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「胃がんのステージ別の生存率」はご存知ですか?治療法も解説!医師が監修!

 公開日:2024/05/15
「胃がんのステージ別の生存率」はご存知ですか?治療法も解説!医師が監修!

胃がんは、胃の内側を覆う粘膜の細胞が異常に増殖し、がん細胞となる病気です。胃がんは、粘膜から始まり、徐々に粘膜下層から固有筋層、漿膜へと外部に拡大していきます。がん細胞が粘膜やその下の層に限定されている状態を「早期胃がん」と呼び、筋層を超えて広がった状態を「進行胃がん」と呼びます。
胃がんの発生は、食生活や生活習慣、遺伝的要素など、さまざまな要因が関与しているとされます。
本記事ではそんな胃がんの生存率について以下の点を中心に解説します。

  • ・胃がんの進行速度
  • ・胃がんのステージ別の生存率
  • ・胃がんの治療

胃がんや胃がんの生存率について理解するためにも参考にしていただけますと幸いです。ぜひお読みください。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

胃がんの進行について

前述した通り、胃がんは粘膜から筋層へとどんどん広がって進行する病気です。
以下では、早期胃がんと進行胃がんについてや、胃がんの進行速度をより詳しく解説します。

早期胃がんと進行胃がん

胃がんは、その種類により進行速度が異なります。胃がんは通常、分化型または未分化型の腺がんで、前者は進行が遅く、後者は進行が速いといわれています。なかでも、若年層でも発症する可能性があるスキルス性胃がんは、進行がとても速いとされています。

胃がんの末期症状

胃がんの末期症状としては、食物の消化や栄養の吸収が困難になり、食欲不振や吐き気が生じ、結果として体重の大幅な減少が見られることがあります。さらに、体の水分調節機能が正常に働かなくなり、腹水が溜まることもあります。これにより腹部の膨満感や足のむくみ、排尿障害などが起こる可能性があります。
また、がん組織からの出血により、吐血や下血が見られることもあり、持続的な出血が貧血を引き起こし、めまいなどの症状を引き起こすこともあります。

胃がんのステージ別の生存率

次に、胃がんのステージ別の生存率についても解説します。

ステージIA期・IB期

胃がんのIA期ではがんは粘膜層に留まり、リンパ節やほかの部位への転移はありません。IB期ではがんは粘膜下層に留まり、多いと二つのリンパ節への転移が見られます。胃がんのステージIAとIBの5年生存率は、国立がん研究センターがん情報サービスの2014から2015年のネット・サバイバルのデータによると、約92.5%~93.1%となっています。しかし、これらの生存率は過去のデータに基づいており、現在の治療法の進歩により、数値はさらに改善されている可能性があります。また、個々の患者さんの生存率は、その患者さんの健康状態や治療法により異なります。
出典:国立がん研究センターがん情報サービス 胃がん5年生存率 統計

ステージIIA期・IIB期

IIA期では、がんは粘膜層または粘膜下層に留まり、3~6個のリンパ節への転移が見られます。IIB期ではがんは固有筋層に浸潤し、1~2個のリンパ節への転移が見られます。胃がんのステージIIAとIIBの5年生存率について、国立がん研究センターがん情報サービスの2014から2015年のネット・サバイバルのデータに基づくと、約66.1%~68.2%となっています。
出典:国立がん研究センターがん情報サービス 胃がん5年生存率 統計

ステージIIIA期・IIIB期・IIIC期

IIIA期では、がんは固有筋層に浸潤し、リンパ節転移が7~15個、遠隔転移はありません。IIIB期では、がんが固有筋層を越えて漿膜下層に浸潤し、リンパ節転移が7~16個の場合もあります。IIIC期では、がんが胃の表面に出て他臓器に広がり、リンパ節転移が7~16個以上の場合もあります。
そして胃がんのステージIIIA、IIIB、IIICの5年生存率は、同じく国立がん研究センターがん情報サービスの2014から2015年のネット・サバイバルのデータによると、約40.3%~42.2%となっています。
出典:国立がん研究センターがん情報サービス 胃がん5年生存率 統計

ステージIV期

ステージIVの胃がんは、かなり進行した状態を示します。この段階では、がんは胃の壁を超えて広がり、ほかの臓器にも影響を及ぼす可能性があります。国立がん研究センターがん情報サービスの2014から2015年のネット・サバイバルのデータに基づくと、ステージIVの胃がん患者さんの5年生存率は約6.0%~6.7%です。
出典:国立がん研究センターがん情報サービス 胃がん5年生存率 統計

胃がんの治療

続いて、胃がんの治療についてです。胃がんの治療法は何種類かあり、ステージや患者さんの状態によって適切な治療法が選択されます。

内視鏡治療

内視鏡治療は、がんが胃の粘膜層に限定されている場合に適用されます。内視鏡治療には、内視鏡的粘膜切除術(EMR)と内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)の二つの手法があります。EMRは、2cm以下の小さながんに対して行われ、ESDは2cmを超えるがんや一部の潰瘍があるがんに対して行われます。これらの手法は、体への負担が少なく、食生活への影響も少ないという利点があります。また、がんが取り除かれたかどうかは、病理診断によって確認され、取り除かれていない場合には、後日追加の手術が必要とされています。

手術療法

胃がんの手術療法は、がんの進行度や位置により、胃の一部または全体を取り除きます。手術は主に開腹手術と腹腔鏡下手術(ロボット支援手術を含む)の二つの形式があります。開腹手術は伝統的な方法で、腹部を切開してがんを取り除きます。一方、腹腔鏡下手術は、腹部に小さな穴を開け、専用の器具を挿入して手術を行います。腹腔鏡下手術は体への負担が少なく、回復も早いとされています。

化学療法

化学療法は、ほかの治療法と組み合わせて行われ、患者さんの心身の状態や家族環境も考慮されます。使用される薬剤は、5-FU、TS-1、ゼローダ、シスプラチン、オキサリプラチン、イリノテカン、パクリタキセル、ナブパクリタキセル、ラムシルマブ、ニボルマブなどで、これらを三つ程度組み合わせて使用されます。近年の化学療法は、副作用が軽減されており、生命が危険になるような副作用の頻度は少ないとされています。

放射線治療

胃がんの放射線治療は、主に進行がんや再発した胃がんに対しての補助的な治療法として用いられ、限局した再発巣に対して根治を目指す場合や、食物が通らない、痛みがあるなどの患者さんに、症状緩和を目的とする場合などに行われます。治療は、胃内容物の少ない空腹時(朝食前)に行われ、CTを使用して、胃、病気の部位、そして放射線による損傷が起こりやすい周辺の器官の位置を確認し、照射範囲を適正に設定します。

胃がんについてよくある質問

ここまで胃がんの生存率などを紹介しました。ここでは胃がんについてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

胃がんの再発リスクについて教えてください

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

胃がんの再発リスクは、手術後の3~5年間がとても高く、病期が進行するとその確率は増えます。再発は、手術時にすでに存在していたがんが肉眼で見えるようになるか、血液や骨髄に隠れていたがんが転移することを指します。
術後5年間で再発がなければ、おおむね胃がんは根治したと見なされます。

胃がんは遺伝しますか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

胃がんの発症は遺伝よりも、ピロリ菌の感染が主な原因とされています。日本の胃がんの患者さんの約99%がピロリ菌感染によるもので、遺伝による胃がんはほとんどありません。親族間での胃がんの多発は、遺伝ではなく、幼少期のピロリ菌感染が原因と考えられます。したがって、胃がんは遺伝するとは一概には言えません。

まとめ

ここまで胃がんの生存率についてお伝えしてきました。胃がんの生存率についての要点をまとめると以下の通りです。

  • ・胃がんは、分化型または未分化型の腺がんで、前者は進行が遅く、後者は進行が速いといわれ、なかでも、スキルス性胃がんは、進行がとても速いとされる
  • ・胃がんの5年生存率はステージI期が約92%~93%、ステージII期が約66%~68%、ステージIII期が約40.3%から42.2%、ステージIV期が約6%から6.7%
  • ・胃がんの治療は、内視鏡治療や手術療法、化学療法、放射線治療が患者さんの状態などによって選択される

胃がんと関連する病気

胃がんと関連する病気は2個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器内科の病気

  • ヘリコバクター・ピロリ感染症
  • 自己免疫性萎縮性胃炎

具体的な症状や治療法については、担当の医師と相談しましょう。

胃がんと関連する症状

胃がんと関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • 胃の痛みや不快感
  • 胸やけ
  • 食欲不振
  • 貧血
  • 黒い便(血便)
  • 食事がつかえる
  • 体重が減る

これらの症状が持続する場合、または新たにあらわれた場合、医師の診察を受けることが大切です。

この記事の監修医師