「肺がんを疑う咳の特徴」はご存知ですか?初期症状・末期症状も医師が解説!
肺がんを疑う咳にはどんな特徴がある?Medical DOC監修医が肺がんの初期症状・末期症状・原因・なりやすい人の特徴などを解説します。
監修医師:
稲尾 崇(医師)
目次 -INDEX-
「肺がん」とは?
肺がんとは肺から発生したがんで、がん組織のタイプにより主に「非小細胞肺がん」と「小細胞肺がん」に分けられます。がん組織のより詳細なタイプや、体内への広がり方(ステージ、病期)によって治療方針が異なります。肺がんにより咳がでている場合、比較的進行している可能性も考えた診療がなされます。
肺がんを疑う咳にはどんな特徴がある?
頑固な咳
咳は肺がんの代表的な症状の一つです。空気の通り道(気道)が腫瘍によって影響を受けたり、がん細胞が肺内のリンパの流れに乗ったりすることで(リンパ管症)、出やすくなります。2週間以上経ってもまったく山を越える気配がないような頑固な咳の場合、まずは地元のかかりつけ医を受診し、説明を受けてください。咳は様々な病気でおこるため必ずしも肺がんとは限りませんが、もし肺がんの可能性が指摘された場合は、総合病院の呼吸器内科宛てに紹介状を書いてもらい、専門的な検査を受けることをお勧めします。
血痰、息切れ
肺がんでは咳に加えて血痰も出ることがあります。血痰の原因としては、下気道の一時的な感染症が最も頻度が高いですが、長年の喫煙歴があるときや上記のような頑固な咳とともに出るときは早めの受診を検討しましょう。また呼吸をする度に肺の一部でピューピューという音が鳴るときや、息切れ、体重減少を伴う場合も同様です。気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患、間質性肺炎、肺結核など他の原因もありえますが、進行期の肺がんである可能性も念頭に置く必要がありますので、早めの受診を検討しましょう。
肺がんの前兆となる初期症状
初期の肺がんではほとんど症状が表れないことで有名です。初期の場合、偶然胸部レントゲンで指摘され、呼吸器内科や呼吸器外科のある総合病院に紹介されるケースが多いかと思います。そこで影の形や大きさ、その後の経過などによって、どこまで肺がんが疑わしいか、手術切除により診断をつけるべきか、などが検討されます。
肺がんが進行すると現れる症状(末期症状)
以下の症状は必ずしもすべての方に起こるわけではありませんが、症状が起きたときのために事前に知っておくことは重要です。
息苦しさ、首や顔のむくみと息切れ
上記の咳、息切れ、血痰など肺がんが発生した場所(原発巣)やその周辺からの症状に加え、転移した部位に特有の症状が認められるようになります。肺と胸壁(肋骨や肋間筋など息をするときに動く部分)の隙間である胸腔に水がたまって肺が圧迫された場合、息苦しさが起きやすくなります(胸水)。首や顔のむくみとともに息切れが起きている場合、上半身から心臓に向かう血液が流れている上大静脈が、腫瘍自体や転移して腫れたリンパ節で圧迫されている可能性があります(上大静脈症候群)。
抗がん剤でがんが縮小すれば症状が和らぐこともありますが、しばしば不十分であり、咳止め(デキストロメトルファン、ジモメルファンリン、リン酸コデインなど)や医療用麻薬(モルヒネやそれに類するもの。オピオイドと呼ばれる。)が併用されます。また血痰に対しては止血剤の内服や点滴が考慮されます。大量の胸水に対しては胸水をたまりにくくするために胸膜癒着術と呼ばれる処置が勧められることもありますが、行えるかどうかは体調と病状によります。安静にしたり体の向きを工夫したりすると症状が軽減することもありますが、同時に薬をうまくつかって症状を和らげ、通常に近い生活を続けることも大事です。そうすることで日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)を維持することにつながります。具体的な対応は肺がんについて通院中の病院に相談いただくのがよいでしょう。
がん転移部位での痛み
肋骨や背骨、腰骨、大腿骨などへの骨転移、胸壁への浸潤(肺がんが胸壁に食い込むこと)によりそれぞれの部位に痛みを生じることがあります。骨転移の痛みには、痛みを和らげる薬として、NSAIDs(ロキソプロフェン、セレコキシブ、ナプロキセンなど)と上記の医療用麻薬を併用することが多いです。また、骨転移の痛みをやわらげる、進行を遅らせる、転移部の骨折を予防する、などの目的で、部分的に放射線を照射することもあります(緩和的放射線照射、姑息的放射線照射)。特に、背骨のすぐそばを走る太い神経である脊髄が転移により圧迫されているときは、比較的急いで放射線照射の相談を始めます。他に月1回の皮下注射や点滴で骨転移の進行を抑えることもあります。また自分なりに、痛みの小さい体の動かし方を工夫しながら日常生活を送ることで、体力の維持につながります。
嘔気、めまい、麻痺、言語障害、けいれん
肺がんが脳に転移すると、嘔気やめまい、手足が動かしにくい、他人の言葉がうまく理解できない、言いたい言葉が言えない、けいれんする(症候性てんかんと呼ばれる)などが起こりえます。状態に応じて部分的な放射線照射(ガンマナイフなど)や脳全体への照射(全脳照射)が検討されます。また転移巣周囲の正常の脳がむくんでいるときは(脳浮腫)、ステロイドの点滴でそれを和らげる治療も選択肢です。脳への放射線照射では一時的に嘔気や船酔いのような感覚(宿酔)、皮膚炎、症候性てんかんなどが現れることがあります。また全脳照射では、脱毛と数か月後の認知機能低下がありえます。なお症状が軽いときや抗がん剤治療で脳転移が小さくなるときには、放射線治療は後回しにすることもあります。脳転移があると急にけいれんをおこすリスクがゼロでないことから、車の運転は中止するよう勧められます。
口の渇きや飲水量の増加、尿量の増加、食欲低下、意識障害
進行期の肺がんでは、血中のカルシウム値が大きく上昇することがあり、その場合口の渇きや飲水量の増加、尿量の増加、食欲低下、意識障害などが表れます。血中カルシウム値を下げるための点滴が行われることがありますが、がん自体の勢いを抑える治療が最も重要です。血中カルシウムを下げる点滴の副作用としては、発熱による衰弱、骨の痛みに加え、まれながら顎の骨の腐食が起こりえます。肺がん治療が行き詰まっていて次の抗がん剤治療がなく、意識障害によって肺がんによる苦痛が和らいでいる方では、敢えてカルシウム値を低下させない判断が勧められることもあります。
肺がんになりやすい人の特徴
喫煙など
喫煙は肺がんを発症しやすくなる大きな要因です。他にもアスベスト(石綿)、副流煙や排気ガスへの曝露、特発性肺線維症(IPF)の既往なども肺がんのリスクを高める要因とされています。特に喫煙は小細胞肺がんと非小細胞肺がんの一部である扁平上皮がんに強く関連しています。
「肺がんを疑う咳の特徴」についてよくある質問
ここまで肺がんを疑う咳の特徴などを紹介しました。ここでは「肺がんを疑う咳の特徴」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
肺がんステージ1の症状について教えてください。
稲尾 崇 医師
たいていの方が無症状です。たまたま咳がでてレントゲンやCTをとったら見つかったケースでも、肺がん自体は咳の原因になっていなさそう(=他の原因で咳がでていた)と思われることがほとんどです。
編集部まとめ
肺がんによる咳はある程度進行してから認められることが多く、頑固な咳や血痰などの症状が見られたら早めの受診を検討したほうがいいことといくつかの肺がんのリスクを高める要因について解説しました。あくまで一般的な内容ですので、実際の病状や治療については担当の医療スタッフとよくご相談ください。
「肺がんを疑う咳の特徴」と関連する病気
「肺がんを疑う咳の特徴」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
咳の症状が現れる病気は、肺がんはじめ上記の病気以外にもたくさんありこちらには、代表例のみを列挙します。
「肺がんを疑う咳の特徴」と関連する症状
「肺がんを疑う咳の特徴」と関連している、似ている症状は2個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 頑固なせき
- 血痰
咳はよく見られる症状の一つであり、感染症や肺炎、アレルギーなどの他の疾患でも見られます。上記のような特徴がある場合には、肺がんである可能性を念頭に考えていく必要があるため、気になる場合には、医療機関への受診をお勧めします。