影響について解説します。

腎臓がんの主な治療法

腎臓がんの治療にはさまざまな方法がありますが、一般的には手術が第一選択となります。手術では、がんのある腎臓を腎臓ごと全部摘出する腎摘除術や、腎臓の一部だけを取り除く腎部分切除術が行われます。手術以外の治療法としては、凍結療法、薬物療法、放射線治療、そして経過観察を行う監視療法などがあります。

腎臓がんの治療後に生じる身体への影響

治療法に応じて、身体にはさまざまな影響が現れます。手術後の影響としては、腎臓を一つ摘出した場合に腎機能が低下します。残った腎臓が正常に働いていれば、日常生活に大きな支障が出ることはありません。しかし、もともと糖尿病や高血圧など腎臓に負担をかける病気がある場合や、術前から腎機能が低下していた場合には、手術後も慢性腎不全への対策や経過観察が必要になります。
また、薬物療法の影響としては、投与する薬剤によって副作用が異なります。分子標的薬や免疫療法では、疲労感、食欲不振、高血圧、皮膚の発疹、下痢などさまざまな副作用が出ることがあります。近年は副作用を和らげる支持療法が進歩し、多くは外来通院で薬物療法を継続できるようになっています。

腎臓がん治療後の休職期間の目安


腎臓がんにはさまざまな治療法があるため、治療期間と元の状態に近い状態まで回復するまでの期間は異なります。そこで、本章では腎臓がん治療後の休職期間の目安について解説します。

腎臓がんの治療にかかる日数

腎臓がんの手術では、入院期間は術後およそ1〜2週間程度が目安です。腹腔鏡下手術やロボット支援手術であれば身体の負担が軽く回復が早いため、入院期間も短くなる傾向があります。
一方、薬物療法は手術とは異なり、決まった治療期間が明確ではありません。抗がん剤治療の場合は数週間ごとに投与と休薬を繰り返すサイクル治療が数ヶ月続くこともありますし、分子標的薬や免疫療法は効果が続く限り長期間継続することもあります。しかし多くは外来で通院しながら治療可能で、入院の必要がない場合もみられます。そのため、治療と仕事を両立している方も少なくありません。

治療終了後の回復期間の目安

治療が一段落した後、どのくらい休んでから職場復帰できるかは個人差が大きい部分です。結論からいえば、「休職期間はこのくらい」と一概にはいえず、治療内容や体力の回復具合、仕事の内容によってさまざまです。主治医と治療計画について十分に話し合い、自分の場合はどの程度で復帰が可能か意見を聞くことが大切です。

一般的な目安として、外科手術のみで治療が完了した場合、体調が順調に回復すれば退院後およそ1〜2週間ほど自宅療養したのちに職場復帰できることもあります。ただし、デスクワークなど体力を要さない仕事であれば復帰しやすい一方、肉体労働や長時間の立ち仕事など身体への負担が大きい職種では、同じ期間での復帰は難しいかもしれません。無理をして早期に復帰しても、身体に負担がかかりすぎると長続きしませんので、自分の身体と相談しながら判断する必要があります。

腎臓がん治療後に仕事復帰した患者さんの実例

腎臓がんの治療を経て実際に仕事復帰を果たした方の例をご紹介します。
お笑い芸人「はんにゃ」の川島章良さんは、32歳のときに腎臓がんが見つかり手術を受けました。その後しばらく療養し、術後に無事仕事復帰を果たしています。復帰後はお笑いライブやテレビ出演など以前と変わらず活躍する一方、自らのがん体験を生かして健康診断の大切さを伝える講演活動などにも取り組んでおり、がんを乗り越えて活躍の幅を広げています。川島さんは「がんになっても支えてくれる家族がいたから頑張れた」と述べており、周囲のサポートの大切さも語っています。

個人差はありますが、「腎臓がん=働けなくなる」では決してありません。大事なのは、自分の身体と向き合い、周囲の支えを得ながら、一歩ずつ復帰への道を進むことです。

腎臓がん治療後の仕事復帰を目指すためのポイント


腎臓がん治療を行った後、今までどおり仕事復帰できるか不安になる方もいると思います。本章では、腎臓がん治療後の仕事復帰を目指すためのポイントについて解説します。

腎臓がんが見つかっても退職しない

がんと診断されたショックから、「仕事を辞めるべきか」と悩む方もいます。しかし、腎臓がんが見つかってもすぐに退職する必要はありません。実際、腎臓がん患者さんは全がん種のなかでもフルタイム復職率が高いというデータがあります。腎臓がんは治療後の経過が安定しやすいこともあり、多くの方が治療と仕事の両立や、治療後の職場復帰に成功しています。

上司や同僚の理解を得る

職場の理解と協力は、円滑な復職のために欠かせません。がん治療と仕事を両立するには、勤務時間の調整や業務量の配慮など職場側のサポートが必要になることがあります。復職にあたっては、できるだけ早めに会社の人事担当者や上司に相談し、自分の治療スケジュールや復職の見通しを共有しておきましょう。企業によっては、復帰前に産業医や上司との面談が必須だったり、主治医の診断書提出が必要な場合もあります。必要な手続きは事前に確認し、慌てず対応できるようにしておくと安心です。

治療中から体力維持を心がける

体力の回復は職場復帰の成否を分ける大きなポイントです。治療後、復職した方々の多くが口をそろえていうのは「思った以上に体力が落ちていた」ということです。手術や薬の影響だけでなく、安静にしている時間が増えることで筋力や持久力がかなり落ちてしまうのです。そのため、治療中もできる範囲で身体を動かし、必要以上に安静にしすぎないことが大切です。無理のない範囲で散歩をしたり、病院の許可があれば入院中にリハビリを行ったりして、極力歩くことを心がけましょう。

腎臓がんの仕事復帰についてよくある質問

ここまで腎臓がんの仕事復帰について紹介しました。ここでは「腎臓がんの仕事復帰」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

腎臓がんの治療後はどの程度通院する必要がありますか?

治療後は再発がないか定期的にフォローするため、一定期間は定期通院が必要です。通院頻度はがんの進行度や治療法により異なりますが、一般的に術後しばらくは3ヶ月〜6ヶ月ごとに検査を行い、その後徐々に間隔を延ばしていきます。ただし、腎臓がんは治療後5年以上経ってから遅れて再発する場合もあるため、通常の定期検診が終わった後も年に一度は健康診断や人間ドックを受けるなどして健康管理を続けていただきます。

腎臓がんの治療後の食生活や生活習慣で気を付けるべきことを教えてください。

基本的には、規則正しい健康的な生活を心がければ特別な制限はありません。具体的には、禁煙を守ること、適度な飲酒(飲み過ぎないこと)、バランスのよい食事、適度な運動などが大切です。腎臓がんの手術で片方の腎臓を摘出した場合でも、残った腎臓が正常であれば食事制限は特に必要ないといわれています。ただし、塩分の過剰摂取は残った腎臓に負担をかける可能性があるため控えめにし、水分をしっかり摂るよう意識しましょう。同様に、肥満も残った腎臓への負担を増やしてしまう可能性があるので、体重管理に気をつけましょう。

腎臓がんが再発する割合を教えてください。

腎臓がんの再発率は病期や治療内容によって異なります。一般的に、転移がなく手術で取り切れた腎臓がんの場合、20〜30%程度の患者さんに治療後再発が見られると報告されています。ただし、再発率はステージによって大きく異なります。逆に、がんが進行してリンパ節や他臓器へ転移があった場合は再発リスクが高く、治療後に追加の薬物療法を行うこともあります。


まとめ

腎臓がんの治療後に仕事復帰できるか不安な方も多いと思いますが、適切な休養と準備を経て復帰を果たす方もいます。手術や治療による身体への影響はありますが、残った腎臓がしっかり働いていれば日常生活を送ることができますし、体力もリハビリ次第で徐々に回復していきます。本記事が仕事復帰について知るきっかけになれば幸いです。

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