「悪性リンパ腫の首のしこりの特徴」はご存知ですか?症状についても解説!
「悪性リンパ腫」とはリンパ系のがんであり、首を含むリンパ節にしこりを形成することが特徴です。
血液にできる腫瘍にはさまざまな種類がありますが、悪性リンパ腫は日本人の成人が発症する頻度が高いといわれています。
本記事では、悪性リンパ腫による首のしこりの特徴をはじめ、症状や治療法について詳しく解説します。
本記事を通じて悪性リンパ腫の基本的な知識を深めるとともに、早期発見や早期治療につなげていただければ幸いです。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
悪性リンパ腫とは?
白血球の一種であるリンパ球は、体内における感染防御やがん細胞による攻撃に対抗する役割を担っています。悪性リンパ腫とは、このリンパ球が「がん化」する疾患です。
100種類を超える病型が存在し、症状としては首・脇の下・足の付け根のようなリンパ節の多い部位に腫れやしこりがあらわれるのが一般的です。
日本における悪性リンパ腫の患者さんは高齢者に多く見られ、高齢化に伴って発症者数も増加していく傾向にあります。悪性リンパ腫が何を原因として発症するのかは、まだ完全には明らかになっていません。
現状では、リンパ球の遺伝子異常やウイルス感染、免疫不全などが関与していると考えられています。
悪性リンパ腫の首のしこりの特徴
悪性リンパ腫の症状として大きな特徴といえるのが、リンパ節やリンパ組織にしこりや腫れを引き起こすことです。
首・脇の下・足の付け根といったリンパ節が集中する部位には特に症状が出やすいものの、ほとんど痛みはありません。しかし、リンパ球は体中に存在するため、あらゆる臓器に発生する可能性があります。
痛みがないからといって、決して楽観視できない病気です。以下では、悪性リンパ腫で発生する首のしこりの特徴について解説します。
痛みは伴わないことも多い
炎症によって発生する腫れは痛みを伴いますが、悪性リンパ腫によってできる首の腫れやしこりは、ほとんどの場合は痛みを伴いません。これは、リンパ節のしこりの原因が炎症ではなく、がん化したリンパ球の増殖によるものであるためです。
ただし、リンパ腫の進行やほかの症状の有無によっては痛みが伴うこともあります。
急速に大きくなる場合は痛みを伴う
悪性リンパ腫によるしこりは急に大きくなることがあり、この場合は痛みを伴う可能性があります。しこりが急に大きくなる原因としては、がん細胞の急速な増殖や周囲の組織への圧迫が挙げられます。
急激にしこりが増大するケースでは、悪性リンパ腫が進行しているおそれがあるため、早急な医療機関での診断と治療が必要です。
悪性リンパ腫の症状
悪悪性リンパ腫は、リンパ節やリンパ組織にしこりや腫れを引き起こすことが特徴です。しこりに気づいた患者さんが通院することで発見されるケースが多いものの、実はほかにもさまざまな自覚症状があります。
以下では、悪性リンパ腫が発症した場合の一般的な症状について解説します。
首・脇の下・太ももの付け根などのしこり・腫れ
首・脇の下・太ももの付け根などにはリンパ節が集中しており、悪性リンパ腫によるしこりや腫れが出やすい部位でもあります。いつの間にか首などに硬いしこりができ、気になって通院することで病気がわかるというケースが少なくありません。
また、しこりの大きさや数には個人差があり、進行に伴って大きくなることもあります。
発熱
悪性リンパ腫が発症すると、原因不明の発熱が起こる場合があります。発熱の原因と考えられるのは、がん細胞の活動による体の反応や、がんによる免疫系の影響です。
発熱は夜間や早朝に突然に出ることが多く、ほかの感染症との区別もつきにくいため診断が遅れることもあります。
発疹
リンパ腫細胞が皮膚組織に浸潤することによって、皮膚に発疹や腫瘤などの症状が引き起こされる場合があります。悪性リンパ腫による発疹の特徴は、赤みを帯びた斑点や腫れとしてあらわれることです。
皮膚に発生する症状が、悪性リンパ腫の診断の手がかりとなることもあります。
寝汗をかく
悪性リンパ腫を発症すると、体ががん細胞と戦う過程で体温調節に異常が出る可能性があります。体温調節に異常が出ることで引き起こされるのが、夜間の大量の寝汗です。
悪性リンパ腫による寝汗は、睡眠中に衣服やシーツがびしょ濡れになるほど激しく、日常生活に影響が出ることもあります。
体重減少
悪性リンパ腫によって、がん細胞の代謝活動が正常な体組織を圧迫すると、栄養吸収や消化機能に影響を及ぼして体重が減少します。
食欲不振や消化不良といった消化器官の症状と併せて現れることもあり、悪性リンパ腫の進行と同時に体重は減っていきます。
悪性リンパ腫の治療法
悪性リンパ腫の治療法は、リンパ腫の種類・進行度・患者さんの全身状態などにもとづいて選択されます。主な治療法として挙げられるのは、薬物療法・放射線治療・造血幹細胞移植です。
以下では、悪性リンパ腫の治療法について詳しく解説します。
薬物療法
薬物療法は悪性リンパ腫治療の主軸となっており、その中でも中心となるのが化学療法です。化学療法では複数の抗がん剤を組み合わせて使用することで、がん細胞の増殖を抑制します。
ホジキンリンパ腫に対してはABVD療法が、非ホジキンリンパ腫にはCHOP療法やR-CHOP療法を選択するのが一般的です。薬物療法は病理組織型や悪性度にもとづいて適切なものが選ばれ、数コースにわたって施行されます。
放射線治療
放射線治療は、がん細胞に直接放射線を照射することで、成長を抑制または破壊する治療法です。低悪性度のリンパ腫や限局期の中高悪性度リンパ腫に対して行われるほか、化学療法と併用されることもあります。
放射線治療は、病変が限定されている場合に特に有効とされています。
造血幹細胞移植
造血幹細胞移植とは、患者さん自身または適合するドナーから採取した健康な造血幹細胞を移植して骨髄機能を回復させる治療法です。再発する可能性が高い場合や難治性の悪性リンパ腫に対して選択されることがあります。
進行したリンパ腫や再発時には有効ですが、大量の抗がん剤を使用してがん細胞を根絶したうえで行うため、高いリスクも伴います。
悪性リンパ腫の首のしこりの特徴についてよくある質問
ここまで症状の特徴や対処法などを紹介しました。ここでは「悪性リンパ腫の首のしこりの特徴」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
悪性リンパ腫のしこりは首のどの位置にできやすいですか?
甲斐沼 孟(医師)
悪性リンパ腫による首のしこりができやすい場所は、首の側面や後ろにあるリンパ節です。リンパ節は感染や炎症に反応して腫れることが多い場所ですが、悪性リンパ腫の場合はがん化したリンパ球の増殖によって腫れます。悪性リンパ腫のしこりは硬く、痛みを伴わないことが多いのが特徴です。
悪性リンパ腫以外のがんで首にしこりができることはありますか?
甲斐沼 孟(医師)
悪性リンパ腫以外では、甲状腺がんや頭頸部がんなどによって首にしこりができることがあります。がんによってしこりができるのは、リンパ節への転移で形成されるためです。ただし、首のしこりは必ずしもがんによるものとは限らず、感染症やほかの炎症性疾患による場合もあります。
編集部まとめ
悪性リンパ腫は、がん細胞の増殖によって首・脇の下・足の付け根のようなリンパ節の多い部位にしこりができるのが特徴の病気です。
しこりのほかにも、発熱・発疹・寝汗・体重減少といった自覚症状が出ることがあります。
悪性リンパ腫の予後を左右するのは、早期発見と適切な治療です。症状が進行しても治療は可能ですが、再発などのリスクも高くなってしまいます。
首のしこりをはじめ、気になる症状があった場合は早めに医療機関を受診して適切な治療を受けましょう。
悪性リンパ腫と関連する病気
「悪性リンパ腫」と関連する病気は8個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
悪性リンパ腫はリンパ系のがんであり、リンパ球が異常増殖することで発生します。リンパ組織は全身に存在するため、皮膚や臓器などさまざまな部位に発症する可能性があることも特徴です。
さらにリンパ組織以外の臓器にも発生するため、異常を感じたら早めに医療機関を受診しましょう。
悪性リンパ腫と関連する症状
「悪性リンパ腫」と関連している、似ている症状は5個ほどあります。
各症状・原因・治療法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- リンパ節の腫れ
- 発熱
- 激しい寝汗
- 体重減少
- 疲労感
悪性リンパ腫の主な症状は、リンパ節の腫れです。特に首・脇の下・足の付け根といったリンパ節が腫れることが多く、痛みを伴いません。悪性リンパ腫が進行すると、発熱・体重減少・夜間の発汗といった全身症状があらわれることがあります。風邪の諸症状と混同されることもありますが、異常を感じたら早めの受診が必要です。