「腎臓がん」を発症すると「血尿」が出るの?血尿以外の症状も解説!【医師監修】
腎臓がんがどのような病気かご存じでしょうか。腎臓がんは腎臓の細胞ががん化した病気です。腎臓の主な役割は血液を濾過して尿を作ることです。
腎臓にがんができると血尿や腰背部痛が生じ、がんが大きくなると食欲不振や吐き気などの全身症状も現れます。
そのため、腎臓がんの治療法はがんの大きさや状態に応じて異なります。以下では、腎臓がんによる血尿の有無や症状、治療法を紹介します。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
腎臓がんとは?
腎臓の細胞ががん化した病気です。成人のがんの2〜3%程で、腎臓がんになる割合は男性が女性の2倍といわれています。50〜70歳で発症する方が多く、喫煙や肥満・高血圧や毒性の化学物質の影響などが危険因子と考えられます。
初期は自覚症状がほとんどなく、人間ドックやほかの病気の検査で偶然見つかることが多いです。70%以上が偶然発見されるといわれています。腎臓がんには腎細胞がんと腎盂がんがあり、性質や治療法が異なります。
腎細胞がんは腎臓自体の細胞ががん化した病気です。腎盂の細胞ががん化したものが腎盂がんです。一般的に腎臓がんと呼ばれているのは腎細胞がんの方を指します。
腎細胞がんは骨や肺、脳や肝臓などに転移しやすいのも特徴です。
腎臓がんで血尿は出る?
腎臓がんでは、腫瘍が大きくなると血尿が出るでしょう。
無痛性で血の色が肉眼で認識できるものもあれば、顕微鏡の検査でしかわからない程の微量の出血のこともあります。初期症状はあまりありませんが、腫瘍が7cm以上になると症状がでるといわれています。
腎臓がんの血尿以外の症状
腎臓がんは血尿以外にも背中や腰・腹部の痛みや足のむくみなどの症状がでるのが特徴です。
症状が進行すると、転移した部位によって現れる症状は異なります。
背中・腰の痛み
がんが大きくなるとがん周囲の組織や臓器が圧迫されて背中・腰の痛みが出てくるでしょう。
腎臓は、肋骨の下あたりに左右1つずつあります。背中側にあるため、背中や腰に痛みが出やすいのも特徴です。
腹部のしこり・痛み
腹部のしこりや痛みは腎臓がんの古典的3大主徴の1つです。
腎臓はやや背中側にありますが、進行すると腹部にしこりや痛みが生じます。がん自体のしこりや痛みも出るでしょう。
がんは正常な組織や臓器にまで広がり、痛みを発します。神経に広がると神経障害性疼痛と呼ばれ、一般的な痛みと異なる痛みが生じるようです。
足のむくみ
腹部などにできたがんにより静脈やリンパ液の流れが妨げられるために生じる場合があります。
また、がんで腎臓の機能が低下したことで余分な水やナトリウムをうまく排泄できないために体内に溜まり足のむくみの症状として現れる場合もあります。
加えて、大量にたんぱく質が排泄されることで血中のたんぱく質が減ることでむくみの原因にもなるでしょう。
食欲不振・吐き気・便秘
がん細胞が出す炎症性サイトカインと呼ばれる物質が原因で食欲の低下が起こります。また、がんができることで吐き気が生じます。
食欲不振や吐き気が続くと食事量の低下から必要な水分量や栄養素が不足して、体重減少や低栄養につながり生活に支障を来すこともあるでしょう。加えて、食欲不振から食事量や水分量の低下、がんになったことによる心理的負担や活動量の低下などから便秘になりやすくなります。
便秘が続くことでお腹のハリや食欲低下、吐き気などにもつながるため、早めの対処が必要です。
腎臓がんの治療法
腎臓がんの治療法には次の7つがあります。
- 手術
- 凍結療法
- 薬物療法
- 免疫療法
- 放射線療法
- 監視療法
- 緩和ケア・支持療法
がんの大きさなど適用の条件があり、状態に応じた治療法が選択されるでしょう。
手術
腎部分切除術や腎摘除術が行われます。
腎部分切除術は、患部を部分的に切除する方法です。4cm以下の小さいがんに適用されますが、がんの位置によっては適用されません。切除しなかった腎臓機能が温存できるのが特徴です。
腎摘除術は、腎部分切除術が適用されない場合に行われ、がん側の腎臓をすべて取り除きます。片方の腎臓が正常に機能している場合、生活に支障を来すことは少ないでしょう。
凍結療法
MRIやCTで腎臓がんの位置を確認しながら、-100度まで低温にした針を使って腎臓のがん細胞を凍結させて破壊する治療法です。
手術台でうつぶせや横向きになり、腰や背中あたりからの1,5mm程の細い針を患部にまで指します。その状態で10~15分程凍結を行い、5分程自然解凍します。
その後さらに10~15分程凍結し針を抜いたら治療は終了です。腎臓からできた4cm以下の早期で小さな腎細胞がんに適用され、全身麻酔ではなく、局所麻酔で行います。
凍結中は、冷たさや痛みがほとんどありません。腎臓がんのできた場所によっては治療が困難になるでしょう。
薬物療法
手術でのがん切除が難しい場合に選択されるのが薬物療法です。
治療効果を高めるために手術前に薬物療法が行われることもあります。腎臓がんでは、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害薬が使われます。
分子標的薬は、がんの増殖に関係するたんぱく質などに標的を定めてがんを攻撃する薬です。免疫チェックポイント阻害薬は、がん細胞への免疫を活性化・持続させる薬です。
どちらの薬も薬ごとに副作用が現れます。自分が服用する薬の副作用や気をつける症状などを把握しておくと対応できるでしょう。
免疫療法
体に備わっている免疫機能を利用してがんを攻撃する方法です。
免疫療法で効果があるとされているのは、サイトカイン療法と免疫チェックポイント阻害薬のみとされています。サイトカイン療法は、免疫細胞が作るたんぱく質のサイトカインを利用した治療法です。
免疫チェックポイント阻害薬や分子標的薬が使えない場合に行われることもあるでしょう。
放射線療法
手術や薬物療法に並ぶがんの3大治療法の1つで、患部に放射線をあててがん細胞にダメージを与える方法です。
脳や骨などへの転移がある際には、がんの進行抑制や痛みの緩和のために行われます。腎臓がんでは、放射線治療が根治目的で行われることは少ないでしょう。
監視療法
手術などはせずにCTやMRIでの画像検査を定期的に行って、体やがんの経過を観察する治療法です。
手術を行うにはリスクが高い方の選択肢の1つになります。がん自体がまだ小さく早期のがんで、高齢者やほかの病気にかかっている人などに適用されます。
緩和ケア・支持療法
がんによる心や体のつらさを和らげる予防や治療・ケアのことです。
がんに罹患すると体や治療以外に仕事や将来の不安など社会的なつらさも感じるでしょう。緩和ケアは、終末期に限った方法ではなく、がんの診断を受けたときから行われます。
担当の医師や看護師が主に対応してくれますが、専門職からなるチームで支えてくれるため、つらさを感じるときには相談してみましょう。
腎臓がんの血尿についてよくある質問
ここまで腎臓がんの血尿でわかること・症状・治療法などを紹介してきました。ここでは「腎臓がんの血尿」についてのよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
腎臓がんの初期でも血尿が出ますか?
中路 幸之助(医師)
初期の頃には血尿が出ないでしょう。初期は症状がほとんどありません。血尿や痛みなどの症状は、腫瘍の大きさが7cm以上になってから出るといわれています。
腎臓がん以外の病気でも血尿が出ることがありますか?
中路 幸之助(医師)
腎結石・腎のう胞・腎炎・膀胱炎・膀胱がんなどでも血尿が出ることがあります。尿は腎臓で作られ、尿管・膀胱・尿道を通って体外に出るため、通り道のいずれかで出血があれば血尿になるでしょう。血尿だけでほかの症状が出ない病気もありますが、頻尿や排尿時痛などの症状が伴うものもあります。
編集部まとめ
腎臓がんは、がんが大きくなると血尿や腰背部の痛み、足のむくみなどが生じます。早期発見でがんが4cm以下の小さいうちは手術や凍結療法が適用されます。
がんの大きさや状態に応じて薬物療法や放射線療法、免疫療法など異なる治療法で対応が可能です。
腎臓がんは初期症状に乏しいがんですが、健診や精密検査などで見つかることが少なくありません。早期発見・早期治療につながるように定期的に健診や検査を受けましょう。
腎臓がんと関連する病気
「腎臓がん」と関連する病気は2個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 多発性嚢胞腎
- 腎血管筋脂肪腫
腎嚢胞は、両方の腎臓に嚢胞ができる遺伝性の病気です。年齢に応じて嚢胞が増えて大きくなり、腎臓の機能が低下していきます。腎血管筋脂肪腫は、血管や筋肉、脂肪からできた腫瘍です。多くの腫瘍は良性ですが、稀に悪性化するものもあります。腫瘍が大きくなると腹部などの圧迫による腹部膨満感や腫瘍周囲の出血などが生じるでしょう。
腎臓がんと関連する症状
「腎臓がん」と関連している、似ている症状は4個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
足のむくみ以外は、腎臓がんの古典的3主徴と呼ばれています。腎臓がんは健診や精密検査などで見つかることが多いため、近年では3症状がそろって発見されることは少ないでしょう。足のむくみは、がんによって静脈やリンパ液の流れが悪くなるために生じます。