「レントゲン検査で肺がんを疑う形状」はご存知ですか?治療法も解説!【医師監修】
肺がんを診断する方法の1つとして「画像診断」が挙げられます。画像診断の中でも、多くの方が経験のある検査が「レントゲン検査」でしょう。
レントゲン検査は昔からある一般的なX線検査であり、短時間で簡単に体の中の状態を写し出せます。確かに利便性の高い検査ですが、2次元的な平面画像のため、ほかの画像検査よりも診断が難しい場合があります。
では、肺がんを胸部レントゲン(胸部X線)検査で発見するのは可能なのでしょうか。
今回の記事では、レントゲン検査で肺がんを疑う場合・レントゲン検査以外で肺がんを調べる検査・治療方法などについて解説します。
肺がんを疑うときにどのような検査をすればいいのか気になる方は、ぜひ最後までお読みいただけると幸いです。
監修医師:
甲斐沼 孟(上場企業産業医)
目次 -INDEX-
肺がんとは?
肺がんとは肺にできるがんです。気管支や肺胞の細胞がなんらかの原因でがん化して発症します。肺がんの発症率は年々高まっており、全がん種のうち2番目に罹患者数が多いがんです。
肺がんを発症する主な原因は「タバコ」だといわれています。タバコを吸うことで肺細胞の遺伝子が傷つき、がん化に繋がるのです。肺がんは早期に治療したほうが生存率が高まるため、早期発見が非常に重要です。
レントゲン検査などの各種検査を受けて、早期発見に役立てましょう。
肺がんのレントゲン(胸部X線)検査について
胸部レントゲン(胸部X線)検査は、肺がんなどの胸部に関する病気の発見に役立ちます。肺がん検診や健康診断で、胸部レントゲン検査を受けた経験がある方は多いでしょう。
胸部レントゲン検査は、肺がん・肺結核・肺炎などの肺の異常のほか、心肥大や大動脈瘤といった胸部の病気発見に役立ちます。以下で肺がんのレントゲン検査について解説します。
肺がんの疑いを確認する
胸部レントゲン検査では、肺がん疑いの有無を確認できます。レントゲン検査は、X線と呼ばれる放射線を体に照射し、体を透過したX線の差を利用して画像を得る検査です。
もし肺の中にがんや炎症などの異常があった場合、この箇所はX線が通りにくい部位となるため、白く写し出されます。しかし、胸部レントゲン検査では2cm以下の肺がんを発見するのは難しいとされています。
肺がんを疑う形状か確認する
胸部レントゲン検査では、写し出された陰影の形状から、肺がんの疑いがあるかを確認できます。
胸部レントゲン画像において、肺がんは白っぽく丸い形状(結節影)で写ります。しかし、このような形状の影があるからといって、必ずしも肺がんだとは限りません。
なぜなら、良性腫瘍などのほかの病気にも結節影を示すものがあるからです。そのため、結節影などの異常を認めた場合には、 CT検査や血液検査などのより詳しい検査を行うのが一般的です。
検査時間が短いのが特徴
胸部レントゲン検査はほかの画像検査と比べ、検査時間が短いのが特徴です。撮影は数秒で終わります。
そのため、着替えの時間を含めても、検査時間は5分程度でしょう。簡単に素早く検査ができ、胸部の異常を確認できるのが大きなメリットといえるでしょう。
そのほかに行われる検査は?
肺がんが疑われる際の画像検査として、胸部レントゲン検査のほかに「CT検査」や「PET−CT検査」が行われます。
また、肺がんかどうか確定診断するための検査として「気管支鏡検査・生検」「経皮的生検」といった検査が行われるでしょう。以下で詳しく解説します。
肺がんが疑われたときに行う検査
肺がんが疑われたときに行う検査として「CT検査」が挙げられます。CT検査はレントゲン検査と同じく、X線を利用して画像を得る検査方法です。
違いは体を輪切りにした「断層画像」が得られる点です。CT検査で得られる断層画像は肺を輪切りにした画像であるため、肺内部の細かな情報が得られます。
そのため、レントゲン検査では発見が困難な2cm以下の肺がんであっても、CT検査ならば発見可能です。
肺がんの確定診断のための検査
肺がんの確定診断のための検査として「気管支鏡検査」「経皮的針生検」が挙げられます。
気管支鏡検査は、気管支に内視鏡を挿入し、病変部を直接確認・生検する検査方法です。気管支鏡検査に用いられるのは、直径5mm程の非常に細い内視鏡です。
これにより、直径5mm程度の亜区域気管支まで観察でき、病変部の組織・細胞・分泌物などの採取ができます。肺がんを疑う箇所まで内視鏡が届かない場合には、体の外から針を刺して細胞や組織を採取する「経皮的針生検」が行われるでしょう。
がんの広がりを調べるための検査
がんの広がりを調べるための検査として「PET−CT検査」「MRI検査」「骨シンチグラフィ」が挙げられます。
PET−CT検査とは、PET装置とCT装置をひとまとめにした検査装置を使って検査する方法で、肺がんの転移などを調べる際に役立ちます。
このほか「MRI検査」や「骨シンチグラフィ」を用いて、骨への転移の有無を調べる場合もあるでしょう。
治療薬を検討するための検査
肺がんの治療薬を検討するための検査として挙げられるのが「がん遺伝子検査」「PD−L1検査」です。
がん遺伝子検査は、がんの発生や進行に影響する遺伝子に異常があるか調べる検査で、分子標的薬という治療薬を選択する際の判断材料となります。
また、免疫抑制に関わる「PD−L1」の有無を調べる「PD−L1検査」が行われる場合もあり、肺がん治療薬の1つである「免疫チェックポイント阻害薬」の治療効果を予測するのに役立ちます。
肺がんの治療方法は?
肺がんの治療方法には、薬物療法・放射線療法・手術の3つがあります。
どの治療方法を選択するかは、病期(ステージ)・患者さんの状態・肺がんの種類などによって決まります。病期によっては、いくつかの治療方法を組み合わせて治療にあたる場合もあるでしょう。ここでは、それぞれの治療方法について詳しく解説します。
薬物療法
肺がんの薬物療法で使用する薬は、大きく分けて「抗がん剤(細胞障害性抗がん薬)」「分子標的薬」「免疫チェックポイント阻害薬」の3種類です。どの薬を使用するかは、肺がんの種類や病期から判断します。
肺がんは「非小細胞がん」「小細胞がん」の2種類に大きく分けられます。このうち、薬物療法が治療の中心となるのが小細胞がんです。
また、非小細胞がんの治療においても、手術後の再発・転移予防として薬物療法が用いられます。このほか、放射線治療との併用で治癒が見込まれる場合・手術が困難な場合にも薬物療法が適用されます。
放射線治療
放射線治療は、大線量の放射線をがん細胞に照射し、攻撃する治療方法です。
手術のように体を切る必要がないため、全身状態があまり良くない・高齢である、などの理由で手術が難しい患者さんにも適応できる治療方法です。また、薬物療法と併用する「化学放射線療法」は高い効果が期待できます。
手術
手術は、がんが発生した箇所を周りの臓器ごと切除し、がんを取り除く治療方法です。
手術には、胸を切り開いてがんを切除する「開胸手術」と、胸腔鏡を用いて行う「胸腔鏡手術」があります。
また、基本的な手術の種類としては、がんが発生した肺葉を切除する「肺葉切除術」が挙げられます。肺葉切除術と同時に周囲のリンパ節を切除する「リンパ節郭清」を行うのが、標準的な肺がん手術です。
肺がんのレントゲン検査についてよくある質問
ここまで肺がんのレントゲン検査・そのほかの検査方法・肺がんの治療方法などを紹介しました。ここでは肺がんのレントゲン検査についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
肺がんはレントゲン検査で見つかりやすいのですか?
甲斐沼 孟(医師)
レントゲン検査で2cm以下の肺がんを見つけるのは困難だとされています。そのため、早期の肺がんをレントゲン検査だけで見つけ出すのは難しいでしょう。早期の肺がん発見にはCT検査が役立ちます。
レントゲン検査の被ばくのリスクを教えてください。
甲斐沼 孟(医師)
一般的な胸部レントゲン検査は、1回あたり0.02〜0.1mSV(ミリシーベルト)の被ばく量とされています。なお、人体の健康に影響する1回の被ばく量は100mSVとされています。これは、胸部レントゲン検査の100倍の量です。このように、レントゲン検査の被ばく量は非常に少なく、ほとんどリスクはありません。
編集部まとめ
通常の胸部レントゲン検査で早期の肺がんを見つけ出すのは難しいです。しかし、レントゲン検査を受ける意義はあります。
CT検査と比べて被ばく線量が少なく、短時間で簡単に検査が終わるので、ほかの画像検査よりも定期的な検査を受けやすいです。
また、もし異常が見つかれば、さらに詳しい検査を行うきっかけとなります。そのため、肺がんに限らずなんらかの病気を疑う際にまず行う検査として、レントゲン検査は非常に有効です。
レントゲン検査で異常を指摘された場合や、検査後しばらく経っても症状が改善されない場合には、より詳しい検査を受けましょう。
肺がんと関連する病気
「肺がん」と関連する病気は14個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
肺がんと症状や画像所見が似ている疾患として上記が挙げられます。これらの疾患と肺がんの鑑別が必要です。レントゲン上では肺膿瘍や過誤腫などと肺がんを見分けるのは難しいため、CT検査などでより詳しく調べる必要があります。
肺がんと関連する症状
「肺がん」と関連している、似ている症状は10個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
肺がんに特徴的な症状というものはありません。一般的な風邪症状と同じような発熱・咳・痰などが肺がんによる症状である場合もあります。これらの症状が長引く場合には、早めに医療機関を受診して、詳しい検査を受けましょう。