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「悪性リンパ腫の血液検査」では何がわかる?診断方法や治療法も解説!【医師監修】

 公開日:2024/09/18
「悪性リンパ腫の血液検査」では何がわかる?診断方法や治療法も解説!【医師監修】

悪性リンパ腫は年々罹患率が増加傾向で、身近な病気になりつつあります。

これまでは血液のがんといえば白血病と認識されてきました。しかし、近年では白血病とは別に悪性リンパ腫の認知度が上がってきています。

罹患数が増えているため、悪性リンパ腫について不安を抱える方が少なくないのも現状です。健康診断で発見されるものなのかと疑問を持っている方もいるでしょう。

そのような不安や疑問にお答えすべく、本記事では悪性リンパ腫の血液検査で何がわかるのか、診断方法や治療法とあわせて詳しく解説していきます。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

悪性リンパ腫とは

悪性リンパ腫は、血液細胞である白血球のリンパ球ががん化する病気です。
本来の白血球は体内に侵入した病原菌や異物から体を守る働きがありますが、白血球ががん化することで、身体にさまざまな影響をおよぼします。
白血球は好中球・好酸球・好塩基球・単球・リンパ球の5種類です。ですが、5種類の白血球から発生する病気は100種類以上にもおよびます。
がん細胞の形態や性質によって、大きく変化することが特徴です。そのなかでも悪性リンパ腫は下記の4つに分類されています。

  • B細胞リンパ腫
  • T細胞リンパ腫
  • NK細胞リンパ腫
  • ホジキンリンパ腫

上記すべてを含めた総称が悪性リンパ腫です。年間10万人あたり約30人の発症が確認されています。
日本の成人では発症頻度の高い血液腫瘍です。血液中のリンパ球ががん化するため、さまざまな部位に発生します。
発症する男女の割合は約3:2と男性のリスクが高く、70〜80歳が発症のピークといわれています。

悪性リンパ腫の血液検査で何がわかる?

それでは悪性リンパ腫の血液検査で何がわかるのかさっそくお伝えしていきましょう。血液検査で判断できることは4つあります。

白血球数とリンパ球数の異常

悪性リンパ腫が発生していないかを見るときは、まず白血球数とリンパ球数の異常がないかをチェックします。
まず白血球は細菌などから体を守る働きを持つため、検査の数値が高い場合は細菌感染症・炎症・腫瘍の存在が疑われます。
しかし、どこの部位で発生しているかまでは特定できません。喫煙者は数値が高くなる傾向にあります。
逆に数値が低い場合は、ウイルス感染症・薬剤性の白血球減少・再生不良性貧血・生まれつき白血球数が低いなどの可能性があります。
健康診断での白血球数判断基準は以下のとおりです。

  • 異常なし(A):3,100〜8,400
  • 軽度異常(B):8,500~8,900
  • 要再検査・生活改善(C):9,000〜9,900
  • 要精密検査・治療(D):3,000以下10,000以上

次に白血球の働きを調べるリンパ球数の検査です。
正常な白血球は先述した5種類から、さらに好中球は核の形によって分葉核球と桿状核球に分けられます。リンパ球数の基準範囲は以下のとおりです。

  • 好中球:40.0〜75.0%(分葉核球:34.0~70.0%、桿状核球:1.0~7.0%)
  • 好酸球:0.0〜8.0%
  • 好塩基球:0.0〜2.0%
  • 単球:2.0〜10.0%
  • リンパ球:18.0〜49.0%

リンパ球数は白血球の種類によって体を守る役割が異なるため、多少数値が前後しやすいことが特徴です。そのため、リンパ球数は白血球数と照らし合わせて状況を判断します。

赤血球や血小板の減少

赤血球は肺から全身に酸素を全身に運び、二酸化炭素を回収する循環の役割を担っています。
赤血球の数値が高ければ多血症、数値が低ければ貧血が疑われます。健康状態での判断基準は以下のとおりです。

  • 男性:430〜570
  • 女性:380〜500

血小板は出血したときに、ケガ部分に粘着して出血を止める役割を担っています。血液検査での判断基準は以下のとおりです。

  • 異常なし(A):3,100〜8,400
  • 軽度異常(B):8,500~8,900
  • 要再検査・生活改善(C):9,000〜9,900
  • 要精密検査・治療(D):3,000以下10,000以上

数値が高い場合は、本態性血小板血症の可能性があります。
逆に数値が低い場合には、再生不良性貧血・特発性血小板減少性紫斑病・トロンボポエチンの低下などが考えられます。

LDH値の上昇

悪性リンパ腫を発症しているとLDH(乳酸脱水素酵素)の酸素数値が上昇することがあります。
LDHは全身のさまざまな細胞から作られる酵素のことです。LDHの数値が上がるのは、何らかの異常で臓器が破壊されて酸素が血中に漏れ出していることが示唆されます。
さまざまな情報が得られる血液検査ですが、LDHのみ高い数値となるのが悪性リンパ腫の特徴です。

肝臓・腎臓などの機能

肝臓・腎臓などの機能がしっかり機能しているかも血液検査で得られる重要な情報です。体内の栄養素の数値をもとに肝臓・腎臓などの機能を評価します。

血液検査以外の悪性リンパ腫の診断方法

血液検査で悪性リンパ腫の疑いがある場合には、症状を判断するためにほかの検査も追加で行われるでしょう。血液検査以外の主な検査方法は3つあります。

病理検査

病理検査は血液検査で異常が見られた場所や病変部分から生検を行います。
ただし、症状によっては感染症やほかの病気などの合併症のリスクも否定できません。リンパ節の腫脹が全身に認められる場合は、鎖骨上・頸部・腋窩・鼠径リンパ節の順に生検できるか考慮されます。
生検だけでは病気を断定するのは難しいため、ヘマトキシリン・エオジン染色や免疫組織化学検査も並行して行われるでしょう。

画像診断

悪性リンパ腫は転移する病気であるため、診断は治療の選択や予後の予測に大きく影響します。
いかに悪性リンパ腫の進行度を正確に把握できるかが重要なポイントです。画像診断には以下の方法が適用されます。

  • 胸部X線
  • 超音波
  • CT
  • MRI
  • PET

上記の検査方法はそれぞれ用途が異なるため、必要に応じて追加される項目です。例えば、胸部X線は一般的な画像診断の方法で、胸のリンパ節の腫れや肺の状況などがわかります。

骨髄検査

骨髄検査は、悪性リンパ腫が骨髄に転移している可能性がある場合に適用される検査方法です。
骨髄検査は腰骨から骨髄液・骨髄組織を採取して、リンパ腫の有無を顕微鏡でチェックします。
1つ目は注射器で骨髄液を吸引する骨髄穿刺、2つ目は特殊な太い針で骨髄組織の一部を採取する骨髄生検です。
顕微鏡でのチェックだけでなく、リンパ腫細胞の染色体異常を調べる染色体検査を行うこともあります。これらは悪性リンパ腫の進行度を判断するうえで重要な情報です。

悪性リンパ腫の治療法

検査方法によって悪性リンパ腫の進行度が診断されると治療が開始されます。

化学療法

化学療法は抗がん剤を使用する治療方法です。悪性リンパ腫の治療ベースとなります。
悪性リンパ腫で用いられる頻度の高い化学療法は、3つの抗がん剤を使ったCHOP療法です。
ほかにも、悪性リンパ腫の種類や進行度によって使われる抗がん剤は異なります。化学療法は通院での治療も可能ですが、副作用が懸念される場合には入院が求められるでしょう。

放射線治療

がんといえば放射線治療と認識している方も少なくないでしょう。
悪性リンパ腫においても治療効果のある方法といえます。放射線治療では、高エネルギーの放射線を悪性リンパ腫の発生部位に照射して治療します。
放射線治療は通院でも治療を受けられることがメリットです。しかし、食欲不振や皮膚に影響が出たり急激な吐き気に襲われたりとデメリットもあります。

造血幹細胞移植

造血幹細胞移植は化学療法や放射線治療で症状が緩和されない場合に選択されることのある治療方法です。
造血幹細胞移植には2つの方法があります。
1つは自身の細胞を培養する自家移植です。もう1つはドナー提供の細胞を使用した同種移植になります。
正常な細胞を移植することで、体内の白血球を増やすことが目的です。ただし、感染症のリスクが高まる危険性は否定できません。

悪性リンパ腫の血液検査についてよくある質問

ここまで悪性リンパ腫の血液検査で何がわかるのか・診断方法・治療法などを紹介しました。ここでは「悪性リンパ腫の血液検査」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

悪性リンパ腫の早期発見のポイントを教えてください。

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

早期発見につなげる大切なポイントは定期健診です。理想は1年に1回の健康診断を受けることです。健康診断は県や市区町村で独自に開催していることもあります。もし、健康診断を受けていない方は、住まいの地域に問い合わせしてみましょう。人間ドックやかかりつけ医に相談することもおすすめです。

悪性リンパ腫は何科を受診すればよいでしょうか?

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

悪性リンパ腫の血液検査は血液内科で行います。内科に受診すればよいと留意しておきましょう。もし、悪性リンパ腫が転移していた場合には、各科や必要な病院と連携して治療を行います。

編集部まとめ

悪性リンパ腫の血液検査で何がわかるのか・診断方法・治療法を詳しく解説していきました。

悪性リンパ腫は年々発生率が増加している恐ろしい病気です。定期健診を受けることはもちろん、健康状態に違和感を覚えた場合には血液内科を受診するようにしましょう。

悪性リンパ腫と関連する病気

「悪性リンパ腫」と関連する病気は4個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

悪性リンパ腫は100種類以上あるとされている病気です。発症部位やご自身の健康状態によって治療方法が異なるため、早期発見・早期治療に努めましょう。

悪性リンパ腫と関連する症状

「悪性リンパ腫」と関連している、似ている症状は4個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

悪性リンパ腫はリンパ節が腫れるという特徴があります。風邪のような症状が続いている場合には、自己判断せずに医療機関で受診しましょう。

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