「膵臓がんの生存率」はご存知ですか?症状やステージ別の治療法も解説!
最近、腹痛や食欲不振があり体調が優れない日が続いていませんか。消化器官の不調と捉えがちですが、もしかすると膵臓がんの可能性があるかもしれません。
膵臓がんはがんの中でも発見しにくく、症状もあらわれないことが多いです。
そのため、膵臓がんがみつかった段階でかなり進行していたり、リンパ管や肝臓への転移がみられたりする場合があります。では、膵臓がんの生存率は一体どのくらいなのでしょうか。
本記事では、膵臓がんの生存率について症状やステージ別の治療法まで解説します。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
膵臓がんとは?
膵臓がんとは、膵臓内の中心部を通っている膵管の上皮細胞にできるがんを指します。膵臓がんは発症した段階からリンパ節や転移しやすいがんです。
他の臓器にも膵臓がんがあらわれることがあります。そもそも膵臓は胃の後方にある臓器で、外分泌機能と内分泌機能があります。外分泌機能は食物の消化を助ける膵液を作り出し分泌する機能です。
ほかにも内分泌機能として、血糖値の調整をするホルモンを作り出し分泌する機能があります。膵臓がんを発症すると膵液やホルモンの分泌が滞るようになり、その頃から症状として腹痛や糖尿病の発症がみられるでしょう。
また、膵臓がんは慢性膵炎や膵管内乳頭粘液性腫瘍などの膵臓関連の疾患に罹患すると発症リスクが高まります。
膵臓がんの生存率は?
膵臓がんは診断・治療が非常に難しいがんで膵臓がんと診断された時点で手術治療ができる状態が約20%とわずかです。
また、手術治療しても再発する可能性が高いのも膵臓がんの特徴です。では、膵臓がんの生存率はどのくらいなのでしょうか。詳しくみていきましょう。
早期診断で5年生存率が高まる
膵臓がんは早期診断で5年生存率が高まります。がんが膵臓内のみである場合は5年生存率が42.1%です。
ただし、症状があらわれないことも多く、臓器の中でも奥に位置していることから発見が難しいがんです。ほかの臓器への転移がしやすいがんでもあるため、早期に診断できると手術治療が可能になります。
治療が遅れた場合の生存率
膵臓がんの診断・治療が遅れた場合は5年生存率が下がります。
膵臓内のほかリンパ管への転移がみられた場合は12.4%、リンパ管のみならず隣接する肝臓や脾臓などへの転移がみられた場合は1.8%です。
隣接の臓器への転移がみられた場合は手術治療ができないケースが多いため、治療方法は抗がん剤がメインとなります。
術後再発した場合の生存率
膵臓がんは、手術治療が行われた後にがんが再発した場合の5年生存率は20〜40%です。
手術でがんを切除しても再発しやすいがんで、ほかのがんと比較しても術後に再発した場合の生存率は低いといえます。
膵臓がんの症状
膵臓がんの症状としては、腹痛・黄疸・体重減少があらわれます。
膵臓がんは初期段階ではほとんど症状があらわれず、発見される頃にはかなり進行しているケースが多くみられます。また、これらの症状はほかの病気にもよくみられる症状のため、膵臓がんとすぐに診断されない可能性も高いです。
では、それぞれの症状について詳しくみていきましょう。
腹痛
膵臓がんの症状としてあらわれるのが腹痛です。膵臓がんは膵管にがんができて発生するため、膵液が集まる主膵管が詰まってしまう可能性があります。
膵液の逃げ場がなくなり、膵管が拡張するため腹痛を伴います。膵管が拡張することで起こる膵炎は膵臓がんのサインの1つです。
黄疸
膵臓がんを発症すると黄疸の症状があらわれることがあります。
膵臓に隣接する肝臓で作られている胆汁は正常であれば十二指腸に運ばれていきます。しかし、膵臓がんにより胆汁の流れがせき止められるため、溜まった胆汁により全身に黄疸の症状があらわれるのです。
黄疸の症状としては肌が黄色くなる・白目が黄色っぽくなる・尿の色が濃くなるなどです。
体重減少
膵臓がんの進行により体重減少がみられる場合があります。膵臓にできた腫瘍が大きくなると周辺にある胃や大腸などを圧迫し始めます。
すると食欲が減退し、食事がとれなくなる可能性が高くなるでしょう。また、膵液の流れが滞ってしまうと、栄養を吸収できず体重減少につながる恐れがあります。
膵臓がんのステージ別の治療法
膵臓がんはがんの進行度でステージ1からステージ4に分類され、下記の通りとなります。
- 膵臓内で限局している場合はステージ1
- 腫瘍の一部が膵臓外に出ている場合はステージ2
- 動脈にがんの浸潤がみられる場合はステージ3
- 周辺臓器やリンパ節への転移がみられる場合はステージ4
ステージ1・2とステージ3・4では治療方法が異なります。それぞれの治療方法について詳しくみていきましょう。
ステージ1・2の場合
膵臓がんのステージ1・2の場合は、手術治療によるがんの切除と補助療法が行われます。
膵頭十二指腸切除手術は膵臓の頭部・十二指腸・胆のう・下部胆管を摘出する手術です。膵体尾部切除手術では、膵臓・膵臓周辺のリンパ節・脂肪・神経などを共に適出します。
膵頭十二指腸切除手術や膵体尾部切除手術は膵臓の一部にあるがんに対して行われます。膵全摘術は膵臓の全てを摘出する手術です。
膵臓内にある大きながんに対して行われる手術になります。手術の効果を高めるために手術前後で化学療法や放射線療法を行うのが補助療法です。
膵臓がんは再発しやすいがんのため、補助療法も組み合わせると再発する確率を引き下げられます。
ステージ3・4の場合
膵臓がんのステージ3・ステージ4の場合は、原則として化学療法がメインです。ステージ3の場合は化学療法だけを行う治療法と、化学療法と放射線治療を組み合わせる治療法があります。
化学療法は、薬剤を点滴または経口による投与です。化学療法で使用する薬剤は、全身状態や治療時の患者さんの年齢に応じて異なります。
膵臓がんの生存率についてよくある質問
ここまで膵臓がんの生存率について症状やステージ別の治療法などを紹介しました。ここでは「膵臓がんの生存率」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
膵臓がんの手術において合併症はありますか?
甲斐沼 孟(医師)
膵頭部には隣接している肝臓からの胆管が通っているため、がんによって胆管が狭くなり、胆汁が詰まってしまうことがあります。胆汁が流れないと肝機能障害や黄疸などの症状があらわれます。また膵管を通って流れる膵液もがんによって詰まってしまう可能性も高いです。膵液が溜まると膵臓が拡張し、ほかの臓器を圧迫し、食欲が減退することもあります。
膵臓がんに罹患した家族がいる場合は検査を受けるべきですか?
甲斐沼 孟(医師)
膵臓がんには明確な原因はありませんが、膵臓がんの家族歴がある場合も膵臓がん発生のリスクが高くなる要因の1つです。そのため、家族で膵臓がんに罹患した方がいる場合は、検査を受けることをおすすめします。
編集部まとめ
今回は膵臓がんの生存率について症状やステージ別の治療法まで解説しました。膵臓がんは症状がほとんどあらわれず、症状が出た段階ではステージが進行している可能性が高いです。
膵臓がんを早期発見した場合の5年生存率は42.1%とほかのがんと比べると低いです。また、手術にてがんを切除しても再発率が高く、再発した場合の5年生存率は20〜40%となっています。
膵臓がんはステージ1〜4まで分類でき、ステージ1・2は手術と補助療法を組み合わせた治療になります。手術が不可能なステージ3・4の治療法は化学療法や放射線療法がメインです。
膵臓がんは黄疸や糖尿病の発症といった特有の症状もみられることから、これらの症状がある場合はすぐに検査・診察してもらうことをおすすめします。
膵臓がんと関連する病気
「膵臓がん」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法などの詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
上記の関連する病気に罹患している場合は、膵臓がんが発生するリスクが高まります。加えて、喫煙・飲酒の習慣がある方や肥満体型の方はよりリスクが高くなるので、注意が必要です。
膵臓がんと関連する症状
「膵臓がん」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 腹痛
- 食欲不振
- 腹部膨満感(おなかが張る感じ)
- 黄疸
- 腰や背中の痛み
膵臓がんの症状は他の病気でもよくみられる症状が多いため、見分けがつきにくいです。また、進行していても症状が出ない場合もあります。糖尿病を患っている場合は急激に悪化する可能性があり、その症状によって膵臓がんが発覚するケースもあります。上記の症状以外にも体重減少がみられたら膵臓がんの可能性も考えられますので、医療機関を受診してみてください。