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HPVワクチンの男性への接種で長期有効性を確認

 更新日:2023/03/27

子宮頸がんなどの主な要因となる「ヒトパピローマウイルス感染症(HPV)」を予防するワクチンのうち、日本でも4価HPVワクチンであるガーダシルは男性に対しても任意接種が可能です。この4価HPVワクチンが、一部の型に関連する肛門および性器疾患の発症を長期的に抑制するなどの有効性が確認されたとアメリカの研究者らが発表しました。このニュースについて前田医師に伺いました。

前田 裕斗 医師

監修医師
前田 裕斗 医師

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東京大学医学部医学科卒業。その後、川崎市立川崎病院臨床研修医、神戸市立医療センター中央市民病院産婦人科、国立成育医療研究センター産科フェローを経て、2021年より東京医科歯科大学医学部国際健康推進医学分野進学。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。

今回発表された研究内容とは?

まず、今回発表された研究内容について教えてください。

前田 裕斗 医師前田先生

今回の発表は、アメリカの研究者らによって男性を対象に日本でも接種可能な4価HPVワクチンの有効性と安全性についての試験を実施した結果についてです。

ランダムにHPVワクチンと偽薬の投与を受けた集団を3年間追跡した研究の延長で、さらに7年間、合計10年間追跡した試験となりました。試験では、「尖圭コンジローマ」や「陰茎がん」、「肛門がん」などに対して、4価HPVワクチン接種の有効性および安全性が検討されました。

最初の3年間にワクチン接種を受けた人の尖圭コンジローマ罹患率は1万人のうち0.0人、偽薬を接種された群では1年で1万人のうち137.3人よりも低い結果でした。また、陰茎病変の罹患率はワクチン接種群では1万人のうち0.0人、偽薬群では1万人中140.4人でした。さらに、同性と性交渉を持つ男性に限定した肛門がん・前がん病変の罹患率は、ワクチン接種群では1万人あたり20.5人、偽薬群では1年で1万人のうち906.2人でした。また、ワクチン接種に関連する重篤な有害事象は報告されなかったそうです。

男性のHPVワクチン接種の現状は?

男性のHPVワクチン接種の現状を教えてください。

前田 裕斗 医師前田先生

日本では、2020年12月25日に4価HPVワクチンの9歳以上の男性への接種について厚生労働省から承認がおりました。

しかし、女性への接種とは異なり、現在日本における男性の接種は全額自己負担となり、全3回で計5~6万円の費用がかかります。そのため、正確な頻度は不明ですが日本での男性における接種率は低いことが予想されます。

一方、先進国では高い接種率が報告されており、オーストラリアでは88%、アメリカでは64%の男性がHPVワクチンを接種しています。肛門や陰茎の病変だけでなく、中咽頭がんという喉のがんも予防できることを考えると、接種費用の公費補助が早期に望まれます。

HPVワクチンを男性が接種する際の留意点は?

男性がHPVワクチンを接種する際、留意しておくべきことはありますか?

前田 裕斗 医師前田先生

男性がHPVワクチンを接種する場合でも、副反応の種類は変わりません。接種した部位の痛みや腫れなどの軽いものがほとんどで、1~10%程度で発熱も起こるとされています。

ただし、接種時の痛みは通常のワクチン接種と比べて特に変わりはありませんので、その点は安心してください。もし、HPVワクチン接種によるものなのか分からない場合でも、気になる症状がある場合は接種した病院を受診してください。

まとめ

2020年12月に肛門がんや尖圭コンジローマの予防を目的として9歳以上の男性にも4価ワクチンであるガーダシルを接種できるようになりましたが、今回の研究で長期有効性が確認されたことがわかりました。女性へのHPVワクチン接種の積極的勧奨が再開されたことを受けて、男性への接種にも注目が集まりそうです。

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