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「健忘症」の特徴・症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

公開日:2022/08/12  更新日:2022/08/09
「健忘症」の特徴・症状・原因はご存知ですか?医師が監修!

健忘症(けんぼうしょう)とは、過去の経験や出来事を思い出す能力が失われる病気です。部分的に失われる場合もあれば、完全に失われる場合もあります。健忘の原因は一部しかわかっていませんが、治療によって改善する可能性があります。

今回は健忘症の症状と分類や原因、検査や治療方法について解説します。

伊藤 有毅

監修医師
伊藤 有毅(柏メンタルクリニック)

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専門領域分類 精神科(心療内科),精神神経科,心療内科。 保有免許・資格 医師免許、日本医師会認定産業医、日本医師会認定健康スポーツ医

健忘症とは

健忘症とは

健忘症とはどのような病気ですか?

健忘とは、過去の体験や出来事を思い出す能力が失われる障害です。失われる記憶は、数秒前や数日前、さらに長期などさまざまです。また、部分的に失われる場合もあれば、完全に失われる場合もあります。
健忘が起こるしくみは一部しかわかっていません。記憶には脳のさまざまな領域が関わるため、脳のどこかに損傷が起きると健忘をする可能性があります。健忘の原因となる損傷の程度によって、記憶障害の重症度が変わります。

人の記憶

人の記憶のしくみを教えてください。

記憶は新しい情報を取り込む記銘と、脳に保存されている情報やイメージや記憶と関連付ける符号化、そして記憶を思い出す想起の3つで構成されます。
このような情報の保存や想起には、主に前頭葉と側頭葉が働きます。また、脳の多くの部位が働きますが、特に海馬が重要です。大脳辺縁系にある海馬は記憶の形成や想起に関与し、記憶と感情を結びつける働きがあります。
ほかにも、生命の維持に関わる脳幹も記憶に関係しています。

「記憶」と言ってもさまざまなパターンがあるかと思うのですが。

おっしゃるとおり、記憶には持続時間による分類と内容による分類があります。持続時間による記憶の分類は、数分間の記憶である短期記憶と、ほかのことに長時間集中したあとや睡眠後でも覚えている長期記憶に分かれます。
内容による記憶の分類も2つで、意識的に思い出せる陳述記憶と、意識に上がらない非陳述記憶です。陳述記憶は表現したり説明したりすることが可能であり、さらにエピソード記憶と意味記憶に分かれます。
エピソード記憶は生活の記憶であり、いわゆる思い出です。前頭葉や側頭葉などが関係します。意味記憶は勉強などに関わる記憶で、言葉の意味や数学の公式、物理の法則などです。大脳皮質が関係します。
一方で非陳述記憶は自動車の運転やタイピングのような技能です。非陳述記憶は感覚的で、言葉などで表現するのが難しい特徴があります。大脳基底核や大脳皮質運動野や小脳などが関係します。

健忘症の特徴

健忘症とは?

健忘症の特徴について教えてください。

健忘症は主に、陳述記憶のエピソード記憶の障害です。なお、先ほど解説した記憶の3の要素である、記銘・符号化・想起のどれが障害されても、記憶障害が起こります。
健忘症の記憶障害は、3つに分類されます。原因が起こった直後の出来事を健忘する「前向性健忘」、原因が起こる直前の出来事を健忘する「逆行性健忘」、聴覚や視覚のように1つの感覚に処理される出来事を健忘する「感覚特異的健忘」です。

健忘症の症状と分類

健忘症の症状を教えてください。

健忘症の主な症状は記憶障害です。すべての記憶を失うのではなく、数分間の出来事を記録する短気記憶を障害される場合が多くあります。人との約束を覚えられない、今日の食事で何を食べたか思い出せない、ものをどこに置いたかを思い出せないなどの症状が現れます。
ほかにも、新しいことを記銘して保持するのが難しくなります。一方で、その場で6桁の数字を覚えて答えたり、数十年前の記憶を思い出したりなど、即時の記憶や昔の記憶は思い出せる場合が多いです。
これらの症状により仕事や家事などの日常生活に支障をきたす場合が多くなり、混乱をごまかすために作話することもあります。このような健忘症の持続時間は損傷の重症度によって、数分間から数時間、さらに長期とさまざまです。

健忘症に分類はありますか?

健忘症の原因によって分けられます。頭部外傷後に起こる「一過性」の健忘や、脳卒中のように脳の広い範囲に影響を与えて改善が困難な病気が原因の「永続的」な健忘、アルツハイマーのように「進行性」の健忘などです。

健忘症の原因

健忘症とは?

健忘症はどのような原因で起こりますか?

頭部外傷や脳卒中、脳腫瘍や脳炎、アルツハイマーなど、脳に損傷や萎縮をもたらす病気が主な原因です。記憶にはさまざまな脳領域が関わるため、脳のどこが損傷しても健忘を起こす可能性があります。
特に海馬、扁桃体、視床、正中核といった脳部位が損傷を受けると健忘が起こりやすくなります。
ほかにも、チアミン欠乏症のような栄養障害、けいれん発作、多発性硬化症、アムホテリシンBやリチウムなどの薬剤の使用、一酸化炭素中毒、アルコールの乱用、強い精神的ストレスなどによって健忘が起こる場合があります。

健忘症の受診科目

健忘症とは?

健忘症が疑われる場合、何科を受診すればいいでしょうか?

心療内科や精神科、神経科などを受診してください。健忘の原因となる病気をできるだけ早く治療することが重要です。

健忘症の検査

健忘症が疑われる場合、どのような検査を行いますか?

ベッドサイド検査と言われる簡単な質問や、神経心理学的検査を行って記憶障害を評価します。ベッドサイド検査は、室内に隠したものの場所を答えたり、3単語を想起したりするなど、簡単な記憶テストです。
神経心理学的検査では、単語リスト学習テストと呼ばれるテストを行います。患者の症状やテストの結果によって、原因とほかに必要な検査を推測する場合が多くなります。

健忘症の性差・年齢差

健忘症に性差や年齢差はありますか?

現在、健忘症の性差や年齢差を示す信頼性の高い報告はありません。頭部外傷や脳炎のような脳に関する病気の患者さんや、アルコール使用障害の患者さんに多い傾向があると考えられています。

健忘症の治療方法

健忘症の治療方法を教えてください。

原因となる病気が特定できて、可能であれば病気の治療を行います。原因となる病気が改善するにつれ、失われている記憶の期間が短くなったり、全体の記憶が少しずつ戻ってきたりする人もいます。
しかし、原因となる病気の治療によって、健忘が改善するとは限りません。治療を行って健忘の原因となる病気が改善しても、健忘が改善することもあればしないこともあります。
逆に治療をしなくても自然に記憶が戻ってくる人もいます。

編集部まとめ

健忘とは、過去の体験や出来事を思い出す能力が失われる障害ですが、健忘が起こるしくみは一部しかわかっていません。記憶には脳のさまざまな領域が関わるため、脳のどこかに損傷が起きると健忘をする可能性があります。

健忘症では、生活の記憶であるエピソード記憶が障害される場合が多くなります。多くの場合、即時の記憶や、遠い昔の記憶は思い出せる場合が多い一方で、数分間の短期記憶が失われます。人との約束が思い出せない、今日の食事で何を食べたか思い出せないなどです。

頭部の外傷や脳卒中、脳腫瘍や脳炎、アルツハイマーなど、脳に損傷や萎縮をもたらす病気が主な原因です。これらの病気を治療することが、健忘症の治療にも重要になります。

しかし、治療を行って健忘の原因となる病気が改善しても、健忘が改善することもあればしないこともあります。逆に治療をしなくても自然に記憶が戻ってくる人もいます。

健忘の原因となる病気をできるだけ早く治療することが重要なので、健忘症のような症状がある方は、早めに心療内科や精神科、神経科などを受診してください。