「卵巣がんの手術内容」はご存知ですか?症状・検査方法も解説!【医師監修】
卵巣がんは、初期の段階では症状がなく気付きにくい疾患です。症状を自覚したときにはがんが進行しており、腹水が溜まったり腫瘍が大きくなっていたりする可能性があります。
主な治療方法は手術と薬物療法です。がんのステージや患者さんの状態により選択される治療方法が異なります。
この記事では、卵巣がんの症状・検査方法・手術について詳しく解説します。卵巣がんの症状や治療方法が気になる方は最後までご覧ください。
監修医師:
馬場 敦志(宮の沢スマイルレディースクリニック)
目次 -INDEX-
卵巣がんとは?
卵巣がんは、子宮の両側に1つずつある卵巣にできる悪性腫瘍です。卵巣を構成している組織のどこに悪性腫瘍が発生するかにより、上皮性腫瘍・胚細胞腫瘍・性索間質性腫瘍の3つに分類されます。
このなかでも特に多いのは上皮性腫瘍で、卵巣がんの約90%を占めています。ほかのがんと同じく若い年代が罹患することは少なく、年代が高くなるにつれ患者さんが増える傾向にあるようです。
卵巣がんが進行すると、腹膜播種が生じる場合があります。腹膜播種とは、腹腔内の臓器や腹壁の内側を覆っている腹膜・大腸や小腸を覆っている大網にがんが広がることです。播種は脾臓・大腸・小腸・横隔膜などに浸潤したり、肺・肝臓・脳・骨などに遠隔転移する可能性もあります。
卵巣がんの症状は?
卵巣がんは、初期の段階では症状がまったくありません。がんが進行していくと、腫瘍が大きくなり腹水が溜まることで、腹部のハリ・腹痛・腰痛などの自覚症状が出てきます。卵巣腫瘍で圧迫されることで、乏尿・頻尿・便秘が見られることもあります。
普段着ている服のウエストがきついと感じたり腹部にしこりを感じたり、食欲がなくなったりという症状に気付き受診し、卵巣がんと診断される場合もあるでしょう。骨盤の痛み・貧血・体重減少がある場合は、卵巣がんの進行やほかのがんなどの疾患である可能性があります。気になる症状があれば、早めの受診をおすすめします。
卵巣がんの検査
卵巣がんが疑われる場合、触診・内診・直腸診のほかに、超音波検査・CT検査・MRI検査などの画像検査を行います。さらに、がんであるか正確な診断をするために、細胞診・組織診という病変の一部を採取する病理検査が重要です。
ここではそれぞれの検査方法について解説します。
触診・内診・直腸診
卵巣がんが疑われる場合、触診・内診・直腸診で子宮や卵巣の状態を検査します。腹部の触診により、しこりや痛みの程度などを確認します。内診は、膣から指を入れて子宮内に異常がないかを確認する検査です。
子宮や卵巣は直腸やその周囲の臓器に近いため、肛門から指を入れ、直腸診で状態を調べます。
超音波検査
超音波検査はエコー検査ともいわれ、超音波を体の表面からあてて卵巣や骨盤内の臓器の様子を画像で写し出して調べる検査です。子宮や卵巣の状態をより詳しく検査できる経腟超音波検査という方法もあります。
この検査により、卵巣腫瘍の有無・性質・状態・大きさ・周囲の臓器の状態・腹水の有無などを調べます。腹水の有無や量は、卵巣がんを評価する際に重要な指標です。
CT検査
CT検査は、X線を使用し体内の状態を断面画像で写し出す検査です。卵巣の状態・腫瘍の位置・大きさなどを調べます。また、卵巣から離れた場所へ転移していないか・リンパ節転移はないかなどを調べるためにも役立つ検査です。
MRI検査
MRI検査は強力な磁場とラジオ波を使用し、体内の状態を画像として作成する検査方法です。CT検査より詳細な検査が可能で、骨盤内の様子を細かい部分まで調べられます。腫瘍内部の状態やリンパ節が腫れていないかなどを観察し、卵巣がんの診断やステージの判断に使用されます。
細胞診・組織診
細胞診や組織診は、外科的処置により検体を採取してがんであるかを調べる検査です。細胞診は体内に溜まった胸水や腹水を採取し、がん細胞が含まれていないかを調べます。
手術を行う前に、胸水や腹水が溜まっている場合、経皮的に胸部や腹部に針を刺して胸水や腹水を採取し検査を行う場合もあります。組織診は、手術で卵巣や卵管の組織を採取し、顕微鏡でがんの状態を調べる検査です。
良性・境界悪性・悪性を判定したり、組織型を決定するために行います。
腫瘍マーカー検査
腫瘍マーカーとは、がん細胞やがん細胞に反応した細胞によってつくられるたんぱく質を主成分とした物質です。がんの種類により異なる性質をもったたんぱく質がつくられるため、腫瘍マーカー検査をすると、どの部位のがんであるかがわかります。
腫瘍マーカーだけでは、がんの有無や場所の特定はできないため、前述したような検査を併用し総合的に判断します。
卵巣がんの手術
卵巣がんは主に、手術による治療が行われます。手術の目的は、がんを可能な限り取り除くことと、病気の進行度(ステージ)を正確に把握することです。
ここでは、卵巣がんの手術方法について解説します。
初回腫瘍減量手術・進行期決定手術
がんがどの程度広がっているのかを評価し、行う治療の効果を高める目的で行うのが、初回腫瘍減量手術と進行期決定手術です。初回腫瘍減量手術は、できるだけ多くの腫瘍を取り除き、術後の化学療法の効果を発揮できることを目的に行われます。
進行期決定手術は、卵巣がんの進行の程度を正確に判断するために行われます。初回腫瘍減量手術と同時に行うことが多く、がんの進行度に合わせた治療方針の決定のために必要な手術です。
試験開腹術
試験開腹手術は、手術でがんをすべて取り除くことが難しい場合に行います。開腹手術を行い腹腔内を観察し、がんの組織型の診断を目的とし組織診や細胞診などの生検をします。また、手術によって治療可能な範囲を確認し、手術の進行を決める場合もあるでしょう。
中間腫瘍減量手術
中間腫瘍減量手術とは、試験開腹術を行った場合や手術後に残っているがんの大きさが直径1cm以上の場合に行われる手術です。薬物療法でがんを縮小させ、がんの状況を見ながら適応できる手術を検討します。
妊孕性温存手術
妊孕(にんよう)性温存手術とは、将来的に妊娠する可能性を残したい場合や、がんの状態がおだやかで片方の卵巣や卵管だけにある場合などに検討できる手術です。通常、卵巣がんの手術では、両側の卵巣と卵管・子宮・大網を取り除くため、妊娠する機能が失われます。
しかし、強い妊娠希望がある場合やがんのない方の卵巣や卵管がある場合には、妊娠の可能性を保つ手術を選択できる場合があります。妊孕性温存手術を行うためには一定の条件をクリアしている必要があるため医師に確認しましょう。
卵巣がんの手術についてよくある質問
ここまで卵巣がんの手術・症状・検査などを紹介しました。ここでは「卵巣がんの手術」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
卵巣がんのステージごとの手術や治療法を教えてください。
馬場 敦志医師
卵巣がんは進行の程度により、1期・2期・3期・4期にステージが分けられます。1期とは腫瘍が卵巣のなかに留まっている状態です。手術では、子宮摘出・両側付属器摘出(卵巣・卵管)・大網切除・リンパ節郭清を行います。CT検査やMRI検査ではわからない転移の有無を調べ、発生しやすい臓器を切除することで再発を防ぐ目的があります。また、妊孕性温存手術を検討できる可能性があるでしょう。2期は腫瘍が骨盤内のほかの臓器に転移している状態です。2期以上は進行がんに分類されます。骨盤内腹膜切除や直腸切除など、卵巣がんに特化した手術が必要となります。3期は腫瘍が腹腔内に広がった状態です。4期は肝臓や肺などの臓器に遠隔転移した状態です。手術によりがん病巣の切除が必要であると判断した場合には、まず手術を行い卵巣・卵管・子宮・大網・リンパ節郭清を行います。術後は薬物治療を行い、がんの進行に応じて再手術を行う場合があります。
卵巣がんの手術の合併症を教えてください。
馬場 敦志医師
卵巣がんの手術後には、腸閉塞・リンパ浮腫・リンパ嚢胞などの合併症が起こる可能性があります。腹痛を伴う吐き気や嘔吐・発熱・疼痛が出たり、足の付け根・太もも・下腹部にむくみが出て熱感をもった腫れが出る場合があります。また、卵巣欠落症状という更年期障害に似たような症状が出現する場合もあるため違和感を覚えたら、医師に相談しましょう。
編集部まとめ
卵巣がんは初期の段階では自覚症状がなく、罹患していることに気付きにくい疾患です。進行すると腹水が溜まるため、腹部膨満感や排尿障害が現われます。
また、腹部のしこりに気付いて受診し、卵巣がんが見つかる場合もあります。卵巣は体内の深い場所にあるため、体の表面から針を刺して組織を取る検査ができません。
そのため、卵巣がんの正確な診断をするために手術が第一選択になります。卵巣がんのステージに合わせ、薬物療法や手術を組み合わせた治療を行っていくのが一般的です。
がんや転移の状態により、治療方法は人それぞれ異なります。そのため自分の状態や治療方法などについて医師の説明をよく聞き、相談することが大切です。
卵巣がんは遠隔転移しやすいがんです。気になる症状がある方は、早めに受診し医師に相談しましょう。
卵巣がんと関連する病気
「卵巣がん」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
卵巣がんは、多臓器へ転移しやすいがんです。進行すると骨盤内にある臓器に転移したり、また、肝臓や肺などへ遠隔転移することもあります。症状を自覚してからでは、がんが進行している可能性があります。早期発見のために、定期的な健康診断を受けたり、普段から体の異変に気付けるようセルフチェックが大切です。
卵巣がんと関連する症状
「卵巣がん」と関連している、似ている症状は6個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 腹部のハリ
- 下腹部の痛み
- 腹部の膨らみ
- 骨盤の痛み
- 食欲低下
- 体重減少
このような症状がある場合、卵巣がんの可能性があります。また、ほかの疾患の症状であることも考えられます。気になる症状がある方は、早めに医療機関を受診するようにしましょう。
参考文献