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「直腸がんの生存率」はご存知ですか?検査・治療法も解説!【医師監修】

 公開日:2024/01/22
「直腸がんの生存率」はご存知ですか?検査・治療法も解説!【医師監修】

直腸がん」は大腸の中でも直腸に発生するがんであり、日本人の罹患率が高いとされています。他人事で済ませるわけにはいかない病気だからこそ、詳しく知っておくことが重要です。

本記事では、直腸がんになった場合の進行段階ごとの生存率や、具体的な治療法・検査方法などを解説します。関連する症状なども記載していますので、気になる症状がある方はご確認ください。

がんは、早期発見・早期治療が重要です。本記事が、身近にあるがんから皆様やご家族を守るための一助となれば幸いです。

中路 幸之助

監修医師
中路 幸之助(医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター)

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1991年兵庫医科大学卒業。医療法人愛晋会中江病院内視鏡治療センター所属。米国内科学会上席会員 日本内科学会総合内科専門医。日本消化器内視鏡学会学術評議員・指導医・専門医。日本消化器病学会本部評議員・指導医・専門医。

直腸がんの生存率

直腸がんは日本人の罹患率が高いとされるがんの一つであり、現在健康だからといって他人事ではない身近な病気です。実際にがんになった場合に多くの方が気にされる情報が「生存率」です。
こちらでは、直腸がん以外の病気による死亡を除いて計測した「相対生存率」をステージ別で解説していきます。以下で解説する数値はあくまで統計に基づくものであり、実際の生存率は患者さん一人ひとりの状況によって異なります。

0期:粘膜内にとどまる

「ステージ0期」とは、がん細胞が直腸壁の内側の層である粘膜内に存在している状態です。
この時点では、がん細胞はまだリンパ節など周囲の正常組織には拡がっておらず、切除した場合の5年相対生存率は99%といわれています。早期発見と適切な治療によって治癒する可能性が高い段階です。

I期:固有筋層にとどまる

「ステージI期」とは、がん細胞が直腸壁の内側にある粘膜から筋膜の下層まで拡がっている状態を指します。
まだリンパ節への転移はないため、この段階で治療ができた場合の5年相対生存率は94.5%と依然高くなっています。0期より進行しているものの、早期発見と適切な治療によって治癒する可能性が高い状態だといえるでしょう。

II期:固有筋層の外まで浸潤

「ステージII期」とは、がん細胞が直腸壁の外側の層に拡がった状態から、隣接する臓器にまで拡がった状態を指します。
まだリンパ節への転移はなく、がんがこのステージまで進んだ場合の5年相対生存率は88.4%となっています。I期よりも数値は下がりますが、決して低くはない生存率です。

III期:リンパ節転移を伴うもの

「ステージIII期」とは、がん細胞が粘膜組織の下層まで及び、1~7ヶ所以上の隣接リンパ節に転移している状態です。
このステージからリンパ節まで転移が見られるようになり、5年相対生存率も77.3%まで低下します。リンパ節への転移の有無は、治療方針や予後に大きく影響するといわれています。

IV期:腹膜播種 血行性転移(肝臓・肺)

「ステージIV期」とは、がんにおける最終ステージを指します。がん細胞が隣接する臓器やリンパ節に拡がり、直腸の近くではない場所にある肝臓や肺といった臓器や遠隔リンパ節にも転移している状態です。
IV期まで進行すると、5年相対生存率は18.7%と大幅に低下します。ただし、医療の進歩によって治療の選択肢は増加しており、困難ではあるものの治療も可能です。

直腸がんの検査方法

発症した直腸がんがどの程度進んでいるのか、また現在どの位置にあるのかといった情報を得るためには適切な検査が必要です。患者さんの状態やがんの進行に応じた検査方法を選択することで、直腸がんの診断と治療計画の策定に役立ちます。
こちらでは、直腸がんの検査方法として一般的な「CT・MRI」と「内視鏡検査」について解説します。

CT・MRI

CT検査は、X線を使用してがんの状態を解析する方法です。
画像は通常のX線写真と比べて体内で発生した腫瘍の位置や拡大状況、血管の状態なども詳しく鮮明に描かれ、周辺組織への転移の有無なども判断できます。
MRI検査は、強力な磁気を利用して体内の詳細な画像を作成する方法です。患部を細かな輪切り画像で確認でき、脊椎や骨なども断面で撮影できるためCT検査ではわかりにくい部分まで検査ができます。

内視鏡検査

内視鏡検査は、先端にカメラが装着された管を肛門から挿入することで、消化器の粘膜を直接観察する方法です。
カメラによって大腸の内部を詳細に観察しながら、実際の腫瘍の状況や位置、大きさなどを確認できます。さらに、内視鏡を使用して組織のサンプルなども採取できるため、大腸がんの診断において非常に重要度の高い検査といえます。

直腸がんの治療方法

直腸がんの主な治療方法として挙げられるのは、化学療法・放射線療法・手術・内視鏡治療の4種類です。
治療方法の選択肢は、がんの進行度だけでなく患者さん一人ひとりの症状や健康状態によって異なり、複数の治療法を組み合わせる場合もあります。こちらでは、4つの治療方法について解説します。

化学療法

抗がん剤を使用してがん細胞を攻撃する治療法を、「化学療法」といいます。
直腸がんを含めた大腸がんの治療方法は、がんを切除することが原則です。そのため、化学療法が適用されるのは手術後の再発を防ぐことを目的とした「補助化学療法」や、進行してしまったがんや再発したがんの進行を遅らせるためとなります。

放射線療法

高エネルギーの放射線をがん細胞に照射することで破壊する治療法が「放射線療法」です。
放射線療法を選択することでがん細胞を直接攻撃して縮小させられるほか、まだがんに侵されていない周辺組織への影響を最小限に抑えられます。
直腸がんに放射線療法を採用する場合、がん細胞の縮小や手術が困難な場合の症状緩和が目的となります。

手術

直腸がんの治療は原則として「がん細胞の切除」であり、手術が基本となります。
ステージ0期やI期の早期のがんであれば内視鏡を用いた切除が可能ですが、進行がんの場合は腹腔鏡手術や開腹手術が基本です。実際におこなう手術の内容は、がんの位置や大きさ、進行度によって変わります。

内視鏡治療

肛門から内視鏡を挿入して、がんを直接確認しながら切除する方法が内視鏡治療です。
内視鏡治療は開腹手術などと比べて患者さんの負担が少なく、回復も早いという利点がありますが、早期のがんでなければ対応できない場合もあります。内視鏡治療で採用される技術として挙げられるのは、内視鏡的粘膜切除(EMR)や内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)などです。

直腸がん以外の大腸がんの種類について

「大腸がん」と呼ばれるがんには2種類あり、直腸がん以外の大腸がんとして「結腸がん」が挙げられます。結腸がんは大腸の結腸部分に発生するがんで、病変ができる詳細な部位は以下のとおりです。

  • 虫垂
  • 盲腸
  • 上行結腸
  • 横行結腸
  • 下行結腸
  • S状結腸

大腸の粘膜に腺腫と呼ばれる良性の腫瘍ができることがありますが、腺腫から結腸がんが発生するパターンが多々あります。
がんの分類はさまざまですが、結腸がんは腺がん・扁平上皮がん・腺扁平上皮がんの3種類に分類され、腺がんが大部分を占めます。

直腸がんの生存率についてよくある質問

ここまで直腸がんの生存率や周囲の臓器への転移などを紹介しました。ここでは「直腸がんの生存率と転移」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

直腸がんステージ1の生存率は?

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

直腸がんのステージI期は、がんが直腸壁の内側にある粘膜にだけ形成されている状態で、まだ初期段階です。I期で適切な治療を受けられた場合は成功率が高く、がん以外の病気での死亡を除いた「相対生存率」で考えた場合、5年相対生存率は94.5%と非常に高くなっています。早期発見・早期治療が生存率を高める鍵だといえるでしょう。ただし、初期の直腸がんは自覚症状が出にくいため、定期健診を受けることをおすすめします。

直腸がんは転移しますか?

中路 幸之助医師中路 幸之助(医師)

直腸がんは、進行することで他の臓器へ転移する可能性があります。特に多いとされているのが、リンパ節や肝臓、肺への転移です。転移のリスクは直腸がんのステージによって異なり、I期ではまだ転移は見られませんが、がんが進行することで転移の可能性は高まります。もしリンパ節や他の臓器への転移があった場合、治療内容が複雑になるだけでなく生存率も低下する傾向にあります。転移を防ぐために重要なのは、早期発見・早期治療です。

編集部まとめ

本記事では、直腸がんの生存率をはじめ、治療方法や検査方法、大腸がんの種類について解説しました。

直腸がんは日本人の発症が多い病気ではありますが、早期発見によって治癒する可能性も高いことが特徴です。ただし、初期は自覚症状がない場合も多いため定期的な検診を受けましょう。

本記事では直腸がんの主な症状についても解説していますが、ご自身やご家族に当てはまる症状がある場合は、早めに医療機関に相談することをおすすめします。

「直腸がん」と関連する病気

「直腸がん」と関連する病気は4個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

上記のような遺伝性の病気のほか、大腸の粘膜に炎症や潰瘍ができる病気がある方は、直腸がんにかかるリスクが大きいとされています。直腸がんと関連する病気をお持ちの方は、定期的な検診で早期発見・早期治療を心がけましょう。

「直腸がん」と関連する症状

「直腸がん」と関連している、似ている症状は7個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

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  • 腹部のしこり
  • 血の混じった便や黒色の便
  • 便秘・下痢の繰り返し
  • 細い便
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  • だるい・息切れ・動機などの貧血症状

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