「大腸がんに気づいたきっかけ」となる症状はご存知ですか?予防のポイントも解説!
大腸がんにかかる方は年々増加しています。大腸がんは早期発見すれば完治することも少なくない疾患なので、なるべく早く気付いて治療することが大切です。
この記事では大腸がんの症状・治療のほか、大腸がんに気付いたきっかけや早期発見のポイントを詳しくご紹介します。
監修医師:
松井 信平(医師)
目次 -INDEX-
大腸がんとは
大腸は長さが1.5〜2mあり、水分を吸収する機能がある臓器です。
主に盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸・直腸に分かれています。大腸の壁を構成するのは粘膜・粘膜下層・固有筋層・漿膜下層・漿膜の5種類の層です。大腸がんは良性のポリープががん化する場合と、粘膜から直接がんが発生する場合があります。
がんが進行すると腹膜播種・リンパ節転移・肺や肝臓への転移が起こります。40歳代から大腸がんになる人は増え、年齢が上がる程大腸がんにかかりやすくなるため注意が必要です。
2018年の発生部位別がん死亡者数で大腸がんは男性で3位・女性で1位です。日本人ではS状結腸がんと直腸がんが多いといわれています。
大腸がんに気づいたきっかけとなる症状
早期大腸がんの自覚症状はほとんどありませんが、進行してくるとさまざまな症状が出てきます。大腸がんに気付くきっかけとなる症状をご紹介します。
血便・便秘などの便異常
大腸がんになるとがんから出血しやすいため、血便が出たり便に血がついたりします。
出血が長く続くと貧血になり、めまいや息切れなどの症状の原因となります。また、便秘になりやすく残便感や便が細くなることもあり、これはがんによって腸が狭くなることが原因です。
慢性的な腹痛・嘔吐
がんが大きくなって腸が狭くなり、便がうまく通れないことにより食欲不振・嘔吐・腹痛などの症状が出ます。
特に硬い便が通る下行結腸・S状結腸・直腸では、腹痛・嘔吐・血便・細い便などさまざまな症状が出やすいです。気になる症状が続く場合は、病院で検査をして適切な治療を受けましょう。
体重減少
がんが大きくなると体重が減少します。ダイエットもしていないのに、1ヵ月間に1kg以上減る状況が3ヵ月続く場合は要注意です。
がんになると体重が減る理由は、がん悪液質という状態になるからです。がんから出る物質により筋肉量が著しく減ったり、栄養をうまく使うことができなくなったりします。
腸閉塞
がんが大きくなりまったく便が通らない状態になると、激しい腹痛・便が出ない・嘔吐の症状が出ます。
腸が完全に閉塞した状態になり、嘔吐したものが緑色や便臭のする茶色になる場合があります。放置すると命に関わるケースもあるので、ただちに受診が必要です。
大腸がんの治療法
大腸がんになった場合は、どのような治療法があるのでしょうか。大きく3種類に分けてご説明します。
外科治療
がんの深さが粘膜・粘膜下層にとどまり、サイズが小さい場合に行われるのは内視鏡でがんを切除する治療です。
内視鏡での治療ができなくても、手術で取りきれる時には手術を行います。がんの状態やできる場所によっては、手術前に放射線治療や薬物療法を組み合わせてがんを小さくしてから手術をする場合があります。
薬物療法
転移があって手術ができない場合は主に薬物療法での治療が行われます。
手術を行った場合も、がんのステージに応じて術後補助化学療法を行います。薬物療法は抗がん剤や分子標的薬を組み合わせ、点滴や飲み薬を使う治療です。
先にがんの遺伝子を調べると、ある程度薬の効果を予想できる場合があります。また、近年は薬物療法を外来で行うことができるため、入院せずに普段どおりの生活ができるようになりました。
放射線治療
放射線治療は、特に直腸がんにおいて再発防止目的やがんを小さくする目的の場合には化学放射線療法といって化学療法との併用が一般的です。
また、脳や肺の転移が小さい場合や、再発病変が再切除できない場合に放射線治療で治療します。
ほかには、症状の改善のための緩和目的でも行われます。
大腸がんを早期発見・予防するためのポイント
大腸がんは早期の段階では自覚症状がほとんどなく、進行すると症状が出ることが多くなる病気です。早期に発見することで治癒の可能性が高くなるので、検査を受けることが重要です。
便潜血検査
便に血が混ざっているかどうかを調べる検査です。
便検査なので簡易的にできるのがメリットです。一般的に健康診断や人間ドックでも広く行われています。ただし、便潜血検査は出血が少ないと反応しませんので、がんのできる位置やサイズによっては見逃すことがあるのがデメリットです。
大腸内視鏡検査
大腸内視鏡検査をするとポリープも含めて細かく観察可能です。
大きいポリープがあれば切除できるため、ポリープから発生するがんもごく初期のうちに治療できます。粘膜から発生する薄いタイプのがんも、症状が出る前の早期に見つけて処置することが可能です。
大腸内視鏡は検査の前処置として下剤の内服が必要です。また、腸が長い方や癒着のある方は苦痛を伴う場合があります。
腹部のCTやMRI
CTやMRIはがんの場所リンパ節転移・遠隔転移などを探すために使われます。
一方で、大腸がん検診として大腸CTを行っている施設もあり、内視鏡が苦手な方はCTでのがん検診もできます。内視鏡よりも前処置が少なく済み、痛みなく検査できるのがメリットです。
ただし、大腸CTも放射線を使って断層写真を撮るため被爆があります。また、6mm以上のポリープは発見できますが、丈が低いがんは見つかりにくいのがデメリットです。
生活習慣の見直し
大腸がんを予防するためには、毎日の生活を整えることも大切です。
- 肉に偏らず魚も食べる
- 運動する習慣をつける
- 1日に必要な野菜をバランスよく食べる
- カロリーの摂りすぎに注意する
- タバコはやめる
- お酒は適量にする
これらのことに気をつけると、がんの発生をある程度減らせるかもしれません。ただし、可能性はゼロになりませんので定期的に大腸がん検診を受けましょう。
大腸がんに気づいたきっかけについてよくある質問
ここまで大腸がんに気づいたきっかけ・症状・治療法・早期発見や予防のポイントなどを紹介しました。ここでは「大腸がんに気づいたきっかけ」に関するよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
大腸がんの原因について教えてください。
松井 信平(医師)
- 飲酒
- 喫煙
- 肥満
- 肉中心の食事
- 野菜不足
- 運動不足
- 家族性大腸腺腫症などの遺伝性疾患
- 炎症性腸疾患
飲酒や喫煙のほか、食生活にも影響されます。肥満が原因の1つのため、運動習慣をつけましょう。一部の遺伝性疾患・炎症性腸疾患の方は大腸がんになりやすいため、特に注意が必要です。
大腸がんの検査費用はどのくらいになりますか?
松井 信平(医師)
- 便潜血検査:自治体の費用助成がある場合、数百円〜1000円程度
- 大腸内視鏡検査:要精密検査になった方・自覚症状がある方は医療保険適用となり、3割負担で5000円程度
- 大腸CT検査:3割負担で7500円程度
要精密検査の方・自覚症状がある方以外は基本的に医療保険の対象となりません。検診目的の場合は全額自費となり検査機関によっても異なるため、受診するクリニックや健診施設に問い合わせましょう。
編集部まとめ
大腸がんに気付くきっかけとなる症状は、便の異常・腹痛・嘔吐・体重減少などです。
食事や運動に気をつけ、大腸がんになりにくい生活習慣を心がけましょう。
また、症状が出たときは病気が進行しているケースがあるので、定期的に大腸がん検診を受けることが大切です。
大腸がんと関連する病気
「大腸がん」と関連する病気は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
大腸がんの30%は遺伝と関連があるといわれており、家族性大腸腺腫症やリンチ症候群は大腸がんになりやすい遺伝性の疾患です。潰瘍性大腸炎・クローン病は炎症性腸疾患と呼ばれる病気で、大腸がんの原因になる病気です。
大腸がんと関連する症状
「大腸がん」と関連している、似ている症状は8個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
血便はがんから出血するために起こります。がんが大きくなり腸が狭くなると、便秘・細い便・残便感・腹痛・吐き気が出ます。激しい嘔吐や腹痛が出て排便がなくなった場合は腸閉塞になっている恐れがあり、すぐに病院で受診しましょう。