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「肺がんステージ3」の症状・治療法はご存知ですか?発症しやすい人の特徴も解説!

 公開日:2024/02/26
「肺がんステージ3」の症状・治療法はご存知ですか?発症しやすい人の特徴も解説!

初期段階では症状が出にくく、早期発見が難しいとされている肺がんですが、ステージ3とはどのようなものなのでしょうか。

もしステージ3と診断された場合、「手術は可能なのか」「5年生存率は?」などが気になります。

その疑問にお答えするため、ここでは肺がんのステージ3における症状や診断方法・治療方法について、詳しく解説します。

記事の後半では予防方法についても触れていますので、少しでも参考にしていただけたら幸いです。

甲斐沼 孟

監修医師
甲斐沼 孟(上場企業産業医)

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大阪市立大学(現・大阪公立大学)医学部医学科卒業。大阪急性期・総合医療センター外科後期臨床研修医、大阪労災病院心臓血管外科後期臨床研修医、国立病院機構大阪医療センター心臓血管外科医員、大阪大学医学部附属病院心臓血管外科非常勤医師、大手前病院救急科医長。上場企業産業医。日本外科学会専門医、日本病院総合診療医学会認定医など。著書は「都市部二次救急1病院における高齢者救急医療の現状と今後の展望」「高齢化社会における大阪市中心部の二次救急1病院での救急医療の現状」「播種性血管内凝固症候群を合併した急性壊死性胆嚢炎に対してrTM投与および腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行し良好な経過を得た一例」など。

肺がんとは?

肺は胸部の左右にひとつずつありますが、右肺は3つに、左肺は2つに分かれています。肺がんは、それらの肺胞の細胞・気管支・気管に、何らかの原因で発生してしまった悪性腫瘍です。
肺がんは大きく分類すると「小細胞肺がん」「非小細胞肺がん」に分かれます。そして非小細胞肺がんは、 腺がん・扁平上皮(へんぺいじょうひ)がん・大細胞がんなどに分類されます。それぞれどんな特徴があるのか、みてみましょう。
小細胞肺がんは以下の通りです。

  • 小細胞がん:肺門・肺野ともに多く発生します。増殖が速く転移しやすい特徴があり、喫煙との関連が大きいといわれます。

非小細胞肺がんは以下の通りです。

  • 腺がん:肺野に多く発生し、肺がんのなかで最も多くの罹患者がいます。症状が出にくく、ドライバー遺伝子変異が多いのが特徴です。(ドライバー遺伝子とは発がん・がんの悪性化において、直接的な原因となるような遺伝子のこと)
  • 扁平上皮がん:肺門・肺野ともに多く発生します。喫煙との関連が大きく、咳や血痰などの症状が現れやすいのが特徴です。
  • 大細胞がん:肺野に多く発生し、増殖が速いのが特徴です。

肺がんのステージ3について

がんのステージ(病期)とは、がんの進行の程度を示しています。肺がんの場合は、がん細胞のできた場所・大きさ・進行度などを診断してステージ(病期)が決まります。肺がんのステージを決定するには、TNM分類が主に使用されますが、それぞれのアルファベットが表わす意味は以下の通りです。

  • Tumor(腫瘍の大きさと位置)
  • Nodes(リンパ節への転移の有無)
  • Metastasis(体の他の部位への転移の有無)

T・N・Mの分類が決定されると、それらの組み合わせでステージ(病期)が決定します。通常がんのステージは、最も初期段階である0期からI期・II期・III期・最も進行した段階のIV期と定義されます。段階的にみて、肺がんのステージ3は進行がんといえるでしょう。腫瘍そのものが大きくなり、ほかの臓器に転移や浸潤(がんが周囲の臓器に入り込むこと)がみられる場合が多いのです。
ステージ3は、さらに以下のようなA期・B期・C期の3期に分けられています。判断基準となる病期ごとの症状は代表的なものです。

  • A期:横隔リンパ節に転移がある。腫瘍が周囲に浸潤し、肺門部リンパ節に転移がある。
  • B期:反対側の縦隔や、鎖骨の上あたりにあるリンパ節への転移がある。腫瘍が周囲に浸潤し、縦隔リンパ節への転移がある。
  • C期:反対側の縦隔や、鎖骨の上あたりにあるリンパ節への転移がある。大きさを問わず横隔膜、縦隔などへの浸潤がある。異なった肺葉内で離れたところに腫瘍がある。

主な症状

肺がんのステージ3では、リンパ節や胸膜に転移していることが多いため、以下のような症状が現れることがあります。

  • 咳・痰
  • 胸の痛み
  • 息苦しさ
  • 発熱
  • 声のかすれ
  • 嚥下障害
  • 顔・首・腕の腫れ

転移の有無

肺がんは進行すると、まわりの組織を壊しながら増殖して、他の臓器に転移することがあります。
ステージ3では、がんが肺の周りの組織や重要な臓器に広がっている、または離れたリンパ節にも転移している場合が多いのです。転移しやすい場所はリンパ節のほか、以下のような場所です。

  • 反対側の肺
  • 肝臓
  • 副腎

転移の有無を調べるためには、胸部・腹部・脳のCT(またはMRI)検査をします。そして検査によって得られた画像を組み合わせることで、転移があるかどうかを判定します。

5年生存率

肺がんのステージ1では約83.3%・ステージ4では約7.1%・肺がん全体では約34.9%とされている中、ステージ3の5年相対生存率は約28.3%といわれています。

肺がんステージ3の診断方法

肺がんの場合、がん細胞のできた場所・大きさ・進行度などによってステージ(病期)が決まります。ここでは、ステージ3であるかどうかを調べるための検査方法について説明していきましょう。

X線・CT・MRIなどの画像検査

肺がんが疑われる時は、まず胸部X線検査を行います。そして、がんを疑う影が見えるなどの異常がみられた場合は胸部CT検査をします。がんが疑われる病変の有無や、場所を調べるための検査です。さらに頭部や骨など他の臓器に転移しているかどうかを確認するにはMRI(磁気共鳴画像)で検査をします。
MRIは磁気の特性を利用することで、骨に囲まれた臓器の様子も撮影できるのです。その機能を使って多方向から断層写真を撮影し、体内の状態を詳しく知ることができます。

気管支鏡検査

直径5mmほどの内視鏡を鼻や口から肺に挿入して、がん細胞の有無を確認する検査です。肺の病巣に気管支鏡が届くと先端からブラシ・針・鉗子が出て、がんが疑われる部位の細胞・組織を採取します。
検査に時間がかかるような場合は、痛み止め・睡眠薬を注射することもあります。

CTガイド下肺針生検・経皮的針生検

CTで肺内部の様子を観察しながら、針生検を行う検査をCTガイド下肺針生検といいます。また病巣が肺の先にあって気管支鏡が届かない時は、肋骨の間から細い針を差し込み、肺の細胞を採取します。この検査が、局所麻酔をして行われる経皮的針生検です。

肺がんステージ3の治療方法

肺がんの治療方法には手術・抗がん剤(化学療法)・放射線療法・分子標的薬などがあります。それぞれの特徴をみていきましょう。

手術

ステージ3の患者さんで手術を受けられるのは一部の人です。
すでに転移や浸潤がある場合が多いため、手術で切除できるかどうかは患者さんのがんの状態や、担当の医師によって判断が分かれます。例えばステージ3のA期で、胸腔内や鎖骨の上あたりにあるリンパ節への転移がない場合は、手術が可能な場合もあります。このように肺の一部を切除することもありますが、多くの場合、この段階での手術の目的は病気を完治させることではありません。あくまでも症状を軽減して進行を遅らせるための手段なのです。手術の方法としては以下の3種類があります。

  • 開胸手術:胸部の皮膚を15~20cmほど切開し、肋骨の間を開いて行います。
  • 胸腔鏡手術:皮膚を小さく数カ所切開して、胸腔鏡という細い棒状のビデオカメラを挿入し、モニターの画像を見ながら行うものです。
  • ハイブリッド胸腔鏡手術:小さい開胸部分(皮膚の切開は8cm以下)から肉眼での観察と、モニターの画像とを併用し、胸腔鏡の補助下で行います。

抗がん剤治療

がんの状態により、手術や放射線療法が適応されない患者さんには、抗がん剤を含む薬物療法を行います。のみ薬・注射によって投与された抗がん剤が血流に乗って全身をめぐり、がん細胞を死滅させる治療法です。
現時点では化学療法だけで肺がんを完治させることはできませんが、がんを縮小させる・進行を抑える・症状をやわらげる効果や延命効果が期待されています。

放射線療法

がんに直接放射線をあてて、細胞内のDNAを切断し、がん細胞にダメージを与える治療法です。エックス線撮影と同じように、放射線があたっても痛みを感じることはありません。進行した肺がんのステージ3では、放射線療法と化学療法を組み合わせるか、または放射線治療・化学療法のどちらかを使って治療します。
化学放射線療法(放射線治療と抗がん剤の併用)の場合、多くは入院しながら放射線治療を行います。副作用は、放射線を当てる範囲・量によってリスクは変わりますので、治療の際は担当の医師から説明を受けてください。

分子標的薬による治療

分子標的薬は、がん遺伝子により生成されるタンパク質などを標的として、がん細胞が増殖しにくい環境を整える治療法です。単独で使用されることもあれば、化学療法と併用される場合もあります。
分子標的薬は、従来の抗がん剤ではみられない特有の副作用が生じることがあるため、処方された場合は担当の医師か薬剤師から説明を受けましょう。

肺がんステージ3についてよくある質問

ここまで肺がんステージ3の症状・転移の有無・治療方法などを紹介しました。ここでは「肺がん」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

肺がんになりやすい人の特徴について教えてください

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

タバコの煙には200種類以上の有害物質・70種類以上の発がん性物質が含まれているといわれます。したがって喫煙者は、非喫煙者に比べると男性で4.4倍・女性で2.8倍も肺がんに罹患しやすいのです。しかもタバコを吸い始めた年齢が若く、喫煙量が多いほど、その危険性は高くなります。また自分が吸わなくても、受動喫煙によって肺がんになる危険性は約2~3割も高くなるといわれています。近くでタバコを吸う人が居る場合は、自身が喫煙者でなくても危険にさらされてしまうのです。喫煙以外に影響を受ける可能性がある有害物質は、アスベスト・大気汚染などです。これらを吸い込みやすい人も、肺がんになりやすいといえるでしょう。

肺がんがステージ3になる前に発見する手段はありますか?

甲斐沼孟医師甲斐沼 孟(医師)

肺がんは早期発見できれば治癒する可能性が高いとされています。しかし初期段階では自覚症状が出にくく、咳が出たとしても風邪の症状と似ているため、見過ごされてしまうことも多いのです。長引く咳・胸の痛み・息切れなどの症状が現れたら、早めに医療機関で受診しましょう。たとえ症状がなくても、40歳以上の人は1年に1回、肺がん検診を受けることで早期発見が可能です。ほとんどの自治体で、無償または一部の自己負担で受けられます。

編集部まとめ

肺がんのステージ3で手術することが可能なのは、一部の人です。

そのため放射線治療と化学療法を組み合わせるか、または放射線治療・化学療法のどちらか単独での治療法をとります。

もし肺がんのステージ3と診断された方が、少しでも不安や疑問を持った時には、ためらわず担当の医師に相談してください。

日々、医療は進歩しています。その不安に寄り添いながら、新しい医療技術をもって治療にあたってくれるでしょう。

肺がんは早期の段階では症状が現れず、気づいた時には進行していることが多いのです。ですから無症状の段階でも、定期的に検診を受けましょう。

また咳や痰・胸の痛みなど、風邪に似た症状であっても異常に気づいた時には早めに受診してください。

進行がんになる前に少しでも早く治療を始めることが、がん治療にとっては非常に大切です。

肺がんと関連する病気

「肺がん」と関連する病気は6個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する病気

  • 間質性肺炎
  • 気管支ぜんそく
  • 肺結核
  • 慢性閉塞性肺疾患(COPD)

上記のように長引く咳や息切れなど、肺がんに症状が似ている病気があります。ただの風邪だと思って放っておいたら、実は重大な病気が隠れていたという場合もあります。少しでも気になる症状がある場合には医療機関を受診しましょう。

肺がんと関連する症状

「肺がん」と関連している、似ている症状は13個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

上記の中には、肺がんが脳に転移した場合の症状も含まれています。肺がんは初期症状が出ないことが多く、気づいた時にはすでに進行がんになっていたという場合もあります。普段とは違う症状が現れた時は、なるべく早く医療機関に相談しましょう。

この記事の監修医師