「直腸がん・ステージ4」の症状・治療法はご存知ですか?【医師監修】
直腸がんは大腸中でも肛門に近い直腸にできるがんで、日本人の死因の中で上位を占めている注意すべき病気です。
がんの進行度合いにはステージ1~4があります。直腸がんのステージ4にはどのような特徴があるのでしょう。今回は、直腸がんステージ4の特徴と検査法や治療法も解説します。
この記事を参考にして、いざというときに備えてください。もし、本記事で当てはまることがあれば医療機関の受診をおすすめします。
監修医師:
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)
目次 -INDEX-
直腸がんとは?
直腸がんとは直腸のがんです。大腸は、結腸と直腸よりなります。
結腸がんと直腸がんを合わせたものが大腸がんです。直腸は、肛門から10~15cm程度の長さの臓器で結腸で作られた糞便を一時的に溜める働きをしています。
日本のがん種別死亡率で見ると、大腸がんは男性が第3位、女性は第1位となっています。日本人の死因の上位になっている注意が必要な病気です。
体内でがんが広まり別の臓器への転移の可能性がある
直腸がんは直腸に接しているほかの臓器や、離れている臓器に転移する可能性があります。直腸がんは直腸の粘膜に生じるがんです。
放置していると粘膜に生じたがんはどんどんと粘膜から粘膜下層・固有筋層・漿膜下層または外層・漿膜へと進んでいきます。
すると、直腸と接している他臓器に達して転移するのです。直腸がんはリンパや血液に乗って移動して直腸と離れた場所のほかの臓器に転移することもあります。
予後不良に加え生存率は低い傾向にある
直腸がんは、再発率が高く予後不良であるといわれています。
また、生存率が低いという結果もあるがんです。直腸がんは、その進行度合いに応じて4つのステージに分けられています。
- ステージ1:がんが固有筋層にとどまっている状態
- ステージ2:がんが固有筋層の外まで浸潤している状態
- ステージ3:リンパ節転移がある状態
- ステージ4:血行性転移(肺転移・肝転移)または腹膜播種がある状態
各ステージにおける5年生存率(相対生存率)を見ると、ステージ1で97.8%でステージ2で90.2%、ステージ3で85.8%です。
しかしステージ4になると27.3%と低くなります。つまり、直腸がんは進行すると生存率が低い傾向にある病気なのです。
原発巣や転移巣の状態によって治療対応が分かれる
最初にがんが生じた場所を「原発部位」といい、その病巣が「原発巣」です。原発巣にあったがん細胞は、リンパや血液の流れにより別の場所に運ばれることがあります。
運ばれたがん細胞が別の場所に生着してできた病巣が「転移巣」です。直腸がんの治療には「原発巣」と「転移巣」の状態に応じた治療対応がとられます。
ステージ1~3においては、がんを切除できれば腹腔鏡下手術や開腹手術が一般的です。ステージ4の大腸がんにおいては、原発巣はもちろん転移巣の切除も重要で、両方切除可能な場合は両方切除する手術がすすめられるでしょう。
しかし、転移巣は切除可能で原発巣の切除が不可能な場合もあります。この場合は、薬物療法・放射線治療など手術以外の方法が原則的な治療法です。
逆に原発巣は切除可能で転移巣の切除が不可能な場合は、原発巣の切除手術をすることもあります。転移巣が切除不可能な場合に、薬物療法や放射線治療の実施も一般的です。この薬物治療で効果が出て転移巣の切除手術が可能になる場合もあります。
直腸がんのステージ4の症状
直腸がんのステージは1~4まであり、症状は前項で述べたとおりです。直腸がんは、初期ではあまり自覚できる症状がありません。しかし、進行してくると以下のような症状が出ます。
- 腹痛
- 便秘
- 下痢
- 体重減少
腹痛
がんが進行して大きくなると、大腸内を通る便の通行を妨げるあるいは出血を起こします。これが腹痛の原因です。
直腸は便を一時的に溜める役割を果たしているため、直腸部分の便の通りが悪くなると腹痛のほか嘔吐も起こしやすいといわれています。
便秘
がんが進行して大きくなり、便の通りが悪くなることが便秘の原因です。残便感をおぼえる患者さんもいます。
下痢
直腸がんが進行すると下痢も起こります。直腸が狭くなってしまうのが原因です。便秘と下痢を交互に繰り返す場合もあります。
体重減少
直腸がんが進行すると成長するがんが体の栄養を奪い、体重が減少する場合もあります。
直腸がんのステージ4で行う検査法
直腸がんのステージ4では、「CT画像」や「大腸内視鏡検査」を行います。
CT画像
CTは患者さんの体に周囲からX線を照射して得た情報から体の断面の画像を構成する装置です。直腸がんを含む大腸がんの検査で行うCT画像検査では、がんが大腸の壁のどこまで達しているのか(浸潤しているのか)を検査しています。
また、CT画像検査はがんがリンパに乗って移動して形成するリンパ節の検査も可能です。確定診断は、両者とも組織を採取して顕微鏡で検査する病理検査で行います。
大腸内視鏡検査
大腸内視鏡検査では、結果からがんが大腸の内壁のどこまで達しているか(深達度)をある程度予想できます。
大腸内視鏡検査の際に、鉗子で組織を採取することも可能で病理医が顕微鏡診断する生検も実施可能です。
直腸がんのステージ4で行う治療法
直腸がんのステージ4の治療は、以下の3つの治療法から標準治療を基本として適したものを実施します。
- 手術療法
- 対症療法
- 放射線治療
治療方法は標準治療を基本とし、患者さん本人の希望・生活環境・体の状態などを総合的に検討して担当する医師と話し合って決定します。
手術療法
肝臓・肺などのがんの病変(転移巣)が切除可能で、原発巣も切除可能な場合は手術療法を行います。
転移巣が切除できない場合でも薬物療法で切除可能な状態になれば、手術療法が可能です。
対症療法
直腸がんのステージ4はがんが肝臓・肺などに転移している可能性が高い状態です。肝臓に転移している場合、可能であれば切除されます。
しかし、全身状態が不良(PS3以上)な状態あるいは薬物療法で有効な薬剤がない場合は対症療法をすすめられるでしょう。
再発した場合も切除できない場合には、体の状態・再発した部位に応じて対症療法をすすめられることもあります。
なお、「PS」とは「パフォーマンスステイタス」の略で患者さんの全身状態を示す指標です。
放射線治療
放射線治療は、転移しているがんが切除可能であっても原発巣の切除が不能な場合に行われる治療方法です。放射線治療には2種類あります。
- 補助放射線治療:骨盤内での直腸がんの再発を抑える目的で行う治療
- 緩和的放射線治療:がんの再発や転移による痛み・吐き気・嘔吐・めまいなどの症状を和らげる目的で行う治療
直腸がんで起こりやすい術後合併症について
直腸がんの手術を受けた場合に起こりやすい術後合併症は、「腸閉塞」と「創部感染」です。
腸閉塞
腸閉塞は、腸の炎症による癒着などによって腸管の通りが悪くなった状態です。
患者さんによって差はありますが、腸管と腹壁やほかの腹腔内臓器との癒着が起こります。
おなかの痛み・吐き気・嘔吐などが主な症状です。食事をとらずに点滴をしたりチューブを入れて胃液や腸液を出したりする処置で回復するケースがほとんどです。回復しない場合は、手術が必要なこともあります。
創部感染
直腸がんの手術の術後は、手術時にできた創の縫合部が細菌などにより感染する創部感染を起こしやすい状態です。
症状として代表的なのは、赤く腫れて膿が出る・痛み・発熱などの症状になります。創部感染の治療法は、抜糸する・皮膚を切開して膿を出す・抗生物質を使用することなどです。
直腸がんのステージ4についてよくある質問
ここまで直腸がんステージ4の特徴や検査法・治療法などを紹介しました。ここでは「直腸がんステージ4」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
ストーマとはどのようなものですか?
中路 幸之助(医師)
ストーマとは、手術でお腹に作った便や尿を排泄する出口です。
治療のうえで肛門を温存できない場合もあります。そこで、ストーマを設け肛門の代わりとなる出口を作るのです。
ストーマと聞いて機械をイメージされるかもしれませんが、ストーマは患者さんの腸を腹壁に出したもので粘膜になります。
がんの深達度とは何ですか?
中路 幸之助(医師)
深達度は、がんが大腸の腸管壁のどこまで深く入り込んでいるかを示すものです。
この深達度とリンパ節転移および遠隔転移の3つの要素によりがんのステージが決まっています。
大腸の内壁の構造は、内側から粘膜・粘膜下層・固有筋層・漿膜下層または外層・漿膜です。
深達度はがんがこれらのどこまで達しているかを示しており、TX・T0・Tis・T1(T1a・T1b)・T2・T3・T4a・T4bに分かれています。
編集部まとめ
ここまで直腸がんのステージ4について解説してきました。ステージ4だからといって治療方法が無い訳ではなく、希望を持った方もいるでしょう。
直腸がんは初期に自覚症状がないことから気づきにくいがんですが、早期に発見できれば完治も可能です。大腸がん検診を受けて早期に発見することを心がけましょう。
ご自身やご家族で便の調子が悪いといった症状がある場合は、医療機関を受診してください。
直腸がんと関連する病気
「直腸がん」と関連する病気は3個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
これらの病気がある人は直腸がんを含む大腸がんになりやすいといわれています。
直腸がんと関連する症状
「直腸がん」と関連する症状は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
このほか、便に血が混じったり便の表面に血液が付着するなどがあります。気をつけましょう。