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「胃がんとピロリ菌」の関係性はご存知ですか?ピロリ菌以外の原因や症状も解説!

 公開日:2024/05/08
「胃がんとピロリ菌」の関係性はご存知ですか?ピロリ菌以外の原因や症状も解説!

胃がんとピロリ菌の関係性とは?Medical DOC監修医が胃がんとピロリ菌の関係性・ピロリ菌以外の原因・症状・胃がんになりやすい人の特徴・予防法や何科へ受診すべきかなどを解説します。

和田 蔵人

監修医師
和田 蔵人(わだ内科・胃と腸クリニック)

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佐賀大学医学部卒業。南海医療センター消化器内科部長、大分市医師会立アルメイダ病院内視鏡センター長兼消化器内科部長などを歴任後の2023年、大分県大分市に「わだ内科・胃と腸クリニック」開業。地域医療に従事しながら、医療関連の記事の執筆や監修などを行なっている。医学博士。日本消化器病学会専門医、日本消化器内視鏡学会専門医、日本肝臓学会肝臓専門医、日本医師会認定産業医の資格を有する。

「胃がん」とは?

胃の内側にある粘膜にがんが発生した状態が胃がんです。内側の粘膜から徐々に大きくなると粘膜下層、固有筋層、漿膜へと外側に向かってがんが深く広がっていきます。がん細胞が粘膜または粘膜下層までにとどまるものを「早期胃がん」、筋層より深く進行したものを「進行胃がん」といいます。また、胃がんの中には、胃の壁を硬く厚くさせながら広がるがんもあり、これが「スキルス胃がん」です。このタイプの胃がんは、進行が早く、また内視鏡で診断が難しいこともあります。進行してから見つかる事が多く、治りにくいがんです。

「ピロリ菌」とは?

ピロリ菌は、ヘリコバクター・ピロリという細菌で胃の中に生息しています。このピロリ菌はアンモニアを作り、強い酸性の胃の中でも生きられることが特徴です。ピロリ菌の感染が、慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍や胃がん、一部の悪性リンパ腫の原因となっていることが分かっています。日本でピロリ菌に感染している人は少なくとも3000万人以上いると言われています。特に50才以上で多く、若い人では少ないです。ピロリ菌は口から感染し、乳幼児期に感染しやすいと言われています。環境因子や家庭内感染など色々な感染経路が考えられています。

胃がんとピロリ菌の関係性

胃がんとピロリ菌感染の関係が報告されており、ピロリ菌を除菌することで胃がんの発生率が下がると言われています。また、早期胃がんに対して治療を受けた方にピロリ菌を除菌することで別の部位にできる新しい胃がんの発生率が3分の1に減少したとの報告があります。

ピロリ菌以外の原因

日本では、衛生環境が整ったことで、若い世代でのピロリ菌感染率は低くなっています。ピロリ菌以外にも胃がんの危険因子とされるものがいくつかあります。この危険因子について解説いたします。

多量の飲酒

アルコールを多く飲むことは、多くのがんで関連があると言われています。口腔がん、咽頭がん、食道がん、肝臓がん、大腸がん、乳がんでの危険因子です。胃がんとの関連についても、日本の研究において男性で1日1合以上の飲酒(エタノール摂取量として1日23g以上の飲酒)が胃がんの危険性が増加するという結果が報告されました。この報告では、飲酒量が多くなるほど、危険性は高くなっています。女性では有意な差が出ませんでしたが、男性よりも飲酒量が少ないためと考えられ、女性でも多量の飲酒は気をつけなければなりません。
<純エタノール23gの目安>

  • ・日本酒・・1合
  • ・ビール・・大瓶1本(633ml)
  • ・ワイン・・グラス2杯程度

喫煙

喫煙も多くのがんと関連があると報告されています。胃がんに関しても、非喫煙者と比較し、喫煙者では男性で1.8倍、女性で1.2倍、全体では1.6倍がんになる確率が上昇すると報告されています。喫煙は口腔・咽頭がん、喉頭がん、食道がん、肺がん、肝臓がん、膵臓がん、子宮頸がん、膀胱がんと関連があるといわれています。また、喫煙年数が長いほど、また一日の喫煙本数が多いほどがんになりやすいです。喫煙をしない、喫煙をしている人では一日でも早くに禁煙することが大切です。

多量の塩分摂取

塩分を多くとることは、高血圧の原因となり脳卒中や心筋梗塞など心血管疾患の危険因子です。塩分の過剰はこのような循環器疾患だけではなく、胃がんの危険因子ともなっています。特に胃がんは、塩魚や干物、たらこなどの塩蔵食品がリスクであるといわれています。

胃がんの代表的な症状

胃がんは早期では自覚症状がないことも多いです。そのため、下記のような症状が現れたときには消化器内科を受診しましょう。また、胃がん検診を定期的に受診することも大切です。

胃の痛み、不快感、違和感

胃はみぞおちあたりにあります。胃がんの症状として、みぞおち辺りの痛みが起こったり、痛みまではなくとも不快感や違和感が起こることがあります。しかし、このような症状は胃炎や胃潰瘍など胃がん以外でも起こることがあり、特徴的な症状ではありません。このような症状が起こった場合には、まず市販の胃薬などで様子を見たり、消化の良い食べ物を食べて過ごしましょう。しかし、症状が続いた場合や、しばらく胃がん検診を受診していない場合には消化器内科を受診して相談することをお勧めします。

胸焼け、吐き気、食欲低下

胃がんの症状として、胸やけや嘔気なども挙げられます。また、さらに進行すると食事がとれなくなることもあります。しかし、これらの症状も胃がんのみでおこるわけではなく、胃炎、胃潰瘍、逆流性食道炎など他の病気でも起こります。症状が続く時には早めに消化器内科を受診しましょう。

黒色便(下血)、貧血

胃から出血をすると、血が胃酸によって酸化され黒くぽくなります。このため、便が海苔の佃煮のような真っ黒い便(黒色便)となることもあります。また、はっきりとした下血はなくとも、出血が続くことによって徐々に貧血が進行することもあります。血液検査で急に貧血が進んだ場合には消化管出血の可能性があります。便に血が混ざる場合には、消化器内科を早急に受診しましょう。

胃がんになりやすい人の特徴

ピロリ菌の感染

50才以上の方は約70%以上の割合でピロリ菌に感染していると言われています。感染していた人がすべてがんになるわけではありませんが、ピロリ菌が確認された場合には、除菌が勧められています。

生活習慣

大量の飲酒、喫煙、塩分の多い食事は胃がんを増やします。胃の粘膜がこれらにより刺激を受けることで胃がんが発生すると言われています。このため、胃への刺激を減らす事、例えば適度な飲酒、禁煙、減塩食で野菜、果物などを多くとるバランスの取れた食事をすることが大切です。

年齢

胃がんは40才代より徐々に増加し、50才代以降で急激に増加します。また、女性と比較して男性で胃がんになる割合が多いです。40才以降でがん検診を定期的に受診することがとても大切です。

胃がんの予防法

減塩、野菜・果物を十分に摂取する

塩分濃度の高い食べ物をとる人は胃がんのリスクが上がります。塩分を控えめにすることは胃がんの予防だけではなく、高血圧や心血管障害(心筋梗塞や脳梗塞など)の発生リスクも低下させます。日本人の食事摂取基準では一日当たりの塩分摂取量を男性では7.5g未満、女性では6.5g未満にすることを推奨しています。また、野菜と果物を積極的にとることで胃がんのリスクを低下させる可能性がある事が分かっています。厚生労働省策定「健康日本21(第二次)」では、一日当たり野菜を350gとることを目標としています。果物を合わせた目安として約400g程度がお勧めです。

節酒・禁煙

アルコールの飲みすぎは胃がんのリスクをあげます。一日純エタノール換算で23g程度以下を目安にし、飲みすぎないようにしましょう。また、禁煙も大切です。自分も吸わない、また他人のタバコの煙も避けるようにすることががん予防の一歩です。

ピロリ菌感染の除菌

ピロリ菌の感染が胃がん発生の原因となっているとされています。感染すると必ずがんになるというわけではありませんが、感染に対して必要な対策をとることで癌の発生を予防できると考えられています。定期的な胃がん検診と、必要であればピロリ菌に感染しているかの検査を受けることが大切です。ピロリ菌に感染していた場合には、除菌についても、主治医と相談して決めることが大切です。

「胃がんとピロリ菌」についてよくある質問

ここまで胃がんとピロリ菌の関係性などを紹介しました。ここでは「胃がんとピロリ菌」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

胃がんを発症しているとき、体内にピロリ菌はどれくらいいるのでしょうか?

和田 蔵人和田 蔵人 医師

ある報告では胃がんを発症している人の99%でピロリ菌感染がありましたが、胃がんにならなかったグループでも90%ピロリ菌陽性であったとの結果でした。ピロリ菌陽性の方は陰性の方と比較し、約5倍胃がんのリスクが増えると言われていますが、すべての人が胃がんになるわけではなく、飲酒や喫煙、塩分摂取などさまざまな生活での要因が重なり胃がんが発症すると考えられています。

ピロリ菌除去をすると胃がん発症の確率はどれくらい下がりますか?

和田 蔵人和田 蔵人 医師

ピロリ菌を除菌することで、胃がんの予防・再発が半数~3分の1程度に減ることが分かっています。ただし除菌することで完全にがんにならないわけではなく、最近では除菌後にがんが発見される除菌後胃がんが話題となっています。除菌後10年以上経過して発見される場合もあり、定期的な経過観察が必要です。

編集部まとめ ピロリ菌の除菌と生活習慣の改善で胃がんを予防!

胃がんの危険因子としてはピロリ菌の感染、生活習慣の乱れが挙げられます。ピロリ菌の除菌は患者さんごとの適応もありますので、主治医と相談し、適応があれば除菌を、また生活習慣を見なおし、禁煙・節酒・減塩に努め野菜や果物を多く取るようにしましょう。
また、定期的な胃がん検診がとても大切です。胃がんは早期に発見すれば、完治の可能性が高い病気です。年に一回の検診を受けましょう。

「胃がんとピロリ菌」と関連する病気

「胃がんとピロリ菌」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

消化器科の病気

血液科の病気

  • 特発性血小板減少性紫斑病

ピロリ菌の感染は、多くの消化器系疾患と関連があるばかりではなく、特発性血小板減少性紫斑病という血液疾患とも関係があります。ピロリ菌に感染すると、慢性的な胃炎が起こったり、悪化すると胃潰瘍や十二指腸潰瘍の原因となります。また、生活習慣などのそのほかの危険因子が重なることで胃がんの発症の原因ともなり得ます。最近は健康診断でピロリ菌の感染の有無を調べる機会もあると思います。陽性となった時には、消化器内科を受診し、よく相談をしましょう。

「胃がんとピロリ菌」と関連する症状

「胃がんとピロリ菌」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • みぞおちの痛み・胃の痛み
  • 嘔気、胸やけ
  • 食思不振
  • 体重減少
  • 貧血

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