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「大腸がん・ステージ4」の症状・余命はご存知ですか?医師が徹底解説!

 公開日:2024/03/11
「大腸がん・ステージ4」の症状・余命はご存知ですか?医師が徹底解説!

Medical DOC監修医が大腸がんのステージ4の症状や余命・生存率・治療法や何科へ受診すべきかなどを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

齋藤 雄佑

監修医師
齋藤 雄佑(医師)

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日本大学医学部を卒業。消化器外科を専門とし、現在は一般外科、消化管内視鏡検査、生活習慣病を中心に診療を行っている。現在は岩切病院、高砂内科・消化器科クリニックに勤務。
日本外科学会外科専門医。日本医師会認定産業医。

「大腸がん」とは?

大腸がんは、大腸(結腸・直腸)に発生するがんであり、日本人において男女ともに発症率が2番目に多くみられ、がんによる死亡の原因でも上位にあがる非常に注意をしなければいけないがんの一つです。

大腸がんステージ4の症状

大腸がんのステージ4とは、血行性転移(肝臓転移、肺転移など)または腹膜播種がある状態で、いわゆる進行がんの状態を指します。
ステージ4であっても自覚症状がない方もいます。症状も人によりさまざまで、進行がんのイメージにあるような痛みが出ない方も多いです。気になる症状がある場合には早めに病院を受診することをお勧めします。

腹痛、おなかの張り、便通異常(便秘、下痢、残便感)

大腸がんが進行した場合、がんのために腸の内腔が狭くなり、便の通過しにくくなります。これにともない、便通異常(便秘や下痢)が起こったり、腹痛やおなかが張ったりすることがあります。

腸閉塞、体重減少

大腸がんが進行して腸が完全に閉塞してしまうと腸閉塞になり、腹痛や腹部膨満感(お腹が張って苦しい感じ)、嘔吐などの症状が強くなります。食事がとれなくて体重が減ることもありますが、食事はとれている状態でもがんによってエネルギーが過剰に消費されてしまうために体重が減ってしまいます。半年から1年以内に体重の5%以上の体重減少がある場合には至急、内科を受診しましょう。

貧血、だるさ

がんからの出血が続くと、貧血となります。徐々に貧血が進んだ場合には自覚症状が出にくいです。症状に気がついたときには、重症の貧血となっていることもあるため注意が必要です。重症の貧血ではだるさや動いた時の息切れ、動悸、むくみなどが起こります。便に血が混ざっている症状に気がついたら、早急に消化器内科を受診しましょう。

がん転移に伴う症状

大腸がんが肺転移や肝臓転移をしても自覚症状がないことが多いです。しかし、転移した腫瘍が大きくなると、症状が出ることがあります。肺転移が進行したときの症状は、痰に血が混ざる、胸にたまった水による呼吸困難感などです。また、肝臓転移では、黄疸、腹水などがみられ、食欲不振や、おなかが張るなどの症状が出る場合があります。

背部痛、肛門周囲の痛み

大腸がんの場所や、進行の状況により痛みの場所は異なります。大腸がんがあって、背中の痛みが続く場合は、骨への転移の可能性があります。また、大腸がんの中でも直腸がんは肛門に近い部分にがんができるので、肛門周囲の痛みが出ることもあります。痛みが持続する場合には、医師に相談しましょう。

大腸がんステージ4の余命・生存率

大腸がんステージ4の余命は、一般的に生存率を用いて予想します。大腸がんステージ4ではネット・サバイバル(がんのみが死因となる状況を仮定して計算した生存率)は1年61.9%、2年41.3%、3年28.4%、4年21.0%、5年17.0%です。ステージ3では5年生存率が68.7%であることを考えると、ステージ3から4に進むことで急激に生存率が低下していることがわかります。
その他の消化器がんと比較して、大腸がんの5年生存率は高い傾向があります。大腸がんには肝臓などの転移巣を含めた病変の切除によって完治が狙える治療選択が残されていることが、予後に大きな影響を与えています。
余命の目安になる終末期の症状は、呼吸困難や食事量低下、身体のむくみ、精神状態の異常などです。その他、血液検査や介助の必要度なども参考になります。主治医の意見を聞きながら、自分の考えに合う治療方針を相談しましょう。

大腸がんステージ4の治療法

大腸がんステージ4は、原発巣(もとの大腸がんの病変)と遠隔転移巣(転移した臓器の病変)が切除可能かどうかにより治療法が変わります。

  • 1 原発巣の治療ができない場合には、薬物療法、放射線療法、対症療法となります。
  • 2 原発巣、遠隔転移巣ともに切除可能な場合には、外科手術が適応です。
  • 3 原発巣は切除できる状態でも、遠隔転移巣が切除できない場合には、原発巣の手術+転移巣の薬物療法、放射線療法が選択されます。(原発巣の症状がない場合には、手術をせず薬物療法を優先させることもあります。)

これらの治療法は患者さんの病状によって選択されます。高齢者や臓器障害(腎機能障害や肝機能障害など)がある場合は注意が必要です。ご自身の治療については、主治医に確認をしましょう。

手術

大腸がんの治療は、患者さんの病状にもよりますが、原発巣と転移巣が切除可能な場合には手術が第一選択です。手術は転移巣を含めたすべての病変を切除できれば、完治が狙える治療です。大腸がんの手術はがんから約10cm程度離して大腸の切除を行います。この際に転移の可能性のあるリンパ節の切除をし、腸管の断端をつなぎ合わせます。患者さんの状態やがんの場所により腸をつなげない場合は人工肛門(ストーマ)を作ることがあります。また、原発巣が切除できないときは、腸閉塞を予防する目的で人工肛門だけを作る場合もあります。

薬物療法

大腸がんに対しての薬物療法には、「細胞障害性抗がん剤」「分子標的薬」「免疫チェックポイント阻害薬」があります。
「細胞障害性抗がん剤」は、細胞が増殖することを妨げることでがん細胞を攻撃する薬です。「分子標的薬」は、がん細胞の増殖にかかわるタンパク質を標的にし、がんを攻撃する薬です。「免疫チェックポイント阻害薬」は、がん細胞を攻撃する免疫を保つ薬です。
これらの薬物を単独、もしくは組み合わせて使います。

放射線療法

大腸がんに対しての放射線療法には2通りあります。

  • 1 補助的放射線治療:切除可能な直腸がんに対し、骨盤内の再発を抑えるために術前に行われる治療です。
  • 2 緩和的放射線治療:がんによる痛みや出血、骨への転移による痛みや骨折の予防、脳転移に対しての吐き気、めまいなどの症状を改善させるために行われる治療です。

緩和ケア、支持療法

緩和ケアとは、がんに伴う身体的な痛みだけではなく、治療や仕事への心配・つらさなど精神的な痛みに対しての治療です。支持療法とは、がん自体による症状や治療に伴う副作用や合併症を抑えるための治療やケアです。両方の治療とも、患者さんの負担を和らげるために非常に大切です。
患者さんによって、年齢やもともとの身体機能、病状、ご自身の意思などで積極的な治療を選択しない場合もあります。患者さん自身や家族の希望に沿った生活を送れるようにサポートが必要です。
積極的な治療を希望されず、緩和ケアを希望される患者さんのうち、医療的なサポートが必要になる方がいます。
訪問診療や訪問看護を利用しながら自宅で過ごすことやホスピスへ入院することもできます。万が一、余命3ヶ月などと残された時間が少ないことを告げられた場合に、どのような過ごし方をご本人が希望されるかを事前に相談しておくことで、いざという時に慌てずに対応できます。事前に本人や家族がどのような希望があるか、主治医と相談することをおすすめします。

リハビリテーション

治療中や治療後には体を動かす頻度が減ってしまい、体力が低下します。医師の適切な指示の下、筋力トレーニングや有酸素運動などのリハビリテーションをすることで回復力を高め、残っている身体機能の維持や向上を目的に行われます。

「大腸がんのステージ4」についてよくある質問

ここまで大腸がんステージ4の症状や余命・生存率・治療法などを紹介しました。ここでは「大腸がんステージ4」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします

大腸がんステージ4と診断され、肝臓転移がある場合、余命や生存率はどれくらいですか?

齋藤 雄佑齋藤 雄佑 医師

大腸がんステージ4で肝臓転移がある場合の平均余命については、その患者さんの病状、がんの進行度によっても異なりますので一概には言えません。参考として、大腸がんステージ4でのネット・サバイバル(がんのみが死因となる状況を仮定して計算した生存率)は1年61.9%、2年41.3%、3年28.4%、4年21.0%、5年17.0%です。また、日本の肝切除が可能であった患者さんの3年生存率は52.8%、5年生存率は39.2%であったとの報告もあります。同じステージ4であっても転移巣の切除が可能かどうかによっても、生存率は大きく変わります。

大腸がんステージ4の抗がん剤治療はどれくらい続きますか?

齋藤 雄佑齋藤 雄佑 医師

ステージ4の大腸がんでも、患者さんごとに病状や進行度が変わるため、抗がん剤治療がどれぐらい続くかを一概には言えません。ただし、抗がん剤に身体が耐えられる間は治療を継続するのが一般的です。副作用の症状が出現した場合には、その症状の程度を主治医に伝えましょう。

編集部まとめ

大腸がんステージ4での症状、治療、生命予後などを解説しました。大腸がんは早期であれば、生存率も高く完治の可能性が高いがんです。しかし、ステージ4まで進行してしまうと生存率が大きく低下してしまいます。まずは、大腸がんの早期発見が大切です。そのためには、定期的に大腸がん検診を受けることをおすすめします。50歳以上の方は大腸がん検診として大腸カメラを受けてみてはいかがでしょうか。また、ステージ4であっても病状により生存率も変わります。ご自身と家族が納得した治療をうけられるよう、主治医と相談しましょう。

「大腸がんステージ4」と関連する病気

「大腸がんステージ4」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

循環器科の病気

血液科の病気

呼吸器科の病気

消化器科の病気

  • 肝臓がん
  • 胃がん

大腸がんはステージ4であってもなかなか他の病気と区別がつかないことがあります。健診での便潜血陽性や便に血がまじるなどの症状があれば、消化器内科の受診をおすすめします。また、食思不振や倦怠感、体重減少など原因がわからない症状がある場合には早急に内科を受診して、検査しましょう。

「大腸がんステージ4」と関連する症状

「大腸がんステージ4」と関連している、似ている症状は8個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。

関連する症状

  • おなかが張る
  • だるい
  • 食事がとれない
  • 体重が減る
  • 動悸、息切れ
  • 背部痛

大腸がんは症状が現れにくいですが、上記のようにおなかの症状、食事がとれない、体重減少、だるさなどが出た場合にはまず内科を受診しましょう。便に血が混ざっていたり、腹痛などのおなかの症状が中心であれば消化器内科を受診するのがおすすめです。

この記事の監修医師