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「大腸がんの治療法」はご存知ですか?ステージ分類についても解説!医師が監修!

 公開日:2024/06/26
「大腸がんの治療法」はご存知ですか?ステージ分類についても解説!医師が監修!

大腸がんは死亡者数・罹患者数ともにとても多いがんで、大腸がんと診断される人は毎年数万人以上になります。

大腸がんになったらどのような治療をするか、症状の進行はどのように判断するかなど、患者さん自身も理解し疑問や不安を減らしておくことが重要です。

正確な情報をもとに落ち着いて行動し、医師とよく相談して治療方針を決めていけば、不安とストレスでがんを悪化させてしまうリスクを減らせるでしょう。

この記事では大腸がんの症状・病期・治療方法を解説します。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

プロフィールをもっと見る
1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

大腸がんとは?

大腸がんは2019年の統計で、日本人のがん死者のうち女性で1位・男性で3位であり、男女計で2位となっているとても多いがんです。
大腸がんは大腸内にできる良性のポリープががん化するタイプと、大腸の粘膜に直接がんができるタイプに分かれ、大腸がんの大半は良性ポリープががんに進行していくタイプです。
大腸には多数の血管とリンパ管がつながっており、大腸がんが進行すると血管やリンパ管にのって肝臓や肺に転移し、治療が困難になっていきます。
大腸がんの初期では自覚症状がほとんどなく、便潜血や血便によって発見されることが少なくありません。

大腸がんの病期について

大腸がんの病期(ステージ)は、主にがんの広がる深さ・リンパ節への転移の有無・遠い臓器への転移の有無によって判断されます。
大腸壁は内側から粘膜・粘膜下層・固有筋層・漿膜下層・漿膜の5つの層からなっており、腫瘍がどの層まで達しているかが進行度の目安となります。

0期

大腸がんの0期(ステージ0)は、がんが粘膜内に留まってリンパ節やほかの臓器への転移がない状態です。
この段階では痛みなどの自覚症状はほとんどなく、便に血が混じることも少ないでしょう。
0期で発見できれば内視鏡治療のみで対応できることも多く、大腸の機能をほとんど守れます。

1期

大腸がんの1期(ステージ1)は、がんが固有筋層にまで進行してリンパ節やほかの臓器への転移がない状態です。
粘膜下層までの大腸がんは早期がんと定義されているのに対し、固有筋層にまで進行したがんは進行がんとされています。
主な症状は便に血が混じり、大腸内で腫瘍が大きくなっているため排便痛や排便困難などです。5年生存率は83.1%で、多くの場合命を守れるでしょう。

2期

大腸がんの2期(ステージ2)は、がんが固有筋層の外にまで進行しており、リンパ節やほかの臓器への転移はない状態です。
大きくなった腫瘍で腸閉塞が起こり、排便困難や腹痛・嘔吐などの症状がでることがあります。
出血が多くなるため、貧血や脱水などの危険もあり、体重が大幅に減少する場合も少なくありません。
5年生存率は75.6%で、適切に治療すれば高い確率で命を守れます。

3期

大腸がんの3期(ステージ3)は、がんが固有筋層の外にまで進行してリンパ節に転移している状態です。
リンパ節にがんが転移すると、リンパ管によって全身に拡散する可能性が高くなります。
5年生存率は68.7%で、速やかに治療を受ければ命を守れる可能性は十分にあります。

4期

大腸がんの4期(ステージ4)は、がんが大腸を突き破って腹膜内に拡散している腹膜播種の状態・もしくはがんが血管にのって肺や肝臓に転移している状態です。
5年生存率は17.0%で、命を失う方がいるなか、治療と患者さん自身の努力で命を守っている方も少なくありません。

大腸がんの治療方法

大腸がんの治療方法は、がんの進行度を示す病期を適切に診断したうえで、患者さんと担当医師が話し合って決定します。
外科治療(手術)・薬物療法(化学療法)・放射線治療のいわゆる三大療法のほか、早期がんであれば内視鏡治療で済むことも少なくありません。
まずは大腸がんの三大療法について解説します。

外科治療

大腸がんの外科治療は、内視鏡治療で取り除けない大きさの腫瘍を手術で切除する治療法です。
まずは大腸がんが切除できるかどうかを判断し、切除が可能ならば大きくなる前に手術が推奨されます。
がんがリンパ節にまで転移している場合はリンパ節も切除し、切除した大腸をつなぎ合わせて可能な限り機能を残します。
肛門の機能を残せない場合は、人工肛門の取り付けが必要です。人工肛門とならなくても、手術後には排便障害や勃起障害などが起こる場合があります。

薬物療法

大腸がんの薬物療法は、がんを手術で切除した後に再発を防ぐための補助化学療法と、がんを手術で切除しきれない場合に症状を緩和したり進行を遅らせたりするために行う薬物療法があります。
手術後の補助化学療法は3〜6ヵ月行うことが一般的で、再発が無ければ終了します。
切除できない大腸がんに対する薬物療法だけで完治することは難しいですが、症状を緩和して生活の質を高めることはできるでしょう。
薬物療法を受けるには、ほかに重い病気がない・肝臓や腎臓の機能が保たれている・身の回りのことが自分でできるなどが条件です。

放射線治療

大腸がんの放射線治療は、主に直腸がんの手術後の再発防止や症状緩和の目的で行われます。
直腸がんの手術前に放射線で腫瘍を小さくし、肛門を温存する目的で行われることもあります。
骨転移・脳転移・リンパ節転移などで切除が難しい場合に、転移巣に放射線を照射して痛みなどの症状を緩和することも少なくありません。

大腸がんの内視鏡治療の詳細

早期の大腸がんであれば、内視鏡治療のみで対応できる場合も少なくありません。
外科手術を行わなくても内視鏡だけでがんを切除できるため、身体への負担が少なく大腸の機能をほぼすべて残せます
内視鏡は本来大腸内のがんや病気を発見するための器具でしたが、現在ではさまざまな治療も行えるように進化しています。

切除方法の種類

内視鏡治療による大腸がんの切除方法は、大腸がんの形態によって変わります。
きのこのように茎があるタイプの場合に行うのが、茎に金属製の輪をかけて焼き切るポリペクトミー手術です。
茎を持たない平らな腫瘍は、腫瘍の下に生理食塩水を注入して浮き上がらせてからポリペクトミーの要領で切除する内視鏡的粘膜切除術(EMR)になります。
腫瘍が大きく1回での切除が困難な場合は、腫瘍を生理食塩水で浮き上がらせながらメスで粘膜下層を切り離していく治療が必要です。これを内視鏡的粘膜下層剝離術(ESD)といいます。

内視鏡治療の合併症

内視鏡治療は外科手術より身体への負担が少ないとされていますが、出血や穿孔などの合併症を起こすことがあります。
治療後の出血はポリペクトミーで1.6%・ESDでは3.1%程の確率で起こるとされています。
腸に穴が空いてしまう穿孔は、ポリペクトミーで0.05%・ESDで2〜14%です。出血は内視鏡による止血で治療しますが、穿孔が大きい場合は手術が必要になる場合があります。

大腸がんの治療についてよくある質問

ここまで大腸がんの症状・病期・治療法などを紹介しました。
ここでは大腸がんの治療についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

大腸がんの手術について詳しく教えてください。

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

大腸がんは、がんができる位置によって大別すると結腸がんと直腸がんの2種類です。結腸がんの場合はがんと転移したリンパ節を切除するため腸管を切断し、がんを切除した後につなぎ合わせて大腸の機能を保ちます。切除が難しい場合には、便の迂回路を作るバイパス手術を行う場合もあります。直腸がんの場合は進行度に応じて、直腸の一部を切除するかすべてを切除するかを選択しなければいけません。直腸をすべて切除した場合は、人工肛門(ストーマ)を腹部に作る手術も必要です。

大腸がんの薬物療法の副作用を教えてください。

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

薬物療法はがん細胞以外の正常な細胞にもダメージを与えるため、吐き気・だるさ・便秘・下痢などの副作用があります。治療効果や生活環境などを総合的に判断し、担当の医師と患者さんが納得したうえで行うことが大切でしょう。

編集部まとめ

大腸がんの病期と治療方法について解説してきました。

大腸がんは亡くなる方が多いがんであるため、宣告されたらショックを受けて希望を失ってしまう患者さんも少なくありません。

しかし、早期であれば大腸の機能をほとんど保ったまま切除でき、5年生存率も80%以上あるのが事実です。

症例数が多いがんであるからこそ治療経験も蓄積されており、患者さん自身が前向きな姿勢で治療に臨むことが、治療の成功につながっていくでしょう。

大腸がんと関連する病気

大腸がんと関連する病気は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

大腸は便のたまる場所であることから病気になりやすく、大腸の病気が大腸がんに進行するケースがよくあります。食生活や運動習慣の見直しとともに、病気は早めに治療して大腸の健康を保ちましょう。

大腸がんと関連する症状

「大腸がん」と関連している、似ている症状は6個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

がんのできた位置が肛門に近い場合は便に赤い血が混じりますが、肛門から遠い場合は血液が変色して黒い便となります。赤い血便はすぐに気がついても、黒い便は異常に気付かないこともあるため注意してください。このような症状が続く場合は、早めに受診して検査を受けるようにしましょう。

参考文献