「大腸がんによい食べ物」はご存知ですか?リスクを下げる食事方法も解説!
大腸がんの発症について研究が進むなかで、摂取により発症リスクの軽減が期待できる食品と発症リスクを高める食品があることがわかってきました。
今回の記事では、大腸がんの予防に役立つ可能性がある食べ物を中心に紹介していきます。
記事の後半では、大腸がんと診断されて治療をしている方によい食事についても解説しますので参考にしてください。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
大腸がんとは
大腸は消化器官の最後に位置し、小腸が終わる右下腹部から肛門までをつないでいます。大腸がんは、この大腸の内側を覆っている粘膜から発生するがんの総称です。2019年の統計では年間155,625人が新たに大腸がんと診断され、国内で罹患者数が最も多いがんとなっています。
大腸がんの発生には生活習慣が大きく関わっているとされており、大腸がんと食事の関係についてもさまざまな研究がすすめられているところです。
ここからは、大腸がんの発症リスクを下げると考えられる食品や食事方法のほか、大腸がんになり治療を受けた患者さんが療養するうえでの食事について紹介していきます。
大腸がんによい食べ物・食材
まずは、適切に摂取することで大腸がんのリスクを下げるといわれている食品をいくつか紹介します。身近で生活に取り入れやすい物があれば、ぜひ頻繁に摂るよう心がけてみましょう。
全粒穀類
全粒穀物とは、精白(種皮や胚を取り除くこと)をしていない穀物のことです。日本でも目にする全粒穀物としては、玄米やオートミールなどが挙げられます。
こうした全粒穀物を多く摂る人は、摂取が少ない人と比べると、大腸がんを含む消化器のがんに罹患する確率が低いという研究があります。
食物繊維を多く含む食材
食物繊維を多く摂る食習慣がある地域では、そうではない地域に比べて大腸がんの患者数が少ないといわれています。食物繊維が大腸がんの発症率抑制につながる主な理由は、下記の3つです。
まず、食物繊維により便通がスムーズになることで、発がん性のある物質を取り込んでも腸内にとどまる時間が短くなると考えられます。また、消化液の一種である胆汁は腸内細菌の働きで大腸がんの発症を促進する物質に変化するといわれています。
食物繊維には、この腸内細菌の働きを抑制する作用があるようです。加えて、食物繊維が豊富な野菜や果実には、がん抑制作用を持つビタミンや色素成分・フラボノイドなども多く含まれる傾向があります。
乳製品
動物性たんぱく質や動物性脂肪の過剰摂取は大腸がんのリスク因子です。しかし、一方で乳製品の摂取により大腸がんの抑制作用が期待できるとする研究もあります。
この作用はカルシウムやビタミンD、乳酸菌によるものと考えられます。大腸がんの予防を期待して乳製品を摂取する場合、過剰摂取は避け脂肪分の少ないものを選ぶとよいでしょう。
大腸がんのリスクを下げる食事方法
大腸がんのリスク軽減が期待できる食品がある一方で、リスクを高める食品や食習慣もあります。ここからは、大腸がんのリスクを抑えるために気を付けるべき食事方法を中心に紹介します。
加工肉・赤身肉を摂りすぎない
国際的にも、加工肉や赤身肉の過剰摂取は大腸がんの発症リスクを高める可能性があるとされています。また、国内で行われた研究でも、赤身肉を多く食べる集団は赤身肉の摂取量が少ない集団と比べて男女ともに結腸がんの発症リスクが高まるとの結果になりました。
さまざまな食材をバランスよく摂取することは大切ですが、動物性タンパク質を摂る際には魚介類や鶏肉を中心として加工肉・赤身肉は控えることをおすすめします。
高エネルギーの食品を摂りすぎない
肥満は大腸がんのリスクを高めると知られており、BMIが正常な集団と比べると肥満に分類される集団では大腸がんの発症率が1.2~1.5倍程になるとされます。また、糖尿病は大腸に限らず多くのがんの発生リスクを上昇させるといわれています。
つまり、健康的な体型と血糖値の維持が大腸がんのリスク軽減につながるといえるでしょう。維持のためには適度な運動を習慣づけるとともに、食事の面では脂肪分・糖分の多い食品を避けることが大切です。
アルコールは控えめにする
飲酒は大腸がんのリスクを上昇させるとされており、特に日本人は欧米人と比較した場合、少量の飲酒でも大腸がんの発生リスクが高まりやすいといわれています。例えば、厚生労働省が定める適度な飲酒量は1日あたり純アルコール20g相当までです。
しかし、日本人男性を対象とした実験では1日あたり15g以上30g未満のアルコール摂取でも大腸がんのリスクが上昇するという結果になりました。こうした点から、アルコールを控えると大腸がんのリスク軽減につながるといえるでしょう。
コーヒーを飲む
コーヒーに含まれるクロロゲン酸が分解されることで、カフェ酸という物質が作られます。このカフェ酸には、すでに発生した大腸腫瘍に対して増殖抑制効果があるだけでなく、大腸がんの発症予防も期待できるとわかってきました。
こうした研究から、習慣的にコーヒーを飲用することは大腸がん予防に役立つと考えられるでしょう。
大腸がん治療中・治療後の食生活のポイント
ここまでは大腸がんのリスクを下げると期待される食品や、大腸がんを予防するための食習慣について解説してきました。では、大腸がんと診断され治療をしてからの食事はどのような点に気を付ければよいのでしょうか。
消化のよい食事を少量ずつ食べる
同じ消化器のなかでも、大腸の手術後は胃の手術後に比べて食事の制限が少ないといえるでしょう。ただし、がんの治療のため大腸を切除した後は、組織の癒着や腸閉塞が起こりやすくなります。
腸閉塞を予防するために、食事は消化によいものをよく噛んで食べることが大切です。また、しっかりと栄養を摂って体力を回復するのはよいことですが、一度にたくさん食べるのでなく少量ずつ食べることをおすすめします。
食物繊維を多く含む食品を摂りすぎない
記事の前半で紹介したとおり、健康な人が大腸がんを予防するためには、食物繊維を十分に摂ることが重要といわれています。
しかし、大腸がんの手術後1ヵ月程度は上記のように腸閉塞が起こりやすい状態のため、腸の運動が安定するまでは食物繊維が多い食品を摂りすぎないよう注意が必要です。
食欲がないときは無理に食べない
大腸がんの治療では、手術のほかに化学療法を行うこともあります。化学療法でよくみられる副作用としては味覚・嗅覚の異常や吐き気、口内炎などがあり、こうした症状により食欲がわかない場合もあるでしょう。
食欲がない場合には無理に通常どおりの食事をせず、食べられるものを無理のない量だけ食べてみましょう。食事が摂れない場合でも、脱水や便秘・腸閉塞を予防するために水分をしっかりと摂取することが大切です。
大腸がんによい食べ物についてよくある質問
ここまで、大腸がんのリスクを下げる食事方法や治療後の食生活のポイントなどを紹介しました。ここでは大腸がんの食事についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
食事で大腸がんを予防できますか?
中路 幸之助(医師)
大腸がんの発生には、食生活のほか喫煙・身体活動などの生活習慣や、家族歴など複数の要因が関わっています。そのため「食事内容に気を付ければ大腸がんにならない」とはいえません。しかし、今回の記事で紹介した内容も参考にしながら食事の内容や摂り方に気を配ることで、大腸がんの罹患リスクを低減できると考えられます。
大腸がんの手術後におすすめの食べ物は何ですか?
中路 幸之助(医師)
大腸がんの術後に食べてはいけない食品はありませんが、食べ過ぎてはいけない食品がいくつかあります。まず動物性たんぱく質について、甲殻類や脂肪の多い肉は消化器への負担が大きいので、脂肪の少ない魚や鶏肉がおすすめです。また、食物繊維は摂りすぎに注意が必要ですが、キャベツや大根など煮崩れやすい野菜を選んで加熱すれば消化器への負担は少ないでしょう。このような食材を選んだうえで、炒め物や揚げ物は避け、煮たり蒸したりすることで油分を抑えてやわらかく調理できるはずです。
編集部まとめ
人口に対する大腸がんの罹患率は年々増加傾向にあります。
その発症には生活習慣が深く関連するとわかっており、大腸がんの増加原因の一つとして考えられるのが、日本人の食生活が欧米化し低食物繊維・高脂肪になったことです。
もちろん食事以外にも発症に関わる要因はありますが、大腸がんは日常的な食事の工夫により発症リスクを低減できるがんともいえるでしょう。
また、大腸がんに罹患して治療をした場合も、身体の状況にあった食事摂取をすることで療養生活の負担を和らげられる可能性があります。
大腸がんと関連する病気
「大腸がん」と関連する病気は4つ程あります。
各病気の症状や原因など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
これらの病気は、罹患することで大腸がんの発症リスクが高まるとされる病気です。
大腸がんと関連する症状
「大腸がん」と関連する症状は7つ程あります。
各症状から考えられる病気や原因など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
大腸がんは、がんが発生した部位や腫瘍の大きさなどにより現れる症状が異なります。上記は、いずれも大腸がんで現れる可能性がある症状です。気になる症状があれば、医療機関を受診し検査を受けることをおすすめします。
参考文献