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「腎臓がんの抗がん剤治療」の効果は?副作用についても医師が徹底解説!

 更新日:2025/07/31
「腎臓がんの抗がん剤治療」の効果は?副作用についても医師が徹底解説!

腎臓がんは、進行度や患者さんの状態に応じてさまざま治療法が選択されます。本記事では、腎臓がんに対する代表的な治療法である手術、抗がん剤(薬物)治療、免疫療法の概要を説明し、腎臓がんで使われる主な薬剤とその効果、治療中に起こりやすい副作用と対策、さらに患者さんから寄せられることの多い質問を解説します。

井林雄太

監修医師
井林雄太(井林眼科・内科クリニック/福岡ハートネット病院)

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大分大学医学部卒業後、救急含む総合病院を中心に初期研修を終了。内分泌代謝/糖尿病の臨床に加え栄養学/アンチエイジング学が専門。大手医学出版社の医師向け専門書執筆の傍ら、医師ライターとして多数の記事作成・監修を行っている。ホルモンや血糖関連だけでなく予防医学の一環として、ワクチンの最新情報、東洋医学(漢方)、健康食品、美容領域に関しても企業と連携し情報発信を行い、正しい医療知識の普及・啓蒙に努めている。また、後進の育成事業として、専門医の知見が、医療を変えるヒントになると信じており、総合内科専門医(内科専門医含む)としては1200名、日本最大の専門医コミュニティを運営。各サブスぺ専門医、マイナー科専門医育成のコミュニティも仲間と運営しており、総勢2000名以上在籍。診療科目は総合内科、内分泌代謝内科、糖尿病内科、皮膚科、耳鼻咽喉科、精神科、整形外科、形成外科。日本内科学会認定医、日本内分泌学会専門医、日本糖尿病学会専門医。

腎臓がんの治療法

腎臓がんの治療には大きく分けて、手術、薬物療法(抗がん剤治療)、免疫療法、放射線治療などがあります。一般的にはできる限り手術でがんを取り除くことが第一選択になりますが、病状によっては薬物療法や放射線治療を組み合わせることもあります。ここでは代表的な治療法を解説します。

手術

手術は、腎臓がんにおいて基本となる治療法です。腎臓がんが局所にとどまっている場合、手術でがんを切除することが根治を目指す標準治療となります。通常行われる術式は、患側の腎臓をすべて摘出する腎摘除術で、これにより腎臓ごと腫瘍を取り除きます。

近年は画像診断技術の進歩によりがんが小さい段階で発見されることが増えたため、可能であれば腫瘍の部分だけを切除して腎臓の残りを温存する腎部分切除術も行われるようになってきました。腎部分切除は主に腫瘍径が4cm以下の小さながんで選択され、腎機能を温存できる利点があります。
手術の方法には、お腹を大きく切開する開腹手術と、小さな切開から内視鏡を入れて行う腹腔鏡手術があります。腫瘍の大きさや場所、患者さんの状態によって適切な術式が選ばれます。
これらの外科的治療によって局所の腎臓がんを取り除くことが可能です。

抗がん剤治療

薬物療法とは、手術では対応できないがんに対して抗がん剤や分子標的薬、免疫療法薬などを用いる治療です。腎臓がんでは、転移がある場合や手術が難しい場合に薬物療法が行われます。場合によっては手術の前に腫瘍を小さくして手術効果を高める目的で薬物療法を行うこともあります。
腎臓がんで現在主に使われる薬物療法は分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬です。薬物療法によって腫瘍を完全に消すことは難しいものの、がんの縮小や進行抑制が期待できるため、進行あるいは再発腎がんの患者さんにとって重要な治療手段となっています。

免役療法

免疫療法は、患者さん自身の免疫の力を利用してがんを攻撃する治療法です。腎臓がんでは従来からサイトカイン療法(インターフェロンやインターロイキン2の投与による治療)が行われてきました。サイトカイン療法では、一部の患者さんで腫瘍が小さくなる効果が見られますが、効果が限られるうえに副作用も多く、適応となる患者さんが限られます。

現在、科学的に効果が証明され標準治療として用いられている免疫療法は、免疫チェックポイント阻害薬とサイトカイン療法のみです。近年登場した免疫チェックポイント阻害薬は、がんが免疫から逃れる仕組みを解除することで免疫細胞が腫瘍を攻撃できるようにする薬です。免疫チェックポイント阻害薬の登場により、腎臓がん治療における免疫療法の効果は飛躍的に高まりました。

なお、放射線治療は腎臓がんそのものに対して根治目的で用いられることは少ないですが、脳や骨への転移に対する症状緩和目的で行われることがあります。

腎臓がんで使用される薬剤一覧と効果

ここでは、腎臓がんの薬物療法で使用される主な薬剤を解説します。大きく分子標的薬と免疫チェックポイント阻害薬に分けて解説します。

分子標的薬

分子標的薬とは、がん細胞の増殖や生存に関わる特定の分子(遺伝子やタンパク質)の働きを標的にして阻害する薬です。腎臓がんでは、血管新生(腫瘍に血管を作って栄養を送る仕組み)に関与する経路を阻害する薬が多く、腫瘍への血液供給を断って増殖を抑える効果があります。代表的な分子標的薬として以下のものがあります。

  • スニチニブ
  • アキシチニブ
  • パゾパニブ
  • ソラフェニブ
  • カボザンチニブ
  • レンバチニブ

これらの分子標的薬はいずれも腫瘍の増殖や血管新生を抑えることで腫瘍の縮小・増殖抑制効果を示します。患者さんの腎がんのタイプやリスク分類、既往治療歴によって、医師がこれらのなかから適切な薬剤を選択します。

免疫チェックポイント阻害薬

免疫チェックポイント阻害薬は、がんに対する免疫反応を高める薬です。腎臓がんは免疫療法が効きやすいがんとされ、近年これらの薬剤が治療の中心的役割を担っています。代表的な免疫チェックポイント阻害薬には次のようなものがあります。

  • ニボルマブ
  • ペムブロリズマブ
  • イピリムマブ
  • アベルマブ

これら免疫チェックポイント阻害薬の効果により、進行腎臓がんの生存期間延長や腫瘍縮小が報告されています。

腎臓がんの抗がん剤治療で現れやすい副作用とは

腎臓がんの薬物療法で用いられる分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬は、薬ごとにさまざまな副作用が現れます。ここでは代表的な副作用を解説します。

手足症候群

手のひらや足裏の皮膚が赤くなり、ひび割れや痛みが出る症状です。ソラフェニブやカボザンチニブ、スニチニブなど多くの経口分子標的薬で見られます。症状が出た場合は患部を保護し、痛み止めや外用薬の使用、場合によっては薬の休薬・減量で対応します。

高血圧

分子標的薬は血管新生を阻害する作用から血圧上昇を引き起こしやすいとされています。特にアキシチニブやカボザンチニブ、パゾパニブなどで高血圧の発現が報告されています。必要に応じて血圧を下げる薬(降圧薬)の処方や分子標的薬の減量を行い、血圧をコントロールします。

消化器症状(下痢・食欲不振など)

多くの分子標的薬で下痢や食欲低下、口内炎など消化器への副作用がみられます。食欲不振時には無理に固形物をとらず、栄養補助飲料などでカロリーと水分を補いましょう。症状が強い場合は休薬を含め主治医と相談し対応します。

腎臓がんの抗がん剤治療についてよくある質問

ここまで腎臓がんの抗がん剤治療を紹介しました。ここでは「腎臓がんの抗がん剤治療」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

腎臓がんの抗がん剤治療にはどの程度の費用がかかる?

井林 雄太井林 雄太 医師

腎臓がんの薬物療法は高額な薬剤を長期にわたって使用するため、費用が心配になる方も多いでしょう。日本では公的医療保険が適用されるため、基本的に薬剤費の3割が患者さん負担ですが、それでも高額になることがあります。しかし心配はいりません。高額療養費制度という制度があり、1ヶ月の自己負担額が一定上限額を超えた場合、超過分が払い戻される(あるいは事前申請で支払い免除される)仕組みになっています。

腎臓がんの抗がん剤治療中はどのようなことに気を付けるべき?

井林 雄太井林 雄太 医師

治療の効果を高め副作用を和らげるために、生活習慣や食事面で心がけるべきことがあります。まずはバランスの良い食事です。基本的に特別な食事制限はありませんが、体調や食欲に合わせて無理なく栄養をとることが大切です。副作用で食欲が低下することもありますが、食べられるものを少量ずつでも摂取し、必要なら栄養補助食品も活用しましょう。

次に塩分を控えることです。腎臓は塩分と水分の調節に関与する臓器です。腎臓の負担を減らし高血圧を防ぐため、塩分控えめの食事を心がけましょう。また、感染予防に努めることも重要です。抗がん剤治療中は感染症に対する抵抗力が低下することがあります。手洗いやうがいを行い、混雑した場所や人混みではマスクを着用しましょう。ほかにも患者さんの状態によって気を付けるべきことはあります。心配なことがあれば主治医に相談するようにしましょう。

腎臓がんの抗がん剤治療の期間は?

井林 雄太井林 雄太 医師

治療期間や通院スケジュールは、選択する治療法や病状によって異なります。
分子標的薬治療の場合は経口薬を自宅で内服するため、長期間の継続治療となります。腫瘍が進行しない限り治療を数ヶ月~数年と続けるケースもあります。通院は通常2~4週間ごとに行います。免疫療法の場合は、外来で数週ごとに点滴を行います。免疫療法も効果が続く間は治療を継続し、1〜2年間継続することもあります。腎臓がんの薬物治療は長期戦になることが多く、定期的な通院による副作用の確認なども欠かせません。

まとめ

本記事では腎臓がんの治療法を解説しました。治療法は患者さん一人ひとりの病状や体調、リスクに応じて選択されるため、医療情報を踏まえたうえで、担当医と十分に相談することが重要です。新たな分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬の登場により、進行腎臓がんに対する治療成績も向上しており、今後さらなる治療の進歩が期待されます。

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