FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 医科TOP
  3. 三大疾病
  4. がん
  5. 「放射線治療の照射回数」はご存知ですか?費用についても解説!【医師監修】

「放射線治療の照射回数」はご存知ですか?費用についても解説!【医師監修】

 公開日:2024/08/28
「放射線治療の照射回数」はご存知ですか?費用についても解説!【医師監修】

あなたやあなたの大切な方ががんと診断されたら、治療法の選択肢の一つとして、放射線治療を知っておくことをおすすめします。
本記事では放射線治療の種類と平均照射回数について以下の点を中心にご紹介します。

  • ・放射線治療の種類
  • ・照射回数と期間
  • ・放射線治療の費用

放射線治療の種類と平均照射回数について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

木村 香菜

監修医師
木村 香菜(医師)

プロフィールをもっと見る
名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

放射線治療とは

放射線治療は、がん治療の3本柱の1つであり、手術や薬物療法と並び、がんに立ち向かう重要な治療法です。手術と比べ、体への負担が少なく、臓器の機能と形態を温存できるため、生活の質(QOL)を維持しながら治療を受けられるのが特徴です。

放射線治療の種類

放射線治療には、一般的な高エネルギー放射線治療をはじめ、三次元原体照射、画像誘導放射線治療(IGRT)、定位放射線治療(SRT)、定位手術的照射(SRS)、強度変調放射線治療(IMRT)のような種類があります。
その中でも、今回は以下の2種類について詳しく解説します。

定位放射線治療(SRT/SBRT)

定位放射線治療(SRT/SBRT)は、高精度の治療装置とコンピュータ技術を駆使し、がんに高線量の放射線を集中させつつ、周囲の正常組織への影響を抑える放射線治療法です。

頭部(脳)の場合は、細いX線を病変中心に3次元的に複数の軌道上を回転照射させることで、一回から数回の照射で治療を完了させます。一方、体幹部(主に肺腫瘍)では、病変の形状に合わせた照射野を多方向から作製し、線量比率を調整しながら照射することで、1〜2週間程度の分割照射で治療します。

定位放射線治療は、従来の放射線治療と比べて、正常組織の障害リスクを減らしつつ、腫瘍への線量を増加させるため、治療成績の向上が期待できる治療法です。

強度変調放射線治療(IMRT)

強度変調放射線治療(IMRT)は、腫瘍の形状に合わせて放射線の強度を変化させながら照射する高精度な治療法です。

従来の放射線治療では、腫瘍周囲の正常組織にも同等の線量が照射されるため、合併症のリスクが高くなる一方で、腫瘍制御率を高めることが難しかったのです。IMRTは、コンピュータ技術を用いて腫瘍の形状に応じた放射線量分布を計算し、マルチリーフコリメーター(MLC: Multi Leaf Collimator)という特殊な金属板で放射線の強度調整により、腫瘍への集中的な照射を可能にします。

IMRTは前立腺がんや頭頸部がん、胸部腫瘍など、さまざまながん種に適用されており、さらにその応用型である強度変調回転照射法(VMAT)も用いられています。

放射線治療の流れ

放射線治療の流れには、5つの段階があります。

放射線腫瘍医の診察、説明

放射線治療を検討する際、まず放射線腫瘍医の診察を受けます。医師は、がんの状態や全身の状態、検査結果、治療歴などを総合的に評価し、放射線治療の適応を判断します。治療を行う場合、照射方法、目的、副作用、併用治療などについて説明を受けます。

シミュレーション

シミュレーションでは、治療時と同じ体位で撮影装置、例えばCTやMRIの撮影を行います。撮影により、放射線を照射する範囲や方向、体位などを決定します。呼吸状態の測定や、機器との接触確認なども行われます。CTを用いる場合、CTシミュレーションと呼ばれます。

皮膚や固定具にマーキングを施し、毎回同じ体位を再現できるようにします。マーキングは治療期間中、消さないようにしてください。部位によっては、シェルと呼ばれる固定具を使用することもあります。

治療計画を作成

放射線治療計画の作成は、放射線腫瘍医を中心としたチームによって行われます。治療計画装置と呼ばれる専用のコンピューターを用いて、照射部位、照射方向、線量、分割回数などを決定します。
がんの部位だけでなく、周囲の正常組織や、がん細胞が残存している可能性のある領域も考慮し、それぞれの線量分布を詳細に計算します。

患者さんの治療目的や全身状態なども考慮した上で、適切な治療方法が選択されます。放射線治療計画は、個々の患者さんに合わせてオーダーメイドで作成されるため、綿密な検討と調整が必要とされます。

放射線の照射

放射線治療室での照射は、診療放射線技師によって行われます。患者さんは治療室で体位を固定され、技師は隣接する操作室からモニターで患者さんの様子を常に確認しています。マイクを通して、患者さんはいつでも技師に話しかけられ、体調不良時には治療を中断できます。

初回照射では位置合わせや確認作業に時間がかかりますが、2回目以降は短時間で終了します。照射自体は数分ですが、その間は動かずにいる必要があります。シミュレーションで作成した固定具を使用し、毎回正確に同じ体位を再現します。照射中の痛みはないといわれています。

治療期間中の生活

放射線治療を受ける患者さんは通院しながら治療を行い、日常生活を続けられます。

照射は原則として毎日行われ、土日祝日は休みです。治療期間は、病状や治療目的によって異なり、1日〜2ヵ月程度と幅があります。

治療期間中は、放射線腫瘍医による定期的な診察が行われます。副作用への対処や治療計画の調整のため、薬の処方や追加のCT撮影が必要になることもあります。

照射回数と期間

放射線治療の照射回数と期間は、がんの部位や大きさ、病期などによって異なりますが、10回〜40回程度の照射が行われ、平均的には25回前後が多いようです。

週に5回のペースで、平日に照射が行われます。土日祝日は休止となりますが、年末年始や機器の点検期間などには、休日照射を行って調整することもあります。

1回の治療時間は、準備や位置合わせも含めて15〜40分程度です。照射自体は数分で終わりますが、毎回正確に照射位置を合わせる必要があるため、ある程度の時間を要します。

治療に必要な全期間は、おおむね4〜8週間程度が平均的といわれています。ただし、がんの種類や部位、進行度、患者さんの全身状態などによって、個人差があります。

放射線治療の費用

放射線治療の費用は、使用する放射線の種類、治療方法、総治療回数などによって異なります。外部照射の場合、治療準備と日々の治療に関わる費用に分けられ、複雑な治療技術を用いる程、また回数が多い程費用は高くなる傾向があります。

ほとんどの放射線治療は健康保険の適用を受けられますが、患者さんの負担額は病状や治療方法によって変動します。例えば、3割負担の場合、乳がんの温存術後の放射線治療(16〜25回)で16〜26万円程度、前立腺がんのIMRT(20〜38回)で34〜45万円程度となります。

高額療養費制度の利用により、月単位で一定額を超えた医療費の自己負担分が軽減されます。粒子線治療など一部の治療は先進医療として扱われ、別途費用がかかる場合があります。

放射線治療についてよくある質問

ここまで放射線治療の流れや種類、回数などを紹介しました。ここでは放射線治療についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

放射線治療に副作用はありますか?

木村 香菜医師木村 香菜(医師)

放射線治療は、がん細胞だけでなく正常な細胞にも影響を与えるため、副作用が現れることがあります。副作用は、照射部位や範囲、放射線の種類や量、患者さんの全身状態などによって異なります。
副作用は大きく二つに分類されます。一つは治療中〜終了後数ヵ月までに現れる急性期の副作用で、もう一つは数ヵ月以降に現れる晩期の副作用です。いずれも照射部位に関連した症状が主です。
急性期の副作用は、皮膚の炎症、粘膜炎、倦怠感などがあります。晩期の副作用は、組織の線維化や臓器の機能低下など、遅れて現れる影響です。

妊娠・出産に支障をきたす恐れはありますか?

木村 香菜医師木村 香菜(医師)

放射線治療が妊娠や出産に与える影響は、照射部位によって異なります。卵巣や精巣から離れた部位への照射であれば、生殖機能へのリスクは低いと考えられています。
ただし、まったく影響がないとはいえません。妊娠可能年齢の女性は、慎重に検討する必要があります。放射線が卵巣に直接当たると、卵子の数が減少したり、ホルモンバランスが乱れたりする可能性があるためです。
男性の場合、精巣への直接照射は避けますが、散乱線の影響が皆無とはいえません。生殖機能への影響を抑えるため、適切な防護対策が取られます。

まとめ

ここまで放射線治療の種類と平均照射回数についてお伝えしてきました。放射線治療の種類と平均照射回数についての要点をまとめると以下の通りです。

  • ・放射線治療には、一般的な高エネルギー放射線治療をはじめ、三次元原体照射、画像誘導放射線治療(IGRT)、定位放射線治療(SRT)、定位手術的照射(SRS)、強度変調放射線治療(IMRT)のような種類がある
  • ・治療回数は10〜40回程度で平均25回前後、4〜8週間だが個人差もある
  • ・放射線治療の費用は健康保険適用だが、3割負担で16〜45万円程度かかり、高額療養費制度が利用可能

放射線治療の対象となる病気

放射線治療と関連する病気は7個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。

放射線治療中に発症する恐れのある症状

放射線治療と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

これらの症状が持続する場合、または新たにあらわれた場合、医師の診察を受けることが大切です。

この記事の監修医師