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「慢性骨髄性白血病の治療中の日常生活」はどのように過ごしたらいい?【医師監修】

 公開日:2024/08/21
「慢性骨髄性白血病の治療中の日常生活」はどのように過ごしたらいい?【医師監修】

慢性骨髄性白血病は急性白血病と比べてゆっくりと進行し、初期症状に乏しい病気です。自覚症状がない段階では、検診などの血液検査異常で発覚します。

慢性期の治療の中心は内服薬によるもので、外来通院で治療を受けることができます。

自宅でこれまでと同じように日常生活を送ることができますが、治療中はどのようなことに注意が必要なのでしょうか。

ここでは慢性骨髄性白血病の治療法や、治療中の生活の注意点などを解説していきます。

ご自身やご家族が慢性骨髄性白血病の診断を受けた場合には、ぜひ参考にしてください。

山本 佳奈

監修医師
山本 佳奈(ナビタスクリニック)

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滋賀医科大学医学部 卒業 / 南相馬市立総合病院や常磐病院(福島)を経て、ナビタスクリニック所属/ 専門は一般内科

慢性骨髄性白血病とは?

白血病とは血液のがんの一種です。
血液細胞(赤血球や白血球、血小板など)は、骨の中の骨髄で造血幹細胞が細胞分裂を繰り返すことでつくられます。この過程で遺伝子異常が起き、白血病細胞と呼ばれる異常な血液細胞(特に白血球)の増殖がみとめられるのが慢性骨髄性白血病(CML)です。
初期には白血球や血小板が増加するため自覚症状がない場合が多く、検診などの血液検査の異常で発見されます。初期の段階で治療を開始すれば病期の進行を防ぐことができ、外来通院で治療を受けながらこれまでと同じように日常生活を送ることが可能です。

慢性骨髄性白血病の治療中の日常生活での注意点

慢性骨髄性白血病の病状はゆっくりと進むのが特徴です。慢性期は自覚症状がないことも多いため、外来通院で治療を受けながら自宅で日常生活を送ることができます。

手洗い・うがいをしっかり行う

薬の副作用などによって白血球が減少すると、細菌やウイルスへの抵抗力が下がります。感染症にかかりやすく重症化しやすい状態のため、手洗いやうがいをしっかり行いましょう。
手指消毒剤を持ち歩くことで、外出先でも簡単に感染予防対策ができます。また、感染予防対策には同居している家族の協力も重要です。

入浴・歯みがきで清潔を保つ

体についた汚れや細菌は感染症のリスクにつながります。発熱やだるさなどの症状がなければ、毎日入浴もしくはシャワー浴を行いましょう。
また、口腔内の細菌が気道に入り込むと肺炎を引き起こす危険があります。歯茎を傷つけないよう注意しながら、歯みがきで口腔内の清潔を保ちましょう。

けがに気を付ける

傷口から細菌やウイルスに感染する危険があります。山などの虫が多くいる場所への外出、海での遊泳などの際は注意が必要です。虫除けスプレーを使用したり肌の露出を避けたりして対策をしましょう。
また、ペットに噛まれたり引っ掻かれたりしてできた傷も注意が必要です。傷口に赤みや腫れ、熱感などの症状がみられたら早急に病院で受診しましょう。

食事は食材の鮮度に注意する

開封後長期保存している食品や、調理後数時間経った食品は細菌が繁殖している可能性があります。できるだけ新鮮な食材を使用し、常温での放置は避けましょう。
野菜や果物は流水でよく洗い、皮を剥くことで感染を防ぐことができます。また、缶詰やレトルト食品は殺菌処理が施されているためおすすめです。

生ものの摂取には注意が必要

生肉や刺身、生卵などは細菌感染のリスクがあります。中までしっかりと火を通して食べるようにしましょう。
また、生野菜やフルーツなどの制限範囲は病状によって異なります。主治医に確認してみましょう。管理栄養士からの栄養指導や食事指導を受けられる場合もあります。

慢性骨髄性白血病の治療中は運動制限が必要?

これまで運動習慣がなかった人も、病気をきっかけに体力の維持・増進を意識し始めることもあるでしょう。
また、適度な運動はよい気分転換にもなります。ここでは慢性骨髄性白血病治療中の運動制限の有無や程度などを解説します。

基本的には制限はない

病状が安定している慢性期は、基本的に運動制限はありません
しかし、血液細胞が減少している場合は貧血や出血、感染症に注意が必要です。制限の有無や程度は患者さん一人ひとり異なるため、担当の医師に確認してみましょう。

疲れや辛さを感じたら休むようにする

治療中は薬の副作用や貧血などによって疲れやすい状態です。無理はせず、疲れたらしっかり休むことを心がけましょう。

慢性骨髄性白血病の治療法

ここまで慢性骨髄性白血病治療中の注意点などを解説してきましたが、具体的にはどのような治療法があるのでしょうか。慢性骨髄性白血病に対して行われる代表的な治療法を3つご紹介します。

分子標的薬による治療

慢性骨髄性白血病の慢性期は、分子標的薬での治療がメインになります。がん細胞を選択的に攻撃するため、体への負担が少ないのが特徴です。白血球や血小板などの血液細胞の数を正常化し、白血病細胞を減少させる効果があります。
慢性期の治療の目標は全身状態の回復と病期の進行を防ぐことで、外来通院で治療を行います。

細胞障害性抗がん薬の併用

一般的な抗がん剤のことで、点滴で投与します。細胞分裂を障害することでがん細胞を攻撃する方法ですが、正常な細胞も障害を受けてしまう点がデメリットです。
病期が進行して移行期になると、分子標的薬の変更や細胞障害性抗がん薬を併用した治療法に切り替えます。

造血幹細胞移植

さらに病期が進行して急性転化期に移行すると、造血幹細胞移植の適応となります。抗がん剤の大量投与と放射線の全身照射で白血病細胞をほぼ全滅させた後、ドナーの造血幹細胞を輸注する方法です。
輸注は点滴や輸血とほぼ同じ方法で行われます。また、造血幹細胞移植の前処置は体に大きな負担がかかるため高齢の患者さんや、治療に耐えうる体力が残されていないと判断された場合には適応されません。
さらに、造血幹細胞移植には命に関わる重篤な合併症のリスクがあるため、患者さん本人はもちろんご家族の意向も確認したうえで治療方針を決定します。

慢性骨髄性白血病の日常生活についてよくある質問

ここまで慢性骨髄性白血病の治療中の注意点や運動制限の有無、治療法などを紹介しました。ここでは「慢性骨髄性白血病の日常生活」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします

慢性骨髄性白血病と診断されましたが仕事をしても大丈夫でしょうか?

山本 佳奈医師山本 佳奈(医師)

慢性骨髄性白血病の慢性期は自覚症状がないことも多く、仕事や運動を含めこれまでと同じ生活を送ることができます。しかし、血球細胞が減少している場合は貧血や感染症、出血などに注意が必要です。職業によっては仕事内容の変更が必要になることもあるため、主治医に相談してみましょう。また、疲れやすいなどの理由で今までと同じ仕事を続けることが難しい場合、医師に診断書を書いてもらうことで部署異動などが叶うかもしれません。

慢性骨髄性白血病の治療中に飲酒をしても問題ありませんか

山本 佳奈医師山本 佳奈(医師)

アルコールによる治療薬への影響は報告されていません。しかし、多量の飲酒は肝機能の低下を引き起こし治療に影響が出るリスクがあります。治療薬の副作用によって肝機能が低下している可能性もあるため、飲酒の可否や量は主治医に相談してみましょう。また、白血病の診断による絶望感や予後に対する不安から日常的に飲酒をしている場合は、注意が必要です。アルコール依存症などのリスクがあり、白血病の治療継続が困難になる危険があります。心当たりのある方はがん相談支援センターなどの窓口を活用してみましょう

編集部まとめ

慢性骨髄性白血病の慢性期は自覚症状がないことも多く、外来通院で治療を受けながらこれまでと同じ日常生活を送ることができます。

しかし、病期が進行して白血球や赤血球などの血液細胞が減少してくると感染症や貧血、出血などの症状に注意が必要です。

手洗いやうがい、手指消毒だけでなく食べ物にも注意し感染症を予防しましょう。

また、病状が安定している場合は運動制限もありません。適度な運動を心がけ、体力の維持・増進に努めましょう。

慢性骨髄性白血病と関連する病気

「慢性骨髄性白血病」と関連する病気は7個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

  • 慢性リンパ性白血病
  • 真性多血症
  • 本態性血小板血症
  • 原発性骨髄線維症
  • 慢性好中球性白血病
  • 慢性好酸球性白血病

上記の病気では貧血や出血傾向、感染症への抵抗力低下などがみられます。特に急性白血病では病期の進行が急速に進むため、注意が必要です。検診などで異常の指摘を受けた場合は早急に病院を受診しましょう。早期発見・早期治療により治療の選択肢が増えるだけでなく、治癒も期待できます。

慢性骨髄性白血病と関連する症状

「慢性骨髄性白血病」と関連している、似ている症状は4個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 貧血:めまいや立ちくらみ、動悸、息切れなど
  • 易感染状態:発熱、風邪の症状が長引き治りづらい
  • 出血傾向:鼻血や歯茎からの出血が止まりにくい
  • 腹部膨満感

慢性骨髄性白血病の初期は、自覚症状がないことがほとんどです。しかし、慢性期から移行期、急性転化期へと病期が進行するにつれ上記のような症状がみられます。慢性骨髄性白血病は、早期発見・早期治療により病状の悪化を防ぐことができる病気です。思い当たる症状があれば早急に病院で検査を受けましょう。

この記事の監修医師