「大腸がん検査」でひっかかったら大腸カメラが必要?検査の流れも解説!
大腸がんの検診で便潜血検査を受けて、ひっかかった(陽性・要精検)方は少なくないでしょう。しかし、これはがんの可能性もあるという意味で、深刻になる必要はありません。
陽性になり次の精密検査で大腸がんと診断される方は僅かで、大半は痔や良性のポリープです。
このような便潜血検査の目的・機能・次段階の大腸内視鏡検査との関係を解説します。併せて大腸内視鏡検査の詳しい手順も紹介しましょう。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
大腸とは?
大腸は便の水分を吸収して固形化し、一次的に貯留する機能を持ちます。口から始まる長大な消化管の後尾に位置し、盲腸から結腸を経て肛門に至る1.5~2mの管状の臓器です。
大腸がんは腸管の内面の粘膜上に発生し、粘膜にできた良性のポリープががん化するタイプと、粘膜から直接がんが発生するタイプがあります。進行につれて外側に向かって浸み込むように広がり(浸潤=しんじゅん)、やがて外面の漿膜に達して腹腔を覆う腹膜上に散らばったものが腹膜播種(はしゅ)です。
周辺のリンパ節に転移したり、リンパ液や血液に乗って離れた臓器に転移する遠隔転移をおこしたりします。
大腸がんの便潜血検査とは?
大腸がんは粘膜上に留まる早期のうちに発見・治療すれば、完治も望めます。早期発見に有用で、手軽にできるのが便潜血検査です。便潜血検査の詳細を解説します。
検査方法
便潜血検査は便に混じった血液を検出する検査です。大腸のポリープや早期がんがあると、便が通過するときにこすれて出血する場合があるため、その血液を検出します。
ごく微量の出血でも検出可能です。検査は2日分の便を採取して調べます。がんから常に出血しているとは限らないので、検出精度を上げるためです。検査の結果、陽性・要精検と判定されたら、必ず確定診断のための精密検査を受けてください。
陰性の判定でも次の年には検査を受けましょう。がんが1回の検査ですべて発見されるわけではないからです。
検査の精度
この検査はスクリーニング検査であり、がんの可能性がある方を広く拾い上げることが目的です。現在の抗体を調べる免疫法ではごく微量な血液でも検出でき、精度が高い検査方法です。
一方で、陽性と判定された方のうちポリープが見つかった方は50%前後で、大腸がんが見つかった方は2~3%とされます。
こうした陽性者中のがんの発見率だけでいえば低い検査です。ただ、陽性として拾い上げた対象者からがんを発見するために、さらに精密検査が行われます。2つの検査により、高い精度で大腸がんの診断ができる仕組みです。
大腸がん以外で陽性になる可能性
便潜血検査は便に血液成分がわずかでも含まれていれば検出が可能です。そのため大腸がんでなくても、消化管内で出血があれば検出されて陽性と判定されます。
がん以外の出血を伴う消化管の病変は、痔疾・ポリープ・潰瘍・憩室炎・クローン病などです。
胃・十二指腸潰瘍の可能性もありますが、血液成分が消化液で変性するので検出される可能性は低くなります。こうした病変による出血で陽性と判定されたうちで、よくあるのはポリープが30〜50%で、ほかは大半が痔疾です。
大腸がんの便潜血検査でひっかかったら大腸カメラが必要?
便潜血検査でひっかかった場合、下部消化管からの出血が便に含まれることがわかります。それ以外の情報はまったくありません。そのため、出血の原因を特定するための精密検査が必要で、有効性が高い検査が大腸カメラ(大腸内視鏡)です。
大腸内を下剤できれいにした後、肛門からカメラを入れて盲腸までの間を詳しく調べます。病変があれば一部または全体を採取して、病理検査で確定診断を行う手順です。
大腸カメラの流れ
大腸カメラの検査は事前に大腸の内容物をすべて排出してきれいにする準備が必要です。予約から準備・検査後の説明までの流れを解説します。
予約・検査の説明
希望する医療機関へ出向いて検査の予約を取り、検査の手順や事前準備に関する説明を受けます。その際検査時の麻酔(鎮静剤)を希望するかどうかを尋ねられます。
不安な方は希望すると楽に検査できますが、検査後に車での帰宅はできません。また、お薬手帳を持参し、服薬の指示を受けます。検査の注意事項と前夜に飲む下剤をもらってその日は終了です。
前日準備
説明書に従い、前日から食事は消化しにくい海藻・根菜・野菜・きのこ類と、アルコールは避けます。夕食は軽めに済ませ、21時以後は検査終了まで絶食です。
ただ、水分は積極的に摂り、透明な清涼飲料・お茶も飲んでかまいません。予約時に出された下剤を飲んで、早めに就寝してください。
当日の前処置
当日は日常薬がある場合はできるだけ早朝に飲み、その後医療機関へ行って前処置開始です。医療機関により前処置を自宅で行う場合もあります。なお、使用する腸管洗浄液は数種類あって飲み方も異なります。
以下はその1例です。2リットル用意された腸管洗浄液を、コップ1杯ずつ1時間に1リットルのペースで飲んでください。やがて便意がおこり排便開始です。1リットル飲んだら水500mlを30分で飲み、続けて残りの洗浄液を飲みます。
固形物がなくなり、薄黄色か無色の透明な液だけになれば前処置は終了です。
鎮静剤を注射
内視鏡検査に入る前に、希望する方には鎮静剤が注射されます。麻酔薬とは違って意識があり、ぼんやりした状態で刺激に対しても鈍い状態です。
内視鏡を曲がりくねった大腸内に通す場合、便意に似た不快感・痛みや圧迫感があります。
そのような感覚を鈍くさせて楽に検査を進めるための薬剤です。経験がある患者さんでは、鎮静剤を希望しない方も少なくありません。
内視鏡検査
準備ができたら検査開始です。検査室へ入り腸の動きを抑える注射をして、左側を下にして横になった姿勢から始めますが、姿勢は頻繁に変更されます。
肛門からカメラを入れて、空気または炭酸ガスで腸を膨らませて観察しながら盲腸まで往復する検査です。
途中ポリープなどが見つかれば一部またはすべて切除し、後刻生検を行います。医療機関によっては切除は別の日程で行うこともあります。
鎮静剤を使用した場合一定時間休む
鎮静剤を使った場合は、検査終了後約1時間リカバリーベッドで休養します。担当医からの説明はその後です。薬剤の影響が消えたと思っても、当日は車の運転はできません。また、ポリープや組織を切除した場合は、当日は安静が指示されます。医療機関によっては1泊して経過観察です。
検査結果の説明
検査終了後は、検査中に撮影した画像を見ながら担当医から説明があります。組織検査などの結果は1週間程で再度説明があります。お腹の膨満感や痛みは、説明が終わる頃には治まるでしょう。
また、組織切除などがなかった方は飲食物の制限はありません。切除した方は、当日は刺激物やアルコールは控えてください。
大腸がんの検査でひっかかったらについてよくある質問
ここまで悪性リンパ腫が脳転移した際の余命・脳腫瘍の種類・症状などを紹介しました。ここでは「悪性リンパ腫の脳転移」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
症状がないのに本当に精密検査が必要でしょうか?
中路 幸之助(医師)
大腸がんの初期に症状がないのは普通にあることです。検査でひっかかるのは便に血が混じっていたからで、それは大腸がんの疑いを意味します。がんでない場合は精密検査で疑いが晴らせるし、がんである場合は精密検査で早期発見・早期治療が可能です。いずれにしても精密検査は必要です。
大腸カメラでも見つけられないがんもありますか?
中路 幸之助(医師)
大腸がんに対する大腸カメラの感度は95%とされます。つまり5%のがんは発見できなかったことになります。大腸カメラの操作には一定以上の技術が必要で、医師によって検査能力に差があるのは事実です。また、大腸の内部はまっすぐなトンネルではなく、カーブとヒダの連続です。ヒダを伸ばすように空気・ガスで膨らませても、見えずに見落とす部分も存在します。
編集部まとめ
初期の大腸がんは症状がないため、早期に発見する手段として便潜血検査が行われます。便に混じる血液成分を検出し、がんの可能性がある方を抽出する検査です。
この検査でひっかかったのは、がんの存在ではなく可能性を指摘されただけです。がんを確認するには、さらに内視鏡で確定検査をする必要があります。
便潜血検査はがんを検出するものではないことを理解して、陽性なら必ず内視鏡検査で確認が必要です。
大腸がんと関連する病気
「大腸がん」と関連する病気は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
こうした病気は大腸ポリープ同様大腸がんになるリスクが指摘されています。大腸腺腫症やクローン病は家族性なので、親族にこの病気の方がいる場合は特に注意が必要です。
大腸がんと関連する症状
「大腸がん」と関連している、似ている症状は7個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
このような症状は進行した大腸がんに見られる症状です。もしこうした症状が出た場合は、便潜血検査ではなく大腸内視鏡検査ができる病院へ急いで行ってください。