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「子宮頸がんの手術費用」はいくら?保険適用の有無や治療法を医師が解説!

 公開日:2025/12/18
「子宮頸がんの手術費用」はいくら?保険適用の有無や治療法を医師が解説!

ご自身や家族が子宮頸がんの手術を受ける場合に、費用が気になる方もいるのではないでしょうか?どの程度の手術費用になるのか知っておくと、事前に資金面の準備ができます。

1人では動きづらくなる手術や入院を予定している方は、事前の準備や家族・友人の協力が欠かせません。

今回は子宮頸がんの手術費用について解説します。治療方法や手術後の経過、生活上の注意点について知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

馬場 敦志

監修医師
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)

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筑波大学医学群医学類卒業 。その後、北海道内の病院に勤務。 2021年、北海道札幌市に「宮の沢スマイルレディースクリニック」を開院。 日本産科婦人科学会専門医。日本内視鏡外科学会、日本産科婦人科内視鏡学会の各会員。

子宮頸がんとは?

子宮頸がんとは、子宮の入口である子宮頸部に発生するがんです。
子宮頸がんを発症する年齢層のピークは30歳代後半で、20〜30歳代の若年層の罹患者も増えています。
子宮頸がんは子宮頸部の粘膜上皮から発生し、細胞の間質側に広がったものが進行性の浸潤がんです。
ほとんどの症例で性的接触によるヒトパピローマウイルス、いわゆる
HPV感染が原因
とされています。
HPV感染が持続した人のごく一部が、数年以上をかけて前がん病変から子宮頸がんになります。
早期に発見できれば治療しやすく、予後の良好ながんです。しかし、早期の段階では自覚症状がほぼありません
症状がなくても、定期的な子宮頸がん検診の受診が重要です。

子宮頸がんの手術費用

子宮頸がんの手術費用は、術式によって異なります。
また、術後の経過や合併症によっては目安以上の費用が必要になるケースもあります。

手術費用の目安と相場

医療費の自己負担額が3割の場合、手術費用の目安は、円錐切除術が100,000円以下、子宮全摘術が200,000〜300,000円です。
一般的な手術内容で予定通り退院できた、と想定した費用の目安になります。費用には、食事代や室料などは含んでいません。

保険適用の有無と自己負担額

子宮頸がんの腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術は、保険適用とする病院と自由診療になる病院があるので注意が必要です。
保険適用とする病院は、日本産婦人科学会のホームページにて施設名が公開されています。前がん病変に実施するロボット支援下腹腔鏡下子宮全摘術は、保険適用となりません。
保険適用にならない手術の費用は、数十万円〜数百万円になるケースもあります。

子宮頸がんの治療方法

がん組織の特性や進行度に即した標準治療と患者さんの希望・年齢・ライフスタイルを総合的に検討し、子宮頸がんの治療方法を決定します。
主な治療方法は以下のとおりです。

  • 円錐切除術
  • 広汎子宮全摘出術
  • 放射線治療
  • 化学療法

1つずつ解説します。

円錐切除術

開腹せずに腟からアプローチして、病変のある子宮頸部を円錐形に切除する手術です。
切除した組織を診断し、治療方針を決めていきます。前がん病変と子宮頸部にとどまるがんで、湿潤範囲が5ミリ以下の1A期の患者さんが対象です。
1A期の場合は、妊娠・出産を希望する患者さんに実施します。

広汎子宮全摘出術

がんを完全に切除するために、子宮と周囲の組織・腟・骨盤内のリンパ節を切除する手術です。卵巣を切除するかどうかは、年齢や患部の状態で判断します。
がんが子宮頸部にとどまっている、または周辺の組織に広がっている状態の患者さんが対象です。
多くの場合で開腹手術となりますが、早期の子宮頸がんでリンパ節の転移のない患者さんには腹腔鏡手術が可能になるケースもあります。

放射線治療

高エネルギーの放射線を照射し、がん細胞を傷つけて小さくする治療法です。体外から照射する外部照射と子宮や腟に器具を入れて局所に照射する内部照射があります。
化学治療と併用する同時化学放射線療法を実施する患者さんも少なくありません。
なお、重粒子線治療が一部の子宮頸がんに対して保険適用となりましたが、治療ができる施設が限られているのが現状です。

化学療法

遠隔転移のある進行がんや再発したがんの治療法には、抗がん剤を用いる化学療法が行われます。
がんが増殖する仕組みを阻害する細胞障害性抗がん薬として、多く使われているのがシスプラチンです。
使用する薬剤や投与回数は、がんの状態や患者さんの体調に応じて決められ、別の抗がん剤・がんの増殖に関わる物質を標的とする分子標的薬を使用する場合もあります。

手術後の経過と注意点

入院中は合併症に留意しつつ、できるだけ早期からリハビリを行います。
退院後は規則正しい生活を送り、体力を回復させる時期です。定期的な診察と検査を受けて、経過観察を続けます。

手術後の入院期間

円錐切除術の入院期間は、2〜3日の場合が標準的とされています。必要な検査は事前に外来で実施し、手術日の入院と翌日退院を基本とする病院も少なくありません。
子宮の悪性腫瘍を摘出する手術の入院期間は、平均11〜12日程度です。ただし、患者さんの年齢や術後の合併症によっては、まれに長期化するケースもあります。

手術後の生活

子宮全摘術後に起こりうる生活への影響は、以下のとおりです。

  • 排尿感覚が鈍くなる、尿が出にくくなるなどの排尿障害
  • 便秘
  • 下肢のリンパ浮腫
  • 性生活への影響
  • 卵巣を切除した場合は、ほてり・頭痛・倦怠感などのホルモン欠落症状

排尿障害がある場合は一定の間隔で排尿し、尿をためすぎないようにする生活上の工夫が必要です。
便秘やホルモン欠落症状がつらいときは、医師に伝えましょう。下剤・ホルモン療法薬・漢方薬の処方で症状の改善を図る場合もあります。
リンパ浮腫の悪化と合併症の予防には、皮膚のバリア機能を高めるスキンケアが重要です。

リハビリ方法

手術や治療によって低下した身体機能を回復するため、術後はできるだけ早期に離床します。
ベット上の深呼吸・座位での筋力を強化する運動・マシンを使ったリハビリへと、退院に向けて運動の強度を高め、退院後も継続して運動する習慣をつけましょう。
退院時には身体機能の評価をもとにアドバイスを受けたり、運動プログラムを組み立ててもらったりすると運動習慣が継続しやすくなります。
30分以上のウォーキングや室内での筋力トレーニングなど、生活で取り入れやすい方法がおすすめです。

追加治療費とその目安

円錐切除術で採取した組織を診断した結果、再度の円錐切除術か単純子宮全摘出術が必要なケースがあります。
単純子宮全摘出術は、子宮のみを切除する手術です。
開腹手術・腟式手術・腹腔鏡手術のうち、どの方法で実施しても追加手術費は200,000〜300,000円程度です。
また、手術後の追加治療として放射線治療を行うケースもあります。入院で実施する放射線の内部照射の費用は、400,000〜600,000円程度が目安です。

子宮頸がんの手術費用についてよくある質問

ここまで子宮頸がんの手術費用や治療方法などを紹介しました。ここでは「子宮頸がんの手術費用」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

子宮頸がん手術にかかる費用を減らす方法はありますか?

月の初めから終わりまでの病院・薬局で支払う費用が上限額を超えた場合に、超過分の金額が払い戻される高額療養費制度があります。保険適用の診療に対する費用が対象です。上限額は加入者の年齢や所得によって異なります。退院時に支払う費用を上限額までに抑えたいときの方法は、以下のとおりです。

  • 事前に加入している健康保険組合から限度額適用認定証または限度額適用・標準負担額減額認定証の交付を受け、認定証を提示する
  • マイナンバーカードの保険証機能に付いている限度額適用認定証などの情報提供に係る同意をしておく

なお、確定申告をして所得税・復興特別所得税が還付される医療費控除を利用する方法もあります。

子宮頸がん手術の治療費負担額は年齢によって異なりますか?

保険適用の治療費負担額は、69歳以下が3割負担・70〜74歳は原則2割負担・75歳以上は原則1割負担です。高額療養費の上限額は70歳以上と69歳以下では異なります。

編集部まとめ

進行がんに実施する子宮全摘術よりも入院日数が短くて費用が安いのは、早期がんを対象とした円錐切除術です。保険適用にならない手術の費用は、高額になります。

手術や入院には、ある程度まとまった費用が必要です。保険適用の医療費を軽減する高額療養費制度や医療費控除を知り、上手に活用しましょう。

子宮頸がんは早期発見と早期治療が重要です。症状がなくても、定期的な子宮頸がん検診の受診をおすすめします。

子宮頸がんと関連する病気

「子宮頸がん」と関連する病気は6個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

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いずれもHPV感染が原因となる病気です。

子宮頸がんと関連する症状

「子宮頸がん」と関連する症状は7個程あります。
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関連する症状

前がん病変や早期の子宮頸がんには、症状がないケースが多いとされています。月経時以外の出血、濃い茶色や水っぽいおりものなど気になる症状があるときには、ためらわずに婦人科を受診しましょう。

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