『げっぷが続く』のは「食道がんの初期症状」?進行すると現れる症状も医師が解説!

不治の病とされていたがんは、日本人の2人に1人がかかる病気だとご存知でしょうか。 医療の進歩発展で治療の選択肢も増えました。治癒率と生存率も飛躍的に向上しつつあります。 しやすい厄介な病気です。 食道がんは早期ではほとんど無症状で、発見されにくい病気です。しかしながら、進行が早く周囲の組織へ浸潤しやすい厄介な病気です。 本記事では、食道がんの初期症状とげっぷの関係・末期症状・治療法・関連する病気や症状などを紹介します。

監修医師:
五藤 良将(医師)
目次 -INDEX-
食道がんとは
食道がんは食道の内側粘膜の表面にでき、食道のあらゆるところにできる可能性があります。発生箇所は食道の中央付近が多く、約半数が該当するようです。さらには同時に複数箇所にできることもあります。食道は内側から粘膜・粘膜下層・固有筋層・外膜と重なった構造です。粘膜に生じたがんは徐々に食道の表面へと広がっていき、これを浸潤と呼びます。
粘膜内にとどまっているがんは早期食道がん、粘膜から粘膜下層にあるがんは食道表在がんです。食道表面から周囲の臓器へ広がることもあり、これを転移と呼びます。
食道がんの初期症状とげっぷの関係
食道がんはどのような病気かご存知でしょうか。正しく理解するためにまず、食道がんの初期症状とげっぷの関係を解説します。初期は自覚症状が出ないことが多い
初期症状はほとんどないといわれている食道がんですが、進行するとさまざまな症状が起きます。具体的な症状は食道が狭くなり、飲食時のつかえや胸の不快感を覚えるなどです。体重の減少・胸や背中が痛む・咳が出る・声がかすれる・食物がつかえるまたは胸がしみるような感覚などの症状も現れます。
頻繁にげっぷが出る
がんが進行すると食道の内壁が硬くなってげっぷが出たり、食べ物が通りにくくなり食事で痛みを感じたりします。また、必ず出るわけではありませんがホルネル兆候(縮瞳・眼瞼下垂・眼球陥凹)の症状が出る場合もあるでしょう。げっぷが増えたり、食事の際に痛みを感じたりする場合は、早めに医療機関を受診しましょう。
食道がんの末期症状
がんが進行すると複数の部位や臓器にさまざまな症状が出ます。信頼できる医師、医療関係者と一緒に解決していきましょう。食道がんの末期症状を解説します。食物や水分の摂取困難
がんが大きくなると食道の内側が狭くなり飲食物がつかえやすくなります。やわらかい食べ物や水も通りにくくなり、場合によっては嘔吐することがあります。さらに、がんの進行により食道が完全にふさがれると、唾液の嚥下も困難になり、逆流することがあります。咳・声のかすれ
食道がんが大きくなると咳や声のかすれが出ます。咳は気管や気管支への圧迫・浸潤のためです。浸潤とは、がん細胞が周囲の組織にしみこむように広がることをいいます。声のかすれは声帯調節の神経への浸潤です。ただし、咳や声のかすれは肺・心臓・のどなどの病気でも起きます。
食欲不振・体重減少
食道がんの症状は食事にも影響を及ぼすでしょう。飲食物がつかえると食欲がなくなります。3ヶ月間に5~6kgの体重減少は注意が必要です。食事量が減ると栄養不足になり体力と生活の質が落ちます。食事は人生の楽しみの1つ、生きるうえで大切なことです。信頼できる消化器内科の医師へ相談しましょう。
胸や背中の痛み
がんが食道の壁を貫いて肺・背骨・大動脈を圧迫すると、胸の奥や背中に痛みを感じます。胸や背中の痛みは肺や心臓などの病気でもみられ、食道がんだと気付きにくい症状です。複数の臓器が関わるケースもあるので医師に肺・心臓・食道の検査の相談をしましょう。
がんが転移した臓器にも症状が現れる
食道がんの転移は、リンパ節のある首の付け根・肺・肝臓・骨への転移が多いと知られています。以下は転移したうえで起こる症状です。- リンパ節転移による首の腫れ
- リンパ節の神経圧迫による声のかすれ
- 胸や腹のリンパ節転移による背中や腰の重苦しい痛み
- 骨への転移では痛みがあることが多い
- 肺や肝臓に転移しても無症状であることが多い
- 肺に転移すると咳や痰に血が混じることもある
食道がんの治療法
食道がんには複数の治療法があります。それぞれの治療法にはメリット・デメリットがあることをご存知でしょうか。治療法を詳しく解説しましょう。内視鏡切除
食道の内側からがんを切除するには、かつてはEMR(内視鏡的粘膜切除術)が行われていましたが、現在では大半がESD(内視鏡的粘膜下層剥離術)で行われています。EMRは、小さながんに対して行われることが多く、ESDはより大きな病変にも適応されるため、標準治療として普及しています。EMRの弱点は以下のとおりです。
- 切除できる大きさに限界がある
- 分割切除も少なくない
- がんの進行度の正確な評価ができない
- 胃で2006年より保険収載
- 食道で2008年より保険収載
- 大腸で2011年より保険収載
手術
がんの発生部位と進行度により手術方法が違います。がんが小さい場合は食道を残し、大きい場合は食道切除とともに胃や腸を使って食物が通る新しい通路を再建する再建手術を行うのが特徴です。以下にがんが大きい場合の手術の例を挙げます。
- 頸部食道がん:のどや食道すべてを一緒に切除する手術です。再建には小腸の一部や胃を使います。
- 胸部食道がん:胸部食道全部と胃の一部を切除すると同時に頸部・胸部・腹部などのリンパ節郭清が必要です。再建は胃と頸部食道をつなぎ、胃が使えないケースでは大腸や小腸を使います。
- 食道胃接合部がん:食道下部と胃の上半分または胃の全部を切除する手術です。食道の再建には残った胃・小腸・大腸を使います。
- バイパス手術:食道が塞がって食物が通らない場合に、食事を可能にする手術です。食道を残して胃や腸を使って頸部の食道から胃までをつなぎ、別の新しい食物の通り道(バイパス)をつくります。代替方法として挙げられるのは、食道ステント(金属の筒状の器具)を入れる方法です。
化学療法
食道がんの薬物療法(化学療法)には根治目標と、切除不能進行・再発に対して行われるものがあります。がんの進行度や全身の状態により、担当の医師と方法を決めることとなるでしょう。内容としては、1つの薬を使うか・複数の薬を組み合わせるか・どの種類の薬を使うか・治療目的・がんの状態や臓器の機能などです。化学療法のデメリットでは薬で想定される副作用が知られています。
放射線療法
高エネルギー放射線を当て、がんを殺す治療です。年齢による臓器機能低下など状態が悪い場合は、放射線療法のみ行います。照射の種類は身体の外から照射する外照射、食道内に器具を入れる腔内照射です。食道の機能や形態を温存できる・化学療法との併用でより効果が高くなることが放射線療法のメリットになります。デメリットとしては副作用が想定されるでしょう。
食道がんの初期症状のげっぷについてよくある質問
ここまで食道がんのげっぷの関係・症状・治療法などを紹介しました。ここでは「食道がんの初期症状のげっぷ」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
食道がんの原因はどのようなものでしょうか?
食道がんの原因として、危険度が高いのは、喫煙と飲酒です。日本人に多い扁平上皮がんと強い関わりがあります。飲酒すると、体内に発がん物質アセトアルデヒドが発生するのです。アセトアルデヒドの分解に関わる酵素の活性が生まれつき弱い人は、食道がんの危険性が高まります。
食道がんを早期発見するためのポイントを教えてください。
食道がんは、初期の自覚症状があまりありません。そのため、早期発見には定期的な内視鏡検査(胃カメラ)が必要です。50歳以上の方や喫煙・飲酒の習慣がある方は、年1回の検査をおすすめします。胃・十二指腸粘膜の病気の早期発見にも役立つでしょう。
編集部まとめ
食道がんは早期の場合ほとんどが無症状で発見が難しく、年1回の内視鏡検査(胃カメラ)が重要です。 げっぷがきっかけで食道がんがわかることもあります。たかがげっぷと軽くみないであまりに症状が続く場合は早めに医療機関で受診しましょう。 また、この記事を参考にして頂き、気になる症状がある場合は、早めに医療機関を受診しましょう。食道は重要な血管や神経が張り巡らされ、命に関わる複数の臓器とつながっています。食道がんと関連する病気
「食道がん」と関連する病気は5個程あります。各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
食道がんでは約20%に重複がんが発生するといわれます。重複がんとは、同時または別の時期に複数の臓器に発生したがんです。食道がんが疑われた場合や治療後の経過観察で、重複がんがないかどうかも調べます。定期的な検診を行って早期発見・早期治療で寛解を目指しましょう。
食道がんと関連する症状
「食道がん」と関連している、似ている症状は12個程あります。各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
食道がんは早期の場合、ほとんどが無症状で見過ごされやすいものです。無症状の方は放置する傾向にあります。そのため、年1回の内視鏡検査(胃カメラ)が重要です。いつもとどこか違う、またはこれらの症状が長引いていると感じたなら、ぜひ早めに医療機関で受診しましょう。



