「慢性骨髄性白血病の治療費」はどのくらいかかるかご存知ですか?【医師監修】
慢性骨髄性白血病と診断されたら、目の前が暗くなるイメージをお持ちの方もいるでしょう。今後の治療や仕事など不安が募りますが、どのぐらいお金がかかるのかも不安要素の1つとして少なくないです。
この記事では不安を少しでも軽減し、治療やサポートにしっかり向き合えるように、治療費はどのくらいなのか・利用できる公的制度があるのかなど解説します。
監修医師:
山本 佳奈(ナビタスクリニック)
目次 -INDEX-
慢性骨髄性白血病とは?
慢性骨髄性白血病(CML)は、血液中の白血球・赤血球・血小板などの血管細胞を作りだす造血幹細胞に特徴的な異常が起こる病気です。白血病は、血液のがんともいわれています。
特に血液中の白血球が異常に増殖し発症します。発症後に慢性期・移行期・急性転化期へと症状はゆっくり進行しますが、慢性期は白血球や血小板が増えるのみで、症状はほとんどみられません。
放置しているとやがて移行期には全身に症状があらわれ始め、急性転化期には急性白血病と同様に感染症や出血を生じやすい状態になり、治療が困難になります。なお、慢性骨髄性白血病は、急性骨髄性白血病が進行・長期化したものではありません。
慢性骨髄性白血病の治療費はどのくらい?
慢性骨髄性白血病は治療に時間がかかるイメージですが、治療費がどのくらいかかるのか、とても不安になるところです。その治療費について解説します。
治療費の目安
厚生労働省 令和3年度 医療給付実態調査 の調査結果をもとに計算すると白血病による入院の費用は、1件あたり平均1,700,000円です。
この金額をみるとさらに不安が募りますが高額療養費制度など公的医療制度を利用して自己負担額を抑えることは可能です。あくまでも目安の金額になりますので、それぞれの医療機関で確認してください。
保険適用外の治療はある?
有効性や安全性が確認されていない開発中の試験的な治療法・薬・医療機器を使った治療は、保険適用外です。この場合は、全額が自己負担です。保険適用外の治療と適用内の治療を併用した場合には、原則として適用内分も合わせた全額が自己負担になります。
ただし、先進医療や医薬品・医療機器・再生医療等製品の治療に係る診療など厚生労働省が認めた治療については、保険適用外の診療と適用内の診療の併用が認められ、適用内の治療について給付の対象になります。
保険適用外の治療をすすめられた場合には通常、実施前に患者さんや家族に説明がありますのでしっかり確認し、納得してから治療を受けるようにしましょう。
慢性骨髄性白血病の治療に利用できる公的制度
日本には、国民全員を公的医療保険で保障する制度があります。慢性骨髄性白血病の治療に利用できる6つの公的制度を解説します。ご自身が活用できるものがあるか、参考にしてください。
公的医療保険
医療機関の窓口で健康保険証(マイナンバーカード)を提示して医療費を支払いますが、その医療費の1~3割の自己負担を支払うことで医療費負担を軽減させる制度です。自己負担の割合は、年齢や所得によって決められます。
高額療養費制度
医療費の自己負担分を支払った後、自己負担額が過重なものにならないよう、月ごと(1日〜月末)の自己負担額を超えた金額について払い戻される制度です。自己負担額は、年齢や所得により異なります。同世帯で同医療保険加入者に限りますが、自己負担額を世帯で合算することも可能です。
また、世帯で同月に複数の医療機関で医療費を支払った場合、その合算した額が限度額を超えていれば高額療養費制度の支給対象になります。1年間(直近12ヵ月)に3回以上、高額療養費制度を利用した場合、4回目以降は自己負担額がさらに引き下がります。
高額医療・高額介護合算療養費制度
毎年8月1日〜翌年7月31日の1年間にかかった医療保険(医療費)と介護保険(介護費)の自己負担の合算額が限度額を超えた場合に超えた金額を支給する制度です。対象になる世帯は、各医療保険制度に加入している世帯で介護保険の受給者がおられる場合です。
この制度の自己負担限度額は、年額560,000円を基本として各医療保険制度や所得や年齢区分ごとに細かく設定されています。
小児慢性特定疾病医療費助成制度
お子さんが小児慢性特定疾患と診断された場合に、世帯の医療費負担を軽減するため自己負担額の一部を助成する制度です。対象年齢は、18歳未満で18歳到達後も引き続き治療が必要な場合は、20歳未満までが対象です。
この制度は、月額の自己負担額が限度を超えると超えた分が免除されます。限度額は、生計中心者の所得区分で決められます。ただし、都道府県知事または指定都市・中核市の市長が指定した指定医療機関で受診した医療費のみ対象で、複数の指定医療機関で受診した場合は合算が可能です。
医療費控除制度
医療費控除制度は、直接的に医療費を軽減するものでなく、支払った医療費が一定額を超えた場合、納めた税金の一部を還付する制度です。その年の1月1日から12月31日までの間に生計を一とする家族の医療費をもとに、計算された金額が所得控除を受けられます。
そして、特例としてセルフメディケーション税制があり、一般用の医薬品など購入をした場合において適用を受けられる場合もあります。
傷病手当金
傷病手当金は、業務外の病気やケガのため仕事を休業して十分な収入が得られない場合に支給される制度です。仕事を連続して3日間休業した後、4日目以降の休業した日に対して支給されます。
しかし、休業期間において傷病手当金の金額以上の収入を得た場合は、対象外になります。障害厚生年金や老齢退職年金などを受けている場合は、傷病手当金の調整がありますのでご確認ください。
慢性骨髄性白血病の治療方法
以前は慢性期の治療には、抗がん剤や全身への放射線治療によって慢性骨髄性白血病細胞と正常な造血幹細胞を一緒に死滅させ、その後に造血幹細胞を移植する方法が行われていました。
しかし、現在ではチロシンキナーゼ阻害薬が第一選択で処方されています。そこで、チロシンキナーゼ阻害薬と造血幹細胞移植の2つの治療方法を解説します。
チロシンキナーゼ阻害薬
チロシンキナーゼ阻害薬は、慢性骨髄性白血病の慢性期と診断された場合に異常なたんぱくの機能をピンポイントに抑制する分子標的治療薬です。日本では、イマチニブ・ニロチニブ・ダサチニブの3種類が使用されています。
チロシンキナーゼ阻害薬が異常なたんぱくと結合し、増殖する細胞を抑えることでより正常な血液細胞を増殖させる方法です。この3種類は、それぞれ特徴があり服薬の方法や副作用も異なります。
造血幹細胞移植
チロシンキナーゼ阻害薬で十分な効果が得られない場合や急性転化期に移行してしまった場合に造血幹細胞移植の実施を検討します。移植される造血幹細胞は、自家造血幹細胞と同種造血幹細胞の2種類です。
移植の前処置として、大量の抗がん剤治療(化学療法)と全身の放射線治療を組み合わせた治療を行います。移植当日は、患者さん本人またはドナーから、事前に採取した造血幹細胞を静脈から点滴のように投与する輸注が行われます。
慢性骨髄性白血病の治療費についてよくある質問
ここまで慢性骨髄性白血病の治療費・利用できる公的制度・治療方法などを紹介しました。ここでは、「慢性骨髄性白血病に関する病気・症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
慢性骨髄性白血病の検査費用はどのくらいですか?
山本 佳奈(医師)
骨髄性白血病の検査には、骨髄検査・血液検査・検鏡・表面マーカー検査・染色体検査・遺伝子検査・病理検査などがあります。検査によって数千円から数万円のものもありますが医療機関により行われる検査が異なる場合もあるため受診される医療機関でご確認ください。
治療費が支払えない場合に利用できる支援制度はありますか?
山本 佳奈(医師)
支援制度はいくつかあります。がん相談支援センターでは、お金について利用できるサービスの紹介などさまざまな相談が可能です。また、医療機関には、治療以外のお金のことでも相談にのってもらえるソーシャルワーカーが在籍している場合が少なくありません。まずは、がん相談支援センターやソーシャルワーカーに相談してみてはいかがでしょうか。公的制度についても教えていただけます。
編集部まとめ
今回は、慢性骨髄性白血病の治療費や利用できる公的制度について解説しました。治療費など、どのくらいかかるのかなども不安要素になります。
公的制度のサポートもありますので早めの相談と手続きをしてください。
身体と心の負担はもちろんのこと、経済的な負担も少なくありません。経済的な負担を少しでも軽減させ、治療やサポートにしっかり向き合ってください。
ご自身やご家族に診断を受けた方がいたら、1人で悩まず早めに医療機関・公的機関に相談してください。
慢性骨髄性白血病と関連する病気
「慢性骨髄性白血病」と関連する病気は、2個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 急性骨髄性白血病
- 急性リンパ性白血病(急性リンパ芽球性白血病・リンパ芽球性リンパ腫)
慢性骨髄性白血病は、慢性期と呼ばれる初期の段階では症状がほとんどみられませんが、急性転化期に入ると急性骨髄性白血病と似た症状になり治療も困難になっていきます。定期検診などをしっかり受診し、早期発見・早期治療が行えるようにしましょう。
慢性骨髄性白血病と関連する症状
「慢性骨髄性白血病」と関連している、似ている症状は4個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 貧血
- 出血しやすくなる
- 血小板減少
- だるさ・倦怠感
- 発熱
だるさや倦怠感や発熱など風邪と似ていて放置されやすい症状ですが、貧血や出血しやすくなる症状は頻繁にあるものではありません。少しでもいつもと違うなと異変を感じたら早めに医療機関受診をしてください。