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「前立腺がんが治る確率」はどのくらいかご存じですか?症状も医師が解説!

 公開日:2025/11/27
「前立腺がんが治る確率」はどのくらいかご存じですか?症状も医師が解説!
前立腺がんは、命にかかわるような進行癌から、治療の必要のない小さながんまで、さまざまな病期があり、それぞれの病期に応じた治療が重要です。 前立腺がんは早期発見と適切な治療で、治る確率が高まるといわれています。 本記事では前立腺がんが治る確率について、以下の点を中心にご紹介します。
  • ・前立腺がんの症状
  • ・前立腺がんが治る確率
  • ・前立腺がんの治療法

前立腺がんが治る確率について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。
村上 知彦

監修医師
村上 知彦(薬院ひ尿器科医院)

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長崎大学医学部医学科 卒業 / 九州大学 泌尿器科 臨床助教を経て現在は医療法人 薬院ひ尿器科医院 勤務 / 専門は泌尿器科

前立腺がんとは?

前立腺がんは、前立腺内でがん細胞が増殖する病気ですが、多くの場合、進行が遅く、早期発見で治療可能です。主にリンパ節や骨への転移が見られますが、肺や肝臓にも広がることがあります。日本では男性がんのトップになり、加齢と共に前立腺がんのリスクが増加しているため、注意が必要です。

前立腺がんの症状

前立腺がんは初期段階では症状がなく、診断が難しいことが特徴です。 症状が出ると、尿の出が悪くなったり、頻尿や残尿感、夜間の頻尿など排尿に関する問題が起こったりすることがあります。
前立腺がんが進行すると、尿や精液に血が混じることや排尿するときの痛みが生じ、骨に転移すると腰痛や骨痛が起こります。 症状が現れたら早期の診断と治療が必要です。気になる症状があれば迅速に医師の診察を受けることが大切です。

前立腺がんが治る確率

前立腺がんの治療成績は、発見と治療のタイミングによって変わります。 早期発見の場合、適切な治療で10年生存率は約80%以上で、局所がんでは治療成績が良好とされています。
しかし、転移がある場合は治療が複雑になり、5年生存率は約60%に低下します。 前立腺がんは、高齢者の罹患率が高い傾向にあるため、PSA検査での定期的なモニタリングが重要です。

前立腺がんの診断・検査

前立腺がんの診断は、特定の検査手順に従って行われます。
診断の正確性を高めるためには、以下の段階的な検査が重要です。

一次検査:スクリーニング検査

前立腺がんの疑いを調べる最初のステップは、血液検査でPSA(前立腺特異抗原)の値を測定することです。PSA値が高い場合、前立腺がんの可能性が高まりますが、PSA値の上昇は前立腺がん以外にも、前立腺肥大症や前立腺炎などほかの状態で見られることがあります。そのため、PSA値が高いと判明した場合は、より詳細な精密検査に進む必要があります。

二次検査:超音波検査、直腸診、MRI

PSA値が高い場合に続く検査は次のように行われます。

・超音波検査:前立腺の大きさや形状を画像で確認し、異常がある部分を特定します。 ・直腸診:医師が直腸を通じて前立腺を触診し、硬さや大きさに異常がないかをチェックします。 ・MRI検査:前立腺の内部を詳細に映し出すことで、がんの有無や具体的な位置を特定します。
これらの検査でがんが疑われる場合は、「生検検査」に進みます。これにより、がんの有無をより精確に判断できます。

生検検査

前立腺がんの確定診断には生検検査が必要です。この検査では、超音波機器を使用して前立腺から小さな組織サンプルを採取し、顕微鏡でがん細胞の存在を確認します。生検によりがんの種類や進行度が判明し、それに基づいて治療計画を立てます。
生検では、10本以上の針を使用して複数のサンプルを採取するため、短期間の入院が必要になることもあります。また、検査は局所麻酔、腰椎麻酔、または全身麻酔のいずれかで行われます。
検査後は血尿や肛門出血、血精液症などの合併症が起こることがありますが、これらは通常2〜3週間で自然に解消します。検査後数日は血尿を悪化させないためにも、アルコールの摂取を控え、自転車やバイクの使用を避け、お腹に負荷をかける動作を控えることが推奨されます。

前立腺がんの治療

前立腺がんの治療は、病状の進行度や患者さんの健康状態に応じて多岐に渡ります。
以下で主な治療法について解説します。

PSA監視療法

PSA監視療法は、前立腺がんが発見されているのにもかかわらず、その癌のタイプがおとなしい癌であると判断される一部の患者さんに適用されます。定期的にPSA血液検査や前立腺生検を行い、がんを確認します。PSA監視療法は、がんの進行が見られた場合にのみ治療を開始し、副作用を遅らせる利点がありますが、がんの進行を見逃すリスクもあるため、慎重な判断が必要です。

外科治療(手術)

外科治療は、前立腺がんが前立腺内に限定されており、期待余命が10年以上と判断される場合に選択される治療法です。がんが前立腺の被膜を越えて広がっている場合でも対象となることがあります。
前立腺全摘除術では、前立腺と精のうを摘出し、その後、がん細胞を含む前立腺全体と、必要に応じて周囲のリンパ節も摘出します。
手術の方法には、開腹手術、腹腔鏡手術、ロボット手術(ロボット支援前立腺全摘除術)があります。

【開腹手術】 開腹手術は、恥骨後式前立腺全摘除術とも呼ばれ、全身麻酔と硬膜外麻酔の下で下腹部を直線的に切開し行います。 開腹手術の利点は、手術中に広い視野が得られるため、がん細胞を取り除き易い点です。 しかしながら、大きな切開が必要となるため、出血量が多く、術後の痛みや回復期間が長くなる可能性があります。

【腹腔鏡手術】 腹腔鏡下前立腺全摘除術は、腹部に数か所の小さな穴を開けて行う低侵襲手術です。炭酸ガスを用いて腹部を膨らませ、専用のカメラや器具を挿入して手術を実施します。 腹腔鏡手術は開腹手術に比べて出血量が少なく、傷口も小さいため、術後の回復が速く、痛みも少ないとされています。 ただし、腹腔鏡手術を行うには高度な技術が必要です。

【ロボット手術(ロボット支援前立腺全摘除術)】 ロボット手術は、腹腔鏡手術の進化形として、さらに精密な操作が可能とされる手法です。手術用ロボットを使用し、手術医が遠隔操作でロボットアームを操ります。 ロボット手術では、三次元の高解像度画像を利用することで、より詳細な観察が可能とされ、手の震えを抑えながら精密な作業を行え、術後の合併症のリスク低減につながります。

外科手術後の合併症としては尿失禁や機能不全がありますが、近年はこれらのリスクを低減させる技術が研究されています。

放射線治療

放射線治療には、外部からの放射線照射と内部に放射性物質を埋め込むブラキセラピーがあります。手術が難しい場合やがんが広がっている場合に使われます。手術よりも尿失禁や機能不全のリスクが低いですが、長期的な合併症には注意が必要です。

ホルモン療法(内分泌療法)

ホルモン療法は、男性ホルモンの作用をブロックしてがん細胞の成長を抑える治療法です。がんが進行している場合や転移がある場合に使われ、薬物投与や睾丸の手術、放射線治療や化学療法と併用されることもあります。
副作用として性機能の低下やホットフラッシュ、骨密度の低下があることを理解しておきましょう。

化学療法

化学療法は、前立腺がんの進行が他の治療法で制御できない場合に使用されます。抗がん剤を使ってがん細胞を攻撃し、がんの進行を抑えることが目的です。
しかし、副作用も考慮しながら、治療の効果とリスクを検討する必要があります。

前立腺がんについてよくある質問

ここまで前立腺がんが治る確率や治療法を紹介しました。ここでは「前立腺がん」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。

前立腺がんの病期について教えてください

村上 知彦村上 知彦 医師

前立腺がんの病期は、がんの進行度を示し、治療選択に重要な情報を提供します。
病期は、「T(腫瘍)」、「N(リンパ節)」、「M(転移)」の3つの要素に基づいて分類されます。
これにより、がんの範囲や転移の有無が把握され、それに応じて治療法が決定されます。治療計画において、患者さんの病期が適切に評価されることが、治療の成功にとって不可欠です。

前立腺がんの予防法はありますか?

村上 知彦村上 知彦 医師

前立腺がんのリスクを減らすためには、次のような生活習慣の改善が推奨されています。
・食生活:揚げ物を控え、トマトや大豆製品など抗酸化作用が期待できる食品を積極的に取り入れましょう。特にトマトはリコピンを多く含むため、前立腺がんのリスクを下げるとされています。
・運動:適度な運動を行い、体重を管理することで全体的な健康を促進し、がんのリスクを低下させます。
・ストレス管理:日常のストレスを管理し、リラックスする時間を確保することも重要です。
また、50歳頃の男性は、定期的なPSA検査を受けることで前立腺がんの早期発見につながります。たばこや過度のアルコール摂取を避けることもがんリスクを減少させる助けになります。

まとめ

ここまで前立腺がんが治る確率についてお伝えしてきました。
前立腺がんが治る確率について、要点をまとめると以下の通りです。 ⚫︎まとめ
  • ・初期は無症状のこともあるが、進行すると尿が出にくくなる、頻尿、血尿などの排尿障害が現れる
  • ・早期発見・早期治療の場合、10年生存率は約80%以上と高い傾向にあり、進行や転移があると生存率は低下する
  • ・主に手術、放射線治療、ホルモン療法、化学療法があり、病状や状態に応じて選ばれる

前立腺がんと関連する病気

前立腺がんと関連する病気は1個あります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

泌尿器科の病気

具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。

前立腺がんと関連する症状

「前立腺がん」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 尿が出にくい
  • 排尿するときに痛みを伴う
  • 尿や精液に血が混じる
  • 腰痛
これらの症状が持続する場合、または新たにあらわれた場合、医師の診察を受けることが大切です。

この記事の監修医師