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「往診」とは? 訪問診療との違いや診療内容を内科医が解説

公開日:2022/11/07  更新日:2022/11/01
「往診」とは? 訪問診療との違いや診療内容を内科医が解説

自宅に医師が来てくれることを「在宅医療」などと呼びますが、その中でも「往診」と「訪問診療」は全くの別物です。両者の境目は「緊急時」になりそうですが、そうなると休日や夜間の対応が問われます。今回は、あまり知られていない在宅医療の中身について、Medical DOC編集部が内科医の宗形先生(小滝橋そら内科クリニック)を取材しました。

宗形 昌儒

監修医師
宗形 昌儒(小滝橋そら内科クリニック)

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北里大学医学部卒業。慶應義塾大学病院やさいたま市立病院勤務などを経た2022年、東京都新宿区に「小滝橋そら内科クリニック」開院。心臓疾患を中心とし、生活習慣にフォーカスを当てた内科診療に注力している。日本医師会認定健康スポーツ医、日本内科学会認定総合内科専門医・指導医、日本循環器学会認定循環器専門医、日本不整脈心電学会認定不整脈専門医、日本心血管インターベンション治療学会認定専門医、日本脈管学会認定脈管専門医、日本心臓血管麻酔学会周術期経食道心エコー認定医、日本心エコー図学会SHD心エコー図認定医。

往診とは? 訪問診療との違いは?

往診とは? 訪問診療との違いは?

編集部編集部

じつは、訪問診療と往診の違いがわかっていません。

宗形 昌儒先生宗形先生

「訪問診療」は、1人での病院受診が困難となった方と事前に契約などを結んで、定期的に患者さんの自宅へ赴く在宅医療の一形態です。患者さんの状態に基づいて計画を立て、月に1~4回伺うのが一般的です。診察のほかに投薬や採血、超音波などの各種検査も含まれます。一方の「往診」は、予定外の体調変化が生じた場合に患者さんやご家族からの要請で臨時的にお家へお伺いする医療です。訪問診療の予定外の要請なども往診になります。

編集部編集部

予定外ということは、「イレギュラーな緊急時の診療」が往診の目的なのでしょうか?

宗形 昌儒先生宗形先生

はい。往診の大前提となるのは「緊急時の要請」です。そこまで体調が悪くないのに自己都合で医師を呼ぶのは、本来の趣旨から離れますので注意が必要です。最初にお電話をいただいたとして、そこから先はいくつかのパターンに分かれます。

編集部編集部

代表的なパターンだけでも教えてください。

宗形 昌儒先生宗形先生

まずは、医師の到着を待たず、救急車による緊急搬送が望まれるパターンです。逆に、電話で必要な処置や手持ちの薬の内服を指示するのみで済むこともあります。つまり、ご自身で対処できるパターンです。実際に往診となるのは、「医師がその目で確かめて対応する必要がある場合」ですね。医師が必要に応じて緊急で訪問することをもって、往診と位置づけています。

編集部編集部

調べてみると、「#7119」という緊急サービスを見かけました。これはなんでしょうか?

宗形 昌儒先生宗形先生

「#7119」は行政がおこなう、電話による救急安心センター事業です。急な病気やけがをしてしまった場合、すぐに病院受診をしたり、救急車を呼ぶべきか迷ったときなどに専門家からアドバイスを受けたりすることができる便利なサービスと言えるでしょう。ただし、全ての都道府県で実施されているわけではありません。また、「#7119」と類似した独自サービスを提供している自治体もあります。詳しくは、お住まいの地域の救急サービスを調べてみてください。

往診が受けられる条件とは? 家族が知っておきたい症状や距離の制限

往診が受けられる条件とは? 家族が知っておきたい症状や距離の制限

編集部編集部

話を戻します。往診は誰でも受けられる仕組みなのでしょうか?

宗形 昌儒先生宗形先生

定期的に伺う訪問診療は、大前提として「ご自身での通院が困難な方」が対象です。一方で往診には、「普段は通院できる方」の“緊急時”も含まれます。かかりつけ医を持っている方で夜間や休日は対応していただくのが困難な場合や、かかりつけ医のない方が体調を崩してしまった場合に、往診も1つの選択肢となり得ると考えます。ただし、注意点として、訪問診療や往診にはいわゆる「16kmルール」があります。

編集部編集部

自宅からの距離が「16km以内」の医療機関に限られるということですか?

宗形 昌儒先生宗形先生

そのとおりです。「拠点となる医療機関から直線距離で16kmまでが保険診療をおこなうことができる範囲」と決められています。その範囲を超えてしまうと医療費の全額が患者さん負担となってしまうため、現実問題として訪問診療や往診は困難です。往診は即座の対応を求められるものですので、往診までに長時間を要するのでは意味をなしませんから、この制度はやむを得ないものだと考えます。なお、16km以内に往診を扱う医療機関がないなどの特殊な場合などは、16kmルールの例外となる場合もあります。

編集部編集部

初対面の往診でも、患者の症状を見極められるものですか?

宗形 昌儒先生宗形先生

もちろん、医師は全力を尽くして診察にあたりますが、あくまで往診は臨時的な対応であり、病態を解き明かしたり高度専門的な治療をおこなったりするものではないということは認識していただきたいですね。原則は昼間の外来や定期的な訪問診療ですので、往診というのは定期的な診察に代わるものではなく、補完的に利用されるべきものと考えています。なお、「往診は月何回までですか?」という質問を受けますが、緊急時の対応ですので回数制限はありません。

編集部編集部

コロナ禍の影響で往診を利用する人が増加していそうですが、実際はどうなのでしょうか?

宗形 昌儒先生宗形先生

そうですね。たしかに、新型コロナウイルスの影響で事情がすこし変わってきました。「新型コロナウイルスの感染を疑う熱のせいで食事が全くとれない」「身動きが取れず、病院へ行けない」といったケースでの往診が以前より増えているように感じます。往診というものの認知が以前より広まっていることもあるのかもしれません。

編集部編集部

休診日や夜間に往診してもらえるのかも気になります。

宗形 昌儒先生宗形先生

重要な観点ですね。体の不調というのはいつ起こるかわからないので、往診できる医療機関を選ぶときは休診日や夜間にも対応していることが望ましいです。このとき注意したいのは、単に電話を受けるだけでトレーニングを受けていない“コールセンター”を置いている場合です。医療従事者と電話がつながっているとも限らないので、適切な対応が遅れるかもしれません。また、いつも同じ医師が対応するのではなく、複数の医療従事者が輪番制を採っていることもあります。そのため、往診先を選ぶ際は、誰と直接電話できるのかも確認しておきましょう。

往診で受けられる医療処置や費用・往診料の例

往診で受けられる医療処置や費用・往診料の例

編集部編集部

続けて往診の費用についてです。そのときの症状によるので、一律には決まらないのでしょうか?

宗形 昌儒先生宗形先生

往診は基本的に自由診療ではなく、通常の医療保険の適用となります。通常の外来通院と異なる点としては、医師がご自宅へお伺いするため、「往診料」が発生します。加えて、往診した曜日(休日かどうか)や時間で往診料に加算がプラスされます。これらの加算は各医療機関が取得している施設基準によって多少異なります。そのほか、通常の通院と同様に初診料・再診料や個々の症状による治療費・薬科代などが加わります。保険の適用に応じて総額の1~3割が患者さんの自己負担額となります。これらの加算は公に定められているものであり、医療機関が独自に設定しているものではないので、どの医療機関に往診を依頼しても大体同じような額になります。

編集部編集部

「往診料」が加わるのはやむを得ない事情として、曜日や時間による料金体系だけでも教えてください。

宗形 昌儒先生宗形先生

わかりました、往診料に加算として加わる料金は、以下のように曜日や時間に応じて変わります。

平日・土曜日 朝8時~夕方6時まで:加算なし
平日・土曜日 朝6時~朝8時まで 夕方6時~夜10時まで:夜間往診加算
日曜・祝日・年末年始 朝6時~夜10時まで:休日往診加算
曜日問わず 夜10時~朝6時まで:深夜往診加算

そして、同様の加算が初診料や再診料にも加わります。22時以降の深夜時間は加算が高くなるため、時々料金についての問合わせをいただくのですが、伺う医師も自分の時間や睡眠を削って患者さんのために尽くしておりますので、その点はご理解いただけると幸いです。

編集部編集部

トータルの往診費用で“概算”は出ませんか?

宗形 昌儒先生宗形先生

あくまで概算の一例ですが、3割負担を前提とすると、お支払いいただく自己負担額は以下のようになります。

各種加算なし:1往診あたり5000円~8000円前後
平日の夜間、あるいは休日の日中:1往診あたり7500~9000円前後
22時以降の深夜:1往診あたり1万2000円~1万4000円前後

編集部編集部

費用の支払いは、どのタイミングになるのでしょうか?

宗形 昌儒先生宗形先生

「都度請求」するクリニックもあれば、訪問診療と同時に「月締め請求」するケースもあります。各医療機関で異なるので、ご確認ください。往診費用は一見高く見えるかもしれませんが、夜間や休日に救急病院を受診した場合、交通費や待ち時間、待合場所の問題、同伴家族の問題、感染リスクなども発生します。さらに、200床以上の救急病院では紹介受診重点病院として、初診で紹介状なしの軽症患者さんは医療費+7000円の請求となり得るため、2022年10月から往診との費用差が少なくなっています。こうした費用をどう捉えるかですよね。

編集部編集部

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

宗形 昌儒先生宗形先生

繰り返しになりますが、往診の基本的な考え方は「急な体調不良に対する臨時の対応」です。お伺いしてしっかりした診察や各種検査やお薬の処方をおこなうことで、さらなる体調の悪化や入院への移行を防ぐことができます。また、往診の前段階としてご相談を受けた際に患者さんのトリアージ、言い換えると緊急度や重症度に応じた“優先度合いの振り分け”をおこないます。つまり、「救急車が必要なのか」「医師が診るべきなのか」「ご自身でなんとかできそうなのか」という判断です。このような判断は患者さんご自身では困難なことが多く、やはり専門職がすべきなので、体調不良時にはまずお電話などでご相談ください。往診は上手に使えば非常に頼りになるツールです。ぜひ有効活用してください。

編集部まとめ

往診とは、主に緊急時におこなわれる医療サービスです。したがって、タイミングによっては、時間外や休日の手当てが加算される場合もあります。一方、訪問診療は、決められた日時に医師が訪問してくれる定期的・計画的な医療サービスです。通常なら、時間外や休日に訪問診療を組むことはなく、訪問診療と往診を組み合わせることで病院への入院を防ぎ、健やかな自宅療養をおこなうことができるのでしょう。

医院情報

小滝橋そら内科クリニック

小滝橋そら内科クリニック
所在地 〒169-0074 東京都新宿区北新宿4-8-16北新宿君嶋ビル5F A室
アクセス 東京メトロ東西線「落合駅」 徒歩8分
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診療科目 内科、循環器内科