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「片側顔面痙攣」の初期症状・原因・進行速度はご存知ですか?医師が監修!

 公開日:2023/05/03
片側顔面痙攣

片側顔面痙攣とは、眼の周りの筋肉が繰り返し収縮する病気であり、眼の周りがぴくぴくと痙攣したり口角がひきつったりする症状が現れます。

眼の症状から始まり、悪化すると顔全体に症状が広がる可能性があるため、早期の治療が必要です。

早期治療のためにも、正しい病気の情報を把握して、早く見つけられるようにしましょう。そこで本記事では、片側顔面痙攣の病気についてご紹介します。

症状・原因・なりやすい人の特徴・治療方法・予防方法・早期発見のポイントも解説するので参考にしてください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

片側顔面痙攣とは

目

片側顔面痙攣はどのような病気ですか?

片側顔面痙攣とは、まぶたや頬などの眼の周囲の筋肉が、ご自分の意思とは関係なく繰り返し収縮する病気です。
初期症状は眼の周りから始まりますが、悪化すると口角など顔全体に広がる可能性があり、自然と治る病気ではないため早期に治療する必要があります。
この病気は、50~70歳代の女性に多く見られる点が特徴です。男性よりも女性の方が多く、この病気の発症者の約7割が女性です。

症状を教えてください。

この病気は、主に下記のような症状が現れます。

  • まぶたの痙攣
  • 口角が意図せず上がる

まず症状として現れるのがまぶたの痙攣です。左右どちらかの上まぶたや下まぶたが、ぴくぴくと痙攣するようになります。最初は軽度の痙攣ですが、悪化するとまぶただけでなく、口周りの筋肉までも痙攣するようになります。
また、この症状は就寝中でも治まらないケースもあるため注意が必要です。口角にまで影響が及ぶと、口角が意図せず上がるような症状が現れます。
これらの症状は、人前で緊張する時などに現れやすい傾向があります。

発症する原因を教えてください。

この病気の発症する原因は、はっきりとは判明していません。しかし、主に次のようなものが考えられています。

  • 血管による神経の圧迫
  • 脳の異常
  • ストレス

主な原因が、血管による神経の圧迫です。通常顔面神経は脳の中枢である脳幹から伸びており、頭蓋骨を経由して顔面の筋肉につながっています。そして、信号を送ることで顔を動かせるようになっています。しかし、片側顔面痙攣を発症する人は、脳幹から伸びる顔面神経のどこかの部分が血管によって圧迫されているのです。
それによって神経に異常な信号が出て間違った命令が筋肉に伝わり、不随意な筋肉の収縮が起こってしまいます。
また、原因としては脳の異常も考えられています。
脳の神経細胞に異常があり、その影響でこの病気を発症しているのです。これらの誘因としてはストレスが挙げられます。
緊張・仕事の疲れ・強い閉眼運動などからストレスがたまり、それによって誘発されていると考えられているのです。

初期症状はどのようなものですか?

片側顔面痙攣には、以下のような初期症状が現れます。

  • 軽度な痙攣
  • 意図しない瞬き

初期症状の1つが、軽度な痙攣です。片側の眼だけがぴくぴくと痙攣するようになり、一定の時間が経過すると治ります。しかし、再び症状は現れ、一定の周期で繰り返すケースが多いです。次に意図しない瞬きも初期症状に挙げられます。
片側のまぶたが無意識に開閉を繰り返すような症状です。眼を開けられなかったり閉められなかったりすると、症状がかなり進行している可能性が考えられるため注意が必要です。
また悪化すると違和感や痙攣は口の筋肉にまで及ぶことがあり、咀嚼や会話もままならなくなる可能性があるため、初期症状の把握は非常に大切です。

片側顔面痙攣の検査と治療

カルテ

片側顔面痙攣は自然に治りますか?

片側顔面痙攣は、放置していても自然に治ることはありません。しかし、適切な治療を受ければ症状を改善させられます。特に症状が軽い初期の段階であれば、治療の選択肢も広いです。適切な治療を行えば早く改善することも可能なので、専門の医療機関を受診して治療方法を教えてもらいましょう。

どのような検査で診断されるのでしょうか?

片側顔面痙攣は、下記のような検査方法を用いて診断します。

  • 随意瞬目テスト
  • MRI検査
  • CT検査

検査方法の1つが随意瞬目テストです。一時的に痙攣を誘発するテストであり、誘発させた症状を確認して片側顔面痙攣の症状かを判断します。
また、原因である血管による神経の圧迫を確認するために、MRI検査を行います。どの部分の神経がどの程度圧迫されているかなどの状況が分かるため、非常に重要な検査方法です。その他、CT検査では他の脳の病気ではないかを調べます。

治療方法を教えてください。

この病気の根本的な治療方法は、現在も確立されていません。そのため、次のような対症療法を行います。

  • ボトックス注射
  • 薬物療法
  • 手術

治療方法の中でも、第一に選択されているのがボトックス注射です。筋肉の働きを抑える効果が期待できるボツリヌス菌を投与して症状の改善を行います。ボトックス注射は美容医療の分野でも、シワ改善などを目的に使われています。治療時間は非常に短く比較的早く効果を得られる点が特徴ですが、永久的に効果が得られるわけではないため注意が必要です。
ボトックス注射の効果は2~4カ月程度持続しますが、それ以降は効果が切れてしまうため定期的に投与する必要があります。また、薬物療法も治療方法の1つです。神経の異常な興奮を抑える効果が期待できる、抗てんかん薬などを用います。しかし、内服薬の効果の効きやすさは個人差もあり、眠気やぼうっとしてしまうケースもあるため注意が必要です。
ボトックス注射と薬物療法では効果が見込めない場合や症状の度合いによっては、手術を行う場合もあります。圧迫されている神経付近を切開し、顔面神経に触れている血管を直接剥離して移動させることで症状の改善を図ります。
ご自分の症状の状態や手術が可能であるかを医師に相談して、適切な治療方法を選びましょう。

進行速度はどれくらいですか?

この病気の進行速度は個人差もありますが、比較的緩やかであり年単位で悪化するケースが多いです。しかし、重度の場合は進行速度が速い場合もあります。
症状を放置していると気づかないうちに悪化していることも考えられるため、少しでも初期症状や違和感をおぼえたら早めに医療機関を受診しましょう。

片側顔面痙攣の予防

筋肉

予防方法を教えてください。

片側顔面痙攣の明確な予防方法は確立されていませんが、次のような点に気をつけて取り組みましょう。

  • ストレスをためない
  • 十分な睡眠を取る

まず気をつけるべきポイントが、ストレスをためない点です。はっきりとは分かっていませんが、この病気の症状はストレスが誘因となっている可能性があります。
そのため、ストレスを軽減できるように取り組みましょう。具体的には、ストレス発散となる趣味をしたり運動をしたりする方法が挙げられます。また、十分な睡眠を取るのも大切です。
睡眠はストレス解消につながるだけでなく、体の疲れを取り除いてバランスを整えてくれます。
脳の異常や神経の圧迫などの防止につながる可能性もあるため、十分な睡眠を取って体を休めましょう。

早期発見のポイントを教えてください。

この病気の早期発見のポイントは、眼の周囲の痙攣です。初期症状として痙攣が起き、次第に頬や口周りに影響が出てくるため、初期症状を見逃さないようにしましょう。
しかし、健康な人でも疲れている時などはまぶたがぴくぴくと動くケースはあります。そのため、病気だと思わないケースもあるかもしれませんが、片側顔面痙攣の場合は頻度や症状の度合いもひどくなる特徴があります。
この特徴に注目して病気を見逃さないようにしましょう。

最後に、読者へメッセージをお願いします。

片側顔面痙攣は、眼の周りの筋肉などがぴくぴくと痙攣を起こす病気です。疲れた時に痙攣するような症状は誰しもありますが、この病気は次第に悪化して口角など広く症状が現れる場合があります。そのため、初期症状を見逃さず早めに治療を行うのが大切です。
万が一症状に心当たりがある場合や治療方法などについて気になる場合には、専門の医療機関に相談しましょう。

編集部まとめ

首傾げる
片側顔面痙攣は、まだはっきりとした原因が分かっていない病気です。

血管による神経の圧迫や脳の異常などによる症状だとはわかっていますが、なぜ圧迫や異常が引き起こされるかは分かっていません。

また、根本的な治療方法も確立されていません。不明な点が多い病気ですが、ボトックス注射や手術など症状を改善させる方法はいくつかあります。

どの治療方法がご自分に適しているかなども踏まえて、医師と相談しながら治療を進めましょう。

この記事の監修医師