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「慢性骨髄性白血病の治療期間」はご存知ですか?症状や検査方法も解説!

 公開日:2024/06/19
「慢性骨髄性白血病の治療期間」はご存知ですか?症状や検査方法も解説!

最近疲労感や貧血気味なときはありませんか。もしかすると慢性骨髄性白血病に罹患している可能性があるかもしれません。

慢性骨髄性白血病は、染色体の一部が入れ替わることでフィラデルフィア染色体が発生し、血液細胞に異常をきたすことで発症する病気です。

進行はゆっくりですが、移行期や急性転化期に差しかかると貧血になったり、出血が止まらなかったりするなどの症状がみられます。

本記事では、慢性骨髄性白血病の治療期間について、症状や診断にも触れながら解説します。

上記の症状がみられる方や、慢性骨髄性白血病と診断されて治療期間に関して詳しく知りたい方はぜひ参考にしてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

プロフィールをもっと見る
大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

慢性骨髄性白血病とは?

慢性骨髄性白血病とは骨髄でつくられる造血幹細胞に異常が発生し、白血球・赤血球・血小板が無限に増えてしまう病気です。
血液中の白血球の数が通常よりも異常に増えたり、フィラデルフィア染色体(BCR-ABL1融合遺伝子)があることが特徴です。
初期症状はほぼ現れませんが進行するにつれ徐々に症状が現れ、急性転化期になると急性骨髄性白血病と似たような症状が現れます。
多くは中年以降に発症しますが、まれに小児でもみられます。

慢性骨髄性白血病の治療期間は?

慢性骨髄性白血病は、症状や徴候から慢性期・移行期・急性転化期の3つの段階別に疾患の進行度を区分しています。
各段階で、どのくらいの治療期間が見込まれるのでしょうか。主な治療方法にも触れながらみていきましょう。

慢性期・移行期の場合の治療期間

発症から3〜5年程の間は慢性期と呼ばれる時期で、ほとんど自覚症状がなく、血液検査によって慢性骨髄性白血病とわかるケースがほとんどです。
この時期の治療は、慢性期を維持するのが目的になります。慢性期では、分子標的薬による治療が行われ、主に用いられるのはチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)です。
慢性期から症状が進行すると、移行期に入ります。移行期では増殖する白血球を治療によりコントロールすることが困難になり、症状が出現するでしょう。
そのため、慢性期で使用するイマチニブよりも強力な薬を使用します。まれに移行期がないまま急性転化期に進行する場合もあります。

急性転化期の場合の治療期間

移行期を経て急性転化期に突入すると白血病細胞の分化能がほぼ失われるため、成熟した白血球が急速に減少し、骨・リンパ節・脳・脊髄などへも影響を及ぼすようになります。
急性転化期は発症してから5〜7年経過後とされ、慢性期で使用していた治療法では効果がなく、抗がん剤を使用した治療や造血幹細胞移植などが行われます。

慢性骨髄性白血病の症状

慢性骨髄性白血病は初期段階ではほとんど症状がみられないものの、進行するに従い徐々に症状が現れるようになります。
このように緩やかに症状が現れるのが、慢性骨髄性白血病の特徴といえます。
では、疾患の進行度の各段階でどのような症状がみられるのでしょうか。詳しくみていきましょう。

慢性期の症状

慢性骨髄性白血病はゆっくりと進行し、白血球の増え方も慢性期ではほぼ正常値と同じく推移していきます。
大半が血液検査などから慢性骨髄性白血球だと判明するため、ほとんど目立った症状がみられません。
稀に体重減量や疲労感などが現れることもありますが、ほかの病気の症状と見分けがつきにくいでしょう。

移行期の症状

移行期に進行していくと、血液細胞が正常に作られなくなるため、下記のような症状がみられます。

  • 貧血による動機や息切れ
  • 白血球の増加による骨に痛み
  • 脾臓が肥大するためお腹の張り

このように慢性期での無症状から一変し、移行期に突入するとこれらの症状が出てきます。
そのため、症状がみられてから慢性骨髄性白血病とわかった場合は、進行度がかなり進んでいると考えた方がよいでしょう。

急性転化期の症状

急性転化期になると、重い貧血状態になり常に動機や息切れを感じるようになります。
また血小板が不足するため、鼻血や歯茎からの出血が頻発し、なかなか止血ができなくなります。倦怠感や発熱も発症しやすくなるでしょう。
急性転化期ではほぼ正常に白血球が作られなくなっているため、健康であれば感染しないような菌でも感染症にかかりやすい状態になります。
そのため、無菌室などの衛生的に管理されている環境下での入院や怪我をしないことが必要です。

慢性骨髄性白血病を診断するための検査

慢性骨髄性白血病は約85%の方が慢性期に血液検査などで異常が発覚し、さらに詳細な検査を実施すると慢性骨髄性白血病と診断されることが多い傾向にあります。
移行期や急性転化期に進行してしまうと治療が困難になるため、早期に発見・治療すると長期間安定した状態で生活できます。
では、慢性骨髄性白血病を診断するための検査を詳しくみていきましょう。

血球検査

血球検査とは、血液を採取し赤血球・白血球・血小板の数を調べて正常値と比較する検査です。
白血病の場合、骨髄から作られる血液細胞に異常が現れ、芽球細胞といわれる幼若な白血球が作られます。
そのため、白血球を分画検査で観察し数だけでなく種類も詳細に検査が実施されます。

生化学検査

生化学検査とは、採取した血液から体内にある臓器や組織から血液に放出される特定の物質の濃度を測定する検査です。
特定の物質の濃度が正常値よりも高値または低値であるなどの異常がみられるのは、対象となる臓器や組織に問題が生じている状態であるとわかります。
白血病ではビタミンB12が高値を示すことが特徴です。

遺伝子検査

慢性骨髄性白血病の診断で行われる遺伝子検査には、細胞遺伝学的分析・逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT–PCR)検査などがあります。
細胞遺伝学的分析は血液中に含まれる細胞を検査し、染色体の損傷や過剰などを調べます。
慢性骨髄性白血病はフィラデルフィア染色体にみられる特徴があるため、染色体の異常は徴候を示しているといえるでしょう。
逆転写ポリメラーゼ連鎖反応検査とは特定の遺伝子によって作られるmRNAという遺伝物質の量を測定する検査です。
この検査では遺伝子や染色体に特定の変化が起こっているか否かを調べるためにも活用され、がんの診断に役立つこともあります。

骨髄検査

骨髄検査では、腰または胸の骨に針を挿入して骨髄や血液などを採取し、病理医によって顕微鏡観察から異常がみられないかを検査する方法です。
採取した骨髄や血液などは遺伝子検査などほかの検査にも活用され、複数の検査の結果、総合的に慢性骨髄性白血病であることを診断します。

画像検査

慢性骨髄性白血病の治療を行う前に、画像検査にて全身状態を調べることで適切な治療法を選択するために行われます。
具体的にはレントゲン検査・心電図・エコー検査が挙げられます。画像検査は治療中も副作用が起きていないかなどを確認するために行われることがあるでしょう。

慢性骨髄性白血病の治療期間についてよくある質問

ここまで慢性骨髄性白血病の治療期間・症状・診断について紹介しました。ここでは「慢性骨髄性白血病の治療期間」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

慢性骨髄性白血病の生存率はどのくらいですか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

慢性骨髄性白血病の生存率は慢性期時点で発症を確認しチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による治療が行われた場合、5年生存率が89%、8年生存率が85%です。以前は化学療法による治療がメインで診断後約4年後には急性転化期を迎え、死亡してしまうケースが多くありました。しかし、チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)により劇的に生存率が良好になりました。チロシンキナーゼ阻害薬(TKI)に耐性ができた場合でもインターフェロンや造血幹細胞移植によって90%以上が長期生存できるようになっています。

慢性骨髄性白血病の原因について教えてください。

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

慢性骨髄性白血病の原因は9番染色体と22番染色体の一部が入れ替わることによって、フィラデルフィア染色体によりつくられるBCR-ABL1チロシンキナーゼと呼ばれるタンパク質が活性化し、がん化した白血病細胞が増えることが原因です。なお、フィラデルフィア染色体は親から子どもへ遺伝はしません。

編集部まとめ

本記事では、慢性骨髄性白血病の治療期間・症状・診断について解説しました。

慢性骨髄性白血病は慢性期といわれる発症から3〜5年の間に診断され、早期にチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)による治療を開始すると生存率が大きく向上します。

初期段階ではほぼ自覚症状が現れないものの、移行期や急性転化期に進行すると貧血・倦怠感・出血症状・お腹の張りなどさまざまな症状が現れます。

慢性骨髄性白血病を診断するためには血液検査・骨髄検査・遺伝子検査など多くの検査結果から総合的に判断されるでしょう。

今は健康診断の血液検査で異常がみつかり、発症がわかるケースが大半となっているため、定期的に健康診断を受診しましょう。

慢性骨髄性白血病と関連する病気

「慢性骨髄性白血病」と関連する病気は6個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

  • 慢性好中球性白血病
  • 真性赤血球増加症または真性多血症
  • 原発性骨髄線維症
  • 本態性血小板血症
  • 慢性好酸球性白血病
  • 分類不能骨髄増殖性腫瘍

上記の関連する病気に罹患している場合は、慢性骨髄性白血病と同様の症状と原因がきっかけで発症する可能性が高いです。ただし、治療方法が異なるため、注意が必要です。

慢性骨髄性白血病と関連する症状

「慢性骨髄性白血病」と関連している、似ている症状は5個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

慢性骨髄性白血病の症状はほかの病気でもよくみられる症状もありますが、貧血や出血症状が特徴的です。慢性期ではほぼ症状が出ないため、進行していても気付かないケースがほとんどです。上記の症状以外にも体重減少やひどい寝汗などがみられたら、慢性骨髄性白血病の可能性も考えられるので、医療機関を受診してください。

この記事の監修医師